守田です。(20110628 01:00)
27日に、福島県知事と、山口県知事がそれぞれ原発に対して厳しい態度を
表明したことが報道されました。
僕はこれは、自ら被曝対策を進めならが脱原発の声を大きく上げ始めた福島
県民、上関で長く原発建設に反対してきた町民や県民の方、そして全国約150
ヶ所で「原発を止めて欲しい」「原発のない世の中を作ろう」という声をあげて
歩き出した人々の声が、知事たちの背中を押しだしたことの表れだと思います。
まず福島県の佐藤知事についてみてみると、朝日新聞で
「県議会で「福島県としては原子力に依存しない社会を目指すべきであるとの
思いを強く持つに至った」と述べ、初めて「脱原発」の姿勢を鮮明にした。慎重
姿勢でありながら原発を容認してきた従来の姿勢から転換した。」
と報道されています。
山口県の二井知事は、中国新聞で
「代表質問の答弁で、上関原発の建設計画や埋め立て地の土地利用計画の
先行きの不透明さを指摘。「この状況が続く限り、たとえ(埋め立て免許の)延
長申請があっても認められない」とした。一方で、国のエネルギー政策に協力
し、地元上関町の方針を尊重する基本姿勢をあらためて強調。「国の動向を
注視する」と答えた。」
と報道されています。
佐藤福島県知事の、脱原発への転換は歓迎すべきことです。しかしTBS
ラジオ武田記者の取材などから、そもそも幼稚園や学校での規制値を
20ミリシーベルト以内と高く設定するという案は、知事ら県の側からの政府への
要請に基づくものだったという事実が指摘されていることも忘れてはならないこと
です。その点を反省して、脱原発に踏み切ったとは考えにくい。
しかし20ミリシーンベルト問題とへの批判をはじめ、放射線からの防護を行って
いる県民の必死の努力、また福島市や郡山市での脱原発行動の実現の中で、
知事はこれ以上、政治家として原発容認の立場を維持できないと考えたのでは
ないでしょうか。その意味で、福島県民や、全国の声が、知事を動かしだした
と僕は確信しています。
二井山口県知事の場合も、脱原発に転換したのではありません。いわば脱原発
市民と原発推進の政府に二股をかけた状態です。それで原発建設推進の立場を
いったん凍結したわけですが、これも原発推進から、中間の位置まで、押し戻した
といえます。記事からも明らかなように、二井知事に、原発推進の道を歩むのか
脱原発に転換するのか、思想信条と言えるようなものは存在していません。
ポピュリストとして、どちらが有利なのかを考えているわけです。それもまた
知事の「動かされ方」であると言えます。
私たちは、こうした点に私たちの国の民主主義が、少しずつ発展しつつあることを
見てとることができると思います。民主主義で大事なのは、民衆の側に力がある
ことです。あるいは、民衆に力がある状態こそが民主主義だと言えます。民衆の
声が政治家を動かすとき、私たちは民主主義を実現していると言える。
佐藤知事も、二井知事も、現行の社会システムの中で、民主主義が弱いときに
誕生してきた知事だと思います。だから両知事とも原発推進派だった。これは
私たちの中の、「脱原発」の声が小さかったことの表れでした。しかし今、原発の
立地県知事が、初めて脱原発を表明せざるをえず、原発誘致県が、工事の凍結
を表明せざるを得なくなっている。ここに全国150ヶ所で歩いた成果が如実に
出てきている。
もちろん、このパワーオブバランスは、民衆の側の力が弱まれば、たちまちまた
従来の方向へと偏ってしまうでしょう。だから私たちは一層声を強くしていく必要
があります。
「原発反対」「脱原発」「原発卒業」・・・それぞれで、思いを込めて、さらに歩き、
原発推進派の政治家たちを、パタン、パタンと方向転換させましょう!
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福島県知事、脱原発を明示 県議会で姿勢転換を表明
朝日新聞 2011年6月27日21時12分
福島県の佐藤雄平知事は27日、県議会で「福島県としては原子力に依存し
ない社会を目指すべきであるとの思いを強く持つに至った」と述べ、初めて「脱
原発」の姿勢を鮮明にした。慎重姿勢でありながら原発を容認してきた従来の
姿勢から転換した。東日本大震災のあと、原発立地県の知事で「脱原発」の姿
勢を示したのも初めて。
有識者による県復興ビジョン検討委員会は今月15日、福島復興に向けた提
言の基本方針(素案)の中で「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発
展可能な社会づくり」と明記。佐藤知事は検討委の考えを「重く受け止める」と
していた。検討委は7月に、「脱原発」を盛り込んだ提言を知事に出す予定だ。
佐藤知事は、自民党の斎藤健治県議の質問に答弁。東京電力福島第一原
発事故で、原発の安全神話が根底から覆された▽全住民が避難した町村は
行政機能の維持が困難になっている▽農林水産業、製造業、観光などあらゆ
る分野で想像もできない危機に直面している――と説明し、「ふるさとが大きく
傷つけられたことは断腸の思いだ」と述べた。また、今後の課題として、「産業
の振興や雇用の確保、地域作りをいかに進めるか」を挙げた。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201106270501.html
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上関埋め立て認めず 免許延長で山口県知事表明
中国新聞 2011年6月28日
▽原発の先行き不透明と判断
中国電力の山口県上関町への原発建設計画をめぐり、同県の二井関成知事
は27日の県議会本会議で、予定地の公有水面の埋め立て免許の延長を現状
では認めない考えを示した。原発の新増設を含むエネルギー政策を白紙から見
直す国の方針を受け、上関の計画の先行きが不透明になったと判断。来年10
月で期限が切れる免許について「新たな手続きに入ることはできない」と述べた。
二井知事は代表質問の答弁で、上関原発の建設計画や埋め立て地の土地
利用計画の先行きの不透明さを指摘。「この状況が続く限り、たとえ(埋め立て
免許の)延長申請があっても認められない」とした。一方で、国のエネルギー政
策に協力し、地元上関町の方針を尊重する基本姿勢をあらためて強調。「国の
動向を注視する」と答えた。
本会議後、二井知事は報道陣に対し、「上関は進めるという国の政策が出れ
ば土地利用計画は生きる。そうなれば中電も延長申請をするだろうから、その
時の状況を踏まえ、法的な判断をする」と対応に含みも持たせた。
上関原発をめぐり、中電は2012年6月の本体着工と18年3月の運転開始を
予定している。しかし、福島第1原発の事故を受け、計画は大幅な修正が必至
の情勢。中断している準備工事は再開のめども立ってない。来年10月までの
免許期間内の埋め立て工事完了について二井知事は「相当困難と推察される」
と答弁で指摘した。
二井知事の方針に対し、中電は「知事の判断について、事業者としてコメント
する立場にない」と説明。上関原発建設について「福島の事故を踏まえた徹底し
た安全対策を計画に反映させ、地域の皆さまに安心していただける発電所とな
るよう引き続き最大限取り組む」としている。(金刺大五、山本和明)
▽国と中電、二重にけん制
上関原発建設計画の公有水面埋め立て免許の延長について、山口県の二井
関成知事は「現状では認められない」と踏み込んだ。福島第1原発の事故後の
県民感情に配慮した判断と言える。一方で、国のエネルギー政策が示されるま
での先送りの印象も残る。
二井知事は議会の答弁や報道陣の質問に対し、「現状では」「現時点では」と
何度も強調。脱原発の姿勢はきっぱり否定した。
国の新たなエネルギー政策に上関原発の推進が盛り込まれれば、埋め立て免
許の延長を認めない根拠とした予定地の土地利用計画の不透明さも解消される
と示唆した。
県議会では免許の期限まで1年以上残す現時点での見解の表明に驚きの声も
上がった。国に早期のエネルギー政策の提示を促し、中国電力には延長申請を
控えさせるという「二重のけん制球」との見方もある。
二井知事は4期目。来年8月で今任期が満了すれば引退すると公言している。
県民感情への配慮と最終決断の先送りを両立させた見解には自身の県政の総
仕上げを慎重に進めたいとの思いがにじむ。
国の新政策の提示によって「現状では」という前提が外れる時、県民の声をどれ
だけ重く受け止め、最終決断するかが知事に問われる。(金刺大五)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201106280087.html