ファンタジアランドのアイデア

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フェアトレードを推進する精神的原動力  アイデア広場 その802

2021-01-27 18:21:46 | 日記


 最近、イギリスや中国、そして日本など主要国は「脱ガソリン車」の方針を表明しています。アメリカ大統領のバイデン氏も、電気自動車(EV)重視を打ち出しています。EV普及は、世界中で加速する勢いです。この電気自動車には、リチウムはもちろんコバルトやニッケルといった金属が重要な原料になります。コバルト需要は、増加を続けています。いまは供給面では大丈夫のようですが、20年代半ば以降に供給不足になります。でも、値上がりを続けているのです。コバルトは、EV用のリチウムイオン電池の正極材に使われます。コバルトを使うと、容易に正極を作ることができ、リチウムイオン電池の性能も安定するのです。一方、倫理的な問題から、コバルト製品を嫌う消費者や企業が存在することも事実です。
 コバルトは、現時点でコンゴが世界の埋蔵量の51.4%を誇り、鉱石生産で71.4%を占めています。問題は、劣悪な環境で児童によって掘られた鉱石もあるということなのです。ある人権団体は2019年、アップルやテスラなどを訴え世界の関心を呼びました。採掘作業中に死傷した子どもたちの家族に代わって、電気自動車のテスラなどを訴えたのです。この訴えに、世界の大企業は対策を迫られることになります。一つの対策は、この人権団体に採掘や鉱石取引の監視をしてもらうことが、一つの対策になりました。そこで、監視組織を設立し、その組織に、世界の大手企業が運営資金を提供することになりました。ドイツの大手企業、韓国のサムソン、テスラなどが参加します。ここの組織が認めたコバルトは、フェアトレードの要件を満たしているということになっています。コバルトの倫理的な問題をクリアできなければ、EVの生産が円滑にできない状況が生まれているわけです。
 インドネシアは、1990年代以降、急速に漁業生産量を伸ばしてきました。2006年以降は中国に次ぐ世界第2位の漁業生産量を誇っています。この国で水揚げされた魚介類は、近隣の中国やタイなどに輸送され、そこで加工されています。この加工された魚介類が、日本や先進国に輸出されるという流れになります。インドネシアも中国と同様に、養殖業の割合が5割以上を占めています。東南アジア諸国での養殖エビは、バナメイエビやブラックタイガーなどが有名です。エビの養殖の問題は、養殖地造成のためにマングローブ林を伐採する環境破壊があります。マングローブの森は、養殖池の建設、伐採、都市開発などのために急速に失われています。ここで養殖されたエビ類が、日本などの先進国へ輸出されるわけです。マングローブ伐採というの環境破壊の上に養殖されたエビが、日本に送られていることになります。フェアトレード商品は、途上国の生産者に対する最低の生活を保証し、貧困問題や環境問題を解決に寄与するものでなければなりません。その観点から、日本の姿勢を指摘する向きもあるようです。
 アジアでのエビ養殖池開発が著しい時期には、この流れがマレーシアのペナンの海岸にも波及してきました。1994年、ペナン島西海岸のマングローブ沼沢地で、外資系によるエビ養殖場の建設とその拡張事業が行われました。ビジネスをすることによって生み出される社会的な費用を、払わない企業があります。この企業は、かつて海岸をゆたかに縁取っていたマングローブの森を破壊していきます。マングローブ林は、きわめて多様な生きものに餌やすみかや揺藍場を提供しています。この破壊に対して、1994年「魚資源の保護,と持続可能な漁業の促進」を目標とするNGOが正式に活動を始めました。荒廃した海岸で、デモンストレーションとしてマングローブ植樹活動を行ったのです。1997年から2018年までに、111へククールの水辺に33万本のマングローブが植えられました。このマングローブの活動の成果は、2004年12月に起きたスマトラ沖大地震の時に現れたのです。海岸を襲った津波の勢いを、マングローブが緩和しました。あるいは、マングローブにしがみついて難を逃れた人びとも多数でたのです。世界の貧困と飢餓をなくすには、大規模な森林作りやマングローブの植林が効果的です。植林には、それほど費用がかからず、効果が高いことが分かっています。
 マングローブのお話を続けます。アフリカのエリトリアの貧しい村は、マングローブ植樹プロジェクトで豊かになりました。現在ハルギコには数百万本のマングローブの木が植えられ、村の生活を豊かにしています。この木を植えた人は、村の貧しい女性たちでした。このプロジェクトは、雇用を産み、収入をもたらしました。マングローブの木は、6kmにもわたって葉の茂る緑の林になったのです。この木の根には、小さな魚やカニやエビなどが生きていく住み家になっています。マングローブの木のおかげで、漁師達は前よりたくさんの魚を取って商売ができるようになりました。ヤギや羊は、喜んでマングローブの葉を食べます。でも、葉っぱだけでは体重は思ったほど増えませんでした。そこで村人は、ヤギや羊にマングローブの葉と乾燥させた実、それに干し魚の粉を混ぜた餌をやったのです。餌の改良により、前よりたくさんの肉やミルクが取れるようになったのです。家畜の成長により、村は豊かになりました。
 欧州は、フェアトレードを受け入れ始めています。フェアトレードは、労働者の健康を守りながら、適正な賃金を保障していきます。この対極にあるものが、ファストフクッションと言われています。ファストフクッションを如実にした事件が、バングラデシュの縫製工場で起きました。2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊でファストファッションの縫製工場が入った複合ビルが崩落し、死者1138人、負傷者2500人以上を出す大惨事が起きました。フェアトレードの精神の台頭の背景には、このような事故を起こすファストファッションへの反動もあります。フェアトレードで仕入れた豆を自家熔煎したコーヒーを、スターバックスの2倍以上の値段で楽しみます。フェアトレードの支持者は、商品の品質にこだわる点で真物質主義的消費者といえるかもしれません。ある意味で、幸せである状態が、続いている総時間が大事だという精神になります。人の不幸の上に、長くいたくはありません。人が不幸に陥らないように努力をしながら、自分の幸福を追求する姿勢のようです。人が幸せを実現するために、人生に真剣に向き合う精神ともいえます。