守田です。(20161031 23:30)
すでにご報告したように10月21日から25日の日程で沖縄に行ってきました。
日本環境会議沖縄大会に参加し、さらに高江にも足を伸ばしてきました。最終日は平和の礎にも訪れてきました。
とてもたくさんの収穫があったのですが、帰京後、すぐに京都府京田辺市、兵庫県姫路市、東京都千代田区と講演や企画参加が続いたため、報告を出せませんでした。申し訳ありません。
大会は21日より若者たちのプレ企画によって始まりましたが、全大会は22日の一つの特別講演と四つの基調講演によって始められました。
高江、辺野古の基地問題で揺れる沖縄での開催ですから、やはりこのことが一番大きなテーマとして提起されました。以下講演のタイトルと発表者を敬称略にてご紹介します。
特別講演 「日本にとって沖縄とは何か」新崎盛暉
基調講演 「沖縄の環境」桜井国俊
基調講演 「安全保障と沖縄」我部政明
基調講演 「安全保障と地方自治」宮本憲一
基調講演 「国際人権と環境・文化―先住民族の視点から」上村英明
どれもが貴重な内容でしたが、僕はとくに日本環境会議名誉理事長である宮本憲一さんの発言にとても深く感銘しました。
9月16日に福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が行った辺野古の埋立をめぐる沖縄県敗訴の判決を批判しつつ、安保と地方自治の問題を解き明かされたのですが、あの判決が法理的にどう不当なのか、非常に分かりやすい説明でした。
また僕自身、地方自治について、というより私たちの持っている自治権について、まだまだ多くを知らなかったことに気が付かされました。
この点をもっと知り、かつこの権利を行使していかなければならないし、そのもとで環境権の確立を実現していくことが問われています。そのためにも高江、辺野古での民衆の側の勝利を実現しなければならないことが鮮明に見えました。
しかもそれはまた2014年5月によって、福井地裁が大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる際に掲げた「人格権」にも明確につながっていることも宮本さんは教えてくださいました。
その意味で高江や辺野古のことと、原発の再稼働を止めていくこと、さらに四大公害裁判に続いて、福島原発事故による放射能公害の補償を勝ち取り、避難の権利などの獲得していくことともしっかりつながっています。
感動が深かったので、宮本さんが提示されたスライドを現場からFacebookに投稿もしました。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10208941208425773&set=pcb.10208941212865884&type=3&theater
今回はこれをもとに宮本さんの基調講演の内容のノートテークをご紹介します。
重要な内容ですので、ぜひ今、高江の緊張が高まっているこの時期にお読み下さい!
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「安全保障と地方自治」-1
宮本憲一(日本環境会議名誉理事長)
1968年に屋良さんのお招きではじめて沖縄に入ることができました。
そのときにみた軍政下のあり方の衝撃が私をして専門ではないのですけれども沖縄の問題をいろいろと考えさせる契機となりました。
今日はレジュメに出した内容と少し話が異なりますので、パワーポイントを作りました。というのは9月16日に(辺野古の基地をめぐる)高裁の判決が出まして、これを通じて地方自治の問題を考えなければならないと思うからです。
あの裁判の冒頭陳述で翁長沖縄県知事は以下のように発言しました。本土から来た方に聞いていただきたいです。
「歴史的にも現在においても沖縄県民は自由・平等・自己決定権をないがしろにされてまいりました。私はこのことを「魂の飢餓感」と表現しています。
日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常なのでしょうか。国民の皆様すべてに問いかけたいとおもいます。」
この発言と全く反する判決が高裁から出たわけです。
辺野古判決は9点の論旨がありますが、私なりに次のようにまとめました。
「仲井真前知事の埋めたて承認は違法ではない。
国の承認取り消しの是正措置に対する知事の不作為は違法である。
公有水面埋立法の審査対象に国防・外交は含まれるが、これらは地方自治法に照らしても、国の本来的任務に属する事項であるから国の判断に不合理な点がない限り尊重されるべきである。
普天間飛行場の被害除去には、海兵隊の一体運用などの条件を考え、辺野古埋め立て以外にない。沖縄の民意を考慮したとしても基地負担は軽減するので、公有水面埋立法の要件を欠くとは認めるに至らない。
現在の環境技術水準に照らし、公有水面埋立法4条1項2についての前知事の判断に不合理な点はない。
辺野古新基地建設はキャンプ・シュワブの地先という地理的必然性があり、普天間基地の半分以下であるので憲法92条に反しない。」
これはあまりに不当は判決です。
政府の沖縄県に対する態度はあたかも幕藩体制下の封建領主が百姓一揆に対するような問答無用で弾圧するような態度で、近代国家の政治とは思えません。
判決は政府の強権的な政治を是認したもので、憲法、地方自治法と公有水面埋立法の適用を間違っていると私は思います。
まず地方自治の本旨に反していることについて申し上げます。
戦後憲法は国民主権、基本的人権、平和主義と並んで、民主主義の基礎として地方自治を保障しました。地方自治の本旨とは住民自治に基づいた団体自治(分権)を保障するものです。
三権分立が重要と言われますが、地方自治はこれとならぶもので私たちは四権分立とも呼んできました。国家権力を制御するための自治権がこの憲法で保障されたのです。
住民が本来、自治権を持っており、それを保障する形で地方団体の自治権があると言えるのだと思います。
戦後の重要な改革は、都道府県を国の出先機関ではなく広域の自治体とし、知事が官選ではなく公選の公務員となったことです。これは一番保守政権が反対したものでありました。
当然ですが内閣総理大臣と都道府県知事は、その地域のことについては対等になりますので、保守政権はなんとしても防ぎたかったようです。
そのためせっかく憲法で地方自治が保障されたにもかかわらず、明治21年につくった「機関委任事務」というものを残したのです。国の事務を自治体が委任されて行うものです。それが大阪府でいうと60%を占めていました。
つまり事実上、都道府県は国の出先機関にされてしまっていたのです。
ところが1993年に東京の一極集中があまりにもひどいということで、弊害除去のために国会は全党一致で分権改革を決議しました。
このころグローバリズムのもとで国際的にも地方自治が重視されるようになり、EUが1985年にヨーロッパ地方自治憲章を決め、内政のほとんどを基礎自治体に移すという大規模な地方自治の進展があって、日本でも1999年に地方自治法が改正されたのでした。
その中で最も大きな改革が機関委任事務の廃止でした。地方団体の事務は自治事務と法定受託事務となったわけで、法定受託事務というのは国の事務のうちで自治体が行う方が有益な事務を自治体に受託し、国の関与は最小限に規定されることになったのでした。
かつて太田さんが基地のための土地の強制使用のための代理署名で負けたときは機関委任事務だったのです。
今回はそうではない。法定受託事務になって初めての国と地方の争いなのですから、これは当然、裁判において最も重要な論点になりうるものだと思うのですね。
判決には「改正地方自治法1条2項に国と地方の役割が示されている」とした上で今回の事務は国のものであると反転しました。
しかしこの1条2項では「国際的な事務とナショナルミニマム保持の事務を除いて、原則的に内政の事務はできるだけ地方公共団体の事務」という風に書いてあるわけです。
公有水面埋立法は法定受託事務として、知事の免許・承認の事務とされたわけであります。判決はこの重大な変化を全く考慮せず、機関委任事務と同様に「国防・外交は国の決定に従え」と述べているわけです。
しかし私はこれは現在の地方自治の考え方から言うと間違っていると思います。
安全保障は確かに国の専権事務でありますけれども、具体的な戦闘行為などの非常事態ならまだしも、基地が作られると恒久的に環境や防災問題、住民福祉、また地域の発展に決定的な影響を与えるわけです。これを国が一方的に決定するのは不可能なのです。
内政の権限を持つ地方公共団体の同意がなければ施設の維持はできないはずなのです。原発の立地と同じで、構造的に地域に影響を与えるものは、その決定にあたっては住民の同意がなければならないのです。
これは私が関係した公害問題の裁判で確立した見解なのですね。
しかも米軍基地ができれば地位協定によって治外法権になり、住民の基本的人権・自治権は制約されることになるわけです。したがって事前の環境アセス・協議と同意が絶対に必要なのです。
これまでの国政、地方政治の選挙でのオール沖縄での結果でも、住民自治、団体自治も辺野古の基地建設に反対なのは明らかです。政府の行いと高裁の判決は地方自治の本旨にもとるわけで法治国家なら協定を白紙に戻して、米国政府と交渉すべきだと思います。
判決の中でいろいろな人が指摘していて、私も頭に来たのですが、「40の都道府県が沖縄県と同じように反対したならば国の軍事活動は停止するではないか」と脅迫するような文章が書いてあるのですね。
驚くべきことでありまして、すべての都道府県が米軍基地を拒否するならば、日米安保条約は拒否されているのですから、それで強行しようというのはおかしいわけで国際政治を転換すべきだと思うのですけれども、一体裁判官は何を考えているのでしょうか。(大きな拍手)
続く