ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

ファンタジアランドにおけるトット記者の文章の作り方   令和3年1月31日

2021-01-31 17:22:15 | 日記


今まで、1700を超えるブログを書いてきました。
最近、このブログ1700の内容の中から、2つか3つを合体して文章にすることもあります。
このようにして出てきたものが、ファンタジアランドのアイデア広場お話になります。
基本は、参考文献の中の気に入った部分を40文字以内の1行で文章にまとめます。
気に入った文章は、一つの本から10~100行程度作ります。
40文字以内の1行の文章を1万行ぐらいで、ひとまとめにします。
1万行の中から問題意識とかかわりがある文章を120~160行選びます
この120~160行をブロックに分けて7段落をにします。
7段落を並べ替えながら、相反する文章や時事問題からアイデアを出します。
最近は日経新聞の話題から具体例を引き出して、アレンジすることが多くなりました

余談ですが、どうしてもコロナ禍の中では、暗い話題が多くなります。暗いのは、好きになれません。業績が悪くなる会社もありましたが、業績を上げる明るい企業も増えてきました。明るい企業にテーマを当てれば、暗くはなりません。明るいほうが、能動的に生活に取り組めます。明るい気持ちを持ったほうが、ブログを書いていても、前向きになるような気がします。

参考文献 
文系のための人工知能の教科書 福馬智生 ソシム 2020.4.15
台湾のコロナ戦  藤 重太  産経新聞出版  2020.8.1
売り上げを減らそう  中村朱美  ライツ社 2019.6.17
あるものでまかなう生活  井出留美 日本経済新聞出版  2020.10.7
困難をチャンスに変える 加藤史子 プレジデント社 2020.8.1
巨大古墳の時代を解く鍵黒姫山古墳 橋本達也 新泉社 2020.11.1
オンライン学習でできることできないこと 千葉大学教育学部付属小学校 明治図書 20220.9
技術の進歩と日本経済  福田慎一  東京大学出版会  2020.8.25
わさびの日本史  山根京子  文一総合出版  2020.8.20
今日からできる小さな会社のSDGs 村尾隆介 青春出版社 2020.6.1
最高の休息法 久我谷 亮  ダイヤモンド社 2016.7.28
令和アフターコロナの自治会町内会 水津陽子 実業之日本社 2020.9.9
海と陸をつなぐ進化論  須藤 斎  ブルーバックス 2018.12.20
働く人のポジティブヘルス 川上憲人 大修館  2019.6.10
スポ飯 橋本玲子 ベースボールマガジン社 2019.5.31
ひとりビジネスのはじめ方 吉田英樹 青月社  2016.8.10
ちょいバカ戦略 小口 覺  新潮新書 2019.1.20
失敗ゼロからの脱却  芳賀 繁 角川 2020.7.10
持ちすぎない暮らし 金子由紀子 PHP研究所 2011.10.4
シンプルライフ術 大原照子 大和書房 2002.3.10
ユーモアを生きる 柏木哲夫 三輪書店 2019.3.15
韓国の若者  安宿緑  中公新書ラクレ 2020.9.10
農福連携が農業と地域を面白くする 吉田行郷 他  コトノネ 2020.1.31
韓国社会の現在 春木育美 中公新書 2020.8.25
世界史を変えたパンデミック 小長谷正明  幻冬舎新書 2020.5.30
米中時代の終幕 日高義樹 PHP新書 2020.8.25
子育ての心理テクニック 島 智久 明日香出版社 2019.11.27 
ロジカルシンキング 狩野 進 朝日出版社 2019.8.23
働き方とイノベーション 山口隆英 他  神戸大学出版会 2020.3.30
エンジニア55歳からの定年準備 小松俊明 日本能率協会マネジメントセンター 2019.11.10
子どもとスポーツのイイ関係  山田ゆかり 大月書店  2019.4.15
海洋エネルギー利用技術 永田修一 他 森北出版 2015.6.16
東大教授が考える新しい教養 柳沢敬之 他 幻冬舎新書 2019.5.30
スピード整理術 西山昭彦 実業之日本社 2005.8.15


異常気象による大雪やバッタの被害に備える  アイデア広場 その805

2021-01-30 17:57:48 | 日記


 2020年12月中旬から1月上旬にかけて、日本海側を中心に大雪が降りました。多くの車が身動きできない映像が流れたので、ご記憶の方もいることでしょう。東北地方や北陸地方などでは、19地点で72時間降雪量が観測史上最多の記録を更新したのです。今回の大雪は、偏西風の蛇行で寒波が流れ込んだことと、日本海の海面水温が平年よりも高いことによるものです。2020年の夏の猛暑で、海面水温が高くなっていました。雪が降り始めた12月15日前後の日本海の海面水温は、平年に比べ2~3℃も高かったのです。大陸からの強い寒波の訪れと、日本海の海面水温が平年よりも高かったことが、水蒸気を大量に発生させ、豪雪という現象を起こしたわけです。でも、年間の総降水量は、増えも減りもしていないのです。ただ、降雨量の増減はないが、極端な豪雨や豪雪は増える傾向にあるのです。いわゆる異常気象が、頻発する状況になってきたともいえます。
 北海道沖に暖かい海水の塊が滞留する影響で、この数年サンマ漁は歴史的な不漁を続けています。サンマは寒流である親潮の流れに沿って、千島列島から北海道の東岸沖を抜け東北沖へ回遊していました。その親潮の勢いを示す流量は、90年代から少しずつ減少し、現在も回復の兆しが見えないのです。海流の勢いは、主に海上の風によって生み出されます。親潮の勢いは、北太平洋上にあるアリューシャン低気圧によって左右されます。地球温暖化が、この海域の風を弱めている可能性があります。もう一つの要因は、流氷によるものです。オホーツク海の場合、アムール川から大量の真水が注ぐため塩分が薄くなり流氷ができ易いのです。流氷は流れている間に、たくさんの植物性プランクトンや養分を付着させて南下してきます。流氷の下で、魚が活発に活動し増えているわけです。でも、流氷に閉ざされた冬場の漁場は、漁業ができません。流氷がある間は、一種の禁漁期間になり、魚を大きく成長する時期にもなるわけです。でも、1990年頃から、流氷の厚さが薄くなってきました。魚が成長する期間が、短くなってきたわけです。禁漁期間が短くなり、漁業資源の保護ができにくくなってきたともいえます
 北から寒流の親潮が、南から暖流の黒潮が流れてぶっかって三陸沖に潮目を作ってきました。潮目のできる日本列島の太平洋沖は、世界屈指の好漁場でした。日本の漁獲量の約5割を占める北海道の南東沖の海域には、冷たい親潮が流れています。サンマは、セ氏12~18度の冷たい水を好み、浅い所に生息する魚種です。勢いを弱めた親潮の流れは、サンマの南下を妨げてしまった可能性があります。北海道近海のサンマ産卵場所が、海水温の影響で、東の海域に移動しているのです。暖水塊の発生は、サンマと同じように回遊しているサケの水揚げ減少との関連も取り沙汰されています。とは言え、沖に行けば必ずサンマがいるとは限らず、燃料代がかさみ漁業者の負担は増しているのです。勝手な評論家は、寒冷な海と温暖な海、寒冷な水と暖かい水を人工衛星から見分ける手法を開発すれば良いなどというかもしれあせん。また、暖かい海水を好むマイワシが増えたから、良いではないかなどと言う人もいるようです。雑音はともかく、サンマのすむ環境が変わったことは間違いないようです。
 一方、異常海水温の恩恵を得ている漁場もあります。富山湾から能登の海で寒ブリ漁が本格化しました。北陸の漁港は、寒ブリの旬到来に活気づいています。富山県のブランド魚「ひみ寒ぶり」は、12月の水揚げ量が前年同月の2倍と好調です。ブリは、西日本の正月料理に欠かせません。成長につれて呼び名が変わる出世魚」で、縁起の良い魚なのです。
今年の冬は、ハレの日だけ特別に味わう魚ではなくなってきました。刺し身やしゃぶしゃぶ、そしてブリ大根など日常の食卓でも味わうことのできるリーズナブルな値段になっています。日本の2019年の水産物輸出額の中で、ブリはホタテや真珠に次ぐ3位を確保しています。もっとも、食阜にあがるブリの半分以上は養殖ものです。この養殖ブリは、主に九州で育てています。エサをたっぷり与えた養殖ブリは、霜降りのように真っ白に脂が乗り人気が高いのです。
 異常気象は海だけでなく、陸上にも深刻な影響を与えています。東アフリカでバッタの大量発生による被害が広がり、数千万人の食料供給が脅かされる状況が続いています。バッタの群れは、ものの数時間ですべてを食い尽くしてしまいます。数億匹のバッタは、ケニアをはじめとする国々に移動して農地に壊滅的な被害を及ぼしています。バッタの群れが、作物や牧草地に襲いかかります。その跡は、何もない農地や牧草跡になってしまうのです。ジブチ、エリトリア、エチオピア、ケニア、ソマリアの数千万人が、深刻な食料不に陥る状況があります。バッタの大量発生が、東アフリカの7カ国に拡大したのは最近にはないことでした。2020年の1月にはケニアでは、過去70年で最悪の規模の蝗害が発生しています。一部の専門家は、今回の蝗害はこれから起こる大きな変化の前触れかもしれないと指摘しています。
 サバクトビバッタの大量発生のきっかけは、2018年5月のサイクロンでした。このバッタは、アフリカと中東の乾燥した地域に生息しています。大型のサイクロンは、アラビア半島南部の広大なルブアルハリ砂漠に雨を降らせたのです。サイクロンの雨は、砂丘の間に多くの一時的な湖を出現させました。サバクトビバッタは、大雨が降って植物が繁茂すると大発生するのです。バッタの大発生が3度起こり、アラビア半島に生息するバッタは8000倍に増えました。アラビア半島でのバッタの繁殖は、異例ともいえる2つのサイクロンの発生によってもたらされたものでした。インド洋の海面温度の上昇は、サイクロンのエネルギーを高め、今回のバッタの被害(蝗害)を引き起こしたのです。蛇足ですが、バッタの初期発生の段階で根絶する殺虫剤は、各国に準備されています。でも、発生が拡大した場合、準備しただけの殺虫剤で抑えることが難しいのです。発生を素早く見極める人材の育成が求められているようです。いずれ、人工衛星などの監視体制が整えば、この対策は現在よりは効果的に進められるかもしれません。いずれにしろ、自然の変化を捉える人類の進化した目や耳が必要になるようです。
 雷が鳴る前に、急に頭痛や腹痛を訴える人がいることはよく知られています。天気予報で今日は雷が鳴ると予報がでていれば、先に頭痛薬を飲むと良いわけです。ぜんそくの場合などでは、最低気温が15度の気温が5時間以内で3度下がると発作が出ることが多くなります。気象が人体に及ぼす影響は、個人差が大きいものです。でも、ある一定の条件が整うと、確実に病状がでることも多いものです。個人を超えて、集団で備えることも必要になります。温暖化は、高い気温が苦手な作物が栽培しにくくなります。気候の変化によっては、それまでになかった病虫害が発生したりします。気温や海水温が上昇すると病害虫が増え、穀物生産が減り食糧難を招く恐れがあるわけです。企業は、精度の高い長期予報、特定地点の情報、情報端末から気象情報を引き出すことを求めています。これらの情報を提供できるようになれば、ビジネスチャンスが訪れることになります。
 余談ですが、昨年の豪雪で流通業では、損害を受けた企業があったようです。これを事前に予測できれば、損害を最小限にできるわけです。夏から続く対馬海流の海水温、そして大陸からの寒波の来襲が分かれば、それに備えることができます。それも、かなり前からわかると、冬用トラックなどの手配がスムーズになります。そんな情報を提供するビジネスも、これからは出てきてほしいものです。



危機を克服しながら豊かになる人々 アイデア広場 その804

2021-01-29 18:21:23 | 日記


 オーストラリアでも、新型コロナウイルスを受けたテレワークが広がっているようです。新型コロナ以降、大都市のシドニーから「脱出」する人が増えています。海外からの移民が多いオーストラリアでは、仕事がある都市部に人口が集中する傾向がありました。一つの目安が、住宅価格の上昇率になります。シドニーやメルボルンなどの8都市では上昇率が2%でした。でも、これら大都市以外の地方部では6.9%の上昇だったのです。住宅価格が上昇する際は、都市部の上昇率が地方を上回るのが普通でした。そこで人気の地域はというと、シドニーから車で約1時間半のキルケア地区がその候補になります。4LDKで1億3000万円と高額ですが、人気物件となっているのです。新型コロナでテレワークが一般化し、ライフスタイルを重視する人が増えているようです。
 オーストラリアと同じように、東京でも人口流出が起きています。新型コロタウイルスの感染拡大を境に、東京から人口が流出しているのです。2020年11月に東京都から転出した人は約2万8千人で、前年同月比で19%も増えています。移住先になっている地域は、東京都心から50~100kmの圏内になっているようです。神奈川県鎌倉市や相模原市、千葉県流山市、栃木県宇都宮市周辺が移住先になっているようです。危機を、チャンスと見る自治体もあります。地方に、優秀な人材を呼び込むチャンスととらえているわけです。東京からの移住と住宅の取得契約を結ぶと、150万円を助成する制度を設けている自治体もあります。
 人口密集地は、感染のしやすい地域になります。風通しが悪く、人が密集する場所では、感染リスクが高いというわけです。この事実を突きつけられて困ったのは、カラオケ店でした。確かにグループで歌えば、感染の3密という条件を満たしてしまいます。でも、危機を利用して、新しいことをやろうする人たちはいるものです。コロナ禍において、人々はストレスの発散や解消を工夫するものです。見方を変えると、カラオケ店は安全な場所になります。1人で1室を使えば、密室とはいえ、家と同じような環境になります。カラオケボックスには「朝うた」というメニューを作り、30分300円から利用できるようにしました。会社に出勤する前に、喫茶店代わりに、ひとりカラオケ店をストレス発散に利用する人たちも出てきました。もっと上をいく人は、一人で、楽器を持ち込んで防音室の代わりに使用する人も現れたのです。
 人々の中には、困難に陥っても、そこを上手に楽しく乗り切る方法を見出す人たちがいます。彼らは、好きなものを選んで食べられるバイキング食堂のように、仕事でも好きなものを複数選んで仕事するべきだと考えます。収入源を複数確保できるなら、さらにやりたいことにも挑戦できると意欲を持つわけです。ある金融業を退職した30歳代男性は、憧れの地方移住を実現しました。彼は金融業で養ったスキルで、地元企業の財務やマーケテイングのコンサルティングなどを支援しています。この給料が、15万円になります。さらに、町の集落支援員としては、月に17万円を、そして草刈りでは1万円といった具合に収入を得ています。この地域で、彼は30種以上の仕事を行っているようです。地方では、仕事を複数持つことで収入を安定させています。収入源を複数確保できるなら、固定費をある程度下げれば生きていける環境があるようです。
 先日の市場において、大手の外食株が軒並み買われたと報道されていました。コロナ過が収まると予想し、今後の外食需要の戻りを享受できるとの期待感が高まっているのです。確かにコロナ過が沈静化すれば、昨年のGo to Travelのように、観光地は旅行客でいっぱいになるでしょう。日本の家庭全体を見渡せば、消費の抑制や給付金の取得で家計が平時より25兆円ほど膨れ上がっています。人は自由を奪われた時に、ストレスや悩みが増します。そしてこの抑えこまれたストレスが解き放とうとします。これが解き放されれば、需要は「倍返し」で戻ってくるはずだと誰しも期待します。感染の落ち着きとともに、これまで控えられてきた旅行や飲食などにお金が向かうと予測するわけです。株式に精通している人は、旅や食の爆発を予測しているようです。この爆発を受け止め、ストレスと上手に発散し解消し、持続的な旅と食を継続する仕組みを事業家は、用意していることでしょう。ある意味で、ビジネスチャンスの到来です。
 副業を巡る潮流はここ数年で大きく変わり、副業を持つ人は珍しくなくなりつつあります。最近は、多くの仕事を並行して手掛ける「マルチワーカー」が活躍しています。マルチワークをうまく機能させれば、リスク分散の効果も大きくなります。収入増やスキル向上のほか、リスク分散の効果も見込めるというわけです。関連性もない別々のものを引き合わせることで、新たな価値が生まれることは経験則として知られています。仕事の種類や収入は異なるが、仕事を多数組み合わせることで有利な生計を立てることが可能になってきています。マルチワーカーの中では、人間関係やスキル、社会に貢献する感覚、お金の獲得、そしてそれ以外にもたくさんの価値が現れることがあります。1つの仕事の人脈は、別の仕事に生かすことができるなどの好循環につながるケースもあるのです。
 世界の国々の農業政策では、補助金を出しています。穀物生産を高めた農家や家畜をたくさん育てた農家に、補助金が多くだされてきました。でも、最近は農産物の生産と直接関係のない事業にも補助金を出す国が現れてきています。たとえば、スイスでは自然景観の保護に新たな補助金を農家に増額するようになっています。農業と観光が融合して、地域を豊かにする方策が取られているのです。農業地域も、農業と自然景観を生かした民宿の経営で豊かになっています。幸福感の高い地域は、単線系だけでなく、複線系の仕掛けを持つようです。幸福を大切にする地域は、文化の質が高くなり、創造性の豊かなになります。このような地域は、自分のために働くことが、地域の豊かさを高め、環境保護につながる仕組みを構築しているようです。


グローバル人材を育成する大学入学共通テスト アイデア広場 その803

2021-01-28 17:24:43 | 日記


 最後のセンター試験に比べ、新しい大学入学共通テストは、地歴と公民の問題冊子がそれぞれ10ページ以上増えていました。それを読みながら、必要な要素を取捨選択する情報処理能力が試されている問題形式になっていたようです。狙いは、複数のテキストや資料を読み比べる情報処理能力を見る問題のようでした。新手の出題形式が多く、図表をふんだんに使っています。複数の資料や文献を読み解く問題が、数多く出題されたという経緯です。英語のリーディングは、従来のセンター試験よりも1千語ほど多い5千語以上になっていました。英語では、話し手はこれまでは米国人が多い傾向がありました。今回のテストでは、英国人や日本人も採用され、語感の多様化がはかられたようです。情報処理と語群の大量化、そして多様化がこれからの大学入試傾向になるようです。もっとも、この傾向は一般社会で求められる能力ということになります。
 知識の読み取りの優れた学力も重要ですが、読み込んだ知識を課題に応じて可変化する能力も求められています。グローバル化や高度情報化の現代社会を生き抜くためには、いくつかの力が必要です。一般的には、「①自律的に活動し②道具を相互作用的に使い③異質性の高い集団のなかで役割を果たす」というものになります。今回の大学入試テストは、世界の流れに通用する人材を選択する方式に見えました。
 九州大学では、教育データの活用に取り組んできました。今回のコロナ禍においても、その取り組みが生かされているのです。19000人の学生と8000人の教員に、学習管理や教材配信システムが提供されています。現在開講中の4800科目で、データの活用が可能になっています。教育のデジタル化は、学生の質疑の応答や教材へのアクセス記録を容易に収集し活用できる環境を整備しつつあります。将来的には、小学校から大学、そして社会人教育までの教育データを本人の同意のもとに蓄積する構想をもっているようです。デジタル教育の導入により、学習履歴をデータベースとして蓄積が可能になり、そのデータを利用する仕組みができるわけです。客観的な教育効果のデータを得られ、生徒や学生だけでなく、教員の客観的な指導力の評価も可能になるというものです。
 もうすぐ、デジタル教科書が作られます。1つのタブレットに、小学校1年から高校3年までの学習内容を系統的に配置も可能になります。このタブレットに、学習書や補助教材もタブレットにインストールできることでしょう。このタブレットに、①自律的に活動し②デジタル機器を相互作用的に使い③異質性のあるアクティブラーニングの教材を入れておけば、世界の流れについていける人材を育成できるわけです。デジタル教科書ができれば、誰でも、どこでも、どのような進度の速さでも学べるようになります。さらに、デジタル教科書にオンラインが接続されれば、教育の範囲はさらに広く便利になります。学習意欲のある子供は、どんどん前に進むことができます。教育デジタル化では、学習履歴データが自動的に記録されます。
 学習履歴データベースの蓄積が実現できれば、高校や大学の入試や企業の採用選考は大きく変わります。今までは、教育の効果を測る指標として、学力や学歴、そして知能が重視されてきました。現在の高校受験や大学受験そして就職活動にともなう各種試験は、無駄が多い仕組みになっています。今回の大学入学共通テストでは、複数の分野の情報を咀嚼し課題を解決する問題が出されています。でも、50万人の受験生の課題解決問題を、短時間で採点することは難しいというその限界も露呈しています。一発勝負の試験や面接だけでは、十分な能力の把握は難しい面があるわけです。蓄積された学習履歴データを活用した入試方法は、大学が求める学力やデジタルツールのスキルレベル、そしてコミニニケーション能力などを明示しておけば、その能力を持った生徒たちが受験をします。それらの能力を持つ生徒に、有利になる配点をしておけばよいわけです。大学が求める学生を絞り込むのには、客観的な学習履歴データの利用が公平で合理的な選抜方式になります。事前に大学の要求水準と生徒の持つ能力が、マッチングすれば良いのです。マッチングの基準が、生徒の小学校から高校までの学習履歴データになるわけです。学習履歴データには、①自律的に活動②デジタル機器を相互作用的に使う能力③異質性のあるアクティブラーニングでの活動歴などがあることになります。
 文部科学省は、2025年までに小中学生全員に1人1台タブレットもしくはパソコンの配備を目指していました。それを、2020年度中に、小中学生全員に1人1台情報端末の配備を早めようとしています。そして、もうすぐデジタル教科書が作られます。すると、小中高の教科書が、タブレット1枚に収納されることも可能になります。学習履歴もタブレットに蓄積していくこともできるわけです。親の立場からも国立場からも、優秀な子供をより優秀に育てたいということになります。社会の要請も多様になります。社会が変われば、学校に求められる学力も変わります。社会の要請により、小中高の学習内容は変わっていくわけです。デジタル教育も変わっていきます。ある意味で、可変性のある教育システムの構築が求められるわけです。
 日本の教育現場のハードソフト両面のデジタル化は、遅れが浮き彫りになっています。この遅れを、悲観する人々も多いようです。でもデメリットをメリットに代えることは、歴史上いくらでもあったことです。すでに行っている国とこれからやろうという国には、メリットデメリットがあります。デメリットは、このままでは遅れてしまうということです。メリットは、すでに実践している国の良い事例やインフラの長短を知ることができます。その上で、先進国(途上国の先進事例も含む)の事例を参考にしながらシステムを構築し、最適化した教育のデジタル化を始めることができるのです。社会が変われば、学校に求められる学力も変わります。社会の変化に柔軟に可変化できるシステムを構築することができれば、日本のデジタル教育を飛躍的に向上させることが可能です。後発の利を生かして、産学共同で国民の学力向上と不足する人材の育成とその能力の向上を図ることができるわけです。
 子ども1人が1つのタブレットを持ち、オンライン教育を受けることが可能になります。ITインフラの整備が進み、デジタル教科書も実現してきます。デジタル教科書の副教材やデジタル学習のソフトが進化すれば、学習は進みやすくなります。教員は個々の生徒の学習履歴を瞬時に把握でき、それに応じた課題が出せます。子ども達の脳の発達は、急速に進んでいきます。年上の子どもの動きや学習を見ているだけで、次の日にはできている子ども達がいます。教材に子ども達が合わせるのではなく、子どもの発達に教材を合わせるようにする仕組みがベターになります。小中高のデジタル学習内容が一つのタブレットに集約されていれば、子どもの発達に合わせた教材配列が可能になるかもしれません。ある会社は、人工知能(AI) が生徒の疑問点に答えるチャボット機能を開発しています。この開発の狙いは、子どものつまずきの原因となる基礎まで遡って、基礎が分かる問題を出題し、弱点の克服につなげることのようです。これをより積極的に使うならば、興味関心のあることを、今以上の能力を向上させることに利用できます。小中高のデジタル学習内容とチャボット機能、そして子どもの関心と能力がかみ合えば、クラスや学年を超えて、学べる環境が出来上がります。
 教育の世界には、ピグマリオン効果というものがあります。ある権威者から、「この子は伸びますよ」とある教師に告げたのです。この教師が、その言葉を信じて、子どもを見ているとその子供は実際に伸びたのです。実は、ピグマリオン効果は、教師の期待が子どもの成績を直接伸ばすものではありません。子どもの成長を「期待」する教師の応答が、子どもを伸ばす重要な要素になります。教師が子どもの成長を信じ、期待することは、教師と子どもとのやりとりの量と質を変えるのです。つまり、教師の応答に子どもを伸ばすヒントがあるわけです。質の高い教師と子どものやり取りをAIの装備したチャボットができるようになれば、教育革命になります。チャボット機能を向上させ、子ども達に質の高いやり取りを行うわけです。小中高の一貫したデジタル学習履歴とチャボット機能、子どもの関心と能力、そしてピグマリオン効果を組み合わせれば、面白い授業風景が見られるかもしれません。自律的に活動し、デジタル機器を相互作用的に使い、異質性の高い集団のなかで役割を果たす環境の中で、将来のグローバル化に貢献できる人材を育ててほしいものです。




フェアトレードを推進する精神的原動力  アイデア広場 その802

2021-01-27 18:21:46 | 日記


 最近、イギリスや中国、そして日本など主要国は「脱ガソリン車」の方針を表明しています。アメリカ大統領のバイデン氏も、電気自動車(EV)重視を打ち出しています。EV普及は、世界中で加速する勢いです。この電気自動車には、リチウムはもちろんコバルトやニッケルといった金属が重要な原料になります。コバルト需要は、増加を続けています。いまは供給面では大丈夫のようですが、20年代半ば以降に供給不足になります。でも、値上がりを続けているのです。コバルトは、EV用のリチウムイオン電池の正極材に使われます。コバルトを使うと、容易に正極を作ることができ、リチウムイオン電池の性能も安定するのです。一方、倫理的な問題から、コバルト製品を嫌う消費者や企業が存在することも事実です。
 コバルトは、現時点でコンゴが世界の埋蔵量の51.4%を誇り、鉱石生産で71.4%を占めています。問題は、劣悪な環境で児童によって掘られた鉱石もあるということなのです。ある人権団体は2019年、アップルやテスラなどを訴え世界の関心を呼びました。採掘作業中に死傷した子どもたちの家族に代わって、電気自動車のテスラなどを訴えたのです。この訴えに、世界の大企業は対策を迫られることになります。一つの対策は、この人権団体に採掘や鉱石取引の監視をしてもらうことが、一つの対策になりました。そこで、監視組織を設立し、その組織に、世界の大手企業が運営資金を提供することになりました。ドイツの大手企業、韓国のサムソン、テスラなどが参加します。ここの組織が認めたコバルトは、フェアトレードの要件を満たしているということになっています。コバルトの倫理的な問題をクリアできなければ、EVの生産が円滑にできない状況が生まれているわけです。
 インドネシアは、1990年代以降、急速に漁業生産量を伸ばしてきました。2006年以降は中国に次ぐ世界第2位の漁業生産量を誇っています。この国で水揚げされた魚介類は、近隣の中国やタイなどに輸送され、そこで加工されています。この加工された魚介類が、日本や先進国に輸出されるという流れになります。インドネシアも中国と同様に、養殖業の割合が5割以上を占めています。東南アジア諸国での養殖エビは、バナメイエビやブラックタイガーなどが有名です。エビの養殖の問題は、養殖地造成のためにマングローブ林を伐採する環境破壊があります。マングローブの森は、養殖池の建設、伐採、都市開発などのために急速に失われています。ここで養殖されたエビ類が、日本などの先進国へ輸出されるわけです。マングローブ伐採というの環境破壊の上に養殖されたエビが、日本に送られていることになります。フェアトレード商品は、途上国の生産者に対する最低の生活を保証し、貧困問題や環境問題を解決に寄与するものでなければなりません。その観点から、日本の姿勢を指摘する向きもあるようです。
 アジアでのエビ養殖池開発が著しい時期には、この流れがマレーシアのペナンの海岸にも波及してきました。1994年、ペナン島西海岸のマングローブ沼沢地で、外資系によるエビ養殖場の建設とその拡張事業が行われました。ビジネスをすることによって生み出される社会的な費用を、払わない企業があります。この企業は、かつて海岸をゆたかに縁取っていたマングローブの森を破壊していきます。マングローブ林は、きわめて多様な生きものに餌やすみかや揺藍場を提供しています。この破壊に対して、1994年「魚資源の保護,と持続可能な漁業の促進」を目標とするNGOが正式に活動を始めました。荒廃した海岸で、デモンストレーションとしてマングローブ植樹活動を行ったのです。1997年から2018年までに、111へククールの水辺に33万本のマングローブが植えられました。このマングローブの活動の成果は、2004年12月に起きたスマトラ沖大地震の時に現れたのです。海岸を襲った津波の勢いを、マングローブが緩和しました。あるいは、マングローブにしがみついて難を逃れた人びとも多数でたのです。世界の貧困と飢餓をなくすには、大規模な森林作りやマングローブの植林が効果的です。植林には、それほど費用がかからず、効果が高いことが分かっています。
 マングローブのお話を続けます。アフリカのエリトリアの貧しい村は、マングローブ植樹プロジェクトで豊かになりました。現在ハルギコには数百万本のマングローブの木が植えられ、村の生活を豊かにしています。この木を植えた人は、村の貧しい女性たちでした。このプロジェクトは、雇用を産み、収入をもたらしました。マングローブの木は、6kmにもわたって葉の茂る緑の林になったのです。この木の根には、小さな魚やカニやエビなどが生きていく住み家になっています。マングローブの木のおかげで、漁師達は前よりたくさんの魚を取って商売ができるようになりました。ヤギや羊は、喜んでマングローブの葉を食べます。でも、葉っぱだけでは体重は思ったほど増えませんでした。そこで村人は、ヤギや羊にマングローブの葉と乾燥させた実、それに干し魚の粉を混ぜた餌をやったのです。餌の改良により、前よりたくさんの肉やミルクが取れるようになったのです。家畜の成長により、村は豊かになりました。
 欧州は、フェアトレードを受け入れ始めています。フェアトレードは、労働者の健康を守りながら、適正な賃金を保障していきます。この対極にあるものが、ファストフクッションと言われています。ファストフクッションを如実にした事件が、バングラデシュの縫製工場で起きました。2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊でファストファッションの縫製工場が入った複合ビルが崩落し、死者1138人、負傷者2500人以上を出す大惨事が起きました。フェアトレードの精神の台頭の背景には、このような事故を起こすファストファッションへの反動もあります。フェアトレードで仕入れた豆を自家熔煎したコーヒーを、スターバックスの2倍以上の値段で楽しみます。フェアトレードの支持者は、商品の品質にこだわる点で真物質主義的消費者といえるかもしれません。ある意味で、幸せである状態が、続いている総時間が大事だという精神になります。人の不幸の上に、長くいたくはありません。人が不幸に陥らないように努力をしながら、自分の幸福を追求する姿勢のようです。人が幸せを実現するために、人生に真剣に向き合う精神ともいえます。

パンデミック対応の良し悪しが国家の防衛力を左右する アイデア広場 その801

2021-01-26 18:02:34 | 日記

 新型コロナウイルスのパンデミックに、世界が苦しめられています。このようなウイルスや細菌は、まだまだあるようです。哺乳類や鳥類には、未知のウイルスが170万種ほど存在します。170万種ほどのうち63万種が、人に感染する可能性があると推定されているのです。動物と人に感染する病原体によって引き起こされる感染症は、200種類以上が確認されています。あまり知られていないことですが、毎年5つ以上の新たな人獣共通感染症が発生しているのです。近年パンデミックを起こした感染症は、インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(NMRS)、そして新型コロナウイルスになるわけです。新型コロナによる経済的損失は、1月から7月までで推定10兆ドル以上になります。おそらく20兆ドルとか30兆ドルに損失は膨らんでいくことでしょう。新しいウイルスは、次々と発生することが推測されます。この予防にかかる費用は、200億~250億ドルといわれています。各国の動向とともに、WHOの動向にも注意を払っていきたいものです。自然からの驚異もありますが、人為的脅威も続いているのです
 内戦が続いた地域では、対人地雷が多く埋設されています。対人地雷は、人を大けがさせることが目的です。1人が地雷で負傷すると、仲間2人で肩を抱かなくてはなりません。
対人地雷の負傷は、3人の兵士の戦闘能力を減らすことになるのです。この地雷は、敵の戦闘能力を削ぐことが狙いになります。対人地雷は安いものだと、1個3ドル程度なので大量に敷設できてしまいます。でも、地雷を売ることが行われても、それを取り除くことまではしてくれません。戦争が終わると、犠牲者は兵士から住民に変わります。たとえば、カンボジアの地雷は、中国製やソ連製が多いのです。地雷除去の目的は、被害者を無くすことと、安全な土地を取り戻して地域を復興することになります。日本企業のコマツは、1998年ごろから地雷問題に取り組みはじめました。2002年に日本政府が、対人地雷除去機を輸出管理リストの規制から外しました。このころから、本格的に地雷除去に取り組んで、地元の人々に喜ばれています。
 対人地雷の非人道性や非生産性は、繰り返すまでもありません。新型コロナウイルスのパンデミックによる経済損失は、半年で深刻で10兆ドルと日本のGDPの2倍に上ります。新しい病原体が出てきた時は、集団感染の特定や診断法、治療法を模索します。初期の感染ルートやウイスの特徴を、WHOを中心に各国が共有しなければなりません。大規模感染が明らかになった2020年1月時点において、中国政府のこの感染症の情報公開が不十分だと各国から疑問が出ています。日本政府は、「初動に出遅れ」と「水際対策に失敗」し、国内に混乱を招きました。経済的な損失はもちろんですが、政府に対する国民の不信感が高まりました。経済力の低下や国民の不満は、ある面で、日本の安全保障の力が低下したことを示しているのです。感染源の中国は、十分な情報がなくても早期に発見し、隔離と治療を行って感染者と死者数を抑えたと胸を張っています。情報公開の不十分な中国は、ウイルスの情報を公開しないままワクチンを作りました。中国はこの1年間の短期間でワクチンを作り、「ワクチン外交」を優位に展開しています。ある意味で、新型コロナウイルスを利用して、国力を増強させたとも言えます。日本は新型コロナウイルスという地雷を踏んで、国民が負傷し、政治と経済が疲弊しているという構図になるかもしれません。
 一方、注目を集めたところもあります。中国に近く、人的交流も盛んな台湾が、コロナウイルスを封じ込めることができたのです。2020年1月21日に台湾国内で、初の感染者(武漢からの帰国者) が見つかりました。その後の経過を見ると、2020年5月20日までの台湾の感染者は440名、死者は7名です。5月20日の時点で、国内感染者は38日間連続で出ていなかったのです。台湾の成功は、中国やWHOの発表をうのみにせずに、感染症との戦いを「防疫戦争」とみなしたことにあるようです。台湾は、中国という隣国の恐怖を常時意識しながら、生きていかなければならない状況にあります。自国民の安全は、重要な政策になります。安全が守られなければ、中国からの揺さぶりが強くなり、国民の団結がそがれます。付け入るスキを与えてしまうことになります。韓国でも、北朝鮮からのバイオテロ、化学兵器での攻撃を想定した準備ができていました。いわゆる徴兵制があり、男子は細菌戦などに対するスキルを持っています。これらのスキルが、感染防止に有利に働いたようです。
 安全保障に関しては、各国とも厳しいルールがあります。スイスには、死刑制度はありません。でも、戦時において、国民の生命を危うくする者は全て死刑にする法律があります。戦時における素朴な人道主義や偽物の寛容は、罰則の対象になります。非常時では、食料や医療品の買い占めが全て処罰されるのです。当然、マスクの買い占めを行えば罰せられることになります。日本では、転売屋が現れ、ネットで高額マスクの販売が行われました。実は、台湾でも似たような現象は起きていたのです。でも、転売屋が現れてからの対応は、日本とは違って素早いものでした。マスクの輸出禁止、政府の一括購入、医療機関への優先配布、価格の高値つり上げ防止という処置を次々に短時間で行いました。日本は、人道や思いやりという美徳に従って、マスクや多くの防疫物資を他国に送り届ける行動を取りました。結果として、マスク不足を招いて国民の安全や健康を損なうことになったのです。台湾では、当たり前の「自国民の健康と安全が最優先である」の政策をとったのです。マスクの海外流出、不必要なマスク着用を防ぎながら、一方で増産体制を取ることを決め、それを官民一体で行いました。国民を守るという安全保障の考え方が、日本と世界ではズレがあるのかもしれません。
 安全保障の世界では、感染症の予防治療と生物兵器の開発はメダルの表と裏になります。軍事用と民生用のいずれにも使える「両面性」は、すべての科学技術に共通する点です。イギリスの回転ずしチェーンでは、店内の客に小型ドローンで商品を届けるサービスを行っています。ロシアではピザの宅配にヘリロボットが、時速40kmで空から届けることもあります。現在市売されているドローンにGPSをセットすれば、爆弾も化学兵器も、そして細菌兵器も運べる環境はできています。ロシア政府は、感染症を用いたテロを念頭に、エボラ出血熱問題に真剣に取り組んでいます。自爆テロリストが、エボラ出血熱にあえて感染し、人口密集地で死んだとすれば、感染は一挙に広がります。でも、ワクチンがあれば、感染を抑えることができます。世界は、感染と予防を安全保障の面から深刻に考えざるをえない状況に追い込まれているとも言えます。今回の新型コロナウイルスのパンデミックを見た時、経済的損失を受けて立ち直れない国々があります。一方で、経済的損失を最小限に抑え、経済的優位を獲得した中国があります。しかも、その原因であるウイルの情報を十分に公開しない中で、優位性を確保しているわけです。
 余談ですが、合成生物学を利用した生物兵器の開発を、世界で最初に実施したのは社会主義国のソ連でした。この国は、ペスト菌に人工的に作製したべネズエラ馬脳炎ウイルスの遺伝子を挿入し病原体を作ったのです。2つのまったく異なる病原体を組み合わせてより強力な病原体を作ったわけです。ベネズエラ馬脳炎ウイルスは、ヒトに容易に感染するウイルスでした。感染しやすく、抗生物質で病状が活性化する厄介な性質を持っていました。
この新病原体に感染した場合、ペストの治療で抗生物質を使えば、馬ウイルスが活性化し病状は悪化します。ペストの治療しない場合、モルモットのサルたちは死んでいきました。ペスト菌を治療すれば馬ウイルスが目覚め、治療しなければペストで死ぬというも生物兵器でした。この合成生物に感染した人は、死ぬという仮説的なシナリオをサルで実験をしたわけです。そして、その仮説の正しさを証明しました。人に感染する可能性がある63万種のウイルスが、人類の世界に侵入する可能性が高まっています。もし、人為的にこれらのウイルスが変異されることになれば、今回の新型コロナウイルス以上のパンデミックが起きることは容易に予測できます。WHOを中心に、人類の生命を守る仕組みを作ることが求められるようです。



日韓の裁判所がしたこと、現在していること  アイデア広場 その800

2021-01-25 21:32:37 | 日記

 1月8日、日本政府に旧日本軍の元従軍慰安婦への賠償を命じたソウル中央地裁判決がありました。原告12人に1人当たり約950万円を支払うよう日本政府に求めたものです。茂木敏充外相は、「国際法上も2国間関係上も到底考えられない異常な事態」と述べています。日本国民の多くが、韓国の裁判所に違和感を持っています。そこで、韓国の司法や裁判所について、調べてみました。
 韓国の権威主義時代の朴正熙、全斗煥政権の時代(1961年から1988年)は、政治犯罪のでっち上げなどが日常茶飯事でした。この理不尽な時代には、韓国の裁判所も権力の意向に沿った判決を量産していたのです。韓国が民主化するまで、「権力の言いなり」だったという韓国司法の特殊な事情があります。全斗煥政権までの強圧的な政権下で抑えつけられてきたものが、民主化によって一気に噴き出した事情があったのです。近年になって、最高裁の判事は、裁判官が正しい姿勢を守ることができなかったこともあったと認めたのです。最高裁判事が、憲法の基本的価値や手続き的な正義に合わない判決を宣告したこともあると認めたわけです。冷戦も終わり韓国も民主化されて、政治的な活動が完全に自由となりました。政治の自由化にともなって、裁判所も自由な判断ができるようになってきたというわけです。司法において、過去の過ちをあるがままに認める裁判官が出てきているのです。過去を反省する勇気と自己刷新の努力が必要だとする裁判官がでてきたということです。
 とは言え、日本とは違う法律に対する感覚があるようです。条文に書かれた文面を重視する日本に対し、韓国は「何が正しいのか」を問題にする傾向があります。近年の韓国は、「正しさ」追求の姿勢を対日外交に平気で持ち込むようになりました。道徳的に正しくないのであれば、事後的にでも正すことが正義であると考えるわけです。さらに、道徳的正義は、追求しなければならないという姿勢をとります。正義の観点から強い異議を出すことに対して、韓国国民は誰もそれを止めるための労力を使おうとしない傾向があります。条約などの国際的取り決めに対しても、「何が正しいのか」というアプローチが目立つようになりました。国民の道徳的感情が、憲法の解釈を変えてしまう韓国という隣国があるようです。
 その韓国民の情緒は、どのような特徴があるのかを深堀してみました。韓国は、血縁を中心とした集団主義社会です。韓国人の社会構造は、家族、血族、親族、地縁や学縁、一般の知人へと広がるウリの人間関係があります。家族などのウリの中では、札儀や伝統的な拘束力を持つ道徳が厳格に守られているのです。ウリの関係になった場合、頼み事はなかなか断れない関係になります。このウリの人間関係の外側は、ナムと呼ばれる人間関係があります。ナムはある意味で、自分とは無関係な人、赤の他人というレベルの人間関係になります。ナムの関係の場合、「ダメでもともと」的な頼み事が多く出てきます。ナムの頼みや依頼は、断っても問題がありません。また、断られても当たり前だと割り切ります。韓国人は、ウリに対しては非常に道徳的で礼儀正しいのです。でも、ナムには排他的で無礼、そして冷淡です。韓国では新政権が誕生すると、大統領は中枢にウリを配置して政治を行います。ナムに対しては、容赦のない政策を行います。
 韓国は1950年の朝鮮戦争以来、連合軍によって治安の維持がはかられてきました。連合軍の中心は、アメリカ軍でした。アメリカ軍は、治安維持の観点から対日協力者だった保守派を軍政庁要員として登用したのです。行政能力があり、治安や産業振興を行う実行力があったからです。この冷戦時代には経済や安保両面において、日本との関係は韓国にとって死活的に重要なものでした。この当時の治安や産業振興を担った勢力が、既得権勢力といわれる人たちになります。既得権勢力は「保守派」を指し、財閥や保守政界、保守派のメディアが代表格になります。この保守派と日本の企業の中には、ウリの関係を築けた人もいたようです。いわゆる日本通とか韓国通と言われる人たちです。でも、日本との良好な関係を維持しなければならないという切実さは、韓国社会から失われてきました。既得権勢力の対局には、民主派と言われる人たちがいました。対日協力者の保守派に対して、朴正熙や全斗煥政権の時代に弾圧されてきた人民主派の人々がいます。民主派の人々は、戦前の対日協力者問題の清算が不十分であったという認識を持っています。「親日派」問題が、繰り返し提起される背景がここにあります。
 文大統領の周辺には、保守派を敵視する民主派の原理主義的な人たちが少なくないのです。この原理主義とは、日本の企業はウリの関係は築けなかったようです。民主派と日本の企業は、ナムの関係が現在も続いているということです。ナムの関係の場合「ダメでもともと」的な頼み事は多いのです。まるで、ソウルの裁判の判決を見ているようです。ナムの頼みや依頼は、断っても問題がありません。ナムには排他的で無礼、そして冷淡です。この部分は、政治の分野での解決は難しいようです。
 韓国の裁判所の流れを見てきましたが、日本の裁判所はどうだったのでしょうか。権力の向き合い方は、その国の習慣や伝統によっていろいろのようです。1957年7月に、米軍基地内に立ち入った学生や労組関係者ら23人が逮捕された砂川事件がありました。1959年3月、デモ隊指導者7人が日米安保条約に基づく刑事特別法違反の罪に問われたのです。東京地裁の判決で、伊達秋雄裁判長は、被告7人全員に無罪を言い渡した。米軍駐留を認めることは、政府の戦力保持にあたり憲法9条に違反するとの初判断を示しました。これには、当時の日本政府もアメリカ政府も驚きました。当時の日本における米軍基地は、冷戦の最前線にあたります。この基地が使わなくなれば、冷戦の戦略に大きな齟齬をきたすことになります。このときこの判決の2審や3審の見通しをアメリカ大使に、当時の田中耕太郎最高裁長官が漏らしていたのです。田中長官は、マッカーサー駐日米大使と非公式の会談し、判決の見通しを示唆していたという文書が出てきました。冷戦下において、安保や自衛隊の違憲判決を出せば、政府やアメリカが裁判所つぶしにかかります。日本の裁判組織には、勝ち目がなかったのです。経済復興の間、最高裁判所は東西軍事バランスに関わる政治問題には口を出さなかったという経緯があります。日本の司法も時の権力の力関係を見ながら判決を出しているわけです
 冷戦の体制の中で、裁判所は政府や国会と対立しつつある状況がありました。そして、裁判所の内部でもイデオロギー対立があったのです。平和主義に照らし、日米安保や自衛隊を憲法違反とする裁判官は、青年法律家協会に所属していました。政府や国会の脅迫に対し、最高裁判所は司法の独立を守るため左翼系裁判官の弾圧を行ったのです。1971年最高裁人事局長が、司法修正研修所の教官に青法協会員には、悪い点数を付ける指示をだします。1984年青法協裁判官部会は解散して、青法協所属裁判官への弾圧は一段落します。アメリカは、国家に対する武力、諜報活動、軍事援助等による介入という側面をもっています。田中耕太郎長官の示唆は、機密指定を解かれた米公文書により判明した事実です。もっとも、一定の時期が過ぎると、日米安保条約は有利な条約だと認識する人が多数になりました。そして、今は中国の台頭という状況下では、必要という人々が大多数になっています。
 政治のレベルでは、ウリの関係はできないようです。ナムの関係では、韓国からの要求は果てしなく続きます。「日本が好き」と「歴史認識問題で日本を批判する」ことが、同一人物の中で何の矛盾もなく並立する国民性を持っています。「水に落ちた犬は打て」という発想が、韓国社会にはあります。相手が弱くなれば、攻撃を強めてきます。約束は、時の状況により変わります。道徳の正義は、ウリとナムの人間関係で変わります。日韓関係は、元徴用工問題で悪化しており、さらに事態は急速に悪化する懸念が高まっています。北朝鮮が突然崩壊した場合、その後の30年間に240兆円の統一コストがかかるといわれています。このコストを日本からいつでも取れる準備が慰安婦と徴用工裁判だという韓国通まであらわれています。ここで日本が安易に妥協すれば、同じ事態を悪化させながら繰り返すことになります。両国民同士が本当の限界まで争った後に、ウリの関係ができるのかもしれません。日本の裁判所の成熟度は、60年以上かかっても十分ではありません。韓国の裁判所は、これから60年かかり成熟に向かうことでしょう。あと、60年間を目途に、日韓の人間関係をウリに近づけ、ナムの関係を減少させるお付き合いをしていきたいものです。


ドライバーの所得を組織で向上させる仕組み  アイデア広場 その799

2021-01-23 18:16:11 | 日記


 需要があり供給が不足すれば、供給側が有利になることは経済の常識になります。でも、ドライバーの世界は、違う様相を示しているのです。2018年度の国内の宅配便、個数は約43億個と4年連続で過去最多の記録を更新しました。日本郵便の「ゆうパック」は2020年4~6月期で2億8600万個と前年同期比26.4%増えたのです。ドライバーの職業有効求人倍率は、2018年度で3.01になりました。このドライバーの有効求人倍率は、2012年度の1.41から2倍以上に上昇しているのです。現在、17万人のドライバーが不足しているともいわれています。売り手市場であるにも関わらず、トラック関係の企業は利益を上げる体質になっていません。この業界を支えるドライバーは、人気職業に従事しているとは言えない状況です。
 そのような中で、日本中のドライバーの社会的地位を高めたい。流通業で真面目に働く人が、正当な報酬をもらえないのはおかしいと声を上げたのはCBクラウド株式会社です。立ち上げた事業が、フリーのドライバーと即日荷物を発送したい企業の仲介業でした。現在、契約する軽貨物ドライバーは2万人にも及び、一般貨物車両は1万台を突破しました。配車アプリを使って、条件を提示して、ネットに流します。CBクラウドと委託契約を結ぶドライバーの一覧から、運んでもらいたいドライバーを選ぶ仕組みです。届けて欲しい人と届けたい人を直接繋ぐ、配送マッチグサービスを構築したわけです。評価制度を取り入れ、配達の高評価の人に優先的に高い単価の仕事を回す工夫をしています。
 若き物流挑戦者に、大企業も熱い視線を送っているようです。この仕組みを使って、週5日の稼働で月の売り上げが50万円以上のドライバーも多いということです。もっとも、週末のみハンドルを握る主婦から、専業で生計を立てる人まで多様な人々が働いています。お子さんを育てているお母さん、外国人、高齢者とこの企業は、ダイバーシティを実現しているようです。現在のサービス地域は、東京や神奈川、大阪など7都府県に限られています。流通の需要が、多い地域になります。この配送を利用する企業は、スギ薬局や東急ハンズなど提携16社に及び、全国3800店舗から商品の配送を受注しています。佐川やソフトバンク、日本郵政子会社は、CBクラウドに出資して、応援の姿勢を示しています。この会社は、新型コロナウイルス感染が拡大した4月から、一般消費者まで配送の範囲を広げました。いわゆる宅配業務にも進出したわけです。
 運送業は、中小企業の競争が厳しい業界になります。人手不足とはいえ、トラック業者は62,000社がひしめく過当競争の世界なのです。運送の仕事は、トラックの運転がメインではないのです。あるトラックドライバーの1日仕事の割合は、3割が運転で、7割が積み下ろしの時間になります。荷物の積み下ろしが、想像を超える肉体労働になっています。配達先では、荷物の積み下ろしに、他のトラックが10台も順番待ちしいるのです。カンバン方式からは想像もできない業界特有の「待機時間」があります。待機時間、過酷な積み下ろし、不規則な運転時間は、ブラック業界の名に恥じないもの言われています。逆に考えれば、待機時間がなく、過酷な積み下ろし作業がなく、不規則な運転時間でなければ、この仕事はホワイトな職業になるわけです。そして、若き挑戦者は、その仕組みを作りつつあるともいえます。
 ドライバーさんの収入を増やすためには、稼働率を安定的に高めることが必要です。マッチングサイトを通じて、CBクラウドさんのように稼働率を高める仕組みを考えてみました。お歳暮や年末の時には、必ず配送の依頼が来ます。お歳暮や年末のときに、確実な仕事をして信用を得るわけです。その上で、条件に合わない配送はお断りするのです。たとえば、宅配ボックスのある所に限定した配送を引き受けます。再配達がありませんから時間の無駄がありません。待機時間のある会社は、拒否し契約をしません。待機時間がありませんから、時間の無駄がありません。最も、時間通り配送できるところだけを選択しているのですから当然かもしれません。配達の需要は、確実に増加していきます。そして、ドライバーは、確実に減っていくのです。常識の通じない世界では、非常識なことが有効になるかもしれません。
 運送業の中では、タクシーの稼働率が、低い状態が続いています。タクシーの待ち時間は、3割以上になります。駅前に多くのタクシーが、待機しています。稼働率が、低い象徴になっています。外出自粛を受け、全国のタクシードライバーは困っています。困っているというだけでは、解決になりません。福島県のいわき市のタクシーグループは、飲食店と連携して新しい事業を始めました。このグループは、料理を宅配したり、買い物を代行したりするサービスを始めたのです。ネット通販の拡大で、宅配便数は増え続けています。でも、宅配をするドライバーは不足しているのです。不足しているところと余っているところは、補完関係成立します。美味しいという料理店のテイクアウトは、売り上げを上げています。このコロナ禍の時期、お店に行くより、出前のほうが雰囲気は良くなります。地方では、出前館やウーバーイーツなどが十分に普及していません。タクシーが庶民の足になります。この種のマッチングは、現在のタクシー会社の組織を使えば、容易に作れるものです。
 余談ですが、未来のタクシービジネスは、自動運転と電気自動車(EV)を導入することになるでしょう。電気自動車になれば、室内の構造は現在の自動車とは異なるデザインが可能です。車に乗っている間に体温や血圧、そして脈拍など体調チェックなどのサービスを行う空間になるかもしれません。タクシーの空間が、医務室になるというわけです。この車を事務所や会議室がわりに使うことも可能でしょう。通勤の間、同じ会社の部署の社員が相乗りして、打ち合わせをする時間と空間を確保することもできます。会社についたときには、打ち合わせが終わり、てきぱきと仕事に取り掛かるだけという状況も夢ではありません。電車の通勤より便利なことは、「door to door」ということになるかもしれません。でしょう
 少し先の未来のお話より、もうちょっと現実的話題を提案します。EVの普及は、自然の流れになります。そして、EV軽トラックの実用化も急がれるでしょう。現在、人口過密地帯をガソリン仕様の軽トラックが縦横に走っています。カーボンフリーの時代には、そぐわない光景です。当然、EV軽トラックの導入が、企業イメージを考慮して導入されます。この実証を早めに行えば、ビジネスチャンスを手にすることができます。その実証する担い手は、現在、実際に行っているドライバーの方になります。ガソリン車より維持費が安く配達のしやすいEVトラックを、企業とドライバーの知恵を出し合って開発することになります。そこに、もう一つ加えたい点が、ダイバーシティの視点です。家庭の主婦も外国人も、そして高齢者でも運転業務ができて、環境にやさしく、プライドを持ってドライバーの仕事ができるEV軽トラックを開発してほしいものです。


食品ロスから学力向上への発想ゲーム  アイデア広場 その798

2021-01-22 17:50:23 | 日記

 食の国際展示会といえは、余剰食品が出て当然の世界になります。2019年、イタリアのミラノで、国際的な食品飲料見本市が開かれました。この会場に、世界的な名シェフが訪れて、入場者に料理をふるまったのです。このシェフは、その日の冷蔵庫を開けて、そこにある食材を使って料理を始めます。当然、食品ロスは、ゼロになりました。余ることが当たり前ではなく、適量を調理して売り切る仕組みを国際展示会で実演したのです。日本にも、このような考えの名シェフがいます。彼は、明日ニンジンの料理を作りたいからニンジンくださいということを言わないのです。農家の方が、その日に取り入れた作物を、「1万円分ください」と言って野菜を仕入れるのです。その当日の材料を使って、その日の料理を作ります。このシェフはおまかせという1種類のメニューにし、食材ロスを出さない仕組みを作っています。これは、シェフに任せるというお客の度量がなければできないことです。でも、シェフの腕もかなりのものでなければ、できない芸当でもあります。自分の都合ではなく、自然の都合に合わせるという料理には、ロマンがあります。
 少し前まで、大量生産・大量販販売・大量消費、そして大量廃棄という流れが当たり前でした。最近注目を浴びているのが、循環型経済(サーキュラー・エコノミー)というものです。調達・製造・販売・利用・廃棄で終わらせず、再販売や再利用、リメイクなどで循環させる仕組みです。無駄を出さないという精神が、前面に出てきています。世界の食料生産量のおよそ3分の1は、13億トンになります。この大量の13億トンが、捨てられている現実があります。作った食べ物のうち3分の1を捨ててしまうなら、最初からつくらなければ良いと思ってしまいます。この食品ロスは、1兆ドルの経済コスト、7000億ドルの環境コスト、9000億ドルの社会コストという損害を与えています。食品ロスは環境に負荷をかけ、経済損失や社会コストなどの多方面に悪影響を及ぼしているのです。このような現実に接している人たちにも、意識の変化が現れてきました。家にあるものを使って料理する人や食材を大切にする人が、増えているのです。食品ロスのゼロは無理でも、半分減らすことはできるというポジティブ思考の人たちが現れているようです。
 食品ロスゼロを商売の中で、実現しているお店もあります。京都にある佰食屋では、「売れた数」を労働の区切りにしているのです。「1日100食」とステーキ丼の売上の上限を決めて、商いを行っています。自分たちの収入にも、上限を決めたわけです。自分たちが、食べていける範囲の仕事を作り出しました。このお店は、飲食業にありがちな労働時間の延長などない優良企業です。退勤時間は、夕方5時台で、食品ロスがほぼゼロ化の営業を行っています。もっとも、人気店なので、朝9時半から整理券を配りはじめるそうです。11時に開店になるのですが、早い時には3時前に終わるということです。整理券方式を取り、予約は行っていません。顔を合わせるというひと手間をお客様にお願いすることで、無断キャンセルの防止をしています。このお店を信頼するお客さんが多くなることが、食品ロスの近道のようです。売り切れを許容する社会へ変わっていくことが、食品ロス削減と働き方改革に繋がるということです。
 セブンーイレブンは、おにぎりの販売期限を延ばす技術改良をするようです。技術を改良して、約1日半以上の消費期限のあるおにぎりをつくろうとしているわけです。実現すれば、おにぎりの廃棄量を約5割減らせることになります。消費期限の延長は、効率的な配送網が構築しやすくなります。この期限が延びれば、物流の面でもより長距離の輸送が可能になるのです。ローソンも、人工知能(AI) を使って食材の仕入れ量を調整する仕組みを導入しています。食材担当者の経験に基づく従来の場合と比べ、実際の需要との誤差を約3割縮めているのです。川上の生産部門でも需要の予測精度を高め、無駄な食材の仕入れの削減を実現しようとしているわけです。
 コンビニ1店舗あたりの廃棄費用は、年間468万円と店の営業費用全体の2割を占めていたようです。この費用は、人件費に次いで加盟店の利益を圧迫する原因になっています。廃棄量を減らせば、加盟店の経営改善にもつながるわけです。ファミリーマートは、恵方巻きなど売れ残りが生じやすい季節商品を原則予約制にしています。セブンーイレブンは、消費期限が迫った商品の購入する客にポイント還元しています。消費期限が迫った商品の値引き情報を、配信するサービスも始めました。これらの企業努力が実って、1店舗の1日あたりの食品廃棄は、2017年度の約9kgから2019年度には約6kに減っています。廃棄を減らすことは、経営環境が苦しくなっている加盟店の収益改善にもつながる明るいニュースです。
 つい最近まで、新聞を賑わしている話題が、給食の残飯が多いというものです。でも、給食の残飯の問題を、上手に解決している先生もいるようです。残飯削減の工夫は、子ども達の好き嫌いの一覧表を作ることから始まるようです。まず、栄養士さんに、給食の週間メニューをもらいます。この給食のメニューを見ながら、子ども達が好きな食材と嫌いな食材を把握するのです。ここからが、子ども達の戦いになります。先生は、給食当番に給食を選べる決定権を与えたのです。好きな食材を多く食べる権利を得る代わりに、嫌いな食材を少なく食べる権利も得るというものです。たとえば、佐藤君が好きな食材と、鈴木君の嫌いな食材を取り引きすることができるという決定権です。給食を選べる権利をクラスの給食当番に与えたところ、給食の残量は大幅に減ったということです。給食は、美味しさを味わい、楽しく過ごす時間であることが望ましいわけです。
 朝食を食べる子どもの学力は、高いことが分かっています。学校給食に関しては、各学年100万人の単位でデータを集めることができます。たとえば、小学生1年生の100万人分の給食のデータを集めることができるわけです。学校には、子ども達の成長過程、栄養士の食材提供の記録、学校医の検診記録がすべて揃っています。学校給食と子どもの成長や健康、そして学習能力に関するデータが得られるというわけです。給食の状況と学習状況を分析し、その中から価値ある情報を引き出すことは、現在の技術を使えば容易にできます。学校データの強みは、構造データにあります。構造データをビッグデータの技術で分析し、AIで深層学習を繰り返し有用な知見を見出すことは可能でしょう。AIが、学力向上と給食の関係を見出すかもしれません。子ども達の成績を上げる仕組みをいくつか提示するということです。
 ここからが、提案になります。学校のデータとコンビニのデータが合体したらどうなるでしょうか。朝コンビニのおにぎりを食べる子は、給食もよく食べ、学力との相関が高いとなれば、一つのビジネスチャンスになります。ビッグデータからAIが引き出す知見は数多くなります。もっともプログラミングの作り方によって違いはあるかもしれません。でも、ビジネスの種を提供するようだと面白いことになるでしょう。

小売業はAIと人間の機微で成果を上げる  アイデア広場 その797

2021-01-21 17:32:39 | 日記


 現代社会ではメディアとの接点は重要になります。人々がメディアに求めているものは、新しい情報や気分転換というものです。これにこたえるものとして、時事ニュース,消費行動の広告,娯楽,生活トレンドに影響するドラマなどあります。ビジネスは、人々が求める情報や気分転換を利用しようとします。たとえば、テレビコマーシャルを打つと、広告効果が生じます。テレビは、瞬間、瞬間の面白さを大事にするメディアです。分計というものがあって、一分間ごとの視聴率が出ます。視聴率が上がれば、これをさらに上げようとします。番組づくりの姿勢も、「いかにチャンネルを変えられずにすむか」が最大の目的になるようです。視聴率の低い番組は、途中で打ち切られる運命にあります。
 メディアは、当然のように大衆への見せ方に工夫に工夫を重ねてきています。テレビは、地上波とBSから1日数百の番組が流されています。テレビ局は、視聴率が高ければ放送を続け、低ければ打ち切ります。視聴者がなぜこの番組を見て、あの番組を見ないのかという理由の中に、次の商機があるように思えます。見たというデータと見なかったというデータは、金の卵のように見えます。見られた時の社会状況やSNSの動向は、貴重なデータになります。たとえば、韓流ドラマは、日本の女子高齢者の心を捕まえています。そのドラマの流れには、音楽にしても、筋立てにしても、女性を捉える仕掛けが潜んでいます。日本のドラマにも、ある年代の人々を捉える仕掛けを作り出してほしいものです。そのヒントが、音楽配信のデータにあるかもしれません。
 株式会社USENは、音楽配信事業で有名です。この会社は、店内放送やPOSレジを主力にしており、すでに約75万店舗の顧客を持っています。現在の店内放送のシステムは、客層に合わせて放送する場合、店舗側がその都度調整する必要がありました。システムが、事前に決めた楽曲を放送していたわけです。そのUSENが、来店客の年齢や性別に合わせた楽曲を自動で放送する店舗向けのシステムを開発したのです。人工知能(AI)を搭載したカメラで、客の年齢などを検知します。カメラと放送機器を無線通信で接続し、来店客に合わせて放送する楽曲を変えるのです。店舗側は、楽曲を調整する手間を省き、店舗運営を効率化できます。韓流ドラマは、クライマックスになると心を奮い立たせる曲がしばしば流れます。この音楽視聴者における客層のデータとドラマの筋立てを組み合わせれば、一つのヒントが生まれるかもしれません。
 音楽には、人を動かす力があります。人類は、音楽の機能を太古の昔から享受していまいした。音楽は、仕事の能率を上げたり、ストレスを発散したりする機能を持っています。仕事をテンポ良くやりたいときには、気分を高揚させる音楽を聴いた方が効率的です。長調でつくられた歌ならば幸福感をもたらし、短調の旋律であれば悲しくなります。作業を効率的に行う歌は、幸福感をもたらすものが望ましいようです。配偶者の選択には、幸福感が一つの要素になります。幸福感といえば、ドーパミンの分泌が必要不可欠です。これは人間だけでなく、小鳥たちの優れたさえずりが、求愛行動をもたらすことがよく知られています。ドラマの音楽には、これらの仕掛けを潜ませておくこともヒントになるかもしれません。さらに、深堀すると、悲しみの状態の時に、幸福に向かう状況をつくりだすと幸福感を一層高めるという経験則もあります。長調と短調の組み合わせも、重要な要素になるのかもしれません。プロの方は、当然のこととして取り入れていることでしょう。
 大手ディスカウントストアのトライアルホールディングス(トライアル)は、客の行動分析を進めています。トライアルはここ10年で店舗数、売上高とも倍以上に急成長している小売業です。小売業の購買データ分析で分かるのは、「いつ、何が、いくらで売れたか」というものが多くなります。でも、トライアルは買い物の客の購買プロセスまで観察するのです。どの商品を手に取り、戻したか、どの売り場に目を引かれて移動したかのプロセスを観察しているわけです。観察する「AIカメラ」の数は、688個になります。「AIカメラ」が店内のお客をくまなく観察し、この行動をデータ化していきます。
 入店したある親子が、「スマートカート」を手に取ります。普通のスーパーの買い物カートと違うのは、手元にタブレットとバーコードリーダーがついていることです。例えば牛肉のバーコードを読み取らせると、タブレットにビールの広告が出てきます。ビールと焼肉の相性をイメージさせるためでしょうか。このやり方が当たり、ビールのトライフル店舗でのシェアは、2017年比で5.4ポイント増えたといいます。「何を買ったか」だけでなく、「何に興味を持ったか」というところまで踏み込みこんでいます。小売業では、いつ、何がいくらで売れたかだけでなく、客のプロセスまでデータ化し、売れ筋を増やす工夫に余念がないようです。
 牛肉の画面に、ビールを写すタブレットの工夫をしていました。ここに、好みの音楽を加える仕掛けも可能でしょう。仕事をテンポ良くやりたいときには、気分を高揚させる音楽を聴いた方が能率はあがります。購買意欲が高い時には、その意欲を刺激する曲を流すことになります。イギリスのスーパーで行われたワイン売場での実験では、音楽が売上げに貢献することを示しました。フランス音楽を流したとき、ほとんどの人はフランスワインを買うのです。ドイツらしい音楽(ビアホール音楽)をかけると売れたのはほとんどがドイツワインだったそうです。面白いことに、その購買決定がBGMに影響されたことを購入者は、断固として否定したのです。知らないうちに、ワインを買っていたわけです。この方の購買意欲を高める曲が分かれば、タブレットにその曲を流せば良いことになります。ビックデータとAIによって、個々人の好みの音楽配信ができる環境は整いました。小売店では、これに映像を加味していく手法も可能になる下地は整いつつあるようです。
 余談ですが、コーヒーのコーヒー生産者は、アラビカ種の弱点を克服するために、ロブス夕種との交配を進めてきました。アラビカ種の品質は高いのですが、害虫や天候不順に弱いという欠点がありました。ロブスタ種は、逆に品質が低いが害虫や天候不順に強いという性質がありました。生産者は、これらの強さを統合した高品質な品種の開発を目指してきたわけです。その成果も、徐々に実現しつつあります。でも、ここに香りや美味しさだけなく、別の機能を高めることができれば、売り上げは高まるわけです。この発想は、人工知能やビッグデータと人間のプロフェッショナルとの融合ということになります。
 一流のプロフェッショナルは、相手の「言葉以外のメッセージ」を感じ取る力を持つようです。ある老夫婦が、飛行機の窓際に座っていました。その窓際には、若い女性の写真があったのです。客室乗務員は、窓際の写真に気づき、写真とともに旅をするご夫婦に感動しました。その客室乗務員は「窓際の方にも、おひとつどうぞ」という言葉とジュースを差し出したのです。もちろん、老夫婦は感激しました。窓際の方にも、おひとつどうぞという行動をとったところに、感性に根差したサービスのすばらしさがあるのです。人の思いに敏感であることは、サービス業の基本になります。定常状態では、AIやビッグデータが強い力を発揮します。でも、とっさの人間の機微をつかむ行動は洗練された人間に軍配が上がるようです。