明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1064)原子力規制庁・新規制基準の断層と地震動想定のあやまり(後藤政志さん談)

2015年03月30日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150330 23:30)

高浜原発再稼働に向けた原子力規制庁の高浜町民への説明に対する批判的検討の三回目です。今回は前回の内容の補足です。
前回は、規制庁による重大事故対策の中の大きな要である地震対策への批判的検討を行いましたが、今回はその際に参考にした元格納容器設計者の後藤政志さんの講演内容の文字起こしを掲載することにしました。
内容的に重複しますが、重要な点なので何度も押さえていただきたいと思うのです。

以下、文字起こしをお読み下さい。いつものように「守田がこう聴き取った」という内容であることにお踏まえください。

*****

後藤政志(工学博士)川内原発が溶け落ちるとき~元・原子炉格納容器設計者が問う原発再稼働~
2015年1月31日 薩摩川内市まごころ文学館にて講演 27分30秒から36分23秒まで
https://www.youtube.com/watch?v=4QEwDJhrwFE&feature=youtu.be


地震について1月半ばのNHKの番組で興味ある内容が出された。
地震には海洋の中でプレートが大きく動いて起こる地震とプレート内部に断層ができてそこで起こる地震とがある。
固い断層の上に柔らかい断層が乗っていて、固い地層が動くと上の柔らかい地層動いて、地表に断層が見えるようになる。これで長さなどを測定して計算して活断層に対する予測を立てている。

ところが今回、テレビでやっていたのは、固い地層は動くが上の柔らかい地層は動かず、地表に断層が見えない場合だった。こうしたことがあること自身は前から知っていた。
私が驚愕したのは、最近の例を見ると半分以上が見えない側だと言われていることだ。分かっているのは見える側だけで3割くらい。
一生懸命に活断層かどうかと話をしているが、そもそも活断層は本当に把握できるのか。そう思ってやることは非常に危ない。

逆だ。見えない場合はどうなるのかということを中に組み込まなくてはいけない。
今の原子力規制の問題点はここに活断層があると判断する。二本離れたところにあったら別々の活断層が判断している。今はそんなことは言いきれない。繋げて考えなさいと変わった。
そもそも活断層が見えないときにどうするかという問題がある。

原子力の方ではこういう活断層の下に評価すると同時に、震源がどこか分からないこともあるので、一応、活断層のないところも検討すると言っている。
ただしその地震の大きさがマグニチュード6.5とか小さなものを想定している。もっと大きなものを想定していない。
石橋克彦さんが主張していることだがこれでは評価が甘い。7.2とか7.3レベルをあらかじめ考えておくべきだ。それ以外に方法がない。

2007年の中越沖地震による柏崎刈羽原発の揺れを参考にしたい。この原発の設計基準地震動は450ガルだった。
980ガルが1G、重力加速度だ。450ガルは自分の体重の半分の力で横に揺らされる。60キロの体重の人なら30キロの力で揺すられる。これで原発を設計していますということだ。
ところが実際にあったのは1699ガル、約4倍だった。設計する側から言えば、壊れて当たり前だ。壊れなかったらまあ運のいいことという値で、柏崎ではのきなみ壊れた。

ただし原子炉や大きな配管などのメインの部分は壊れなかった。それで東電は地震に対して丈夫だとうそぶいた。とんでもない。
地震は値だけでなく、揺れに違いがある。大きく揺れる場合も小刻みに揺れる場合もある。揺れの周波数が同じものは共振して揺れが大きくなるので、一回の地震で大丈夫だなどというのはまったく非科学的だ。

同時に問題なのはなんで4倍も揺れたのかだ。地震発生源から地表に来るまでに減衰して450ガルになると考えて設計していた。
ところが4倍になった。なぜかと東電が調べたら、まず地層のところで揺れは1.5倍に評価すべきだったことが分かった。同時にいろいろな層を伝わっていくときに倍化されていって地上では4倍になったと言う。
あとだしじゃんけんもいいところだ。最初は450ガルといって作った。実際にはもっと揺れたので後になって4倍にもなった理屈を作っただけだ。そういうもので原発はできている。

今は一応、地殻の三次元構造を調べろとなっている。しかし信頼性は極めて低いと考えている。いくらでも計算なんかできる。4倍になる計算は無限に作れる。
しかし地層を調べたからと言って、そんなに簡単に予測が当たるとは思わない。実際には相当なずれがある。
こういう不確かなものをもって断層があるとかないとか、揺れの力がどうかと、こういうことを全体像で見たときに、現在の設計基準地震動があてにならないことは、この議論だけでもそう思う。

もっと地震学者はいろいろなことを言っている。
そうするとそもそも設計をするための条件が整っていない。想定された値を越えないという保証はない。津波も同じだ。

続く


 

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明日に向けて(1063)福島の教訓に基づく重大事故対策などまだできるわけがない!

2015年03月29日 19時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150329 19:00)

高浜原発再稼働に向けて、原子力規制庁は新規制基準への合格内容を説明するために、3月3日から高浜町のケーブルテレビでビデオを流し出しました。
この内容の文字起こしを含んだ批判的検討を前回に続いてお届けします。全体で29分のビデオの8分55秒から17分10秒までの分です。
当該ビデオを掲載している原子力規制委員会のHPも紹介しておきます。

高浜発電所に関する原子力規制委員会の審査概要について
https://www.youtube.com/watch?v=azZk3mPHUrg

原子力規制委員会
http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/shinsa_setsumei.html

ここで原子力規制委は、関電の対策への審査ポイントを説明しています。福島第一原発事故の教訓に基づき、前半で重大事故防止策について、後半で重大事故が防止できなかった場合の対策についてとなっています。
前回も述べたように、重大事故を防止できなかった時の対策を云々する時点で、つまり重大事故発生が完全には防げないと認めている時点で、再稼働はまったく認められませんが、今回は重大事故対策そのものも信用性が低いことを指摘します。
一番のポイントは、元原子炉設計者の後藤政志さんなどが繰り返し指摘しているように、規制委が「福島第一原発事故の教訓」などと言っても、そもそも事故そのものがまだ解明されていないことです。放射線値が高すぎて全く内部がみれないからです。

それどころか事故は継続中です。汚染水の発生から明らかなように格納容器のどこかが壊れているのは確実ですが、肝心のどこかが分かっていない。事故がどのように進展してどこが壊れたのかも分からないのです。それでなぜ対策ができるのでしょうか。
原子力規制委員会が打ち出した新審査基準は、今、分かっている事象だけへの対策を考えることであり、事故の全体への対策になっていないのです。後藤さんはこれを「事故のつまみ食い」と指摘しています。
福島第一原発事故の教訓を踏まえるというのなら、当たり前のことですが事故のすべてが分かってからでなくてはなりません。それでなければ対策をしたなどとはとても言えません。何せ対策を施すべき対象が分かっていないのだからです。

その上で最も大きなポイントである地震対策への批判も行っておきたいと思います。
ここで規制委は、断層について述べていますが、しかし最近、断層について分かってきた知見として、地層は固いものの上に柔らかいものが乗って構成されているのだけれども、下層と上層が必ずしも同時に動いてはいないと言う事実があります。
重要なのは上層の柔らかい層が動かなかった場合はその下で起こっている地震の揺れを断層として把握できないことで、実際には7割ぐらいがこのような構造になっているということです。要するに現代科学はまだ断層を完全に把握できていないのです。

同時に規制委は、高浜原発の設計基準地震動を550ガルから700ガルに引き上げたと言っています。しかしそもそも地震の揺れの大きさはこのように簡単に解析できるのか。
この点で重要なのは8年近く止まっている柏崎・刈羽原発を襲った2007年中越沖地震の地震動です。この原発の設計基準地震動は450ガルでした。しかし実際には1699ガルの地震動がここを襲ったのでした。4倍もの揺れでした。
その後、東電は地層の解析を行ってなぜ予想の4倍になったのかを説明していますが、実は後になって4倍になった理屈など幾らでも作ることはできます。

重要なのは450ガルと解析したものが1699ガルと4倍もずれていたということで、むしろそこでは現代科学ではまだ地震動の揺れを正確に捉えることができないことの方がクローズアップされたのでした。
にもかかわらずこの重大問題に目を伏せたまま、規制委は今回も550ガルから700ガルに上げたから重大事故対策になっていると語っています。しかし実際に起こりうる地震が700ガル以内であるという科学的保証などないのです。
ここから明らかなことは、断層の把握の面から言っても、地震動の把握の面から言っても、原発を設計するだけの条件が整っていないことです。したがって今回の対策が重大事故を引き起こしうる地震への備えになっているとはとても言えません。

なお今回の地震対策に関する検討は後藤政志さんの以下の講演に学んで作成しました。ぜひこちらもご覧下さい。

後藤政志(工学博士)川内原発が溶け落ちるとき-元・原子炉格納容器設計者が問う原発再稼働
2015年1月31日 薩摩川内市まごころ文学館にて講演 該当内容は27分30秒から36分23秒まで
https://www.youtube.com/watch?v=4QEwDJhrwFE&feature=youtu.be

以下、原子力規制委の説明部分の文字起こしを掲載します。

*****

新基準規制にのっとって関電がこうじるとした重大事故を防止する対策に対し、原子力規制委の審査のポイントを説明する。

【地震への対策について】
地震への対策において重要なのは想定する最大の揺れを評価すること。その上で発電所の重要な施設はその揺れに耐えなければならない。
発電所を設計するために設定する地震の揺れの大きさを基準地震動という。この設定が適切に行われたかどうか審査した。
例えば地震を起こす可能性のある敷地周辺の断層の評価で、関電は当初若狭湾にあるFO-A断層とFO-B断層が連動して活動すると評価していた。
しかし審査の結果、内陸側にある隈川断層の連動も考慮する必要があるという結論に達し、3つの断層が連動して活動するものと評価することにになった。
その他、地震動の大きさを決める上で重要な地震発生層の範囲などについても見直しが行われた。その結果、基準地震動は申請当初の最大加速度550ガルから700ガルに引き上げられた。

【津波への対策について】
原子力発電所の津波対策は福島第一原発事故の大きな教訓だ。
地震対策と同様に想定する最大の津波である「基準津波」を設定した上で、津波が到来しても原子炉の冷却機能など重要な機能を損なわないように防護する必要がある。
基準津波の審査では、海底の断層で発生する津波の想定を見直し、地すべりとの組み合わせを考量することを求めた
その結果、津波の高さが放水路の奥で最高6.7メートルとなり、対策を講じなければ原子炉建屋など重要な施設のある3.5メートルの敷地に津波が到達する可能性のあることがわかった。
そのため放水口側に高さ8メートルの防潮堤、水路の途中に高さ8.5メートルのゲートを設定するなど津波侵入を防ぐ対策を講じることになった。
審査ではゲートの閉め方を多重化し、津波が到来した時に確実に閉められるようにする方針についても確認を行った。

新基準では地震、津波以外にもさまざまな自然現象や人為事象を想定するとともに、これらの組み合わせを想定することも求めている。

【新たに追加された竜巻への対策について】
審査では秒速100メートルの竜巻に対して車両が飛ばされないようにする対策や、竜巻によって飛んでくるものから守るための対策を確認した。
海水ポンプ室を竜巻によって飛んでくるものから守るための設備を設置。
設備面の対応だけでなく、竜巻対策のための設備の操作手順、教育・訓練の定期的な実施、運用面の対応方針についても確認した。

【あらたに追加された森林火災対策について】
審査では施設外の火災の熱による壁や天井の表面温度を押さえることや有毒ガスが運転員の作業空間へ影響を及ぼさないようになっていることを確認した。
森林火災対策として森林伐採により18メートル以上の防火帯を設定し、施設を森林火災から守るようにしている。
防火帯の維持、管理、初期消火活動のための手順、教育・訓練の定期的な実施。このような運用の方針についても確認した。

【新たに追加された内部溢水対策について】
施設の内部には原子炉や設備を冷やすために多くの水がタンクや配管にある。これらの水が例えば地震の影響によってあふれ出し設備が浸かったり故障することが考えられる。
審査ではまず水に浸からないようにする。また水に浸かったとしても故障しないことを確認した。
水や蒸気がかからないようにする。水や蒸気がかかっても故障しないことを確認した。
水に浸からないようにする堰や水がかからないようにする保護カバーなどを設置した。
設備面の対応だけでなく、保護カバーの保守管理、水密ドアを閉じる手順、教育・訓練の定期的な実施など運用面の方針についても確認した。

【電源の確保について】
福島第一原発事故の大きな原因は地震と津波により電源のすべてを失ったことにあった。このため新規制基準では電源設備について厳しい要求を課している。
常設の非常用電源を含めたすべての電源が喪失した場合、つまり全交流電源喪失の場合の対策として、すべての電源を喪失しても原子炉の冷却に必要な電源を確保することを求めている。
審査ではその対策として例えば空冷式非常用発電装置や電源車を設置し、原子炉にタンクから水を注水するためのポンプの電源も確保するものとなっていることを確認した。
外部からの支援を受けられないときに備えて、発電所内に7日分の電源用燃料を確保することを確認した。

続く

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明日に向けて(1062)原発再稼働に向けた新規制基準は大事故を前提にしている!

2015年03月28日 18時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150328 18:00)

高浜原発再稼働に向けて、原子力規制庁は新規制基準への合格内容を説明するために、3月3日から高浜町のケーブルテレビでビデオを流し出しました。
以下から内容を見ることができます。なお原子力規制庁のHPにもこの動画がアップされています。

高浜発電所に関する原子力規制委員会の審査概要について
https://www.youtube.com/watch?v=azZk3mPHUrg

非常に重要な内容なので文字起こししました。長いので何回かに分けます。
今回は、冒頭の福島第一原発事故の教訓と、新しい規制基準のポイントを説明したところだけをご紹介しますが、重大な内容がさらりと語られています。
端的に新しい規制基準では重大事故が防げないことを前提にしているということです。

すでに多くの方がこの点に対する批判を行っていますが、僕はもっとこの点をハイライトすべきだと思います。
福島第一原発の教訓を踏まえて、重大事故を絶対に起こさないようにする・・・とは言ってないのです。
起こさないように努力するが、それでも重大事故は発生しうる前提に転換したのです。大事故がありうることが前提に再稼働を認めると言っているのです。

事実、規制委員会は繰り返し、「新規制基準に通ったからと言ってその原発が安全だとは言わない」と述べています。
重大事故は起こり得るので対策した。安全ではないが、精一杯の対応は考えたと言っているのです。この点をもっともっと多くの人々に伝えるべきです。

このビデオはその点が短く説明されているので分かりやすいです。
ぜひこのビデオをご覧になり、原子力規制庁が新基準規制に通った原発でも「重大事故は発生しうる」と述べていることをつかんでください。
これは事実上、重大事故の発生を完全に防ぐことはできないことを公言していることに他なりません。そんなプラントの運転など社会的に認めてよいわけがありません。

以下、ポイントを文字起こししました。ご覧下さい。

*****

高浜原発3号炉、4号炉設置変更に関する審査結果についての説明
原子力規制庁 山形浩史 原子力規制部安全規制管理官(PWR担当)

高浜原発の審査内容の前に、福島第一原発事故の教訓と、新規制基準のポイントを説明したい。

【福島第一原発事故の教訓について】

福島第一原発事故では地震と津波により発電所の全ての電源が奪われ、原子炉を冷却できなくなった。
地震、津波などによって安全機能の複数、非常用発電機、蓄電池、電源盤などがダメになった。このような複数の喪失を起こさないようにすることが第一の教訓だ。

また福島第一原発事故では事故の進展を途中で止められなかった。
最終的に建屋の水素爆発を起こした。放射性物質を閉じ込める格納容疑が壊れ、放射性物質が発電所の敷地外まで大量に放出された。
これに対して当時の規制基準では、格燃料が溶けてしまったり、放射性物質が大量に外に漏れるような重大事故を発生させないことを重視し、重大事故の起きた後の対応が十分にできていなかった。
このため重大事故が発生しうると考え、あらかじめ可能な限り対策をとっておくべきというのが第二の教訓だ。

【規制基準の変更について】
1、旧規制基準のポイント
想定しなければならない自然現象の種類が限定的だった。
例えば地震についてはさまざまな想定していたが、津波についての基準はほとんどなかった。
規制の考え方として、そうした自然現象は想定の範囲を超えることはほとんどないという考え方に立っていた。

安全確保のために設備を多重化すること、例えば注水ポンプを2台にと求めていた。ところが2台が同時に壊れることは考えていなかった。
基準を満たせば核燃料が溶けたり、放射性物質が外部に大量に放出する可能性のあるような重大事故につながることがないよう対策を問題なく行うことができると判断していた。
つまり基準を満たせば大きな事故はおきない。しかも対策の中身は設備面での対策を重視していたということになる。

2、新規制基準のポイント
平成25年7月に新しく作られた規制基準は、こうした反省、教訓をしっかりと踏まえ、考え方を大きく転換している。
一つ目の見直しは自然現象など重大事故の原因になりうる事象の想定を厳格にしたことだ。
例えば施設の設計にあたって想定する地震や津波を厳しくするとともに、竜巻などの自然現象への対策、や森林火災、内部溢水などの対策を新設したり強化した。
発電所内の電源が使えなくなった時のために、発電所内の非常用電源を手厚くするなど電源確保の要求も厳しくした。

その上で対策はしっかりしているから事故は起こらないという従来の考え方を大きく転換。
それでもなお事故が発生しうるという発想にたち、万が一、重大事故が発生したときに備えた対策をあらたに求めることにした。
原子炉を止めたり、冷やしたりすることがうまくいかなかった場合でも、原子炉が壊れないように事故を食い止めるための設備や手順、体制の整備。
さらに原子炉が壊れないための対策も失敗し、原子炉が溶けて核燃料が溶けてしまっても、外側の格納容器が壊れないようにするための対策を新たに求めている。

続く

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明日に向けて(1061)ロシア・プーチン大統領の核使用発言を許せない!

2015年03月27日 23時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150327 23:00)

少し前のことになってしまいましたが、ロシアのプーチン大統領が3月15日に、クリミア危機をめぐって核兵器の使用を考えていたと発言しました。まったく許しがたいことです。
僕が参加している「京都被爆2世3世の会」はすぐに抗議声明を作成し、19日付で在日ロシア大使館に送信しました。
抗議するのはあまりに当たり前です。プーチン大統領の発言は、核のない世の中を目指して奮闘してきたすべての世界の人々の思いを踏みにじろうとするようなものだからです。冷戦時代の野蛮差の中に、世界を連れ戻そうとするものだからです。

ぜひとも世界にこのことを発信したくて、その後に英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語に抗議文を翻訳しました(多くの方の協力を得ています)。もっとたくさんの言語への翻訳を準備中です。
またこれを契機に、「京都被爆2世3世の会」のFacebookページも立ち上げました。もっとヒンバクシャの声を、現代世界にひろく伝えなければと考えてのことです。以下をご覧下さい。
https://www.facebook.com/pages/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E8%A2%AB%E7%88%862%E4%B8%963%E4%B8%96%E3%81%AE%E4%BC%9A/1623283584568176?ref=hl

以下、日本語の声明を貼り付け、参考のために英語訳を貼り付けます。そののちに朝日新聞の報道記事を貼り付けます。
この声明に共感していただけたら、ぜひFacebookページもご覧下さり、それぞれの言語圏のお知り合いの方に流してください。世界に核兵器反対の声を響きわたらせたいです!
またより多くの言語への翻訳を進めたいので、「この言語なら協力できる」という方はご一報ください。現在、ロシア語、韓国・朝鮮語について進めています。ポーランド語、アラビア語について依頼を出しています。

*****

2015年3月19日

ロシア連邦大統領
ウラジミール・プーチン 殿

京都原水爆被災者懇談会  
京都「被爆2世・3世の会」

プーチン大統領の核兵器使用の言動に
満身の怒りを込めて抗議します!

3月15日、プーチン大統領は、1年前のクリミヤ半島併合の際、核兵器使用の検討をしていたことを公言されました。
私たちは核兵器使用が実際に検討されていた事実と、そのことを何の躊躇もためらいもなく公言された態度に強い衝撃を受けました。
70年前の8月、広島・長崎の被爆者は、底知れぬ恐怖と、地獄の苦しみと、深い悲しみを体験し、心底からの怒りを発しました。
被爆者を三度作り出してはならないと、市民による核兵器の禁止と廃絶を求める運動は生まれ、今や世界中の人々が共通して願う大きなうねりとなっています。
プーチン大統領の言動はこの核兵器廃絶を願う世界の世論と運動へのあからさまな挑戦です。
何の罪もない、防御もない大量の市民を一瞬にして虐殺する核兵器使用に罪の意識はないのでしょうか。核兵器使用が何世代にも渡って人類を傷つける残酷さに思いを致すことはないのでしょうか。
私たちは、今現在も核兵器使用の可能性が具体的に存在していた事実に言いようのない危機感を持ちます。そのことを公言してはばからない前時代的態度に強い憤りを覚えます。
私たちはプーチン大統領の言動に満身の怒りを込めて抗議します。核兵器の使用などについて考えるのではなく、全世界の人々の願いに応え、核兵器廃絶に向けた道に進むよう強く求めます。

*****

March 19, 2015
Dear President Vladimir Putin,

Kyoto Society of Atomic and Hydrogen Bomb Victims 
Kyoto Association of 2nd & 3rd Generation Hibakusha (Atomic Bomb Survivors)

We Adamantly Protest Against President Putin’s Speech and Actions
Concerning the Use of Nuclear Weapons

On March 15, President Putin made a public announcement stating that one year ago, during the Russian annexation of Crimea, he was considering using nuclear weapons. We were deeply shocked, not only by the fact that the use of

nuclear weapons were actually considered, but by the nonchalant and unhesitating manner with which he announced such a possibility.        
70 years ago in August, the hibakusha (victims of the atom bomb) in Hiroshima and Nagasaki endured unimaginable horror, infernal suffering, and deep sorrow, for which they have publically expressed their anger, welling up from the

bottom of their hearts. Determined never to allow such an experience to be repeated a third time, the citizen’s movement seeking to ban and eliminate nuclear weapons was born, making way for what has become a widely shared desire

felt around the world today. President Putin’s speech and behavior is a blatant challenge toward such a movement and people hoping for the abolishment of nuclear weapons.    
Is there no sense of sin in using nuclear weapons that can slaughter in an instant a large population of defenseless innocent people? Is there not even the slightest concern about the cruelty of harming humanity for generations

through the use of nuclear weapons?
We have an ineffable sense of crisis, learning that there was a specific situation in which the use of a nuclear weapon was actually considered. We are enraged by the anachronistic attitude by which such possibilities are so

shamelessly expressed. We adamantly protest against President Putin’s speech and actions. We strongly urge the president to stop considering the use of nuclear weapons, but instead answer the pleas of the world’s population, and

take the path to abolish the weapons once and for all.

*****

プーチン氏、核兵器準備も検討 クリミア併合の過程で
朝日新聞 モスクワ=駒木明義 2015年3月16日11時14分
http://digital.asahi.com/articles/ASH3J1QTZH3JUHBI001.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH3J1QTZH3JUHBI001

ロシアのプーチン大統領は15日夜に放映されたテレビ番組で、昨年3月にウクライナからクリミア半島を併合する過程で、欧米からの妨害を念頭に、核兵器使用に向けた準備を進めることを検討していたことを明らかにした。
ロシア国営テレビのドキュメンタリー番組「クリミア、祖国への道」のインタビューの中で発言した。

プーチン氏は、クリミア情勢がロシアにとって思わしくない方向に向かったときにロシア軍の核戦力を臨戦態勢に置く可能性があったかを聞かれて「我々はそうする用意ができていた」と答えた。
その上でプーチン氏は「世界的な紛争を引き起こしたい者がいるとは考えていなかった」と付け加え、実際に臨戦態勢をとる必要はないと予測していたことも強調した。核兵器を具体的にどう使うことを想定していたかは説明しなかった。

ロシアによるクリミア併合宣言から18日で1年というタイミングでプーチン氏があえて核兵器に言及したのは、クリミアはすでにロシアの核兵器で守られる領土の一部となっており、手放すことはあり得ないとウクライナや欧米を牽制(けんせい)する狙いからとみられる。

ロシア外務省で核問題を担当する局長が11日に、クリミア半島にロシア軍が核兵器を配備する権利があると述べたのも、プーチン氏と軌を一にした発言だ。
テレビ番組「クリミア、祖国への道」は、住民の「ロシアに戻りたい」という自由な意思表示をロシアが助けたという、政府の公式見解を強調する内容となっている。プーチン氏のインタビューがいつ収録されたかは不明。(モスクワ=駒木明義)

 

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明日に向けて(1060)あまりに杜撰な川内原発工事認可申請(後藤政志さん談)

2015年03月24日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150324 23:30)

3月18日、原子力規制委員会は、九州電力川内原発1号機の再稼働に必要な「工事計画」を認可しました。これを受けて九州電力は1号機の設備の使用前検査を規制委に申請。
30日から規制委員会によって再稼働の前に必要な設備の検査が始まることとなりました。九電はこのもとで7月にも川内原発1号機を再起動させ、8月に営業運転を再開しようとしています。

これを食い止めるために私たちはできるだけのことをしていく必要がありますが、その一つとして、この市民には分かりにくい「工事計画」の中身について知っておく必要があります。
情報を探したところ、元原子炉設計者の後藤政志さんが解説をしてくださっていることを知りましたが、それを聴いて、そもそものこの「工事計画」があまりに杜撰な形で提出されていること、点検などしようがないことが分かりました。
なぜか。答えは単純で、主要部分が白抜きで、隠して発表されているからです。唖然としました。

この内容をつかむために、後藤さんの解説をノートテークしたのでぜひご覧になって欲しいと思います。
こうした内容を私たち市民サイドがきちんと把握する努力を続けることが、作業の曖昧さに少しでもくぎを刺すことになり、安易な再稼働を阻んでいくことにつながります。
ぜひ後藤さんの説明に耳を傾けてください。時間のない方は、文字起こしをお読み下さい!

なお文字起こしは主要部分を要約して行っています。そのためあくまで文責は守田にあります。
守田がこう聴き取ったという内容であることに留意をしてください。正確さを期したい方はぜひ後藤さんのお話を直にお聞きいただければと思います。

*****

後藤政志『川内原発工事認可審査について』
2014年11月24日
https://www.youtube.com/watch?v=QcOy_-jcJbM

川内原発は新規制基準に一番最初に通った。現在、工事認可審査を行っている。
主として問題となるのは、そもそもどういう基準で満足するかという根幹だ。ところがそれをすっとばしてしまって工事認可を行っている。

例えば地震動について設定するのが立地段階、最初の話だ。こういう地震動で計算すればいいと決めたらそれを具体的にやってみて、耐震設定上、持つか持たないかというのが工事認可になる。
技術屋の方でいうと、いわゆる設計の計算、強度計算など、そういうものが含まれている。
量的に言うと、立地段階の初期の計画段階の話と後者の工事認可、これに保安規定も入るが、これは膨大な量がある。
それを審査をしているわけだが、その過程をみているとものすごい量のものを短期間にやっている。かなり無理をしながらやっている。

今回、川内原発の件で鹿児島まで行ったのは、現地で川内原発に対してGOをかけるという話があったので、技術的な側面からそれは違うのではないかという意見を表明するためだった。
原子力市民委員会の立場で行って、4名でいって記者会見をした。
私の方からはとくに原発の安全性の根幹の問題を指摘した。

工事認可の内容は耐震が主になっている。従来のものはあまり変わってなくて、地震動を変えたからそこだけを修正するとなっている。あとは過酷事故関係となっている。
私が一番言いたかったのは、入り口で見てびっくりしたことだ。膨大な、全部で万のページになるものだが、そのうちの数千ページをみた。
プラントの配置関係を全部伏せて白抜きになっている。どこに何があるか分からない状態になっている。
耐震強度を計算する時に耐震の解析モデルがあるが、それの高さ方向の値がすべて白抜きになっている。

もっとすごいのは強度計算について、例えばあるものに力がかかって、それで計算をして発生する応力、計算上出てくる力に材料が耐えられるかなどをチェックする。
ところがその途中部分も白抜きになっている。大量にそれがなっている。
ひどいものになると何の計算書か分からない。その中で構造についても伏せているものもある。

以前から工事認可で伏字はあったが、こんなにひどいものは初めてみた。論外だ。はっきりいって読む気がしなくなった。ばからしくて。
その時に特に感じたのは、これを規制委員会はどう考えているのかだ。

規制委員会の立場では、一つはテロ被害などに対してセキュリティの面で伏せるということだろう。
もう一つに企業秘密である場合もある。

しかしどう考えても大半はセキュリティに関係ない。
企業秘密といったときに、例えば水素を処理する装置がある。この性能や構造が企業秘密だからださないとなっている。
しかしこの装置は万が一炉心が溶融するような事故になると水素が大量に出る。それをどうやって処理するのか。
私は処理できるというのが怪しいと思っているが、そういうものの性能を伏せるというのは理解できない。

安全を担保する部分が伏せられているのは、説明を放棄していることだ。しかも説明されても疑わしいところがいっぱいあるのが原発なのだ。
これが福島の事故でもはっきりわかったことだ。

耐震の話にいくと、昔は地震動はせいぜい200ガルとかせいぜい200と数10ガルだった。
それが400とか500ガルとかになった。大きな地震があったので活断層など見直したら大きくなった。
それを今回さらに見直したら620ガルぐらいになった。

これを強度計算で示すが、技術的に難しいのは地震には揺れの違いがある。ゆっくりか早いか。周期がある。
構造物の方は固有周期があり、揺れやすい周期がある。配管が細かくサポートされていると細かく揺れる。広いとゆっくり揺れるが揺れが大きくなる。
地震動が来て、ものの周期と一致すると共振状態になって非常に大きな揺れになる。

強度計算で大事なのはこの共振状態。共振になった時にどうするか。
材料の中には、構造も含めて、減衰除数というのがある。振動を弱める特性で、それをどう位置づけるかによって振動が大きくもなるし小さくもなる。そのデータの作り方の問題がある。

また非常に長周期の地震が来た時に大丈夫か。これは高層ビルなどでも問題になっている。
普通の構造物は1秒かそれ以下の細かい揺れになるが、高層ビルでは5、6秒とか長いものがある。
原発の中でも一部そういうところがある。ここには長周期が関係してくる。

川内原発についての耐震設計について私の提案は、地震動設定を変更したのなら、変更の前後の全データを示すべきだということだ。
地震動を変える前はこういう応力でこうだった。変えたらこうなった。それで許容値を全部並べる。
それでその計算の内容について、過去とやり方を変えたらその根拠を示すこと。当然だが、それを全部分かる形で一覧にして示すべきだ。

膨大な計算書の中を読めというのは無理がある。
耐震上、問題になり議論になるところはきちんと抽出し、見える形にして説明すべきだ。最低限、それぐらいのことをするべきだ。

高浜原発でもパブリックコメントを求めると言っているが今のようなやり方ではまったく意味がない。
むしろあれでは人に説明して分かってもらおうと言う姿勢にまったくなっていない。大変、失礼だ。これでは信頼関係はまったく失われてしまう。

そもそも福島原発事故で電力会社や原子力保安院への信頼は地に落ちた。それではまずいということで規制委員会をつくってやっているはずだ。
それなら私たちに納得いくような説明をするのが最低限必要だ。耐震設定における結果を分かりやすく表明することを最低限やるべきだ。
技術的な話はこういうものが示されて以降の話だ。

 終わり

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明日に向けて(1059)東日本大震災と福島原発事故から4年、私たちは何をしなければいけないのか(下の2)

2015年03月23日 09時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150323 09:30)

東日本大震災と福島原発事故からまる4年を経て、私たちは何をなさなければならないのか。
ようやく連載の最後です。憲法9条と平和を守ることについての後半を述べたいと思います。

前半では安倍政権がけして多数派などではないこと。同時に内部が空洞化し、劣化し、脆弱化していることを書きました。それが党内独裁が進んでいる根拠でもあります。
それを踏まえて今回指摘したいのは、これまでの歴代自民党政権とて繰り返し戦争に協力してきたのだということです。このことを反省的に捉えることがとても大事です。
そもそも戦後日本の復興とて、朝鮮戦争特需によって成し遂げられました。朝鮮民衆の塗炭の苦しみを踏み台にしつつ、日本は高度経済成長に入っていったのです。
その後の世界から「脅威」と言われた経済成長も、ベトナム戦争の特需景気抜きには実現できませんでした。このときも日本はアメリカの戦争政策に全面的に協力し、ぼろ儲けし、経済発展を遂げたのです。

以降も日本は原爆の被害国でありながら、アメリカの核戦略に追従し続けてきました。追従して儲け続けてきました。
旧ソ連邦や東欧社会主義が崩壊し、アメリカが次の「敵」を求めて行った湾岸戦争でも多額の戦争資金を供出しました。
その後は自衛隊を参加させ始めました。2001年以降の対テロ戦争の中でのアフガン戦争、イラク戦争への協力によってです。

今の情勢との関連で言えば、とくに重要なのはイラク戦争への自衛隊派遣でした。そもそもこの戦争はイラクが大量破壊兵器を持っているからという理由で始められました。
しかし米英軍が攻め込み、全土を制圧してみて分かったのは大量破壊兵器などなかったということでした。にもかかわらず誰も処罰されるわけでもなければ、責任をとるわけでもない。このことが今日のイラクの大混乱の決定的な要因となりました。
この大義なきイラク侵略戦争に対して、日本は小泉政権のもとで全面的な支持を掲げました。このときの自民党幹事長にして内閣副官房長官だったのが現在の安倍首相でした。

にもかかわらずこの頃、日本の内部では「小泉人気」が吹きあれ、マスコミのほとんどがイラク戦争の反対を大きくは掲げませんでした。というよりも読売新聞など、全面支持でした。このもとで自衛隊のサマワ派遣が実現されました。
米英ではまだしもイラク戦争に対する社会的批判が事後的に起こりましたが、日本ではイラク戦争コミットの責任が今日まで何ら問われていません。
民衆の側からも小泉元首相が脱原発を語るだけで、かつての人気を部分的にせよ再燃させてしまいました。

このように私たちの国はこれまで一貫してアメリカの戦争政策を支えてきたのであり、そのもとにだんだんと自衛隊派兵を強めてきたのです。
にもかかわらず、戦火が及ばないことで、私たちの国の多くの人々は私たちの国が平和国家だと思い込まされてきたのでした。
安倍政権は今、ある意味ではこのみせかけの平和のベールを脱ぎ捨てようとしているにすぎないとも言えます。

歴代政権がなぜ安倍首相が行っている平和のベールの脱ぎ捨てまで踏み込まなかったのかと言えば、もちろん私たちの国の民衆の中に浸透した平和への思い、戦争を忌み嫌う心とぶつかることを恐れたからでした。
その意味で僕は私たち日本の民衆が持っている平和力とでもいうべきものに誇りと自信を持って良いと思います。
しかし日本民衆の眼はいつも経済によって曇らされ、私たちの国が戦争を支持していることへの批判には十分には向かってこなかった。その意味で私たちの平和力は中途半端なものでしかなかったのでした。

今、私たちがなすべきことは、この点に自省的に目覚めることです。いや、まさに今、その目覚めが起こりつつある。それを促進させ、成長させることこそが問われている。
東日本大震災と福島原発事故は、私たちの国の主流に位置する政治家や科学者たちがどんなに嘘つきで、信用できず、誠実さも力もない人たちなのかということを民衆に大きく知らしめました。
そこから民衆の猛烈な学習が始まりました。当初は放射線被曝からの身の守り方に集中していましたが、やがてそれは安倍政権の強権姿勢のもとで、次第に秘密保護法の問題や、集団的自衛権の問題などに多様に広がりだしてきました。

この勢いには凄まじいものがあります。これだけ民衆が各地で熱心に学んでいる時期を少なくとも僕は過去に経験したことがありません。
そしてこの目覚めは、急速に旧来のすべての政党を乗り越えだしてしまっているように僕には見えるのです。
何より、どこの政党も民衆に放射線被曝を避けるための自主的避難を呼びかけはしなかったのに、ものすごい数の人々が、経済的な苦境をも乗り越えて避難に踏み切った。それは国家のウソを突破する行為でもありました。

そしてこの自力避難した人々が各地で脱原発運動の大きな軸になってきたわけですが、これらの人々は明らかに既存の政党や組織のほとんどを越えてしまっています。何せ政党の議員で避難した人も呼びかけた人もほとんどいなかったのですから。
僕はこれはものすごい事件だと思います。これまでの民衆運動のリーダーたちが誰も言わないのに、つまりリーダ-などいないのに、本当にたくさんの人々が大胆な行動にうってでたのです。
これに各地の人々が、避難者の受け入れや保養キャンプの開催等々のさまざまな形で下から結合していきました。僕はこういうことは日本の政治の流れの中でほとんどなかったことだと思います。政党政治を越えたムーブメントが力強く広がりつつある。

この下からの流れ、言葉で言えばラディカル・デモクラシーの出現と発達こそ、僕はここ数年間でもっとも特筆すべきものだと思います。
もちろんまだこの流れはこの国の方向を変えるだけの本流にはなっていません。しかしそこまで成長していく可能性が十分にある流れだと僕は感じています。
そしてこの流れを成長させるために必要なものこそ、真の平和主義に目覚めること、イラクやシリア、パレスチナ、あるいはウクライナ・・・世界と一緒にしか私たちは私たちの平和を実現できないことに目覚めることだと思うのです。

目覚めたときに私たちに見えてくるのは、核のない世の中の実現という、世界共通の課題の中でこそ、私たちが全世界の人々と一緒に歩み、ともに平和を作れることです。
実際、チェルノブイリ原発事故と福島原発事故を通じて大きな流れが世界的にできつつあります。僕自身、その流れに引っ張られる形で、ベラルーシ、ドイツ、トルコ、ポーランドへと呼ばれて行ってきたのでこのことを身体で感じています。
世界は一つでしか平和になれない。一つでしか核の惨禍から身を守れない。一つになってこそ、私たちは私たちの環境を守り、私たちの命を、私たちの未来を守ることができるのです。

こうした大いなる展望を見据えながら、私たちは私たちの生きる今の場で、私たちの足元から平和を築いていきましょう。
そのために放射線防護活動を進めなくてはいけない。被曝した人々を守り、命を守るのです。さらなる原発事故を未然に防ぐのです。
さらに私たちの国が、本当の意味で戦争から縁が切れていくことをめざすことが大切です。だからこそイラク戦争に戻って考え直し、今からでもイラク戦争の支持者に責任をとらせていかなくてはなりません。
いや広島・長崎原爆まで立ち戻り、隠されてきた核戦争である被曝強要の歴史を捉え返し、真の被曝防護=核なき世界の実現に歩むことが必要です。

大事なのは覚醒を強めることです。強めて広げ、深め、育てていく。これが今、私たちが積極的にコミットすべき歴史的ムーブメントです。
共に歩んでいきましょう!

連載を終わります。

 

 

 

 

 


 

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明日に向けて(1058)東日本大震災と福島原発事故から4年、私たちは何をしなければいけないのか(下の1)

2015年03月22日 22時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150322 22:30)

東日本大震災と福島原発事故からまる4年を経て、私たちは何をなさなければならないのか。
今回は最後の五つ目、これまで述べてきたすべてと連動しつつ、憲法9条と平和を守ることについて述べたいと思います。

誰もが感じているように、今、私たちの国は大変な岐路に立っています。
戦後70年、なんとか守り通してきた軍隊に戦争をさせない国、その意味で平和な国として歩んできた足跡が守れるかどうかの瀬戸際にあります。

原発再稼働を推し進めようとしている安倍政権は、戦後のさまざまな遺産を否定し、足蹴にし、この国を戦争ができる国へと変えようとしています。
その姿はまるで明治維新後に、西洋の暴力に追いつこうとし、遮二無二「列強国」入りを目指した過去の日本の姿を彷彿とさせるようです。
実際、安倍首相べったりの三原じゅん子議員からは「八紘一宇こそ日本の理想だ」と、中曽根元首相ですら否定したアジア侵略のスローガンが飛び出したりしてきています。

「慰安婦問題」のもみ消し発言は、ヘイトクライムを繰り返す「ネトウヨ」の元締めそのもののスタイルを貫く安倍政権の姿、それを止められない与野党の姿に多くの方が胸を痛めていると思います。
多くの人々がこの国の未来に不安を感じ、失望を深め、中には放射線被曝のことと兼ね合わせて、海外への脱出を考えている人々もおられるようです。
他方で、安倍首相の好戦的なあり方が、その海外ですら日本人の安全性を損なわされており、出口なしのひっ迫感を感じておられる方も多いのではないでしょうか。

僕が述べたいのは二つの点です。一つにそんなに悲観することはない!ということ。絶対的多数派に見える安倍政権は実は少数者の支持の上に成り立っているのでしかありません。この構造を見据える必要があります。
しかし他方でもう一つ、とても重大なことは日本はこれまでもけして平和国家とは言えなかったこと、アメリカの戦争に何度も手を貸してきた国であり、それに多くの国民・市民が無自覚に従わされてきたのだということです。
その意味では実は平和は守るものというよりも取り戻すものだと僕は思います。安倍政権にいたる歴代自民党政権が良かったわけではけしてないことを反省的に捉えて、私たちは新たな歩みを強めなければならないと思うのです。


まず昨年末の総選挙について振り返ってみましょう。
選挙区の得票は自民2546、民主1192、維新432、公明77、共産704、次世代95、社民42、生活51でした。単位は「万票」です。
パーセンテージでは自民48.1、民主22.5、維新8.2、公明1.5、共産13.4、次世代1.8、社民0.8、生活1.0です。
議席数は自民222、民主38、維新11、公明9、共産1、次世代2、社民1、生活2です。
議席のパーセンテージは自民75.0、民主12.9、維新3.7、公明3.0、共産0.3、次世代0.6、社民0.3、生活0.6となっている。

こうして数字をしっかり見てみると、小選挙区制が明らかに民意と議席数が大きくずれている歪んだ制度であることがわかります。
自民党は約5割の票で75%、222議席の大量議席を獲っている。対して自民党の四分の一強の票を獲っている共産党の議席はなんと0.3%の1議席。これはあまりに酷い。
今かりにこの票を、比例区と同じように単純に票と議席を対比させていくと、本来は次のような議席数の方が民意に近いことが分かります。
自民142、民主66、維新24、公明4、共産40、次世代5、社民2、生活3。

さて民意がより直接に反映されやすい比例区についての得票を見てみましょう。
自民1766、民主976、維新838、公明731、共産606、次世代141、社民131、生活102でした。これも単位は「万票」です。
パーセンテージでは自民33.1、民主18.3、維新15.7、公明13.7、共産11.4、次世代2.7、社民2.5、生活1.9です。
議席数は自民68、民主35、維新30、公明26、共産20、次世代0、社民1、生活0でした。
議席のパーセンテージは、自民37.8、民主19.4、維新16.7、公明14.4、共産11.1、次世代0、社民0.5、生活0でした。
やや自民に有利であり、次世代と生活に議席があった方が良かったとは言えますが、概ね得票率と議席率が同等のレベルにあり、民意のストレートな反映が示されています。

選挙区と比例区を見て一目瞭然なのは、公明党がこの小選挙区制度の歪みを最もうまく活用して独自の位置を獲得していることです。
選挙区では自民党の得票は2546万票、しかし比例区では1766万票まで落ちてしまいます。差の780万もの票はどこにいってしまったのでしょうか。
反対に公明党は選挙区では77万票、比例区では731万票を獲得しています。その差は654万票です。ぴったりは符号しませんがこの選挙区と比例区の公明党票の差が自民党に流れ込んでいるのです。

そうなるといわば純粋な自民党の支持票は1766万票しかないことになる。33.1%です。
そもそも選挙の投票率そのものが戦後最低だった前回の59.32%をすら大きく下回る52.66%だったのですからこの二つの数字を掛け合わせて自民党の支持を割り出すと有権者のなんと17.4%でしかないことがわかります。
それで議席の四分の三を占有しているのです。実際には有権者の六分の一の得票で四分の三ですからあまりに民意との開きがあります。
すべてを比例区だけで見ることはできないかもしれませんが、ともあれ自民党を支持しなかった人は有権者のうちの少なく見積もっても8割にもなることを私たちはしっかりと見据えておくべきです。安倍政権が真の多数派なのでは絶対にありません。

同時につかんでおくべきことはこの選挙制度の中での公明党の戦略が、結果的に自民党の著しい劣化を生みだしているということです。
何せ約700万ぐらいとみられる票が、自民党に流れ込み、各議員にまわされるのです。議員たちがそれぞれで訴えていることなど関係なしにです。
議員にとってこの膨大な票を回してもらう相手は公明党ではなく、票をいわばまとめてもらう自民党執行部です。だから自民党の議員は必然的に有権者よりも自民党執行部の顔色だけを窺うようになる。当然、執行部批判などは論外です。

このことが党内における首相、党執行部の力を強烈なものにしているわけですが、そのことで自民党は実はまったくものを言えぬ党になってしまっている。ようするにもっとも独裁化と空洞化が進んでいるのは自民党内部なのです。
そのために安倍首相がどんなにひどい常識離れしたことを言ったり、嘘をつき続けても、諫めることができなくなってしまっている。諫めるどころかおべんちゃらを言った方が決定的に有利になってしまっている。だから「八紘一宇」発言なども飛び出す。
しかしそのことで自民党はどんどん脆弱化しているのです。選挙でも鍛えられないし、政策でも鍛えられない。おべんちゃら議員ばかりが増えてしまっているからです。

このため自民党はどんどん民意と離反しつつ、内部にも空洞化を抱えて、どうともならない構造にはまりつつあります。本質的にはまったく強くなどなっていない。むしろ戦後もっとも弱体化していることをみすえるべきです。
こんなときに思い起こされるのは次の言葉です。「陰極まって陽に転ず」・・・。あるいは「驕る平家は久しからず」・・・。道義的な正義性にまったく欠ける自民党、また現在の与党連合の支配はけして盤石ではありません。
あまりに非道であるために、必ずいつか崩れ始めます。しかも一度崩れ出したら、誰も支えようとはしないでしょう。そもそも支えるべき信念がないからです。このことを見据えて、私たちは民衆行動を強め、戦争政策と対決していけば良いのです。

続く

 

 

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明日に向けて(1057)東日本大震災と福島原発事故から4年、私たちは何をしなければいけないのか(中の2)

2015年03月21日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150321 23:30)

東日本大震災と福島原発事故からまる4年を経て、私たちは何をなさなければならないのか。
今回は連載の続きとして、四つ目の原発再稼働を許さず原発ゼロの道をめざすことについて論じます。

今、再稼働に向けて問題となっているのは鹿児島県の川内原発と福井県の高浜原発です。
先に規制庁の新基準規制に「合格」したのは川内原発でした。昨年9月のことです。この時、川内原発は今年度中、つまり3月末までには再稼働するのではと言われました。
ところがその後に、九州電力が原発の機器の設計図など工事計画と保安規定の補正書が提出できず、再稼働に向けた動きが鈍っていました。

このため遅れて新基準規制に通った高浜原発が、先に再稼働を実現するのではないかと言われましたが、その高浜原発に対して福井地裁に運転差し止めの仮処分申請が行われ、今月末にも差し止め決定が出されるのではないかと言われています。
高浜原発の再稼働も暗礁に乗り上げつつあります。仮処分申請は大津地裁でも、昨年、一度却下されたものの、今年になって再度申請されています。
これらについては「明日に向けて(1040)」で詳報したのでご覧いただきたいと思います。

 明日に向けて(1040)高浜原発再稼働阻止-原発事故から4年、脱原発行動をさらに盛り上げよう!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fdae6a4be0990078829942ec90785a21

さて新たな動きがありました。九州電力が難航していた工事計画書をようやく提出し、18日に規制庁によって認可されたのです。
このもとに実際の点検が始まり、九電は7月末に原子炉の制御棒を抜いて起動させ、8月下旬に営業運転を再開したいと述べています。
もちろんこれとても九電の見積もりであり、実際の点検の中でどのようなことが浮上するか分かりません。またこれまでもそうだったように私たち民衆の行動でまだまだ運転を阻む余地があります。

その際、重要なのは再稼働に向けた問題点を私たちがさらにしっかりと把握し大きく広げていくことです。
高浜原発についても、この一両日中に処分決定の期日が明らかにされ、運転差し止め命令が出される可能性が高いですが、そうであってもそうでなくても、やはり問題点をしっかりと把握しておく必要があります。
それが今後の、他の原発の再稼働の動きと対決する上での力にもなるからです。

この場合、大きく言って二つのポイントがあります。これは新規制基準の二つの側面でもあります。
一つは過酷事故を起こさないとする対策に合理性があるのかという技術的な側面ですが、端的に言ってどれも付け焼刃的な対応でとてもではないけれども安全が確保されたなどとは言えないものばかりです。
これらの点については、さまざまな方が指摘を行っていますが、中でも元東芝の格納容器設計者、後藤政志さんが繰り返し矛盾を具体的に指摘されていますのでぜひ注目して欲しいと思います。後日、詳報もお届けします。

今回指摘したいのは新規制基準の第二の点です。ここで規制委は端的に過酷事故・・・現在は重大事故と言い換えていますが・・・が防げない場合があると明言しています。
そもそもこれまでの規制の限界は、重大事故が起こらないものとしていてその対策がなかったことにあった、だから今回は、新たに重大事故が起こった場合を想定することにしたというのです。
ここには問題の重大なすり替えがあります。これまで政府と電力会社は、放射能が敷地内に大量に飛び出すような重大事故はあり得ないと語ってきたのです。その約束が破れたのだから、本来、それだけで原子力政策から徹底すべきなのです。

ところが重大事故を想定していなかったのが間違いだと開き直った。あってはならない重大事故があったのだから原子力政策を終わらせるべきであるところを、このように論旨をずらして延命しようとしているのです。
私たちはこの点に大きく注目し、重大事故を起こす可能性を前提としたものなど論外だということを何度でも声を大きくして訴えていく必要があります。
核心問題はここです。ここに政府と電力会社のとんでもない開き直りがあります。にもかかわらず、多くのマスコミがこの大事なポイントをスルーさせてしまっている。

原子力規制庁はこの点を新規制基準の中に盛り込ませたわけですが、これを3月3日から高浜町のケーブルテレビで流し始めたビデオで端的に語っています。
 高浜発電所に関する原子力規制委員会の審査概要について
 https://www.youtube.com/watch?v=azZk3mPHUrg

かなり驚くべき内容です。特に注目すべき点は以下のような内容です。

***

 新規制基準では事故の発生を防止する対策をもとめ、それでもなお重大事故の発生を想定し、「止める」対策、「冷やす」対策、「閉じ込める」対策、対策を幾重にも求めている。
 これらの対策により、福島第一原発事故のように放射性物質の大量放出に至るような事故の発生は極めて低いと考えられる。
 しかしこれで満足するのではなく、それでもなお放射性物質が敷地外に放出されるような事態になった場合を考え、さらなる対策として放射性物資の拡散をできるだけ抑える対策を求めている。
 審査では大容量ポンプで海水を大量に組み上げ、その水を放水砲で霧状に撒くことによって放出された放射性物質の拡散をできるだけ抑えるといった対策が備えられていることを確認した。

 新規制基準では安全追及のための思考を常に止めないことが重要という考えの下、重大事故の発生という想定をもさらに越えて、大規模な自然災害が発生したり、
 故意による大型航空機の衝突といったテロリズムによる発電所の大規模な損壊が発生した場合も考えて、体制や手順の整備を求めている。もちろんどんなものでも食い止めることができるというわけではない。
 しかし審査ではそのような厳しい状態になった場合でも、環境への放射性物質の放出を出来る限り低減するよう、必要な体制、対応手順を整備することを確認した。

***

ここに明らかなように、規制委員会は、重大事故を防止するための「止める」「冷やす」「閉じ込める」対策が突破された事態を明確に語っています。つまりそういうことがありうると認めているのです。その時の対策を考えたのだと言う。
しかも紹介した二つ目の段落では、「重大事故の発生という想定をもさらに越えて」というくだりが出てくる。その結果「発電所の大規模な損壊が発生した場合」も考えると言うのです。
その際、「もちろんどんなものでも食い止めることができるというわけではない」とすら述べています。

私たちはこの点をこそもっと大きくクローズアップし、全市民的な論議にかけなくてはいけない。
ちなみに「全国民」ではダメです!日本に住まうすべての人に論議に参加してもらう必要があるからです。
そもそも政治的なあらゆる側面において、この国で税金を払っている方には参加する権利があるからであるとともに、放射能はこの国に住まうすべての人々を襲うからでもあります。

その際、一番、問わなければならないのは、「発電所の大規模な損壊」・・・つまり福島事故と同規模、ないしそれをも大きく上回るような事故を起こす可能性のある発電所を動かしてまで電気が必要かどうかという点です。
もちろん問うまでもなく答えはでています。そんなものいるわけないのです。そもそも原発ゼロの今だって何も困ってなどないのすから。例え困っていようと福島原発事故を上回る可能性のあるものなど即刻廃止すべきなのは当たり前のことなのです。
にもかかわらず・・・ある意味では規制委がここまで露骨に本音を語っているにも関わらず・・・ここが焦点になっていないことこそがおかしい。

もう一度いいます。規制の新基準は「発電所の大規模な損壊」の可能性を前提したものなのです。
新基準を認めることはそれを受け入れることです。安全どころの話ではない。重大な危機を受け入れるということです。この点をもっともっとハイライトしなければいけません。とても容認できるものではありません。
私たちはこの点をこそ、大きく広げて、さらに再稼働反対の世論を大きくしていきましょう。

続く

 

 

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明日に向けて(1056)東日本大震災と福島原発事故から4年、私たちは何をしなければいけないのか(中)

2015年03月18日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150318 11:00)

東日本大震災と福島原発事故からまる4年を経て、私たちは何をなさなければならないのか。明日に向けて(1054)で以下の五点を列挙しました。

一つ。沿岸部の広く長い地域で大津波の被害からの立ち直りを進めること。
二つ。福島第一原発事故による放射能漏れに対して放射線防護活動を強化すること。
三つ。福島第一原発事故の真の収束を進め、並行して原発災害対策を進めること。
四つ。原発再稼働を許さず原発ゼロの道をめざすこと。
五つ。これらすべてと連動しつつ憲法9条と平和を守ること。

前回に続いて三~五の内容を論じて行きたいと思います。
まず福島第一原発事故の真の収束を進めることが私たちに問われています。もちろん収束を行う主体は今のところは東京電力です。
収束作業といってももちろん私たちが現場に関われるわけではありませんが、あれほどの事故に誰も責任をとらず、処罰もされず、今なお、事故隠しを繰り返している東電に作業を委ねているのはあまりに危険です。
そのために市民側からのウォッチを続ける必要があります。これはとても重要な点です。監視の目が光らなくなるほど、現場作業がいい加減になり、より深刻な放射能漏れが起こったり、大惨事に陥る可能性も高くなります。

ただこれまでも繰り返し指摘してきましたが、汚染水漏れなどをめぐって、後から後から「新たな事実」が提出されるため、ウォッチする側が麻痺してしまう感があります。
事実を丹念に追いかけてないと、何がどう問題なのかも分からなくなってくる。口を挟みにくくなってもきます。僕のように分析記事を書いているものにとってこの点はとても重要です。
そこで今回はポイントとなる点、何をどうみたら良いのかを示しておきたいと思います。

福島原発の現状については、東京新聞が毎月現状を図示してくれています。分かりやすい貴重な情報ですのでまずはこれをご紹介します。
 福島第一原発の現状(東京新聞)
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/

最も重要なのは、1号機から3号機の原子炉内の核燃料が、どれもメルトダウンして溶け落ちていて、大変な量の放射線を発していることです。人間が近づけばすぐに致死量に達してしまうほどです。
高線量の放射線はロボットも容易に壊してしまうため、溶け落ちた燃料がどこにどのような形状で存在しているのかすらはっきりつかめていない。コントロールする以前の状態なのです。
しかも放射能を閉じ込めるはずの格納容器が破損しているため、核燃料を冷却するために激しく汚染された水が、あちこちから漏れだして地下水と混ざり、どんどん出て行ってしまっている。汚染が拡大しているのだから、事故はまさしく継続中です。

原子炉の廃炉に向けては東電が「工程表」を作ってきましたが、あまりに予定と現実が食い違うため、原子力規制委員会が今春に「工程表」の書き直しを行いました。
そこでは従来の溶けた核燃料は何年に取り出しを開始する云々という項目が抜けてただひとこと、2019年までに原子炉格納容器の中を遠隔操作のロボットで把握するという。
なんと事故から8年経った時点を、やっと内部が把握できる時期としているのです。しかもそれとて所詮は絵に描いた餅。実際にそこまでいけるかどうかの補償はありません。

溶け落ちた核燃料の持つ放射能量は膨大です。事故で大気中に漏れたのは10分の1と言われてきましたが、今も毎日、大気中にも漏れだしているし、汚染水によって続々と海に運ばれています。
ただこの点のみがクローズアップされますが、何よりこの膨大な量の燃料が、安全管理されていないことが私たちにとっての大変な脅威です。
放射能を閉じ込めるはずの格納容器が壊れているためですが、そもそもどこがどう壊れているかも分かっていない。となるとこの先、さらに崩壊が進行して、核燃料が外に出てきてしまう可能性も濃厚です。

そのとき、どんなことが起こるのかが誰にも分からないのが一番、恐ろしいことです。
この点では実は福島第一原発事故は、原発の危険性を懸命に指摘してきた多くの良心的な科学者の想定をも大きく覆しました。誰もあのような形での事故の進展を予測できなかった。
もちろんそれはこれらの方たちの不備なのではまったくありません。原発事故が一度起こってしまえば、私たち人類の統御をまったく超えてしまうものであることを指し示したのです。

さらにその上、各炉に燃料プールがあり、たくさんの使用済み核燃料が入っている。これが私たちの眼前に大きな危機として存在しています。大地震と爆発でそれぞれの建屋が繰り返しダメージを受けているからです。
もっとも懸念された4号機には1500体以上が入っていましたが、これはさまざま困難を超えて、地上に降ろすことができました。4号機は運転していなかったので、これで危機は去りました。画期的な成果だと思います。
しかし1号機には392体、2号機に615体、3号機に566体、合計1573体もがまだ残っています。しかも4号機と違って、放射線量が高すぎるので、降ろす作業への取りかかりが容易ではないのです。

新たな工程表ではプールからの燃料取り出しについて、3号機は2017年以降に、1号機は2019年以降に完了と書き込まれましたが、2号機は時期すら示されませんでした。
大地震などによる建屋の倒壊が懸念されており、誰よりも東電自身が一刻も早く燃料を降ろしたいと思っていると思いますが、その時期の展望がこのような状態なのです。
順調にいっても、東京オリンピックを予定している2020年でもまだ2号機の燃料が残っている可能性があるし、これまでなんども工程が繰り延べになってきたことをみても、3号機、1号機がこの見込みどうりにいくかどうか怪しい。

非常に重要な点は、状態そのものが分からない膨大なメルトダウンした核燃料と、危険であることが分かりながら、降ろすことのできない使用済み核燃料の恐ろしい量が、私たちの目の前にあることです。
にも関わらずこの巨大な危機がクローズアップされていません。これまで繰り返し述べてきた、危機を認めまいとする「正常性バイアス」がこの国全体にかかってしまっていて、危機がきちんと認識されていないのです。
僕はこの点がまた私たちの危機を強めてしまっていると思います。私たちの国が壊滅する危険性がまだ目の前に残っていることを見据えずして、合理的な対応が進むとはとても思えないからです。

では危機と危機として認識するためには何が必要なのか。福島第一原発が危機に瀕した事態を想定した避難訓練の実施です。東北・関東を中心に広域で行う必要があります。
同じことは他の原発や核施設でも言えることです。放射能量で言えば最も恐ろしいのは六ヶ所村に貯められた膨大な量の核燃料です。それが沈められたプールが自然災害で破損した場合も、少なくとも東日本が壊滅する可能性があります。
各原発にもそれぞれに燃料プールがあります。これらも乾式貯蔵などに一刻も早く移していく必要がありますが、その完了まで避難の準備をとり続けていく必要があります。

まとめます。

私たちが今しなければならないのは、福島第一原発事故の収束が少しでも安全に、合理的に進むように、市民側からのウオッチを継続していくことです。
その中には作業されている方たちの労働環境を守ることも含みます。現場で作業中の死亡事故も起こっていることを踏まえて、あらゆる角度から光を当てていく必要があります。
事故の隠蔽体質が強く、自分たちの逃げ口上ばかりを探している東電の体質をしっかりと見据えて、この作業を継続していきましょう。

当時に、福島第一原発が現状で抱えている大変な危険性への共通認識を何度も作り出していくことです。そのためにも各種のレベルでの避難訓練に取り組みこと、これと連動しつつ全国で核施設の事故を想定した訓練を行うことです。
危険性の認知と避難訓練の実施は対のものとしてあります。人には「正常性バイアス」が働くメカニズムがあるので、どうしても危機の強調だけではそれを受け取れない傾向性があります。
危機への対処法、命を長らえる処方箋、あるいは危機に臨んでの選択肢が示されてこそ、危機を受け取り、いざという時の準備を始めることができるのです。そのために避難訓練は有効です。まずは市民レベルで初めて下さい。

こうした取り組みは、核施設の抱える危険性をさらにクローズアップすることになり、だからこそそれと向き合って作業している人々。放射線を浴びながら必死の作業をしている方たちに光を当てることにもつながります。
僕はそれが現場作業を少しでも向上させることにつながると思っています。なぜか。安倍首相の原発はコントロールされているという大嘘で、何より、現場の方達の労苦が著しく落とし込められてきているからです。
コントロールできないからこそ、現場は壮絶な苦労を重ねているのです。それを社会がもっと強く受け止めていく必要があります。それが現場を支えるからです。その意味で避難訓練は二重三重の効果を持っています。

私たちの前にある危機をしっかりと見据え、勇気を持ってこれに立ち向かっていきましょう!

続く

 

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明日に向けて(1055)高浜原発再稼働が福井地裁に禁止される可能性濃厚!再稼働反対の声をさらに高めよう!

2015年03月14日 10時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150314 10:00)

本日14日と明日15日も全国で脱原発集会、企画が予定されています。
ぜひ身近なところで行われる企画にご参加いただきたいと思いますが、その際、ぜひ知っておいていただきたいのは、高浜原発をめぐって福井地裁が運転禁止処分決定を出す可能性が高まっていることです。
この報はすでに各地の集会で説明されていますが、井戸弁護士より滋賀県で原発反対を掲げる人々のMLに詳報が投稿されました。情報を拡散して欲しいとのことですので、この場にも転載させていただくことにしました。

ポイントはこの「大飯3、4号、高浜3、4号運転禁止仮処分事件」の裁判長を、昨年5月に画期的な大飯原発運転禁止の判決を出した福井地裁樋口裁判長が担っていることです。
樋口裁判長は3月末で退任されるのですが、高浜原発に関しては自身の任期内に決定を下そうと3月11日に第2回審尋で審尋を集結させました。
関西電力側の処分決定引き伸ばし戦術を一蹴してのものです。決定期日は3月26日か27日ではないかと予測されています。(5日前にまでに通知されます)

再び原発再稼働禁止が言い渡される可能性が高いです。実現すれば市民と司法の力によって、原発を止める画期的な事柄となります。
昨年の福井判決の場合、控訴されれば確定が遮断され、直ちに原発の運転を差し止める効果には至りませんが、仮処分決定は直ちに効果が発生し、高浜原発の再稼働が食い止められることになります。
こうなれば関西電力は「地元」の合意を取り付けても、再稼働ができません。

一方でこの情報を耳にして、原発再稼働容認に動いていた高浜町議会議長が、朝日新聞の取材に対し「司法の判断にまったく影響を受けないことはない」と答えたと報じられています。
この点も極めて重要です。高浜に限らず、再稼働をめぐって「地元」との新たな討論を深める余地が広がるからです。
原発立地自治体は日本の歪んだ政策の矛盾を押し付けられてきた地域です。仕事などでがんじがらめにされてもいます。そうした地域の人々と原発のない未来に向けてぜひ討論を深めていきたいです。

私たちがしっかり認識しておくべきことは、司法が原発再稼働に厳しい視点を持つようになったのは、福島原発事故そのものの影響とともに、日本中で巻き起こっている原発反対の声の高まりによるものだということです。
この力のもとにようやく司法の流れも変わりつつあります。私たちの命を守るための切実な声が司法界を揺り動かしつつあるのです。このもとで大飯原発運転禁止命令に続き、高浜原発にも運転禁止が言い渡されようとしています。
このことに踏まえて、「原発再稼働反対」の声をより高く上げましょう!民衆の力による原発ゼロ社会実現の可能性をさらに広げて行きましょう!

以下、弁護士の井戸さんが滋賀のMLに流されたメールを転載します。
末尾に、朝日新聞の報道記事も貼り付けておきます。

*****

井戸です。
情報提供です。

本日(3月11日)福井地裁で、大飯3、4号、高浜3,4号運転禁止仮処分事件の審尋期日がありました。
担当の樋口裁判長は、3月一杯で福井地裁から転勤します。
私たち申立人側は、樋口裁判長に決定を出してほしいため、本日の期日で審理を終えることを希望していました。
他方、関西電力は、直前になって、基準地震動の問題及び使用済み燃料ピットの安全性の問題について専門家の意見書を出すので、その機会を与えるように求めました。
目的が、審理を引き延ばして樋口裁判長に決定を出させないことにあるのは明らかです。

これに対する樋口裁判長の判断は、次のとおりです。
① 高浜3、4号については、設置変更許可が出ており、保全の必要性が認められる。
既に機は熟しているので、決定をする(本日で審理を終結し、今の裁判体で決定するとの意味)。
決定をする期日は、決まったら、その5日前までに双方に告知する。

② 大飯3、4号については、審理を続行する。次回期日は5月20日

関西電力の代理人は、「我々に専門家の意見書提出の機会を与えないということか」と気色ばみ、3人の裁判官に対し、裁判官忌避の申立てをしました。

市民の側が裁判官忌避を申し立てるのは珍しくありません(大津地裁でもしました)が、大会社が申し立てるのは極めて珍しいと思います。
それだけ関電が追い詰められているということです。
この裁判官忌避の申立ては、訴訟指揮に対する不服ですから、認められる余地はありません。
したがって、今月末には、高浜3、4号機の運転を差し止める仮処分決定が出る可能性が極めて高くなりました。
昨年の福井地裁判決のように、本裁判に対する判決は、控訴されれば確定が遮断されますから、直ちに原発の運転を差し止める効果は発生しません。
しかし、仮処分決定は、直ちに効果が発生します。
関電は、原子力規制委員会からすべての認可をとり、地元自治体の同意を得ても、再稼働できなくなるのです。

市民と司法の力によって、原発の運転を現実に差し止める。
その歴史的な事態が今月末に実現しそうです。
原告団、弁護団では、決定告知の日、多くの人に福井地裁前に集まってほしいと思っています。
そして、多くの市民が、福井地裁の決定に喜び、裁判官に敬意を表し、差止め決定を支持しているいうことを全国に示したいと思います。

そのXデーは、3月26日か27日が可能性が高いのではないかと思っています。
期日の告知があれば、このMLで直ちに流しますので、是非、滋賀県からも、多くの市民が福井地裁に駆けつけてほしいと思います。

とりあえず、滋賀県の原発に反対する市民団体が一番たくさん参加していると思われるこのMLに情報提供しました。
それぞれの方が、つながりのある市民、市民団体にこの情報を流していただけたら幸いです。

〒522-0043
滋賀県彦根市小泉町78-14澤ビル2階
井戸謙一法律事務所
弁護士 井 戸 謙 一
℡0749-21-2460 Fax0749-21-2461

*****

福井)高浜原発の再稼働差し止め訴訟 地裁が結審
朝日新聞 小川詩織、山田理恵 大久保直樹 2015年3月12日03時00分
http://digital.asahi.com/articles/ASH3C5KB0H3CPGJB00Q.html?_requesturl=articles%2FASH3C5KB0H3CPGJB00Q.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASH3C5KB0H3CPGJB00Q

関西電力高浜、大飯両原発3、4号機の地元住民らが福井地裁に再稼働差し止めを求めた仮処分の第2回審尋が11日、福井地裁であった。
樋口英明裁判長は、高浜については「緊急性」を認めて審尋を終結させた。住民側弁護団は会見で「仮処分申請が却下される理由が見当たらない」と再稼働阻止に自信と期待を膨らませた。

関電側は「争点が多岐にわたり、専門性が高い。仮処分の判断が多方面に影響を及ぼす事案である」として、慎重な審理を求めてきた。しかし、住民側弁護団によると、樋口裁判長は高浜原発3、4号機について「機は熟した」と述べ、結審を告げたという。

樋口裁判長は昨年5月の福井地裁判決で、大飯3、4号機の運転差し止めを命じる判決を指揮しており、住民側弁護団は、今月中にも高浜3、4号機の再稼働を禁じる仮処分を決定する可能性が高いとみている。

申し立てた住民の一人で坂井市の松田正さん(65)は「大きな山を超えた。記念の日になった」。大阪府高槻市の水戸喜世子さん(79)は「福島の事故は何一つ終わっていない。再稼働はあり得ず、頼るのは司法しかない」と期待を込めた。
元金沢地裁裁判長で北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを命じた井戸謙一弁護士(60)は「一般的には、裁判官は負担が大きい判断はしたがらず、決定が延びることもある。樋口裁判長の職務を全うする責任感に感動した」と話した。

住民側弁護団は、関電側が樋口裁判長ら3人の裁判官の交代を求める「忌避(きひ)」を申し立てたことを「大企業が裁判官の忌避を申し立てるのは異例。追い詰められていることがはっきりした」と指摘。
弁護団共同代表の河合弘之弁護士(70)は「私たちの希望が目の前に近づいている。明るい思いだ」と話した。

一方、大飯3、4号機については審理を継続し、5月20日午後3時から第3回審尋がある。(小川詩織、山田理恵)

■町議会の判断に影響あると認識 高浜町議会議長

福井地裁で高浜原発3、4号機の再稼働差し止め仮処分の審尋が打ち切られ、月内にも再稼働を禁じる仮処分が決定される可能性が出てきたことを受け、高浜町議会の的場輝夫議長は11日、朝日新聞などの取材に対し
「司法の判断にまったく影響を受けないことはない」と話し、再稼働を巡る議会判断に一定の影響が出るとの認識を示した。

的場議長は20日の町議会全員協議会で再稼働の同意について議長の考え方を示し、議会の最終判断をとりまとめる意向を示していた。
しかし、「(司法判断が)20日までに出ていれば議長の判断に織り込みたい。出ていない場合は議長の判断に含めず、議員に諮りたい」と戸惑いを見せた。

高浜町議会は今月、高浜原発3、4号機の速やかな再稼働を求める意見書を可決し、政府に提出している。(大久保直樹)

 

 

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