明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1394)浜岡原発は再稼働させないだけでなく廃炉にして早く安全化すべきだ!(牧之原市、静岡市でお話しします)

2017年06月30日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170630 23:30)

 
明日より静岡県に行ってきます。1日牧之原市、2日静岡市でお話しします。お近くの方、ぜひお越し下さい。
さてその静岡県では6月25日に知事選の投開票が行われ、現職の川勝平太氏が三選を果たしましたが、27日にその新知事が浜岡原発再稼働について「今後四年間に中電から同意を求められても同意しない」との意向を明らかにしました。
何はともあれ浜岡原発再稼働反対を表明された知事の姿勢に拍手を送りたいと思います。中日新聞の記事を示しておきます。
 
川勝知事 浜岡再稼働の不同意明言
中日新聞 2017年6月28日
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20170628/CK2017062802000100.html
 
しかしただ再稼働させないだけでは足りません。廃炉を決定するとともに危険な燃料プールから核燃料を降ろしてより安全な管理に移行することを進める必要があります。
これは全国の原発で言えることですが、とくに浜岡原発の廃炉化と安全化を急ぐべき理由は、ここが南海トラフ地震の被災予想地域に位置しているからです。とてつもない危険性があります。
 
静岡の両市でもぜひお話ししたいですが、私たちは迫り来る南海トラフ地震の恐ろしさをきちんと把握し、備えておかなければなりません。
この地震はいつかやってくることが確実視されている地震です。それもマグニチュード8クラスの地震が起きる確率が、今後30年以内で60~70%、10年以内だと20%程度、20年以内で40~50%。 50年以内だと90%程度以上と予測されています。
ともあれ「何時かは壊滅的なことが起こる」と考えて、何重にも構えておく必要があるのです。そのための重要な一歩が、浜岡原発をできるだけ安全な状態にしておくことです。再稼働など論外。それより燃料プールの核燃料を早く安全な状態にしなければ。

「明日に向けて」では(1381)で、岩波新書『南海トラフ地震』の書評の形で少しだけこの災害に触れましたが、今回はもう少し浜岡原発との関係でこの地震のことを見ておきたいと思います。
南海トラフ地震の恐ろしさは一つに震源域が極めて長いことがあります。静岡県沖の駿河湾から四国沖、九州の近くまで続いている。これがいっぺんに動くと太平洋沿岸部が何百キロにもわたって被災してしまう可能性があります。
この際、東日本大震災との顕著な差があります。地震の起こりうる「トラフ」がより沿岸に近いところにあるため、一度、大地震が起こると、東日本大震災よりはるかに早く津波が押し寄せてくるのです。
最短が予測される駿河湾では3分とも言われています。四国の徳島沿岸部で20数分です。このため地震が起こってからの逃げ出す余裕がはるかに少ない。
 
社会的にも大きな差異があります。被災予測地域が長く、人口密集地帯が多いため、きわめて被災者が多くなってしまうことです。
被災した側と助ける側の人口比でみてみると、東日本大震災では、被災者980万人を残りの1億1700万人が助ける関係になりました。割合で言うと1対12でした。
これに対して南海トラフ地震の想定被災者は3500万人。これをまだ傷の癒えていない東北の人々も含めた9200万人が助けなければならないのです。2対5の割合です。大変なことです。

どうしても火事も発生するでしょうし、土砂災害も併発するでしょう。あの東日本大震災のときとて、各地に陸の孤島が現出し、なかなか助けが届かない地域があったわけで、南海トラフ地震はこれを大きく上回る可能性があります。
より長期の停電も起こるでしょうし、物資の停滞や遅配も起こるでしょう。各被災地は、当面は助けが来ないことを覚悟し、自力で命を長らえなければならないでしょう。
そんな時に浜岡原発が致命的な被災をして危機に陥ってしまったらどうなるでしょうか?当然にも福島原発事故のときよりも圧倒的に少ない人員と機材で対応しなければならなくなるでしょう。事故の悪化を防げる可能性も圧倒的に少ないのです。
しかもそれで大量の放射能が飛び出してきてしまった場合、人々の逃げる力もかなり弱まっているでしょう。だからそんなリスク、今のうちに「とっとと」なくしてしまう以外ないのです!これは国防上の第一要件です。

単純な道理ですが、南海トラフ地震は避けることができません。私たちはまだまだ自然の猛威に対して大変非力です。しかし原発は廃炉にしてしまうことができるのです。
燃料棒の処理はやっかいでなかなか完全な安全化はできませんが、しかし原発サイトの燃料プールにいれてあるよりはよりましな管理の仕方はありえます。

いやそれだけではない。南海トラフ地震に対して、備えを厚くすることは他にも幾らでもできます。中でも重要なのは自衛隊の災害救助隊への改編を急ぐことです!
イージス艦なんかいらない!ジェット戦闘機もいらない!戦車もミサイルも長距離砲もいりません。そんなもの、災害に対して何の役にも立ちやしない。
そうではなくて、隊員に命の守り方、助け方、救い方の教え、救助訓練を繰り返し、その上で災害対策に特化した特殊車両を増やし、現代科学技術の粋を尽くしていざというときに備えるのです。

いや東日本大震災でだって、熊本地震でだって、すでに「いざ」という時は何度も来ているのです。あのときに自衛隊が災害救助隊に再編されていたら、もっとたくさんの人を救えたでしょう。
何も自衛隊でなくたっていい。国や地方行政の予算をもっと災害対策に振っていれば、それでもより多くの人が助けられたでしょう。もっともっとやっておくべきことはあったはずです。
それを考えた時に、本当にいまは東京オリンピックなんてやっている場合ではないのです。それよりももっと真剣に災害対策を進めないといけない。
そもそも福島の現場だってまだ事故収束していないのです。膨大な被災者がこの国をさまよっているのです。なにより被曝防護をもっとしっかりと進めなくてはいけない。

私たちは福島原発事故の教訓からも、自然災害の猛威の中からも、このことにこそ覚醒しなくてはいけません。
地球的規模の気候変動すらある中で、自然災害にも人工災害にも対処し、備え続けるためにこそ、最大の資源を投入しなくてはなりません。それがなくて「国防」など成り立ちようがありません。

さてその南海トラフ地震について、私たちは和歌山県最南端の潮岬を「分水嶺」にしばしば二つに分かれて襲来したことを知っておく必要があります。
この地震は記録の残る西暦684年の白鳳地震以降、およそ100〜200年おきに大きな揺れが繰り返されて来ましたが、その場合、東と西が同時に動く場合もあれば、1日から2年ぐらいの間で双方が動く場合もあり、さらにどちらかだけにとどまったこともあります。
しかも地殻の大きな変動が起こるため、揺り戻す形での地殻変動である余効変動という動きもあり、このときは直下型の大きな地震が起こっています。

近年では江戸時代末期、1854年12月23日に安政東海地震が起こり、翌日24日に安政南海地震が起こっています。それぞれ潮岬の東と西が1日おいて動いたのです。
さらに太平洋戦争末期の1944年12月7日に昭和東海地震が起こり、それから2年経った1946年12月21日に昭和南海地震が起きています。
この昭和の東南海地震の間の1945年1月13日に余効変動としての三河地震が起きています。このとき現在の蒲郡市にある宗徳寺では本堂の隣にあったお堂に続く裏山が1.5メートルも隆起してしまいました。今も本堂とお堂の高低差をみることができます。
これらから学んでおくべきことは、南海トラフ地震はいっぺんに破局的に動くこともあれば、東と西に分かれ、その間に直下型の地震も伴って襲ってくることもありうることです。

これら幾つかのパターンを予測し、例えば片方が動いたら、もう片方は少なくとも数年間はあらかじめ避難できる人は避難しておくとか、危険なものはなんでも停止しておくとか、危ないものの蓄積をしないとか、さまざまな対処が考えられます。
最低でも片方が動いたならば、その近くに自衛隊を災害救助隊に改編して駐屯させておくとよいでしょう。その間に余効変動がありうることにも十分な警戒をしつつです。
とにかくこの時期は、被災しうる人口をできるだけ少なくしておくこと、反対に助けられる側の人口をできるだけ多くし、助けるための手段を増やしておくことが必要です。

これらを考えるならば、つまり南海トラフ地震による被災の巨大さ、被災人口の多さを考えるならば、とにかく早く浜岡原発はなくしてしまわなくてはいけない。
そもそも原発をなくしてすら、昭和の南海トラフ地震と比較したときに、石油コンビナートを始め、一度、壊れたら大災害に発展する現代構築物が無数にあります。
私たちはこれらの点も含めて、「浜岡原発を再稼働させないのは当たり前。早く廃炉にして安全化させよう」と声を上げていく必要があります。

続く

*****
 
原子力防災学習会
原発から50キロの兵庫県篠山市はどのように問題意識を共有していったのか?
 
講師 守田敏也氏
7月1日(土) 13:30〜15:00
会場 牧之原市さざんか
入場 無料・申し込み不要
15:15より懇親会を行います。参加費500円
 
主催:浜岡原発を考える牧之原市民の会
連絡:柴本08052957196 山崎0548522187
後援:牧之原市
 
*****
 
『原発からの命の守り方』 
~福島の教訓から学び、明日の暮らしにつなげる一歩へ~ 
守田敏也さん講演会 

日時:7月2日(日)13:00~16:00 
場所:静岡市労政会館(3 F )ロッキーセンター 
講師:守田敏也さん
参加費:当日1,000円 前売り800円 学生500円 
チケットは下記賛同団体まで、賛同団体はFBページに随時追加していきます。
キッズスペースあり(要予約) 
連絡先 :09092479731 (山田) 09039546563 (小笠原) 

主催:静岡市「守田敏也講演会」実行委員会 
賛同団体:保険医協会・自治労連・静岡YWCA・311を忘れない in 静岡・原発なくす会静岡・再稼働反対アクション@静岡・広域避難を考える県東部実行委員会 

FBページ 静岡市『守田敏也講演会』実行委員会 
https://www.facebook.com/morita.toshiya.kouenkai.shizuoka/
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明日に向けて(1393)牧之原市に安定ヨウ素剤事前配布の全市化を実現して欲しい!(牧之原市、静岡市でお話しします)

2017年06月29日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)
守田です。(20170329 11:00)
 
前回の続きです。牧之原市が市民向けに出したパンフレットを再度、ご紹介します。
 
「これからのエネルギーについて考えよう」
牧之原市 政策恊働部企画課
 
全体として説得力のある素晴しい内容になっており、幾つも大切な論点があるのですが、僕がこの中ではっとしたのは、牧之原市が各原発から30キロ、50キロ圏の人口を示し、この点では浜岡原発周辺人口が最も多いことを訴えていることです。
幾つかの原発を選んでの記述ですが、先ほどのPAZの人口だけでは見えてなかった、危険性にさらされたより広範な地域の人口が見えてくるので貴重です。以下、列挙します。(同パンフレット14ページ)
泊=30キロ8万人・50キロ24万人、柏崎刈羽=30キロ44万人・50キロ113万人、福島第一=30キロ15万人・50キロ58万人、東海第二=30キロ93万人・50キロ149万人
浜岡=30キロ74万人・50キロ214万人、大飯=30キロ14万人・50キロ45万人、玄海=30キロ25万人・50キロ139万人
 
この指摘はなかなか鋭い!5キロ圏だと約8万人とダントツの人口を抱える東海第二原発でも、30キロ圏では93万人といまだトップですが(浜岡は74万人)、50キロ圏となると149万人で、この点では浜岡原発の方が214万人と大幅に多くなるのです。
福島原発事故後に長い間、全村避難を続けて来た福島県飯舘村が、福島原発から30キロから47キロに位置していることを考えても、これはとても重要な指摘です。ひとたび事故が起こるとより多くの人々が被ばくしうるのが浜岡原発なのです。
もちろん事故の被害は50キロですら軽々と越えてしまう可能性があります。福島原発事故とて本来、政府が避難指示をだすべきところに出さなかっただけで、もっと広域の避難が必要だったし、今も必要なのですから。
 
一方で同パンフレットでは、牧之原市が「電源立地地域対策交付金」を受けて来たことも丁寧に明らかにしています。
それによると交付対象は御前崎市(旧浜岡町・旧御前崎町)、牧之原市(旧相良町)、掛川市(旧大東町)、菊川市(旧小笠町)で、1〜5号機での総額はなんと381億3451万6千円。
牧之原市はその17.8%の67億7220万3千円を受け取っています。それで保健センター、給食センター、温泉会館、コンサートホールなどが建てられ、道路整備や上水道配水管布設も行われて来たことが記されています。(同12ページ)
 
これらも記した上で、しかし「東北地方太平洋地震は想定外の地震津波というけれど‥欧米では、地震の発生する地域には原発を造らないのが原則です」ときちんと主張されています。(同13ページ)
また使用済み燃料問題についても解説した上で、後半で「これからのエネルギー」について考えることを市民に問いかけており、代替エネルギーの可能性なども指摘しています。
その上で「あなたは、福島原発事故後のエネルギーを、浜岡原子力発電所の今後をどう考えますか?」という問いかけでパンフレットを結んでいます。対話的な姿勢が光ります。
 
牧之原市はその後もこうした姿勢を維持。2016年9月からは浜岡原発に関する対話的なワークショップも設定し、4回にわたって開催しました。
これを発表した同年6月の市議会定例会で西原市長は次のように述べています。
「再稼働に関する議論が電力会社や住民を含めてなされることを期待している。賛否両方の意見を出し合う場にしたい」。以下、静岡新聞の記事を示しておきます。
 

浜岡原発巡り「対話」を 牧之原市、ワークショップ開催へ

静岡新聞 2016年6月17日
 
ワークショップは「牧之原市のくらしとエネルギーを考える」意見交換会と命名され、終了後にホームページで内容が紹介されました。以下、報告ページを示しておきます。
http://www.city.makinohara.shizuoka.jp/bg/shisei/ent/8942.html
 
同時に牧之原市は昨年9月15日に静岡県に対して、安定ヨウ素剤の事前配布を5キロ圏内にとどめず、同31キロ圏内の「緊急防護措置区域(UPZ)」にまで広げることを求めた要望書を提出しました。
要望書では「緊急避難時、UPZ圏内の住民に安定ヨウ素剤の迅速かつ効果的な配布は困難と予測される」として市内全域への配布を求めるとともに、「より簡易な方法」での配布を可能にすることも求めました。以下、静岡新聞の記事を示します。
 

ヨウ素剤「31キロ圏も事前配布を」 牧之原市、静岡県に要望

静岡新聞 2016年9月15日

牧之原市はこれらを進めながら、2016年10月から11月にかけて5キロ圏内での安定ヨウ素剤事前配布を実現しましたが、対象13600人に対して69.7%の配布率であったことを後に発表しています。
浜岡原発が建っている御前崎市で、ほぼ同時期の配布で60.8%、牧之原市はこれを大きく上回る実績を残しました。これらもまた牧之原市の一貫した対話重視の姿勢の中で実現されたことだと思われます。
牧之原市はその後も市民の意識調査等を実施。2017年5月25日の市議会常任委員会合同協議会の席上で、浜岡原発の今後を尋ねる市民アンケートで「停止しておいた方が良い」に51.6%の賛意が得られたことを発表しています。
「浜岡原発の安全性が確認できれば稼働した方が良い」は21.0%、「どちらとも言えない」は17.9%、「分からない」が5.7%だったそうです。
 
以上、牧之原市の取組を見てきましたが、一方で危険な浜岡原発再稼働に反対する姿勢を鮮明にしつつ、しかし一方で市民に対話的姿勢を示しつつ、市民とともに歩む姿勢はとても素晴しいと思いました。
同時にこうした対話的姿勢は、それを引き出して来たであろう市民の存在も大きく感じさせてくれました。行政の側だけが優れているのではなく、市民の側からも行政を育てて来たアプローチがあったのではないかと思えます。
牧之原の市民のみなさん、市役所のみなさん、市議会議員さん、市長さんの先進的な取組に拍手を送りたいと思います。
 
さてその牧之原市に呼んでいただけるのは何とも光栄なのですが、僕としてはやはり「とっとと逃げる」ことを基軸として、原子力災害対策をより前に進めていただきたいと思います。
同時に牧之原市がここまで来ているのであれば、ぜひとも5キロ圏だけでなく、ヨウ素剤事前配布を全市へと広げていただきたいと思います。これらを講演で呼びかけます。
いまのところ同市がそこまで踏み込んでいないのは「UPZの町が足並みを揃えた方が良い」との判断からのようですが、しかしすでに川内、伊方、高浜と再稼働が強行されており、足並みを揃えるための時間的余裕がないのも事実です。
いまはできるところからどんどん安定ヨウ素剤の事前配布を拡大していき、その中で「原発とは何か、原発事故とは何か、原発から命を守るために何が必要なのか」という議論を、全国的に拡大していくことが問われています。
ぜひ牧之原市のみなさんにそうした議論の先鞭をつけていただきたいと思いますし、僕自身も喜んで一緒に担いたいと思います。
 
牧之原市での1日、熱くなりそうです!みなさま、ぜひご参加ください。
翌日、静岡市でも熱気を引き継ぎますので、そちらにもぜひご参加を!
 
*****
 
原子力防災学習会
原発から50キロの兵庫県篠山市はどのように問題意識を共有していったのか?
 
講師 守田敏也氏
7月1日(土) 13:30〜15:00
会場 牧之原市さざんか
入場 無料・申し込み不要
15:15より懇親会を行います。参加費500円
 
主催:浜岡原発を考える牧之原市民の会
連絡:柴本08052957196 山崎0548522187
後援:牧之原市
 
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『原発からの命の守り方』 
~福島の教訓から学び、明日の暮らしにつなげる一歩へ~ 
守田敏也さん講演会 

日時:7月2日(日)13:00~16:00 
場所:静岡市労政会館(3 F )ロッキーセンター 
講師:守田敏也さん
参加費:当日1,000円 前売り800円 学生500円 
チケットは下記賛同団体まで、賛同団体はFBページに随時追加していきます。
キッズスペースあり(要予約) 
連絡先 :09092479731 (山田) 09039546563 (小笠原) 

主催:静岡市「守田敏也講演会」実行委員会 
賛同団体:保険医協会・自治労連・静岡YWCA・311を忘れない in 静岡・原発なくす会静岡・再稼働反対アクション@静岡・広域避難を考える県東部実行委員会 

FBページ 静岡市『守田敏也講演会』実行委員会 
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明日に向けて(1392)浜岡原発再稼働に反対して(7月1日牧之原市でお話しします)

2017年06月28日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)
守田です。(20170628 23:30)
 
7月1日に静岡県牧之原市、2日に静岡市でお話しすることになりました。
このため牧之原市のことをいろいろと調べていましたが、同市がこれまでとても先進的に原発再稼働反対の旗を掲げて、さまざまに奮闘して来たことが分かり、胸を打たれました。
訪問を前にしてこの点をまとめたいと思います。
 
牧之原市は浜岡原発が立地している御前崎市の東隣にある町です。御前崎岬から東側、焼津市や静岡市に向かう海岸線を形成しています。
浜岡原発のそばにもたくさんの人が住んでいて、5キロ圏内の人口は14061人です。(2014年4月1日現在)
ちなみに御前崎市の5キロ圏内人口は34273人。合計で48334人が浜岡原発から5キロ圏内に生活していることになります。非常に多いです。
 
日本の原発で直近に最もたくさん人が住んでいるのは茨城県の東海第二原発です。
立地している東海村の約37000人の他、日立市、ひたちなか市、那珂市など約8万人が暮らしています。
浜岡原発周囲はこれに次ぐ人口を抱えていることになります。さらにこれに次ぐのは柏崎刈羽原発でここは5キロ圏内に25073人(2014年度資料より)が住んでいます。
 
ちなみに稼働中の原発から5キロ圏内の人口を見てみると以下のごとしです。
川内原発は薩摩川内市に4902人が住んでおり(2014年4月1日現在)、伊方原発は伊方町に5496人が住んでおり(2015年4月1日現在)、高浜原発は高浜町8165人、舞鶴市641人、合計8806人(2014年4月1日現在)が住んでいます。
これらもとても多い。事故時に最も危険な地帯にこれだけの方が住まわれていることに胸が痛みますが、比較してみると東海第二原発と浜岡原発が突出していることが分かります。
 
しかも浜岡原発はかなりの確率ですぐにもやってくると言われている東海地震や南海トラフ地震の震源域に建っておりその点からもとても恐ろしい。
このため2011年5月6日に時の民主党の管政権が運転停止を中部電力に要請。9日に同電力が受け入れ表明をして14日に運転中だった4号機と5号機が止められました。政府の要請で運転を止めた今のところ唯一の原発です。
 
その浜岡原発には5基の原発があり、6基目が計画されていました。このうち1号機と2号機は2009年1月30日に運転終了し、廃炉が決定されています。
3号機は2010年11月29日より定期検査中で、福島原発事故後もそのまま止められています。4、5号機は上述のように2011年5月14日より停まっています。すでに6年が経過しています。
浜岡原発はすべて沸騰水型。廃炉になった1、2号機はマーク1型、3、4号機はマークⅠ改型、5号機は改良型沸騰水型(ABWR)で、いずれも原子炉を東芝が、タービンを日立製作所が作成しました。
 
端的に言って、ほとんど福島第一原発と同じように作られて来ていますから、他の原発にも増して、福島事故の検証が終るまでは再稼働すべきでないのは言うまでもないことです。
同時に検証がまだまだ長くかかることを考えれば、それが終った時にはあまりにも長く停めすぎたことになるためもはや動かすのは無理でしょう。いやそもそも現時点でも6年以上停まっていますから、もはや動かすのはそれだけでも危険です。
日本中のすべての原発を再稼働させるべきではありませんが、東海地震、南海トラフ地震の可能性も考えて、絶対に稼働させてはいけないのが浜岡原発であることは間違いありません。
 
さてこの原発に対して、5キロ圏内に約14000人が住む牧之原市は、福島原発事故後にこうした浜岡原発の危険性にはっきりと目覚め、市長と議会が一体となって再稼働反対を唱えて来ています。
まず2011年9月26日に牧之原市議会が浜岡原発に対して「確実な安全・安心が将来にわたって担保されない限り、永久停止にすべきである」とする議決案を可決しました。
このとき西原茂樹市長が議場で「市民の安心・安全のため、永久停止は譲れないと強調したい」と発言されています。西原市長はいま(2017年6月末)でも現職にあります。

浜岡原発「永久停止」を決議 静岡・牧之原市議会
朝日新聞2011年9月27日
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201109260134.html
 
この牧之原市の姿勢はすぐに周辺自治体にも波及しました。
同じく9月に菊川市議会が浜岡原発再稼働を認めないように求める意見賞を可決。12月に吉田町議会が浜岡原発の廃炉を求める決議を可決。
掛川市議会も浜岡原発の安心安全が満たされない限り再稼働をしないとする意見書を可決。これらにより浜岡が動かせないことが決定付けられました。
 
僕が牧之原市が「すごい」と思ったのは、こうした決議の採択と市長の支持表明、周りの自治体での決議などに終らせず、なぜ浜岡原発再稼働に市長と市議会が反対したのか、市民に説明するかなりしっかりしたパンフレットを作りあげたことです。
製作年月日が記されていないのですが、記載されているデータなどをみるとおそらくは2012年末か2013年年初ぐらいに出されたのだと思います。
以下にアドレスを示します。見応えがあるのでぜひご覧になってください。
 
「これからのエネルギーについて考えよう」
牧之原市 政策恊働部企画課
http://www.city.makinohara.shizuoka.jp/bg/shisei/upload/これからのエネルギーについて考えよう.pdf
 
続く
 
*****
 
原子力防災学習会
原発から50キロの兵庫県篠山市はどのように問題意識を共有していったのか?
 
講師 守田敏也氏
7月1日(土) 13:30〜15:00
会場 牧之原市さざんか
入場 無料・申し込み不要
15:15より懇親会を行います。参加費500円
 
主催:浜岡原発を考える牧之原市民の会
連絡:柴本08052957196 山崎0548522187
後援:牧之原市
 
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明日に向けて(1391)大飯原発の再稼働に反対して(本日23日、おおい町でお話しします)

2017年06月23日 08時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170623 08:30) 

本日23日におおい町でお話します。「新規制基準と避難計画の学習会」というタイトルで、今回も後藤政志さんとご一緒します。
おもに後藤さんが新規制基準についてお話しされ、僕が避難計画について篠山の例も交えてお話しします。直前のお知らせで申し訳ありません。
 
今回、おおい町を尋ねるにあたって、おおい町公式チャンネル「まいどまいどジャーナル」における大飯原発再稼働に向けた番組を拝聴しました。
企画がおおい町、協力が関西電力(株)大飯発電所。6分強から10分弱の8本の番組によって成り立っています。アドレスを記しておきます。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLrDRLVMfsBGi12DrK_tTHBCwJDAdgB4Dz
 
全編、じっくりと観させていだきました。各回のタイトルをならべておきます。
第1回 原子力規制委員会と新規制基準
第2回 大飯発電所のいま
第3回 自然災害に備える
第4回 事故の進展防止対策
第5回 事故の拡大防止対策
第6回 事故時対応能力の向上
第7回 運転員たちのいま
第8回 大飯発電所からのメッセージ
 
これを観るにあたって一番、注目していたことがありました。新規制基準のもと、「もし過酷事故が起こっても放射能放出量を福島原発事故の100分の1以下になるような対策を施している」と言われている点です。
新規制基準は、過酷事故が起こりうることを前提にしたものです。いまは「重大事故」と言葉の入れ替えがなされていますが、この後の対応が求められています。
もちろん過酷事故を起こさないための対応のレベルアップも求められていますが、それでも放射能の閉じ込めに失敗することがあると考え、対策を施すとされていることに大きな特徴があるわけです。
 
今回の「まいどまいどジャーナル」を観るにあたっても、この点がどのように施されているかをまずは虚心坦懐に観てみようと思いました。どう対応することで、放射能の放出量を100分の1以下に抑えるとしているのかをです。
もっとも前提的に僕は「そんなこと、科学的にできるわけがないのではないか」と考えています。なぜってこの事態は格納容器が壊れないように講じたさまざまな装置が突破された事態なのだからです。
もうそうなったらどこがどう壊れるかも予想不能なはず。予想できるなら始めから壊れないような対策もうてるはずです。実際、福島原発事故でも格納容器のどこがどのように、かついかにして壊れたのか、まだ調査すらもできていないのです。
にもかかわらず、閉じ込めようとして閉じ込められなくなった放射能の放出量を100分の1にすることなどできるのでしょうか。そんな芸当のような対応などあるはずがないのです。
 
この点に僕がこだわる大きな理由は、この「放射能の放出量を福島原発事故の100分の1へ」というあまりにありえない想定が、原子力規制委員会によるこの間の避難計画の見直しに直結しているからです。
規制委員会は当初打ち出した「原子力災害対策指針」の中で、原発から半径5キロ圏内は放射能の放出が起こる前に逃げ、半径30キロ圏内では屋内退避するが、場合によっては避難が必要なので準備が必要だとし、市町村に対策を命じました。
ところが昨年暮れぐらいから「避難の準備は5キロ圏内で良い」「30キロ圏内な屋内退避すべきでむやみに避難させるべきではない」と言い出したのです。
いわく「準備が不十分な避難は、多くの犠牲者を出すなどの極めて深刻な結果につながる」からだそうです。それなら十分な準備をすべきなのに「避難しなくて良い」と結論付けているのはあまりの暴論です。これらは以下で主張されています。
 
原子力災害対策指針と新規制基準
https://www.nsr.go.jp/data/000172848.pdf
 
さて、これらを踏まえて、いったい大飯原発において「重大事故がおきても、福島原発事故の放射能放出量の100分の1以下に抑える」対策がどのようになされているのかを観てみました。
どうだったのかというと、驚くべきことに、「もしものときの放射能の放出を100分の1以下にする対策」等、何一つうたわれていませんでした。
もちろん大飯発電所が何の事故対策の上乗せもしていないというのではありません。さまざまに「多重防護」が施されたことがうたわれています。
 
例えば「第4回 事故の進展防止対策」では、福島原発事故時の電源喪失を踏まえ、重大事故時に原子炉を冷やすための対策がたくさん述べられています。
総じて電源を多重化、多様化しする。送電線を複数回路にしてひとつがダメでも第2、第3の電源が得られるようにしたとされて以下の対策が並べられています。
発電所に備えているバックアップ電源の容量を1400Ahから2400Ahに増量。
外部から電気を受け取るラインも増やして強化した上、新たなバックアップ電源を配備。冷却水を必要としない空冷式非常用発電装置を1号機あたり2台、合計4台配備。
さらに電源車を1号機あたり2台、全体の予備1台、合計5台配備。これらの運転用の燃料のため、地下燃料タンクを設置。連続7日間稼働可能に。
その上、それでも電源が得られなくなることもありうると考え、次の三つの対策を重ねているそうです。海水を取水する手段の多様化、炉心の直接冷却手段の多様化、蒸気発生器による冷却手段の多様化です。
 
この三点の詳細については省略しますが、これまでみてきてわかることは、重大事故に対して「あれがだめならこれ、これがだめなら次の手を」という場当たり的な対策の重ね合わせが行われている点です。
しかしこれらはもともとのシステムの中に組込まれていないことに大きな弱点があります。とくに原子炉建屋の外においてある電源車などが、がれきの散乱も予想される緊急時に想定どおりに動けるのかなど、幾らでも疑問が湧いてきます。
だからこそ幾重にも対策が重ねられているのでしょうが、どこまでいっても緊急時に本当にうまく作動するのか確信のもてないものばかりなのです。
 
ただそれとともに重要なのは、これらはあくまでも電源喪失の際に、電源を復活させ、あるいは冷却機能を復活させて、原子炉を冷やすための対策であって、それに失敗し、放射能が飛び出すのを防げなくなった時の対策ではないことです。
ようするに「放射能が飛び出してしまう場合がありうる」といっているのに、肝心のその対策、しかもそのときに「放出量を福島原発事故よりも大幅に抑える」とする対策は、これら8本の中で何一つ説明されていないのです。
これでは原子力規制委員会のうたいだした「5キロ圏内だけ避難」「5キロ圏外は屋内退避。むやみに避難しない」などという指示の何の根拠も説明されたことにはなりません。
 
この点を踏まえて、今回、おおい町では二つの点を強調してきたいと思います。
一つに再稼働は重大事故が起きることを前提にしたものであまりに危険であるということです。しかもその際に、「放射能放出量を低減する」対策等何も説明されていません。このため再稼働をさせないことこそが安全を確保するもっとも大切な道です。
二つにそれでも再稼働が強行されてしまうことを見据えて、災害対策を重ねる必要があるということです。もちろんおおい町は高浜原発にも近いですからその事故にも備える必要がある。その際の核心は「とっとと逃げる」ことです。
講演ではこの二つ目のことを主に展開しますが、ここではその前提としての「5キロ圏外は避難等するな」という原子力規制委員会の新たな方針に見合った対策が、何も説明されていないことをおさえました。
 
以下、講演の案内です。
 
「新規制基準と避難計画の学習会」

午後7時から9時まで

きのこの森 ふるさと交流センター会議室にて
主催は「後藤政志さんのお話を聞く会」


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明日に向けて(1390)書評『制定しよう 放射能汚染防止法』-1(6月25日は岡山市へ)

2017年06月09日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)
守田です(20170609 23:30) 
 
またしてもとんでもない被曝事故が起こりました。6日に起こった日本原子力開発研究機構大洗研究開発センターでのプルトニウム239の被曝事故です。
しかも1人の男性職員は肺に2万2千ベクレルもの被曝を受けたと計測されました。ここから全身に36万ベクレルものプルトニウム239が取り込まれたと推測されています。
ここから論じるべきことはたくさんありますが、一つの大きな課題はこの国の放射性物質の管理があまりにも杜撰になっていることです。
なぜなのか、何を正すべきなのかと考えた時に、考えるべきなのは、そもそも福島第一原発の事故以降、膨大に漏れ出した放射性物質のまともな管理がなされてきていないことです。

この事態を捉え返し、是正していくベき道を探るために、この間、友人たちとともに京都市内で「放射性廃棄物拡散問題学習研究会」を開催してきました。
8回に及ぶ会合の中で、放射性物質がそもそも法的にいかに扱われてきたのかについても学んできましたが、前回(5月28日)にはこうした事態の抜本的な解決に向けた「放射能汚染防止法」制定に向けた動きを取り上げました。
これは6月25日に岡山市で「『放射能汚染防止法』を制定しようHKB47 市民勉強会 IN岡山2017」が開催されることも意識してのものです。
僕自身、この企画で「放射能汚染防止法制定を目指す戦略」と題されたパネルディスカッションにも参加させていただきます。
今回は5月28日の学習研究会で取り上げた、この法律の制定運動を起こされていて、岡山でのディスカッションにも参加される山本行雄弁護士の著書を取り上げます。

本のタイトルはずばり『制定しよう 放射能汚染防止法』。星雲社から発行されています。
この本を読みだしてすぐに「なるほど」と思わされるのは、原発の再稼働に向けて当然にも問われてしかるべき汚染対策が抜けていないか?一億人が勘違いしていないか?と山本弁護士が指摘されていることです。
原発の再稼働に向けて問われて来たのは一つに「安全審査」です。国は原子力規制委員会を設け、同委員会が設定した「新規性基準」を安全審査の柱としています。
これまでも繰り返し述べて来たように、新規制基準は「過酷事故」が起こりうることを前提にしたもので、到底、認められるものではありませんし、規制委員会自身が再稼働への許認可にあたって「新規性基準への適合性を見ているだけで安全だとは申し上げない」とすら述べています。
しかしそれでも100歩譲って言えば、この新規性基準は安全審査を巡る論議の一つの場となっているとは言えます。
 
次に問題になるのは防災訓練=避難の準備です。これに向けても原子力規制委員会が「原子力災害対策指針」というひな形を出し、原発から30キロ県内の自治体に避難計画の作成が義務づけられました。
しかし作られはするけれども、誰も審査せず、責任があいまいになっていると同時に、多くの計画があまりに実効性に乏しく、机上の空論にとどまっています。
僕自身はこの点を踏まえて、原発から30キロ圏外の篠山市で、市民の方達とともに独自の発想に基づく対策を積み重ねて安定ヨウ素剤の事前配布などを実現してきました。
「原子力防災で絶対安全を確保できる道などない。せめて少しでも被曝を避ける減災の観点で望むしかない。その場合、最も有効なのは事故の際にとっとと逃げる準備を重ねることだ」と言うのが篠山市の基本方針です。
しかし多くの自治体は依然、空論にとどまっており、さまざまな問題が山積していますが、あえてここでも100歩譲って言えば、防災訓練=避難計画もまた人々の論議の対象にはなってきています。
 
ところがもう一つがすっぽりと抜け落ちている。それが放射能汚染対策なのです。このことを山本さんは「一億人の勘違い」と述べられている。少し引用します。
「総理大臣が原子力防災会議の議長として、過酷事故を想定した防災訓練を行っているのです。事故を想定するなら被害を想定するのが当然です。
 総理大臣を筆頭に、防災訓練をすれば、その後の汚染等ないかのように振る舞っています。
 なぜ「被害」は想定しないのだろうか。なぜ被害を想定した法律を整備し対策を立てないのだろうか、法整備も無く対策も無いのに再稼働してよいのだろうか、当然すぎる疑問です。」
「総理大臣を筆頭とする幼稚な勘違い‥大多数の人々も疑問に思わない‥一億総勘違い状態ではないでしょうか」(同書p16)
 
素晴しい卓見です!目から鱗が落ちる思いがしたのは僕だけでしょうか。
確かに安全対策も防災対策も、不十分極まるものでしかないにしろ、まだしも論議があることに対して、三つ目にくるべき「公害対策」については論議の場すら定まっていません。
どうしてこうなってしまっているのか。日本には公害を取り締まるための法律として「環境基本法」があります。1960〜70年代ぐらいに「公害国会」と言われるほど、議会で公害対策が熱く論議された時期があって、民衆の熱意のもとに公害を防止する法律が次々とできたのです。
ところがこのときできた全ての法律に「放射性物質については原子力基本法その他の法律の定めるところによる」と書かれてしまったのでした。
そしてその「原子力基本法」では具体的な規制など書かれませんでした。このため原子力施設からの放射能汚染について法的な空白が生まれてしまったのでした。
 
山本さんはそこで「環境基本法」と「原子力基本法」の抜本的な違いを指摘しています。前者は「公害国会」などで作られた旧「公害対策基本法」を受け継いだもので、産業活動がもたらした公害被害から、人や環境を守るため、産業を規制するものとして生まれました。
「原子力基本法」は日本が国策として原発を導入した際に、原子力の利用による産業振興を図る目的で作られたもので、もともと規制法ではありません。山本さんはこれを「国民の力で作った法律と国策で作った法律」と指摘しています。
このため日本には放射性物質による公害を法的に規制してこれませんでしたが、福島原発事故以降、とても大きな変化が起きました。2012年6月27日に環境基本法13条の放射性物質適用除外規定が削除されたのです。
 
この意義はとてつもなく大きい。このことで国は、公害原因物質として位置づけられた放射性物質に対し、環境基本法が要求する義務や責任を果たさなければならなくなったのですから。
にも関わらず、国は、官僚達は、この作業をさぼっている。ならば民衆運動でこの作業をやらせよう。すでに法的に義務づけられている放射能公害への対処を国にやらせようというのが「放射能汚染防止法」制定運動の基本的な主旨なのです。
山本さんはこのことには世界的な意義すらあることも高らかに指摘されています。
 
「福島第一原発事故を契機に、日本では、法制度の欠陥が露呈し、国会は、その抜本的見直しを決めました。これは、事故によって偶然発生した課題ではありません。原発導入以来、無いかのように扱われ、背後に押しやられ、潜在化してきた課題が、事故を契機に一挙に表面化したに過ぎません。
 放射能汚染に体する法の欠落という課題は、世界共通の課題です。それが日本で先行して現実化しました。地球上で最も危険な、プレートのひしめき合う地震列島に54基もの原発を建設し、一度に三基もの原子炉をメルトダウンさせたからです。
 世界に先行して深刻な放射能汚染問題に直面した日本が、世界にさきかげて法整備に取り組まなければならなくなったのは当然のことなのです。
 この法整備問題は、回避しようともしてもできない歴史の必然だったのです。」(同書p27)
 
続く
 
*****
 

「放射能汚染防止法」を制定しよう HKB47市民勉強会IN岡山2017

https://www.facebook.com/events/1344613755575421/?acontext=%7B%22ref%22%3A%2223%22%2C%22action_history%22%3A%22null%22%7D

 

大沼淳一氏講演会

「ばら撒かれる放射能の実態と危険性」

2017年6月25日(日)

14:00~18:00(開場13:30)

会場:岡山コンベンションセンター 407会議室(定員80名)

参加費:1000円(福島原発事故由来の避難・移住者の方は無料)

講師:大沼淳一氏(原子力市民委員会)

主催:「放射能汚染防止法」を制定する岡山の会

【プログラム】

14:00~14:30 報告会
「原発事故対策に関する自治体への「質問書」提出」
杉原宏喜氏(「おのみち-測定依頼所-」)

14:30~16:00 大沼淳一氏講演
「ばら撒かれる放射能の実態と危険性」

(休憩)

16:15~18:00 パネルディスカッション
「放射能汚染防止法制定を目指す戦略」

大沼淳一氏(原子力市民委員会)
山本行雄氏(弁護士)
満田夏花氏(FoE Japan)
守田敏也氏(フリーライター)
佐藤典子氏(「放射能汚染防止法」を制定する札幌市民の会)

18 :00~質疑応答
○「伊方原発運転差止広島裁判」原告団ご挨拶
○「ふくしまいせしまの会」上野正美さんご挨拶

18:30~20:00 交流会(会場で自由交流)

【資料】
「制定しよう 放射能汚染防止法」(山本行雄、星雲社)
「核廃棄物管理・処分政策のあり方」(原子力市民委員会)

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記事明日に向けて(1389)高浜原発3号機の再稼働はまったく愚かで許しがたい暴挙だ!

2017年06月06日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170606 17:00)


本日、6日午後2時に関西電力は高浜原発3号機の原子炉を起動しました。「問題がなければ」7日午前2時頃に臨界に達し、9日午後2時ごろからプルサーマル発電による送電を開始するとされています。
まったく愚かで許しがたい暴挙です。強く抗議します!
これに対して、福井・関西・中部・佐賀・首都圏の16団体の連名で抗議声明が発せられました。僕はどこにも属していませんが、とても共感するのでここに転載させていただきます。
 
あらじめ重要なポイントを書いておくと、今回の再稼働は新規制基準にも違反している疑いが濃厚です。
関電は今年の1月20日に高浜原発のサイトでクレーン倒壊事故を起こしているのですが、その後の調査で、なんと現にあるクレーンの倒壊しうる範囲に、3・4号機の重大事故対処用の可搬型設備(電源車等)が多数設置されていることが明らかになったのです。
「重大事故」発生という緊急事態に対応するための非常用設備が、強風や地震で生じうるクレーン倒壊でもう使えなくなってしまう可能性がある場におかれているのです。こんなことでは「重大事故」の備えがなされているなどとはとても言えません。
新規制基準(設置許可基準規則)43条3項5号では、電源車等は地震や自然現象等の影響を受けないように配置するよう定めており、これは明確な違反です!即刻、4号機も3号機も止めるべきです!
 
僕はそもそも新規性基準は「重大事故発生」を前提としたものであるがゆえに、それを満たしていようとも再稼働は絶対に認められないと考えていますが、しかし今回の再稼働はその新規性基準すら満たさずに強行されています。
その点でも抗議の声を強めなくてはなりません。
以下、16団体の声明を転載します。ぜひ拡散してください。

*****

拡散歓迎
 
抗 議 声 明  2017年6月6日

高浜原発3号機の原子炉起動を糾弾する
関西電力は高浜原発3・4号機の再稼働を即刻中止せよ
地震でクレーンが倒壊する範囲に電源車等を配置するのは基準違反

 関西電力は本日(6月6日)、またも多くの反対の声を踏みにじり、高浜原発3号機の原子炉起動を強行した。5月17日の4号機起動に続く暴挙である。私たちはこれに強く抗議する。

 今年1月20日に関電が引き起こしたクレーン倒壊事故は解決していないどころか、さらに深刻な問題を提起している。1・2号機の設備に被害が及ぶだけでなく、クレーンが倒壊する範囲内に3・4号機の重大事故対処用の可搬型設備(電源車等)が多数設置されている。そこに地震でクレーンが倒れ掛かった場合の影響評価は国にいっさい報告されず、それゆえ審査はなされていない。
規制庁は、クレーン倒壊は審査の対象外だと述べている(5月25日の福島みずほ議員へのレク)。しかし、新規制基準(設置許可基準規則)43条3項5号では、電源車等は地震や自然現象等の影響を受けないように配置するよう定めている。電源車や放水砲、タンクローリー等をクレーンが倒壊するような範囲に保管するのは、明らかにこの基準に違反している。自らの基準も踏みにじって再稼働を進めている。

 私たちが行ってきた、京都府30km圏内自治体等への申入れや、京都府7市町地域協議会幹事会では、関電の安全管理全体に対して厳しい批判の声があがっている。さらに、福井県知事と高浜町長の了承だけで再稼働が進むことを批判し、同意権を求めている。住民説明会等で事故や再稼働について関電は直接住民に説明すべきだと述べている。しかし関電は、重大なクレーン問題についても住民に説明さえしていない。

 福島原発事故はいまだ終息しておらず、多くの被害者が困難な避難生活を余儀なくされている。それにも関わらず、関西電力は福島原発事故の悲惨な実態と教訓を省みることなく原子炉をまたも起動した。
 高浜原発でひとたび大事故が起これば、福井の住民はもとより、放射能は北からの風にのって関西全域に及び、30km圏内の京都府北部は「帰還困難区域」並みに汚染される。琵琶湖も汚染され、関西住民1,400万人に甚大な被害が及ぶことになる。とりわけ子どもたちへの影響ははかり知れず、避難弱者の避難はほとんど不可能となる。汚染水対策もないまま、若狭湾一体の漁業にも深刻な被害が及ぶ。このような壊滅的な被害を食い止めるためには、再稼働を中止するしか道はない。しかし関電は、福島の悲惨な被害から発せられる「原発さえなければ」という無念の声を聞こうともしない。

 島﨑邦彦前規制委員は、4月24日の大飯原発差し止め控訴審(名古屋高裁金沢支部)で「入倉・三宅式は過小評価。大飯原発の再稼働を許可してはならない」と証言した。高浜原発の基準地震動もまた入倉・三宅式で計算されたものであり、過小評価のままだ。実際に地震が起これば、はかり知れないほどに深刻な被害が生じる恐れがある。

 プルサーマル炉の3号機にもアレバ社のMOX燃料(プルトニウム燃料)が装荷されている。しかし、ウラン燃料用の原子炉で異質で危険なプルトニウムを燃やすのは無謀だ。さらに、品質管理データは非公開のままだ。関電は以前に、英国BNFL社で製造されたMOX燃料にデータ不正があることを知りながら、市民がそれを暴くまで隠し続けていた。未だ、隠したことを認めず、詫びていない。それにも関わらず、原子力規制委員会もフランスの原子力規制機関も品質データをチェックすることもしない。

 使用済MOX燃料の処分方法はなく、厄介な核のゴミを高浜原発に超長期に保管することになるが、高浜町の住民に説明することさえしていない。また使用済燃料全般を運び出す見込みもなく、使用済燃料プールは満杯に近づいている。京都府や府北部の自治体は「中間貯蔵」受け入れに明確に反対している。行き場のない核のゴミをこれ以上増やすなど、無責任極まりない。

 私たちは、高浜3号機の原子炉起動に抗議するとともに、直ちに3・4号機の再稼働を中止するよう強く求める。

2017年6月6日 (16団体)
原発設置反対小浜市民の会/ ふるさとを守る高浜・おおいの会/ 原発なしで暮らしたい宮津の会/ グリーン・アクション/ 防災を考える京田辺市民の会/ 避難計画を案ずる関西連絡会/ 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/ 脱原発へ!関電株主行動の会/ おおい原発止めよう裁判の会/ 子どもたちに未来をわたしたい・大阪の会/ 脱原発はりまアクション/ 脱原発わかやま/  核のごみキャンペーン・中部/ 玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会/ 国際環境NGO FoE Japan/ 原子力規制を監視する市民の会

連絡先
グリーン・アクション:京都市左京区田中関田町22-75-103 電話:075-701-7223 FAX:075-702-1952
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会:大阪市北区西天満4-3-3星光ビル3階 電話:06-6367-6580  FAX:06-6367-6581
原子力規制を監視する市民の会:東京都新宿区下宮比町3-12-302  電話:03-5225-7213 FAX: 03-5225-7214
 
*****
 
声明の転載はここまでです。
高浜4号機に続く3号機の再稼働強行という事態の中で、原発問題に関するお話を木曜日と土曜日に行います。
木曜日は福島からの避難者、齊藤夕香さんとの1時間の対談を通じて、土曜日は1時間半をいただいての講演を通じてです。
以下に案内を記しますので、ぜひお越し下さい!

知ってほしいな福島と避難・めっちゃ気になる再稼働
齊藤夕香+守田敏也対談
主催 京都ファーマーズマーケット
日時 6月8日午前11時から12時
場所 京都市左京区田中高原町5 カフェプリンツさんのお庭

*** 

原発事故から6年
-原発再稼働で市民の命と生活は守れるか?
6/10・フリーライター守田敏也さんの「原発事故取材最前線」

■6月10日(土)14:00~16:30(13:30開場)
■ラボール京都  第1会議室
■参加費:500円
■主催:小山田春樹と京都市民ネットワーク

<ご案内>
福島第1原発の事故から6年余。今なお続く深刻な放射能汚染。故郷に帰れない被災者の苦悩は続いています。
しかし、電力各社は何事も無かったかのように原発再稼働へ向けて動き出し、安倍政権は原発の海外輸出まで行っています。
京都府のお隣の福井県では、高浜、大飯原発などの再稼働準備が着々と進んでいます。 
もし福井の原発で事故が起きたら、私たち京都市民の生命と環境を守ることは出来るのでしょうか?

小山田春樹と京都市民ネットワークの講演会企画第2弾は、原発問題です。
フリーライター守田敏也さんを招き、原発取材の最新情報をお話ししていただき、安心安全なまちづくりを討論します。
 
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明日に向けて(1388)書評『福島甲状腺がんの被ばく発症』(宗川吉汪著 文理閣)

2017年06月05日 12時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170605 12:00)

福島で広がる甲状腺がんが、福島第一原発事故で発せられた放射能による被曝によって増えていることを力強く実証した本が出版されました。
今回の記事の表題にも示したようにタイトルは『福島甲状腺がんの被ばく発症』。日本科学者会議に属する宗川吉汪さんの執筆のよるもので文理閣から上梓されています。
実は宗川さんが書かれた本としてはこれが2冊目になります。初めてこの課題を扱った書のタイトルは『福島原発事故と小児甲状腺がん―福島の小児甲状腺がんの原因は原発事故だ』でした。
宗川さんの他、大倉弘之さん、尾崎望さんとの共著で、発行は本の泉社です。この書のことも踏まえつつ、宗川さんの新著についてご紹介したいと思います。

福島では事故当時0歳から18歳だった「こども」を対象に大掛かりな甲状腺の検査が行われてきました。司ってきたのは福島県です。
この検査の特徴は、「先行検査」と「本格検査」の二段階が行われたことです。
なぜそうしたのかと言えば、小児甲状腺がんは、これまで10歳以下では100万人に1人の発症率と言われるきわめてまれな病気でした。
このため国内では大規模調査がなされたことがないので、まずは放射能の影響が現れない段階の検査を「先行検査」として行い、その後に「本格検査」を行って原発事故の影響を調べるとされたのです。

またもう一つの特徴は検査が三つの地域に分けて行われたことでした。
最初の検査は最も放射線被曝量の多かった福島県の浜通りを始めとした13市町村で行われ、続いて福島県内では中程度の被曝量だった中通りを中心とする12市町村で、最後に残りの34市町村という具合に進みました。
34市町村には会津地方とともにいわき市や相馬市など浜通りの南端、北端の市なども入っていました。

検査を行った福島県は「チェルノブイリ原発事故の経験から事故で発生した放射能を原因とする甲状腺がんの発症は5年以上経ってからなので福島でも少なくとも数年は発症はありえない」ことを前提としました。
結果は第20回「県民健康調査」検討委員会(2015年8月31日)で発表され、第23回検討委員会(2016年6月6日)で追補版が公表されました。
後者によれば検査を受けたのは36万7672人。このうち細胞診で甲状腺がん(悪性ないし悪性疑い)と診断されたのは116人(女子77人、男子39人)。平均年齢は17.3±2.7歳でした。
この116人のうち102人が手術を受け、良性結節(がんではない)1人、乳頭がん100人、低分化がん1人という結果でした。

100万人に1人と言われてきた病気が37万人弱に100人以上も現れたわけですが、福島県はこれらを被ばく影響によるものとは認めませんでした。
多く発見されたのはこれまでにない大規模で徹底した調査が行われため、「スクリーニング効果」のためだと言いました。
これに対しては、多くの人々が「そんなことはない」と主張し、数学的解析などを行い、先行調査でも被ばく影響が認められることを指摘しています。筆者もそう考えています。

宗川さんの見解のユニークさは、この議論には関わっていないことです。
先行調査の結果を「原発事故による影響が現れる前の状態が現れたもの」という見解をひとたび受け入れ、「本格調査」との間の差異を分析し、その結果、福島原発事故の影響があることを証明する方法を採ったのです。
しかもそれほど難しい数学的解析を使わずとも、十分に被ばく影響を見て取ることができる点を導き出しているのも本書の特徴の一つです。

このため多くの方に、まずは本書を手にとって、宗川さんの論述に従いつつ、簡単な計算もしながら被ばく影響がどのように現れているのかをつかんでいただきたいと思います。
そうすると自分で被ばく影響の有無を吟味することができます。統計計算式を一つ使用することが必要ですが、あとは誰もが自分で簡単に検証できるように論述してあります。この点の工夫も素晴しいです。
 
ぜひご自分で読むことでこの証明を体感していただきたいのですが、そのためにあらかじめ解説を加えておきたい点があります。第6章の「罹患率の比較」についてです。
病気の発症を調べるためには「有病率と罹患率」の違いを知っておく必要があります。前者ではある時点での患者数を調べるのですが、これはインフルエンザの流行などを調べる時などに効力を発揮します。
後者はある一定の期間にその病がどれだけの割合で起こっているのかを調べるもので、甲状腺がんの社会調査ではこちらが重要になります。

このため観察期間が重要になるのですが、「先行調査」がどれだけの期間を調査対象としたのかというと、福島原発事故による影響が出る前の全期間となりますから、調査を受けた人のその時の年齢と等しくなります。
このため例えば10歳で発症した人は10年間に発症したと数えられますが、先行調査は2013年3月まで行われていて、0歳から18歳だったものの中で1歳大きくなったものがいると考えられるので発症時の最大年齢は19歳になり、最大は19年間ということになります。
調査対象は調査の時に0歳から最大で19歳だった「子ども」たちなので、それぞれの年齢の人口が同じと仮定すると平均では9.5年の間の発症と考えることができます。

ところが本書ではこの発症期間を8歳から19歳までとし平均で6.5年としています。実はここが前著と本書の差異、計算の緻密化がなされたところでもあります。
どうしてなのかというと、福島県の調査で、事故時に7歳以下だった子どもにがんの発症がまったくみられていないため、それを反映させたて、0歳から7歳までを調査期間から省く判断を行ったのです。
このため前著では平均9.5年とされた期間が本書では平均6.5年とされています。
 
「本格調査」の方はどうでしょうか。この調査の期間は先行調査が終わってから本格調査がなされたときまでですから比較的短めです。
3つの地域間で多少の違いがあり、最初の13市町村では2.75年、あとの12市町村と34市町村では2年でした。このことを踏まえて、統計計算にかけると95%の信頼性で3つの地域の年間の罹患率がはじき出されてきます。
重要なのは、もし放射線被曝の影響がみられないのなら、先行調査と本格調査で出される患者率の数値は、ほぼ重ならなくてはならないということです。

ところが線量の高い目の13市町村では、先行調査で10万人中7.5〜13.5人に対して、本格調査では22.0〜47.2人とまったく重ならない値が出ました。
線量が福島県内では中ぐらいの12市町村では、先行調査で9.0〜11.7人に対して、本格調査では18.9〜30.5人とやはり重ならない値です。
線量が低めの34市町村では、先行調査で6.9〜10.0人、本格調査で8.9〜20.2人とわずかに重なるもののほとんどはやはり重ならない結果となっています。

これらから宗川さんは以下のように結論しています。
「甲状腺がんの発症に原発事故が影響していることを明瞭に示しています。しかも罹患率の上昇は高線量地域で最も高く、中線量地域、低線量地域の順でした」と。(p34)
福島県の提示した方法に沿って評価してみてもこの結論が出てくるのです。もはや否定しようのない事実であることを宗川さんは見事に証明されています。

さて宗川さんによる福島の甲状腺がんの多発が原発事故由来であることの証明はここまででつきるのですが、この先で宗川さんはさらに大胆な発言をされています。
一つには国際原子力ムラによっていまなお、被ばく発症の否認が行われていることへの批判ですが、宗川さんはさらに進んで二つ目に、核災害の本質はヒバクにあり、そのヒバクを否定する「放射能安全神話」を打ち破るべきことを力説しています。そこでは、さながら宗川さんによる福島の甲状腺がんが被ばくによるものであることの証明が、本書のこの最終部分の主張を導き出すための論理的手順であったかと思わせるような力強い言葉が並んでいます。

おそらくは読者を驚かせるであろうことは、ここで宗川さんが、国際原子力ムラのみならず、他ならぬ脱原発運動の中でも福島の甲状腺がんの発症に関しての軽視や無視があることを怒りを込めて論じられていることです。
宗川さんが指摘しているのは京都市で2016年3月に行われた「バイバイ原発きょうと」集会の呼びかけ文に宗川さんが「福島の小児甲状腺がん多発の原因が原発事故であることは明らかです」という文言の挿入を提案したところ否定されてしまったことです。理由は「機が熟してない」とのこと。これを宗川さんは「はっきりしていない、間違っているかもしれない、小児甲状腺がんの多発は原発事故とは無関係かもしれない」ということだと捉えています。
しかし小児甲状腺がんすら「起こらない」のならば、「原発事故など恐るるに足りず」になってしまうとは言えないか。「私たちは原発事故で放出される放射能ががんを含めたさまざまな病気を引き起こす恐れがあるからこそ、原発に反対しているのではないでしょうか」(p54)と宗川さんは指摘されています。

さらに宗川さんは同じく2016年3月6日に福島県二本松市で開催された「原発ゼロをめざして今、福島から―あの日から5年」というテーマのシンポジウムについても批判的に取り上げています。
全国革新懇と福島革新懇が主催したものですが、その記録集を紐解くと「驚くべきことに、小児甲状腺がんについて、主催者あいさつ、地元あいさつ、4人のシンポジストの報告、3人の福島現地からの報告のいずれでも一言触れられていませんでした」と言うのです。その上で宗川さんはこう述べられています。「“放射能安全神話”にとらわれてヒバクから目をそらしたい脱原発運動は、結局は、福島の被害者や原発ゼロを願う多くの国民の願いから遊離してしまうと危惧します」。(p57)

まったくもってその通りです。ヒバクと向き合わない限り、なぜ原発をなくさなければならないのか、根本の論理が揺らいでしまいます。
放射能は人を傷つけ、さまざまな病を引き起こすが故に危険なのです。その点で私たちは甲状腺がんの発症にとどまらず、いま起こっているであろうさまざまな被害をきちんと把握し、何よりも傷ついた被害者を守り、政府に保障させなければなりません。いや福島原発事故で飛び出して来ている放射能からのこれ以上のヒバクをなんとしても止めなくてはならないし、いわんや次なる原発事故など絶対に起こさせないようにしなくてはならない。まさに放射能が危険なものだからです。

読者のみなさんは、本書の最後に出てくるこの宗川さんの熱いメッセージを読まれて、それでもう一度、福島の甲状腺がヒバク由来であることを、明快かつ簡潔に証明された前半部の主張に立ち戻っていただきたいと思います。
本書が原発ゼロを目指し、平和で豊かな世を目指すすべてのみなさんの中で十二分に活用されんことを願って止みません。

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明日に向けて(1387)原子力災害対策は災害対策全般から解き明かすと分かりやすい!(5日に草津市でお話しします)

2017年06月04日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170604 23:30) 

明日(5日)に滋賀県草津市でお話しします。くらしとせいじカフェ主催の「原発と被曝@議員さん向け勉強会」にてです。
前回(1386)でこの草津の勉強会に向けて「被曝の危険性は原爆から解き明かして行くと分かりやすい!」という記事を書きました。今回は後半部分、原子力災害対策をいかに進めるのかの要点をまとめておきたいと思います。
 
この間、関西電力が高浜原発4号機の再稼働を強行しました。さらに6日に3号機も動かそうとしています。大変な暴挙です。
再稼働強行について、何が一番に批判されるべきでしょうか。ポイントは原子力規制委員会が「重大事故を発生しうると考えてあらかじめ対策をとっておく」と言っていることにあります。とんでもないことです。
規制委員会が一昨年夏に、高浜原発再稼働に向けて高浜町などで行った説明会では次のように語られています。
「(古い)規制基準は核燃料が溶けてしまったり、放射性物質が大量に外に漏れるような重大事故を発生させないことを重視し、重大事故の起きた後の対応が十分にできていなかった。」このため「重大事故が発生しうると考え、あらかじめ可能な限り対策をとっておくべきというのが教訓だ」と。
 
完全な居直りです。問題は「重大事故を発生させないことを重視し」ながら「その発生を未然に防ぐことができなかったこと」にあるのです。しかもチェルノブイリ原発事故があったときに、日本の原発推進派は「あんな事故は絶対に日本では起きない」と言い張ったのでした。それが国民や住民との約束だったわけですから、それが破れ、重大事故を未然に防げなかった点で、もう原子力政策は閉ざすべきなのです。
ところが言うに事欠いて「重大事故が起きないと言って来たのが間違いだった」「これからは重大事故にも備える」と言い出したのです。暴挙以外のなんでしょうか。
 
しかも言葉の入れ替えも行われています。もともと「重大事故」とは「過酷事故=シビアアクシデント」のことを指していました。過酷事故とは設計上の想定を突破されてしまった事故のこと、設計士さんお手上げの事故で、プラントとして破産をつきつけられた事故なのです。
あらゆるプラントは事故が起きた時にどうそれを収束するかの安全装置がついていてそれを含めて許認可されます。当たり前ですが事故が起こると止めようのないプラントなど危なすぎて審査段階で通らないのです。
そもそも設計段階の想定を越えてしまうわけですから、その先に何が起こるか予想もつかない。だから本来「シビアアクシデント」対策は、想定できないことへの対応ということになるので論理矛盾でしかないのです。
 
実際にはどうかというと、新規制基準の中で格納容器が壊れる事態が想定されており、その時のための放水砲が準備されています。
以下、関西電力のホームページをご紹介するのでみてください。
 
本当に格納容器が壊れてしまった場合、この放水砲からの水があたるところに放射能がうまく流れる保証などどこにあるのでしょうか。またそのとき放射能は見えるのでしょうか?こんなもので十分に撃ち落とすことができるのでしょうか。
答えは一つ、「やってみないと分からない」でしょう。つまり確実な対策でもなんでもないのです。そもそもこの放水砲が壊れてしまう可能性だって十二分にあります。こんな不確実なものを「安全対策」と言ってはならないのです。
新規制基準のもとでの対策の矛盾はほかにも幾らでもあげられますが、抜本的には「重大事故」=「過酷事故」が起こりうるのであったら、再稼働は認められないのです。明日もこの点をきちんとお話しします。
 
続いて考えなくてはならないのは事故対策の問題です。すでに「重大事故=過酷事故」がおきうることを前提に川内原発1、2号機、伊方原発3号基、高浜原発4号基が動いていて、3号基も動こうとしています。
だからこそ原子力災害に備えざるを得ません。いや原発は停まっていても、燃料プールの中に使用済み核燃料がある限り危険なので、安全状態に移行するまで原子力災害対策は必要です。
その際、対策の基軸に何をすえるのが最も合理的なのか、とりあえずは何に着目すべきなのかというと、すべての災害に共通する事項=災害に直面した時の人間心理の問題だと言えます。
このためひとたび災害全般に視点を拡張すると良い。そこから再度、原子力災害対策の特殊性に戻るのがもっとも合理的なのです。
 
災害時の人間心理の中でも最も重要なのは「正常性バイアス」です。私たちは日常生活の中で命の危険にむきあった経験をほとんど持っていないので、突然、危機に向き合うと心にバリアを生じさせて危機を認めなくなりがちです。
例えば建物の中にいて火災報知器が鳴った時に「火災訓練をやっているの?」「誤報ではないの?」などと思いがち。その方が心が安心できるからなのですが、このために避難が遅れてしまいます。
このとき周りの動きに自分をあわせてしまう「集団同調性バイアス」も働きがち。にもかかわらず危機管理者の側は危機に直面すると人々はパニックを起こすと過大に思い込んでいて、危機をきちんと伝えないことが重なってしまいます。
これを「パニック過大評価バイアス」と言いますが、この三つのバイアスが重なると人は逃げ出すことができないのです。実際に多くの災害現場でこれらのことが繰り返し起きています。
 
「正常性バイアス」という恐ろしい心理的ロックを解除するのに最も有効なのは避難訓練です。各人が主体的、能動的に「いざとなったらどうするのか」を想定しておくこと、対処の手順を決めておくことが最も大事です。
あらゆる災害に共通なことは、迫り来る命の危機から「とっとと逃げる」こと。もちろん「逃げる」ことには火山の噴火時に遮蔽物の後ろにまわって飛来物から身を隠すことなども含まれます。
また大事なのは「率先避難者」になること。人々が正常性バイアスにはまって硬直してしまったとき、誰かが「逃げろ」と叫んで行動に移れば、心理的ロックが外れ、多くの人が逃げ出せることにもつながるからです。
 
さて詳しくは、『原発からの命の守り方』を読んで頂きたいのですが、ポイントはこれがあらゆる災害対策に適用できる点です。だからとくに議員さん達には各行政体でまずはこの考えを取り入れた災害対策を進めて頂きたいです。
とくに私たちが住んでいるこの国は地震大国であり、災害大国です。その上この間、地球規模での気候変動が起きており、想定外の災害が連発しています。これにしっかり備えるために、人々の意識啓発が最も効果があります。
次にどんな災害が勃発するか分かりませんが、蓋然性の高いものとしてあげられているのは南海トラフ地震です。最悪の場合は駿河湾から四国沖まで一斉に動き、大津波が海岸線を襲う可能性があります。東日本大震災を大きく上回る被害が予測されています。
東日本大震災では国内では被災者980万人を残りの1億1700万人が助ける関係に入りましたが、南海トラフ地震で予想される被災者は3500万人、助ける側は9200万人となります。
1対12であったものがなんと2対5になってしまう。こうなったら多くの地域が自助、近助で、自力で自分たちを助けるしかなくなります。こうした点を見据えても災害対策力を何重にもアップしておくことが問われていることが明らかです。
 
そもそも僕はこのことこそが「国防」の最重要環だと思っています。そのためには自衛隊を災害救助隊に抜本的に改編していくことこそが必要です。そして災害救助専門部隊ができたらそれを必要に応じて世界にも派遣すれば良いのです。
そうしたら「あんなに良い国を攻撃するわけにはいかない」と必ずなります。これは150年前に和歌山沖でトルコのエルトウードル号を大島の漁民の方達が助けたが故に、いまだにトルコの方達が日本に好印象を持って下さっていることなどを見ても明らかです。
現政権はあまりに「国防」をないがしろにしている。いや多くの人々が私たちに真に迫り来る危機から目をそらしているかそらされてしまっています。騙されている!ここからの目覚めのためにも全国的な災害対策の強化が必要です。
 
原子力災害対策にもこの考え方をそのまま適用すれば良いのです。このために重要なのは「いざとなったらどうするのか」を想定しておくこと、対処の手順を決めておくことです。
まずは原子力災害がどのように起こるのかのリアリティをきちんと把握する必要があります。その上でやはり「とっとと逃げる」ことを軸に対策を重ねておく必要があります。
原子力災害に特殊な事態は放射能が飛んでくることです。このうち薬で対処できるのは唯一、放射性ヨウ素による甲状腺への被曝からの防護です。安定ヨウ素剤を放射能の飛来前に飲むことが必要なのですが、これが災害対策の一つの軸になります。
 
薬を扱うときに大事なのは事前の学習です。どんな薬でも「どんな効果があるのか、どのように飲むのか、副作用はどうなっているのか」を事前に把握しておかないとにわかに飲めないからです。
このため安定ヨウ素剤の配布とともに、きちんとした学習会を行うことが必要ですが、この過程が放射能被曝とはどのようなもので、いかに守るかの知恵を身につける階梯にもなるのです。
大事なポイントは、飛来する放射能のうち、防げるのは放射性ヨウ素による甲状腺被曝だけであること。だからこれを飲む時は、同時に「とっとと逃げる」べき時です。
「とっとと逃げる」ときに安定ヨウ素剤も飲むというのが、もっとも合理的な対処で、だからどう逃げるのかを事前に決めておくことが大事です。
 
この点からも原子力災害対策でも一番大事なのは、事前の学習と想定だということ、住民啓発だということです。
何せ原子力規制委員会は「重大事故はおきうる」と言っているのです。だったら起きたらどうなるのか、どんな危険性が迫り来るのか、これに対してどう対処すればいいのかを考え抜き、可能な防護を重ねて行く必要があります。
この際、誤摩化しては行けないのは、完璧な防護は不可能だと言うことです。原子力災害はどこまでも広がりうるものだからです。格納容器が完全に崩壊してしまえば被害はチェルノブイリや福島原発事故をもはるかに上回ってしまう。
しかもこうした事故は大地震などの自然災害との複合事態でやってくるかもしれない。そのことも覚悟するしかないですが、一方で実際の事故は反対にどこでとどまるかも分からない。最悪のずっと手前で止まる可能性ももちろんあります。
だから原発事故に対しては完璧な防護は無理でも少しでも被曝を少なくすること=減災の観点で対処することが大事です。そのためには一にも二にも、事前の備えを重ねておくことです。
 
行政が対策をとる上でもっとも合理的な道は、自然災害への対策と重ねて原子力災害対策を進めることです。原発事故自体が自然災害の中で起きる可能性が高いわけですから、その点でもこれが理に適っています。
具体的なことも述べましょう。地域の防災訓練のときにぜひ原子力災害対策を付け加えてください。地域の方達が「災害対策モード」になっているときに、原子力災害対策の勉強会を一緒に行うと最も効果があります。
そのとき、語るべき内容は、拙著『原発からの命の守り方』をご参照ください。もちろんお呼びいただければどこにでも僕自身が講師として駆けつけます。
 
災害に対する住民の能動性を高めましょう。その中で原子力災害対策も合理的に進めていきましょう。災害に強い、豊かで安心な町をみんなで作っていきましょう!
 
*****
 
原発と被曝@議員さん向け勉強会 主催 くらしとせいじカフェ

原発のことをエネルギー政策だけじゃなくて被曝の観点からも語ってほしいー!と空に向かって叫んでるだけじゃぁ語ってなどもらえないことに気づいたので私たちが「原発」をどうみてどう考えているのか、「市民の声を国に届けることが政治家の役目です」と言ってくれる議員のみなさまに知っていただくことにした企画。(もちろん議員でない方も大歓迎)

この機会を是非活かし街宣、駅立ち、スピーチに展開くださいねー。市民のこころに響くのはリアリティのある言葉です。外部被曝は燃える石炭に手をかざすようなもの。内部被曝は燃える石炭をそのまま飲み込むようなもの。わたしたちにの身近にある「命」や「くらし」の観点から原発をどうか訴えていただきたいと思っています。様々な場所でお世話になっている守田敏也さんが今回もお力添えくださいます。

そして…お願いごと。手弁当で動いています。参加費は1000円以上のカンパということでチカラをかしてください。カンパは全て講師代と会場費にさせていただきます。

時:6月5日(18時30分から)場:草津まちづくりセンター306 尚、参加される方は申し込みをお願いします。09082080423 にしむら

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明日に向けて(1386)被曝の危険性は原爆から解き明かして行くと分かりやすい!(5日に草津市でお話しします)

2017年06月03日 10時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20170603 10:30) 

6月5日に滋賀県草津市でお話しします。くらしとせいじカフェ主催の「原発と被曝@議員さん向け勉強会」です。
主旨が以下のように説明されています。
「原発のことをエネルギー政策だけじゃなくて被曝の観点からも語ってほしいー!と空に向かって叫んでるだけじゃぁ語ってなどもらえないことに気づいたので私たちが「原発」をどうみてどう考えているのか、「市民の声を国に届けることが政治家の役目です」と言ってくれる議員のみなさまに知っていただくことにした企画。(もちろん議員でない方も大歓迎)」
議員でなくても参加OKということで、実際、いろいろな方が集まってくださるようですが、今回は僕としても各議会でどうやったら話が通していけるのかなども考えながらお話ししようと思っています。
 
そのために二つのベクトルから「原発と被曝」に迫りたいと思います。
一つは何と言っても被曝の危険性についてです。原発を推進する国際原子力村は被曝影響を非常に軽くあつかうことで、事実上、たくさんの人々に繰り返し被曝を強制し続けています。
とくに福島原発事故後は膨大な放射能が環境中をさまよい続けているにも関わらず、積極的な防護策をとらず、避けられる被曝までもが放置されてしまっているとんでもない状況が続いています。
この非道性を暴いていくことが問われていますが、私たちがしばしば直面するのは、原子力村とは関係のない良心的な科学者や医師でも、被曝影響を軽んじているとしか思えない場面に繰り返し遭遇することです。
いや率直にいって原発ゼロを掲げる人々の中でも被曝影響を過小評価している方も見受けられます。しかもその数はけっこう多いのではないでしょうか。
 
このことが非常によく反映していることがあります。この国の政党や「進歩的」と言われる政治グループ、あるいは労働組合の中で、ただの一つも、福島原発事故に際して、避難をすることを打ち出したところがないということです。
何も2011年のことだけを言っているのではなくて、今も同じことが継続中です。福島をはじめいまも多くの地域が避難したほうが良いところです。しかしそれをいまも打ち出している政党も政治グループも(少なくとも僕の知る限りは)ありません。
僕自身は事故直後は本当に必死になって原発から離れることを提言し続けたので、一つの政党も団体も「逃げろ」と言わないことに正直なところ「面食らう」思いがありました。
暫く経って、災害対策の面から「正常性バイアス」=危機に直面した時に心理的に受け入れることができず、事実を歪曲してとらえ、心理的な平穏を保とうとする傾向に多くの人がはまっている事実を知り、「心理的ロック」の解除を目指すようになりました。
しかしそれにしても僕などが論陣をはらずとも、そのうち放射線に関する専門家が続々と出て来てきちんと危険性を喚起し、防護の徹底化を導いてくれると思っていたのですが、結局、そういう方はごくごく稀にしか出て来なかった。
 
そのごく稀な方であった被爆医師の故肥田舜太郎さんや、琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬さんなどに馳せ参じて教えを請いつつ、なぜなのだろう、どう考えたらいいのだろうと思って僕が教わったのは、放射線被曝の問題が広島・長崎への原爆投下と大きくつながっていることでした。その歴史を辿ることからいっぺんにたくさんのことが見えてきて、被曝過小評価のからくりが見えてきました。
例えば、どうして福島原発後に僕が期待したように「放射線の専門家」が民衆の前に現れ、「逃げろ」と連呼してくれなかったのかと言えば、これらの人々が学んで来た「放射線防護学」が広島・長崎への迫害の中で歪められて生まれて来ていたからでした。
端的に言って、いま放射線の人体への害の見積もりは、原爆による被爆者の調査データの蓄積の上に成り立っています。では誰がそれを作ったのか。あるいは誰がデータをとったのかと言えば、原爆を投下したアメリカ軍なのです。加害者のアメリカ軍が被害者の被爆者を調査した。そんな絶対にあってはならない調査が「放射線防護学」の成り立ちにまとわりついているのです。
 
だから私たちは、放射線被曝のことを考える時にもう一度、原爆に立ち戻って考え直すべきなのです。
私たちは原爆のことについてきちんと知っているでしょうか。「この国に生まれ、教育を受けてくれば一通りのことは知っている」と誤解してはいないでしょうか。とんでもない!私たちはずっと騙され続けて来ています。
例えばみなさんは広島への原爆投下時間をすぐに言えるでしょうか。時刻は午前8時15分。そこまでは言える方も多いでしょう。ではなぜその時間だったかをすぐに答えられるでしょうか。
8時15分に投下した理由は、それまでアメリカ軍が偵察機から撮った写真などから、この時刻に広島の人々が最も多く建物の外に出ていることが分かっていたからです。つまり最も「効率よく」熱線と放射線、爆風を浴びせる時間帯が狙われたのです。
 
要するに原爆投下は完全なる人体実験だったのです。アメリカはそんな大変な戦争犯罪を遂行したのです。大虐殺です。しかしながら私たちの多くはアメリカのこの戦争犯罪行為を正すべきことすら忘れてきているのではないでしょうか。
何も「愛国主義」を唱える右翼などに頑張って欲しいなどと思っているのではありませんが、しかしやれ靖国がどうだと叫ぶ人たちからアメリカの原爆投下や都市空襲という戦争犯罪を告発する人々が出て来ないのはどうしてでしょうか。
答えは単純です。みんな騙されてきたからです。僕は日本軍による南京大虐殺が許されないように、ナチスのユダヤ人大量虐殺が許されないように、アメリカの原爆投下も許されない戦争犯罪であると確信しています。
 
それだけではありません。十万を越える人々を広島でも長崎でも殺害し、それを何倍も上回る人々に深刻な傷害を負わせたアメリカ軍が、その後に広島や長崎を占領し、ジャーナリストを追い払って独占的かつ排他的な「調査」を行ったのでした。
加害者が被害者を調査して、どうしてそれできちんとした事実が明らかにされるでしょうか。繰り返しますがそもそもそんな調査は絶対にあってはいけなかったのです。第三者による調査でなければ被害の実相など解き明かされるはずがないからです。
しかもアメリカにとって広島・長崎での原爆による大量虐殺は、核戦略の始まりだったのでした。その後にアメリカは急ピッチで核実験を繰り返しました。1954年のビキニ環礁における核実験では広島原爆の威力を1000倍上回る水爆ブラボーを炸裂させました。この過程でアメリカは太平洋の島々の人々や多くの漁船を深刻に被曝させましたが、それだけでなく自国民をも激しく被曝させ続けました。
太平洋での炸裂で生まれた放射能雲がアメリカ本土まで届いたこともあれば、アメリカ国内でも核実験が繰り返されたこともありました。さらに兵士を実験材料として動員し、原爆のキノコ雲=放射能の固まりに向けてを突撃させたりしたこともありました。
 
それだけではありません。アメリカはそもそものインデアンの人々を使ったウラン鉱の採掘から、核兵器製造の過程でのプルトニウム火災=膨大な量の漏れ出しなどを繰り返しており、さまざまな形で多くの人々を被曝させ続けてきました。
アメリカ軍はそれを核戦略を進める上で避けて通れない道と認識していた。そのために、被曝影響を徹底的に小さく見積もり、反対の声が上がらないようにすることが必要だったのです。
かくして大気中に放射能をばらまき、地球全体を激しく汚染する大気中核実験を、アメリカはなんと200回以上も行っています。地下核実験を含めれば回数は1000回に達します。
そのために本当にたくさんの放射能がばらまかれ続けました。健康に良いはずがない。いま日本では「2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死ぬ」と言われていますが、そんなもの自然状態であるはずがない。私たちはみな被曝させられているのです。
 
みなさんは第五福竜丸の名を知っているでしょうか。ビキニ環礁の核実験で被曝したマグロ漁船です。ではそのときに同じ海域におよそ1000隻もの漁船がいたことはご存知でしょうか。多くの方が知らないと思います。これまた騙されて来たからです。
この漁船はどれだけの汚染された魚を持って帰ってしまったでしょう。しかも漁船は日本の太平洋側の主立った港のすべてから出港していたことが分かっています。全国に汚染された魚が水揚げされていたのです。
1954年の核実験のあと、魚が放射能計測され、捨てられることもありましたが、それもこの年の暮れまででしかなかった。大気中核実験は1963年まで続けられたのにも関わらずです。
この頃、日本は漁業を主要産業の一つとしていました。住民の生活も多く魚介類に依拠し、肉は贅沢品とされていました。日本中の人々が毎日のように魚を食べて暮らしていましたが、その魚が核実験で汚染され続けていたのです。
いやここでもそれだけではないことを強調しなくてはなりません。太平洋を覆った放射能雲は時には日本全土を覆ってしまっていたのです。魚を介してではなくてもこの国は幾重にも被曝している。
最も深刻な影響が考えられるのは沖縄です。戦後にアメリカに長く占領されていた沖縄では雨水を飲料水に使っていました。そこに大量の放射能雲が来ていたのです。それを沖縄の人々は飲み続けてしまいました。
 
私たちがいま、しっかりと目を向けなくてはならないことは、私たち全員がヒバクシャだということです。がんが多い事実をけして自然状態と受け取ってはなりません。いやいま多発している精神疾患なども被曝との関連を疑って当然です。
もはや騙され続けてはなりません。現代の放射線防護学が被曝を強制してきた側が自らの非人道的犯罪を隠すために作り上げて来たこと、だから被曝影響の過小評価が体系の中に埋め込まれていることをしっかりとつかまなければなりません。
同時にそこに目をやれば事実は単純に見えてきます。だから5日の勉強会の前半ではこの歴史的事実をきちんと掘り下げたいと思います。
 
これ以上の被曝を拒否するために、これ以上騙され続けないために、一緒に学びましょう!
 
 
*****
原発と被曝@議員さん向け勉強会 主催 くらしとせいじカフェ

原発のことをエネルギー政策だけじゃなくて被曝の観点からも語ってほしいー!と空に向かって叫んでるだけじゃぁ語ってなどもらえないことに気づいたので私たちが「原発」をどうみてどう考えているのか、「市民の声を国に届けることが政治家の役目です」と言ってくれる議員のみなさまに知っていただくことにした企画。(もちろん議員でない方も大歓迎)

この機会を是非活かし街宣、駅立ち、スピーチに展開くださいねー。市民のこころに響くのはリアリティのある言葉です。外部被曝は燃える石炭に手をかざすようなもの。内部被曝は燃える石炭をそのまま飲み込むようなもの。わたしたちにの身近にある「命」や「くらし」の観点から原発をどうか訴えていただきたいと思っています。様々な場所でお世話になっている守田敏也さんが今回もお力添えくださいます。

そして…お願いごと。手弁当で動いています。参加費は1000円以上のカンパということでチカラをかしてください。カンパは全て講師代と会場費にさせていただきます。

時:6月5日(18時30分から)場:草津まちづくりセンター306 尚、参加される方は申し込みをお願いします。09082080423 にしむら

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明日に向けて(1385)スリーマイル島原発の閉鎖が決定。脱原発の流れが加速している!(3日に城陽市でお話しします)

2017年06月02日 17時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20170602 17:30)

明日6月3日に京都府城陽市でお話しします。「大きく拓けてきた脱原発の展望を語る 原発メーカー東芝が崩壊!どうなる?トルコへの原発輸出‥高浜原発は? 脱原発の可能性を世界的視点から展望します」がタイトルです。東芝とトルコのこと軸に世界の脱原発の流れについて話しますが、この準備をしている最中に、脱原発の流れを象徴する事態がまた一つ入ってきました。アメリカスリーマイル島原発が閉鎖されるという報です。今回はみなさんと脱原発への決意をさらに前向きに固めるためにも、この事態を掘り下げておこうと思います。

5月30日に、アメリカスリーマイル島原発の閉鎖が、所有者のエクセロンから発表されました。同原発は1979年に2号機が大事故を起こしたものの、1号機が運転を続けていましたが、今後、米政府による特別の支援等がない限り、2019年9月30日までに閉鎖されるのだそうです。理由は採算悪化だとされています。シェールガスの価格低下などを背景に電力市場で苦戦が続いてきたことが、エクセロンから明らかにされており、報道各社もこの点のみを伝えています。

実際にはシェールガスの豊富な供給だけが原因なのではありません。むしろ福島原発事故後の世界的な脱原発運動の発展の中で、世界中の規制当局が規制基準をあげざるを得なくなり、どこでも採算割れを起こしていることこそが本質的な要因なのです。要するに原発は安全性を少し深く考えたらそれだけでもう採算に合わないしろものなのです。アメリカだけではなく世界各地で同じようなことが起こっています。危険性の固まりである原発にもはや未来などないことを私たち民衆の脱原発運動が突きつけているのです!

アメリカの規制当局は、とくに真っ先にこうした要求を取り上げざるを得ませんでした。なぜか。「アメリカの規制当局が日本よりましだから」という論調もありますが正しくはありません。そもそもアメリカ国内には、福島第一原発で次々とメルトダウンを起こした「マークⅠ」型格納容器を使った原発がたくさんあることのです。しかもその上、これまでのアメリカでの試算では、そのマークⅠ型原発=沸騰水型原発よりも、加圧水型原発の方が事故の可能性が高いという統計が出ていたのです。そのため沸騰水型にとどまらず、すべての原発の対策強化が求められたのでした。そもそも1979年に大事故を起こしたスリーマイル島原発も、沸騰水型ではなく加圧水型です。

このため2012年3月にアメリカ原子力規制委員会から、安全対策強化に向けた指令が国内全原発の所有者に対して出されました。内容は(1)複数のユニットの事故も想定し設計基準を超える事故に耐えられる自然災害対策を行う。911事件以降に各原発内に配備して来た仮設の電源やポンプなどをさらに強化する。(2)使用済み燃料プールに水位計を設置して水位監視を強化する。(3)マークⅠ及びマークⅡ型格納容器に関しては、格納容器ベント系統を強化し、過酷事故でもベント弁を確実に開放できるようにする。というものでした。

これとともに「情報要求文書」の提出も義務づけられました。そこでは以下の評価や解析が求められました。(1)最新の知見を用いて地震と洪水リスクの評価を行う。(2)地震と洪水に対する対処能力について現場での詳細な検査を実施する。(3)複数ユニットでの過酷事故に対応できる人員配置と情報伝達に関する評価を行う。僕自身はこれでもまだ足りないというか、原発はそもそも安全性の面では完成などしようのないテクノロジーなので、こうした対処でも安全性は確保できず、廃炉以外に道がないと思っていますが、ともあれこれらによって安全対策のためのコストが大幅に上がったことはよく分かります。

さらにこうした対処にバックフィット制度が適用されたのも大きなことでした。この点は日本の規制当局も「新規性基準」において採用したのですが、通例さまざまなプラントの規制は、建設された当時のものを満たしていればよく、新たに加わった規制が過去にさかのぼって適用されることはまれだと言えます。しかし危険性の大きな原発ではそんなことを言っていたら恐ろしいわけですから、上記の指令が新たに建設する原発だけでなく、過去に作られた全ての原発にも当然のこととして採用されることになったのです。そしてこのように新たな知見を採用して安全対策を重ねたら、どんどんコストが上がってしまい、そこにシェールガスの価格低下が相まって、まったく採算があわなくなってしまったのでした。これがスリーマイル島原発が廃炉になる理由ですが、当然にもこれは他の原発にも共通する問題です。このためアメリカではこのところ原発廃炉が続いているのです。

東芝の大崩壊もこのことと大きく関連しています。福島第一原発事故時に東芝は、子会社のウェスチングハウス社が6基、東芝本体が2基の原発を受注していました。しかしどの原発の現場でも建設費が高騰しはじめました。アメリカの資本主義は新自由主義のなかで情け容赦のない儲け主義体質を極めてきていますから、すぐに高騰したリスクの押し付け合いがはじまり、訴訟の泥沼が現出。現場の作業も遅れるばかりでさらに建設費があがるという悪循環のスパイラルにはまってしまいました。

一方で東芝本体が受注した原発(サウステキサスプロジェクト)は、GEの技術を元にマークⅠ型原発を手がけて来た東芝本体による設計だったため、即刻、資金の大半を供出していた電力会社が逃げ出してしまい、計画が頓挫してしまいました。しかし自分に都合の悪い事態を直視できなかった東芝は、もはや幻となった計画への新たな出資者が現れるのを待ち続け、あたら無駄な出費を拡大し、年々、傷口を拡大して、崩壊の要因の一つを形成してしまったのでした。そもそも東芝は福島第一原発事故を起こした責任企業そのものでありながら、自らの責任を捉え返すまっとうな視点を持てなかったために、崩壊へと突き進んでしまったのでもあります。スリーマイル島原発の閉鎖の報も、こうした流れの中で必然的に出て来たことであり、今後、アメリカのみならず、世界各地で原発の閉鎖が確実に続くのです。ここには原発に将来的展望などまったくないこと、民衆の脱原発の声が歴史を変えつつあることがはっきりと現れています。

このことは、都合の悪いことはなんでも無視して突っ走って来た安倍政権にとってもかなりの大ピンチなのです。原発は投資すればするだけ損益を拡大するしかないどうしようもないものになってしまったことが明らかだからです。にもかかわらず安倍政権は相変わらず東芝と同じ崩壊の道を歩んでいます。しかも自ら「トップセールス」と銘打って旗ふりして来た原発輸出路線の頓挫に変えて、強引に各原発の再稼働を強行し出しましたが、現実を直視できないものにけして未来はありません。世界の流れは明らかに脱原発なのです。

実際に台湾では完成目前の第4原発(通称日の丸原発)が凍結され、新政権で鮮明に脱原発が打ち出されました。日本が官民一体の売り込みをかけてきたベトナムも昨年暮れに輸入計画を白紙撤回しました。台湾もベトナムも世界の趨勢の中から原発推進がまったく国益にならないことをつかみとったのです。これらのことからいま、世界中で原発計画に大きな動揺が走っています。

みなさん。いまこそ正念場です。脱原発の流れをさらに確かなものにするために、奮闘を続けましょう。核のない未来に向けて歴史は大きく動きつつあります!

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原発講演会「大きく拓けてきた脱原発の展望を語る」。原発メーカー東芝が崩壊!どうなる?トルコへの原発輸出‥高浜原発は? 脱原発の可能性を世界的視点から展望します。午後2時からJR城陽駅そば鴻ノ巣会館ホールにて。入場無料。主催は原発ゼロをめざす城陽の会。http://www.geocities.jp/genpatudame/

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