ファンタジアランドのアイデア

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富裕層の富を社会に分配する仕掛け  アイデア広場 その 791

2021-01-14 18:16:42 | 日記


 戦後、日本経済が発展する中では、先進国の技術を模倣しました。ある意味で、先進国の技術導入が日本経済成長の源泉でした。日本は、技術を先進国から模倣することで実用的な技術を蓄積し、高度成長を実現したわけです。技術進歩が、経済成長の原動力になったともいえます。この成長時においては、所得が労働者と資本家にバランスよく分配されることで、経済の好循環が生まれました。そのような環境で、日本が先進国の仲間入りをし、技術面でも世界のクラスを維持することになりました。でも、労働人口が減少すれば、その補完的関係が崩れ、技術進歩や資本蓄積も停滞するという心配が出てきます。トップクラスになると、もはや模倣によるモデルでは技術進歩は実現できません。
 今あるビジネスの多くは、不便を便利に変えたことで成長してきました。たとえば、世界に誇る炊飯器などはその最たるものでしょう。かまどに火を入れてからご飯を作る姿が、昭和の20年代には見られました。日本は、多くの不便を便利にする器具を開発してきました。そして、今その役割は中国が世界の工場として生産を担うようになります。最初の内は、大量生産の衣類のように、価格が安ければ広く市場を獲得できました。でも、消費者の多様なニーズが、重要な要素になってきます。象徴的な事例があります。ワークマンは、機能性の高い作業着を安く提供できるようになりました。それまでは、中国の工場が大量生産で日本に提供していたものです。でも、消費者のニーズを、満たす製品ではなくなってしまったのです。働く人々は、性能と同時に美的感覚を満たすような製品やサービスも求めるようになりました。中国よりコストの安いミヤンマーでの生産は、数十とか数百といった小ロット数で生産することができます。ミヤンマーでの生産は、製品の多様化と消費者のニーズをとらえている生産様式になってきたのです。
 このような生産方式が広まっているのですが、大きな問題が起きていることに気づく人たちが現れました。人々のニーズが多様化し、生産活動が盛んになっているにもかかわらず、売り上げや富の多くが少数の企業に集中する傾向がでてきたのです。グーグル、フェイスブック、アマゾンといったネットサービスの登場が、この傾向を特徴づけています。企業の内部留保や経営者や創業者への報酬が、莫大な額というという形で分配されるようになりました。技術革新によって新技術が促進されても、その恩恵がすべての人々に行き渡るとは限らないことが起きてきたのです。巨額な利益が、ごく一部の大富豪に滞留するという現象が多くの国々で観察されています。その一方で、中間層を中心に全体の所得分布が下がる傾向が、多くの先進国で起きているのです。少数企業へ富が集中した結果、賃金の低迷の形で労働者への分配が減少しているというわけです。技術革新による最先端の技術の進展は、すべての人々に「豊かさ」をもたらすとは限らないことを如実に示しています。
 デジタル化の有無により、時代に乗れるか乗れないかという新しい格差が生み出されつつあるようです。利用の検索履歴のサイトの情報をもとに、利用者の関心事や消費傾向などを入手でき環境が整っています。ロボットやAIなど新技術が、労働力を代替する分野が急速に広がってきました。これらの新技術の製品の高機能化で、複雑な操作のスキルが求められるようになりました。技術革新の中で生活水準が向上するには、技術を使いこなすスキルが必要になります。新時代に対応できる人々と、そうでない人々の間で所得格差が拡大する可能性が出てきています。個々人の中にスキルの差があれば、それは所得格差が拡大する大きな要因となるというわけです。
 一般事務の有効求人倍率は、1.0倍を下回ることが多くなりました。看護や介護の場合は、優に4.0倍を超す職業になります。でも、なり手がいないのです。これらの仕事は、負担が大きいために敬遠されているのでしょう。そこで、オーストラリア看護連盟は、「持ち上げない」ということを義務付けた規則を作りました。これらに従事する方には、職業病としての腰痛が多かったのです。看護師が重いものを持たないことになったために、さまざまな機器の開発が進みました。医療介護の現場では、ロボットが介助の作業を補助に使われることになったのです。ロボットを導入したことで、腰痛は激減しました。さらに、良い結果をもたらしました。介護現場で聞かれるのは、遠慮、まさに「気兼ね」だったのです。身体接触やその他のプライバシーへの配慮が、ロボットの導入で軽減しました。介護において、ロボットであれば気兼ねがいりません。ロボットなど新技術と労働との間には代替的関係があります。でも使い方によっては、人とロボットの補完関係も成り立つわけです。
 自由な競争市場には、イノベーションをもたらし、社会に豊かさをもたらすとされます。でも、自由な競争市場には、相手を犠牲にして自分だけが儲かるための創意工夫を促す側面もあるのです。ネットでは、利用の検索履歴、購入履歴や閲覧したサイトの情報を入手することが可能になっています。利用者の関心事や消費傾向などに関する膨大なデータが、コストをかけずに入手できる状況ができています。このような状況の中で、オレオレ詐欺などの事件が多発しています。ネット環境を悪用して、高齢者を陥れる仕組です。経済システムには、多くのごまかしを生み出すメカニズムが広がってしまう側面があります。有害な食品や医薬品の販売でも、無知な人たちをだます商法が後を絶たちません。情報通信関連の分野では、衛生や健康関連の分野などとともに、「コロナ特需」が堅調に推移しています。この高度情報社会が大きく進展する中で、スキルや知恵を持たない人への偽善商法が行われている現実があります。
 最後になりますが、富裕層と経済弱者の二極分化が続く状況が起きています。分配の不条理により、所得格差はこれまで以上に拡大しているわけです。ジニ係数は、社会における所得の不平等さを測る指標になります。ジニ係数が、0.5~0.6になると慢性的暴動が起こるとされます。日本は0.38ぐらいで、何とか安定を保っているようです。このまま世界の二極化が進んでいくならば、世界は不安定な社会になってしまいます。富裕層の富を、経済弱者に分配する仕組みが求められるわけです。人は、人のためになる行動を取ると幸福感が高まると言われます。富を持つ人が弱者に富を与えることによって、幸福感を高める仕掛けを作れれば面白いことになります。もっとも、弱者も富を分けてもらうだけでは、満足しないでしょう。弱者も社会的に自立し、社会に貢献できる仕組みを作りたいものです。勝者と敗者の間の所得格差の拡大を、弱者の自立という経済行動を通して解決していくわけです。社会的弱者を取り残さない国や地域が、真の豊かさを実現するパラダイスになるかもしれません。