ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

女性キャリアを継続的に育てる社風  アイデア広場 その784

2021-01-06 18:26:50 | 日記

 日本から海外を眺めると、欧米には女性の首相や閣僚が多いことに気が付きます。ヨーロッパでは、クオータ制が導入されているのです。この制度は、積極的に女性を登用するものです。クオータ制が導入されている理由は、女性の知的生産が高いことが認知されてきたからです。一方、男性は既得権が守られており、女性に不利に働く社会制度の存在があります。子育て中のワーキンマザーは、知的生産性がとても高いことが分かってきました。この女性の能力をより生かすことと、制度的不利を克服するためにクオータ制が取り入れられているわけです。議員や会社役員などの女性の割合をあらかじめ定め、女性の有効活用を図っているともいえます。クオータ制の仕組みは、男性優位の社会制度を是正する優れた制度になりつつあります
 先日、アジア有数の広告業界のビジネス会議が東京で開かれました。この会議で、女性登壇者の比率が33%と初めて3割を超えたと話題になりました。ビジネスイベントや企業の会議で、女性の参加やその割合の目標を明確に打ち出す動きが出てきています。女性の参加の割合を明確にする動きは、多様な意見を引き出す場にするためです。市場調査や将来について議論する場で、男性ばかりのグルーピングでは問題があるという流れが出てきているのです。アメリカではもはや、登壇者に女性が1人だと批判の対象になります。「適任の女性がいない」「女性が登壇したがらない」といった言い訳も当然、禁句になっています。適任の女性を育ててこなかった企業が、非難の対象になる時代になったともいえます。女性の場合も、一回登壇すると他のイベントにも声がかかり、機会は増えていく流れがでてきました。公の場に参加する女性が増えることで、若い女性のロールモデル(お手本になる女性)を見つけやすくなってきました。ロールモデルの活躍が、活躍を産むという好循環が出現しつつあります。
 現代の経営には、男女にかかわらず、新たな視点や価値をもたらすには世代間の多様性が必要になっています。グローバル化が進む中で、海外の女性と競争をしなくてはならない時代に突入しています。フランスのキャリア女性は、可能な限り家事や育児をアウトソーシングしています。それは、仕事に集中する時間を確保するためです。そして、彼女たちは、仕事と子供との至福の時間を同時に享受しているのです。日本のキャリア女性で、仕事と子育てに挑戦した方がいます。彼女は3人目の出産を前にして、残業有りのフルタイムの勤務を自ら課したのです。自分の体で、フルタイムの勤務を覚えたというわけです。夫にも週1回は、子ども達のお迎えを頼みました。産後の仕事は、どのようになるかをシミュレーションしたわけです。この実験の成果で、数度にわたる海外出張も、家事代行と夫の協力で乗り切ったというお話です。もちろん、シミュレーションの時にも、家事代行を利用したことは言うまでもありません。
 世界トップクラスの人材は、家族同伴で世界を移動します。彼らが要望するのは、子息の教育環境になります。具体的には、国際バカロレア級の学校の存在です。このバカロレアの学校で、自分の子どもを教育させたいのです。人生で成功するかどうかは、認知的スキルだけでは決まらないと彼らは理解しています。非認知的な要素である心身の健康、根気強さ、意欲、自信といったものが求められます。非認知的スキルは、認知的な到達度を測定する学力テストの成績にも大きく影響することが分かってきました。幼少期の教育は、成長後の対策よりも経済的社会的影響がはるかに大きいという事実です。トップクラスの人材は、子どもが自分と同じ境遇で学問や研究に挑戦してもらいたいと願っています。シンガポールは、その親心を十分に把握し、国際バカロレア級レベルの学校を準備して、人材確保を行っています。
 幼少期の過ごし方や幼児教育が、重要視されているわけです。日本でも、子ども達の成長発達を上手に伸ばす保育園は、競争率が激しくなっています。保育園に入れば良いという段階から、子どもの成長を十分に伸ばしてくれる保育園を希望するようになっています。子どものやる気を起こさせる言葉の選択も、保育士のスキルになります。子どもの多様な行動と変化は、AIでも分析が困難と言われています。乳幼児と接する保育士の職業は、一筋縄ではいかないスキルの上に成り立っているのです。乳幼児は、聞くこと、見ること、触れることを同時に行いながら多くの能力を発達させていきます。保護者が子どもの保育の中心に位置し、それを支援する保育士がいるという形になります。保育士のスキルを向上させるような仕組みが、保育園にあることが重要になっているのです。
 キャリアの女性を育てて活用するのであれば、このような教育環境が不可欠です。さらに、会社が近くに住居を準備する配慮も必要になるようです。職住接近は通勤時間のロスがなく、満員電車で不快な思いをして体力を消耗することもありません。職住接近であれば、10分から20分以内に帰宅できます。保育園や学校に迎えに行く時間もかかりません。空き家は数多くあり、利用する住居は近くに見つけることは可能でしょう。住居と教育が満たされれば、仕事に集中することができます。無駄な通勤時間も省くことが、職住接近の利点になります。
 ダイバーシティ(多様性)を志向する日本の企業でも、多くは女性役員を社外から招く手段に頼っています。外から借りてくるその場しのぎでは、真のダイバーシティーにならないようです。アメリカ企業では、女性を計画的に育てているケースが多くあります。日本も、内部から昇格する女性の執行役員を増やすべき時がきているようです。もっとも「べき」だけでは、進歩や実現にほど遠いことになります。採用時点において、優秀な女性を増やさないと人材に厚みが出ません。短期的利益をターゲットにした案件だけでは、将来がマイナス資産になる可能性もあります。最近話題になっているESGの課題では、社内だけの意見だけでは評価されないケースが出てきます。優秀な人がそろっていても、異質な人を排除するとしたら、評価は低くなります。目に見えるロールモデルに女性がいなければ、女性リーダーの不在を指摘されます。継続して、優秀な女性キャリアを育てていく社風にしたいものです。社員に投資することは当然ですが、その子供にも投資する時代になったのかもしれません。