■藁焼き・かつお火山(ひやま)
写真手前が背、奥が腹です。鰹の半身が、ここにあります(ニッコリ)。
鰹は、黒潮にのって移動する、サバ科の回遊魚です。春三月、高知県を発し、和歌山、静岡を経て、六月には常磐沖・福島県に、さらに北上して三陸沖に、八月には北海道沖まで達する群もあるそう。九月には南下をはじめ、脂ののった「下り鰹」と呼ばれています。
黒潮と親潮が交錯する混合水域は、常磐沖以北の、東北の沿岸にひろがり、栄養豊富で鰹を大きくしていきます。
それ故、常磐沖の鰹は、房総沖よりは脂肪がのりはじめ、風味があがると、古くから知られ、それを活かすための調理が、藁焼き・鰹ひやまとして、いまに伝えられています。
皮側に火をいれ、さっぱりと香ばしく仕上げる仕事は、常磐沖海域の最大漁港を有する、茨城県との境、いわき市南部の伝統料理です。
鰹は回遊魚故に原発事故の影響はありません。漁業規制はないにも関わらず、自主検査で「検出せず」と公開されています。風評被害のために、漁獲量は激減した、そうです。
この日、供して下さったのは、三陸沖・宮城県の鰹を、伝統技法で調理してくださった食です。
この美しい赤! 皮の香ばしさ、鉄分を含む身の香りの良さ!
何をごまかす必要もない鮮度があるので、生姜醤油、大蒜醤油だけで、あがれます。香味野菜は食をすすめますが、それを必要としない、刺身以上に健やかな刺身であるのが、ひやま、だと思います。
[作る]
一尾の鰹を四つの筋(背と腹、背骨を挟み二枚に)にさばく。
藁を燃え上がらせ、皮側だけをキシリッと焼き、準備しておいた氷水に一気に沈める。身に熱をまわさない。
屋外で、藁を積み、瞬間の火の仕事をする。しっかり1cm程の厚みに切りわけて、生姜や大蒜醤油で食す。
だいこんつま、青紫蘇、茗荷をお好みで。
皮側から見れば、一気に火をあてるのに藁を必要とすることがわかります。藁故に、焦げ付きはしないのです。(ニッコリ)
考えてみてください。六月から八月には、まだ、今年の稲藁はありません(ニッコリ)。どれだけ大事に準備して、この調理がなされたか、伝わります。
余所者なのに、何故、知っているのか?(笑)
はるか昔、日本の祭り食や伝統食を調査、記録する試みの末端に加わったことがあります。
どちらの方も、田舎料理と言われながら、晴れやかな笑顔で、教えてくださいました。旺盛な食欲を歓迎してくださったことを思い出します。
常磐沖の鰹がいまはあげられなくても、この味は絶やさないって、頑張っている方々が、ちゃんといます。
四国にも、お江戸にも、異なる美味しい食べ方があるのです。その土地で捕れるものを、一等おいしく食す工夫です。(ニッコリ)
応援したいと思います。
日本のあちこちで、天災、環境破壊、過疎化がすすみ、失われていく食習慣、行事文化があるのです。
ネット社会なら、よき意味で、記録を拡散することができます。文化を伝え、引き継ぐことの助けになるはずです。
香ばしく、健やかな鰹のひやまは、とても美味しくいただきました。無粋な演説(笑)をしなくとも、圧巻の存在感でした。
久しぶりに、本物の鰹ひやまに出会って、熱く語ってしまいました(笑)。
海は繋がっていて、地球は一つです。海の幸を通して、元気に手をつなぎましょう。
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