明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(91)福島で、原発で何が起こっているのか。小佐古さん辞任劇を読む・・・3

2011年05月03日 00時30分00秒 | 明日に向けて5月1日~31日
守田です。(20110503 00:30)

小佐古さん辞任劇の第三段です。前回までの分析に修正を加えます。
ただ少々、分析がマニアックになってきてしまったので、先にポイントだけ
述べておきます。

僕は2回にわたる分析で、辞任劇の背景に、小佐古さんと原子力安全
委員会の学者さんたちが遠ざけられている現実があるのでは。またそこに
重大な被ばくの現実があるのではと分析しました。

重大な何かがあるのは間違いないと思います。しかし小佐古さんと
原子力安全委員会は、いわば別系列であることが分かりました。
それぞれに遠ざけられつつあるように見えますが、小佐古さんは、非常に
強い危機感の中で辞任にいたったことに対し、原子力安全委員会は、
実行力や責任性が薄く、さらにイノセントに情報を漏らしがちなので
遠ざけられている面が見えます。その点で二つの違った事象が
重なっておきたようです。

ともあれ現在の原子力安全委員会の方々は、学校の20ミリシーベルトまでの
被ばくを容認しているわけですし、良心的に行動しているとはいえません。
ところが僕の前回までの分析では、辞任にいたった小佐古さんの立場と、
原子力安全委員会を重ねてしまった面があるので、この点を撤回し、
修正したいと思います。どうもすみませんでした。


以下、詳細な分析に移ります。

僕は2回にわたるこの事態の分析の中で、この背景には被ばく実態の隠ぺいが
あるのではないかと指摘してきました。小佐古さんに連なる学者グループが
排除されている現実があるのではないかとも。

また政府部内で、原子力安全委員会が提言力を失いつつあるように見える
ことから、僕は原子力安全委員会と小佐古さんらを一つの流れであるように
書きました。

しかしその後、これらの方々を知る方から、4月1日に良心的な提言を行った
元原子力学会会長や、元原子力安全委員長などの方々と、現役の方々は
世代が違い、それぞれが先生と学生だった関係などはあっても、思いも
志もずいぶん違うというご指摘を受けました。

これらを受けて、再度、リサーチを繰り返した結果、SPEEDIの情報公開が
原子力安全委員会に委ねられており、その安全委員会が情報公開を
拒んできた事実を知ることができました。

これに対して小佐古さんは、辞任会見の中で「原子力災害対策本部、原子力
安全委員会、原子力安全・保安院、文部科学省他の活動を逐次レビューし、
それらの活動の足りざる部分、不適当と考えられる部分があれば、それに
対して情報を提供し、さらに提言という形で助言を行って参りました」と述べて
おり、いわば原子力安全委員会の外で、その活動をチェックしていた位置に
あったことに気づきました。

さらに小佐古さんは、「原子力災害対策本部および対策統合本部の支援の
ための「助言チーム(座長:空本誠喜衆議院議員)」を立ち上げていただき
ました。まとめた「提言」は、逐次迅速に、官邸および対策本部に提出しました」
と述べており、民主党の空本議員と行動を共にしていました。

それで空本議員と、斑目原子力安全委員長の関係をリサーチしてみたところ、
なんと空本議員が、斑目委員長に対して、SPEEDIの内容を公開しなかった
ことを憤りをもって追求し、さらに全面公開を要求していることが分かりました。
この国会でのやりとりが動画になっているので、興味のある方はご覧ください。
この中ではどうも原子力安全委員会が、まともに委員の招集を行っていない
ことも見えてきます。

ただある意味でこれは非常に分かりにくい答弁です。政府の中枢の人物が、
「周辺住民の被ばくは免れた筈だ」と憤りをもって、原子力安全委員会を
問い詰めているものだからです。ここには「周辺住民が被ばくを免れる」
ための責任は、原子力安全委員会よりも、政府中枢にあることがどこかに
飛んでしまっている。どうみても野党による政府追及にしか見えない
何かとても奇妙な答弁です。

【福島原発】 空本誠喜 「周辺住民の被ばくは免れた筈」
http://www.youtube.com/watch?v=D2ldKNSAOk8&feature=related

またそもそも斑目委員長がどのような方なのか。ある意味であけすけに
原発の危険性を語っている姿を見つけることが出来ましたので、ご覧
いただきたいと思います。これは4分と短く、なかなか見やすく編集
されています。斑目さんの人となりが分かるので、ぜみ見てください。

大失言!【原発儲かる】原子力安全委員長 【最後は金】2005年班目
http://www.youtube.com/watch?v=uIpHqpd7BoI&feature=youtu.be

さて問題は、小佐古さんの辞任劇であり、その背後に何があるのかです。
この空本議員の斑目委員長への追及や、小佐古さんの辞任の弁を見る
ならば、両者は少なくとも4月の初めでは、一緒になって原子力安全委員会
に対して情報公開を迫っていたことになる。

脈絡的には、小佐古さんは、それが受け入れられずに辞任したことに
なりますが、批判は原子力安全委員会ではなく、政府の側に向けられています。
一方、原子力安全委員会自身は、やはり発言力を失っているように見える。
明らかに東電の工程表作成からは排除されている。

斑目委員長の発言、とくに「大失言!」などを見てみると、こうしたある意味
イノセントな人物に会見させていると、どこまでも情報が漏れてしまうため
遠ざけられたという推測もできます。また菅首相が、当初から、こうした
既存の機関へのチェックのために、小佐古さんらを登用したことも明らかで、
もともと技術的な信頼をおいてないようにも見えます。

ちなみにそもそも原子力安全委員会は内閣府の組織ですから、これは
すべて政府の中の対立です。既存の原子力行政の「ご意見番」と、
管政権の対立であるとも言えます。

しかし政府は、学校への20ミリシーベルトの適用などでは、原子力安全
委員会の名前を使っている。つまり政府はこの委員会を、実効的な力として
はともかく、今も、国民と住民向けの顔としては使っているわけです。

それではなぜSPEEDIをこの機関に託しているのか。空本議員の
追求を見るならば、早急にSPEEDIの使用権限を、空本議員サイド、ないし
政権中枢サイドに移せばよいと思えるのですが、それがなされていない。
これがなぜかよく分からない。空本議員の追及は迫真に満ちていますが、
実は菅政権は、本音ではSPEEDIを引き受けたくないのではないかとも
思えてきます。

真相は十分には分かりません。しかし恐らくここにこそ、小佐古さんが辞任に
いたった何かがあるのではないか。
そうであるが故に、小佐古さんは、SPEEDIのデータの未公開を、辞任の
理由のトップにあげたのではないか。
学校への20ミリシーベルトの適用は、2番目にあげらています。それも
重要な契機だったことは間違いないでしょうが、同時に、情報の未公開の
問題が大きく横たわっているのです。

そしてそれが核心的問題であるために、菅首相も枝野官房長官も、
このことには触れず、「政策は場当たり的ではない」とか、「20ミリシーベルト
という数値について、小佐古氏は誤解をしている」と釈明し、さらに、
「そもそも小佐古氏は飲料水の基準を3000ベクレルにせよと言った人物」
という逆の暴露を行って、辞任会見の信用性を落とそうとしたのではないか。


まとめます。
まず僕の(87)(88)での推論の一部を訂正します。

僕は次のように述べました。
「小佐古さんの辞任劇には、政府内で、アメリカへの依存が高まるとともに、
危機を危機として訴え出した、原子力安全委員会など、学者集団、これまで
「御用学者」と言われてきた方々の、排除の進行を反映しているのではないか。」

まずこのように、小佐古さんと原子力安全委員会を横並びにして
「危機を危機として訴え出した・・・これまで「御用学者」と言われてきた方々」
という点にはあやまりがありました。この点、お詫びして修正します。

そうではなく、おそらく「原子力安全委員会」は、実際の力がなく、やる気も
薄く、さらにイノセントに情報を漏らしてしまうので、遠ざけられているのでは
ないかと思われます。他方で、小佐古さんは、核心的な情報の隠匿に
耐えられなくなったために、辞任にいたったのではないか。

その点で、4月1日に行われた学者集団による危機の表明と、英知の
結集の呼びかけの流れが遠ざけられているという推測自身は、残念ながら
間違っていないと思えます。
これと他方での、無責任な原子力安全委員会の現メンバーの発言力の
低下が、同時に進行したように思えます。これが現状なのではないか。

さらにもう一点、こうした流れの中で、ネット規制が4月の上旬より
始まりだしたことも、情報のコントロールの一環だと思われます。

いずれにせよ、小佐古さんの辞任劇の背景には、危機感を抱いた学者さん
たちが対処の現場から遠ざけられていること、また公開されないSPEEDIの
情報など、深刻な何かが隠されている可能性があると言えます。

・・・以上をもって、とりあえず小佐古さん辞任劇の分析を終えたいと思います。
コメント (2)
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