ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

コロナ過を楽しく切り抜ける  アイデア広場 その720

2020-10-31 18:30:52 | 日記


 欧州では秋に入って新型コロナウイルス感染の第2波が広がり、死亡数も増え始めています。フランスなどでは、全土でロックダウンを行うことになるようです。EUの統計では、15万人以上の死者が出ています。アメリカ疾病対策センターは、予想される死者数を実際の死者数が上回る「超過死亡」を発表しました。超過死亡が、今年1月下旬~10月上旬の累計で約30万人に上ったと発表ししています。黒人やヒスパニックは白人と比べ、感染者の比率や感染後の致死率が高いという特徴があります。人種別では、白人の超過死亡の割合が11.9%だったのに対して、ヒスパニックが53.6%、黒人が32.9%.アジア系・先住民が28.9%と顕著な差が表れたのです。人種間には、日常的に受けられる医療サービスや就業形態の違いがあることがわかります。新型コロナウイルス感染は、世界の国々に関する表面的な知見だけでなく奥深い部分まで教えてくれます。
 新型コロナウイルス感染症が始まると中国についで、北イタリアが最初の感染爆発の地となりました。そのイタリアの主要都市ミラノは、新型コロタウイルス禍でいち早く都市封鎖を行ったのです。ミラノ市には、感染症に関する苦い記憶があります。中世で猛威を振るった黒死病(ペスト)の時に、ミラノは積極的に都市封鎖を行いました。中世において、イタリアの他の地域での流行を知ると、ミラノはいち早く城門を内側から封鎖したのです。ミラノは城門を内側から封鎖した結果、黒死病を免れたという歴史を持っています。でも、良いことだけではありませんでした。10年後に、再びペストがイタリアで流行したのです。今度は、子どもが主な感染者でした。城門を閉鎖したミラノでは、子どもだけでなく大人にも感染していったのです。ペスト菌への免疫がなかったミラノの子ども達や大人たちが、感染をしてしまったのです。
 検疫や都市封鎖という重々しい言葉も、ヴェネツィアやミラノの歴史とは関わりが深いものあります。ヴェネツィアは、海上都市として貿易で栄えていました。中世から近世にかけて、ヴエネツイアをなどのイタリアの都市は、交易の中心地でした。この都市には、大きなガレー船が小アジアやエジプト、黒海から入港していたのです。ここには、交易の中心地として異邦人やもの珍しい物産、金銀財宝が流れ込んできました。一方、ヴェネツィアには金銀だけでなく、しばしば疫病がやってきたのです。当然、都市としての対策を取ります。1374年、ヴェネツィア共和国は、感染した船を港から閉め出す権限をもつ臨検官を3名任命します。この都市に入港する前に、船を30日間係留したのです。その上で、伝染病が発生しないことを確認させた上で、入港を認めました。その後、それでは期間が短いというので、40日間の係留となり世界初の検疫体制ができたわけです。蛇足ですが、40を意味するイタリア語が検疫の語源になっています。
 それでは、黒死病として恐れられたペストはどこから来たのでしょうか。1253年に、モンゴル軍は中国南部の雲南地方などに侵攻しました。中国南部の雲南地方は、もともとペストが風土病として存在していたところです。この遠征軍が北方に戻る時に、ペスト菌も持ち帰ったというわけです。モンゴルは、ユーラシア大陸の東ヨーロッパから中国や朝鮮までを支配し交易を盛んに行っていました。ユーラシア大陸の東ヨーロッパからの交易とともに、疫病もグローバル化しいくことになりました。中国からカスピ海にかけて、疫病の大流行の痕跡が発見されてきています。シルクロードにある墓地の調査では、1340年前後に異常に高い死亡率が見られるのです。小アジアやエジプト、黒海から入港とともに、ヨーロッパのイタリアに疫病もやってきたわけです。蛇足ですが、現在、モンゴルなどの中央アジアのげっ歯類は、ペストの保菌動物とされています。中央アジアのタルバガン(リス科の哺乳類)というジリスを食べたり触れたりして、発症する人の事例が時々報道されることがあります。
 新型コロナによる日本の超過死亡は、アメリカやヨーロッパに比べて少ないのです。東京都の4月の死亡数は10107人で、平年より1056人と1割以上増加していました。埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡の計7都府県も、平年より1割以上増えていたのです。でも、超過死亡数は3月末から4月初めが最も多く、5月から6月はほぼ平年並みに戻っていたのです。日本のこの数年の死亡者数は、130から140万人で推移しています。年間の死亡数は、2019年が前年より1万9千人増えて約139万人となっていました。2019年上半期の死亡数は約70万7千人でした。今年はコロナ過に遭遇したにも関わらず、約69万人と減少しているのです。「超過死亡」数の合計は、過去3年に比べて少ないことが厚生労働省研究班の推計で分かったことです。日本の医療体制が素晴らしいのか、日本の民度が高いのか、その両方の相乗効果で超過死亡を克服しているのか、解答があれば知りたくなります。
 新型コロナウイルス禍で、WHOは、パンデミックとインホデミックを警告しています。全世界的に広がる流行病を、パンデミックと言います。インホデミックとは、誤った情報が蔓延して社会に害を及ぼす事象です。原因の分からない疫病による大量死が起こると、噂や思い込みが飛び交うようになり社会不安を引き起こします。中世の黒死病が流行した時には、人々は妻も夫を顧みなくなりました。この流行が起きると、父親や母親が子どもの世話をするどころか、逃げていくのです。人が死ぬと、大きな穴に遺骸を荷物のように何層にも重ねて埋葬していきます。使用人は、法外な金で病人の面倒を見るのですが、彼らも病気に患って死んでゆくのです。人が死ぬと、しめやかにお弔いするのではなく、集まって大笑いして馬鹿騒ぎをする死の舞踏が起きることもありました。生死にかかわる状況の中で、人々は異常な心理状態になることが多いのです。
 最後に、パンデミックのような異常事態を冷静に過ごす方法を考えてみました。ある意味で、今回の新型コロナウイルス感染後を平常な形で過ごす新しい仕組みです。外出自粛の副作用は、身体的にも精神的にも、そして社会的にもかなりのダメージを人々に与えます。死者を5000万人も出したスペイン風邪では、後遺症としてうつ病が増えたと言われています。インフルエンザウイルス感染後、うつ病になったというわけです。そのメカニズムは、インフルエンザウイルス感染によりインターフェロンなどのサイトカイン類が産生されることから始まります。サイトカインは、免疫システムで働く小さなタンパク質のことです。免疫システムで働く小さなタンパク質が産生され、それらの神経作用で「うつ」になるという説が有力です。うつ病になる原因は、セロトニンやノルアドレナリンが脳内で放出量の減少するためです。セロトニンの働きが活発なことは、ストレスや不安に対する耐性を強化することになります。必須アミノ酸の一つであるトリプロトファンは、脳内でセロトニンになります。バランスの良い食事が、大切と言われる所以です。最近は、腸内細菌や運動の相互作用にも注目が集まっています。セロトニンを効率的に産生するメカニズムが、食事、腸内細菌、運動の相互関係で作られるという説も出てきています。コロナ過の情況では、ストレスが蓄積します。ストレスの発散にも、運動や食事は効果を発揮します。この情況を、明るく切り抜けたいものです。

敵国から身近に迫る危機への対応  アイデア広場 その 719

2020-10-30 19:43:29 | 日記

 
 リスクを最小にするためには、最悪の場合を想定したシミュレーションも必要のようです。そこで、どんなシミュレーションがあるのかをいくつか見てみました。アメリカの核戦力は、敵の攻撃を事前に阻止することを目標にしています。この核戦力の基本は、ミニットマン、ミサイル潜水艦、そして戦略爆撃機になります。アメリアの仮想敵国は、軍事力を増強している中国になります。一般に、抑止力は相手が行動すれば、「被害を受けますよ」という段階があります。この標的は、軍事施設であったり、工場であったり、ときには人的被害が及ぶ施設を狙うこともあります。中国の指導者は、国民の犠牲をまったく考慮していないパターンが見られました。この国に対してもっとも必要な抑止力は、指導部を一挙に壊滅する体制を作っておくことであるとアメリカは考えているようです。原子力潜水艦が、中国の近くを戦略パトロールしているのです。中国の指導者を、ミサイルの照準に置いているわけです。アメリカはスパイ衛星綱で、中国の指導者の所在を24時間追跡しています。この核ミサイルで攻撃については、当然、中国指導部にも知らされているようです。アメリカが中国の指導者を24時間ミサイルの照準に置くということは、リスクを最小にするために必要なこととしています。
 その中国から圧力を受けている台湾は、どのような対策を取っているのでしょうか。台湾は中国の侵略に対する抑止力を持ち、中国との対決に備えています。中国が台湾を占領しようとすると、中国最大の三峡ダムを破壊する戦術をとります。台湾の対中国軍事構想の中心は、三峡ダムをいつでも 破壊できるミサイル攻撃体制があります。台湾側が三峡ダムを破壊してしまえば、中国の主要な部分は水浸しになってしまいます。経済的打撃は、取り返しがつかない規模になります。防御の面でも、対策を立てています。台湾は、中国が簡単には台湾海峡を制圧できない体制をとっています。強力な通常潜水艦隊を、作り上げているのです。台湾政府は、台湾海峡での戦いをできるだけ長引かせる戦術をとります。台湾海峡を越えて、中国の輸送艦隊が台湾を侵略することができない体制を作り上げています。このことは、中国の沿岸都市に穀物や石油が輸入されないということ意味しています。
 日本国民は、いくつかの事件を通して、中国政府の行動様式を理解するようになりました。以前のフィリピンのバナナや現在のオーストラリアの牛肉や穀物の輸入の突然の拒否が、鮮明に思い出されます。日本も、レアアースの輸入を突然止められたことがありました。関係のない民間企業の社員も、いわれなき拘束を受けたこともありました。中国の政策に異を唱える国に対しては、常にこれらの手段を使う国でもあります。もっとも、中国の安い商品や原料を購入することに妙味を見出す企業も多いのです。日本の企業や西側の企業も、10億人を超える中国の旺盛な国内消費行動には触手を動かします。これらの企業は、中国の体質知ったうえで、ビジネスをしています。社会主義の国は、国民の士気を自由にコントロールできる仕組みを持っています。暴徒化でも不買運動でも、ある面で自由にできることを意味しています。不買運動が起きても、レアアースが絶たれても、マスクが絶たれても、ある程度耐える生産体制を整えておくことが求められるようになってきています。
 リスクが常時襲ってくるかもしれないと身構えている国が、永世中立国のスイスです。スイス国民は、戦争に巻き込まれれば、国土の大部分は初日から戦場になるだろうと想定しています。今日では、大規模な空挺作戦が可能なので、国土は瞬時にして戦場となり得ると備えているわけです。開戦当初の空襲で、多く被害がでると想定しています。でも、被害者を救助することは、困難だと割り切っています。この被害を最小にするために、個々の家々では、防空壕を備えているのです。もちろん、食料の備蓄もしています。戦争被害は、同情だけでは問題が解決しないとしているのです。素朴な人道主義や偽物の寛容は、悲劇的な結末を招くと認識しています。スイスが外国の占領下におかれた場合、外国の軍隊から住民にたいして暴力的な懲罰が多く起きることを覚悟しています。国土を占領した敵国の軍隊に抵抗することは、厳しい努力が必要になります。ただ、占領されて地下闘争を行う場合、無益な血を流さないように戦わなければならないのです。国の独立を維持するためには、多くの一般市民が生命を犠牲にする決意を見て取れます。この決意を、敵国の組織が巧みに偽装して、社会進歩とか平和などを主張し、国の内部を崩壊させるプロパガンダが横行することは当然行われます。スイスには、死刑制度がありません。でも戦時において、国民の生命を危うくする者は全て死刑になる規定があります。スイス軍は、国民の不屈の決意を感じたとき、初めてその任務を完全に遂行できるとしています。
 ヨーロッパでは、ロシア軍の侵略に対して、身構える事件が起きました。2014年のロシアによる東部ウクライナ侵攻は、NATOに新たな脅威をもたらしました。この侵攻は、NATOに「加盟国の領土と国民の防衛」と言う冷戦時代の政策を回帰させることになりました。多くの国民は国の防衛が具体的な脅威に直面してから、慌てて準備していては間に合わないことを実感したのです。ロシアの侵攻を見て、スウヱーデンは、2010年に廃止した徴兵制を復活しました。2018年と2019年に4000人を徴兵し、9~12ケ月の訓練を義務づけています。フランスは、2018年16歳以上の男女全員を対象に軍や警察、そして奉仕活動の義務化を公表しています。フランスでは、軍や警察で訓練を受けたり、慈善団体で奉仕活動をすることを義務化しています。東部ウクライナ侵攻は、NATO諸国に冷戦時代の原点に回帰する流れを作っています。
 東ヨーロッパにとって、ロシアに対する安全保障は、依然として差し迫った課題になっています。ロシアの飛び地と国境を接するリトアニアは、侵略者に対して戦う意思を示しています。この国の国民は、全体で抵抗すればNATOは我々を支援すると考えています。リトアニアは、時間を稼ぎ、スイスのように抵抗運動を国全体で組織する体制を作りました。リトアニアが防御能力を高めれば、ロシアは攻める能力を示してきます。NATOのドイツ軍がリトアニアに駐留すると、ロシアメディアがハイブリット的な戦争を仕掛けてきます。「ドイツ兵がリトアニアの少女を強姦した」とロシアが、偽情報を流すのです。ロシアの強姦報道は、定石通りのハイブリッド戦争の手法になります。ロシアの使う陰険で巧妙な宣伝が、リトアニア国民とドイツ軍の分離を図る疑惑を植え付けようとします。でも、ドイツのNATO軍がリトアニア駐留を開始したことは、この国にとって大きな保障になっているのです。
 日本は、韓国に竹島を占領されています。北方四島は、ロシアに占領されています。そして、尖閣諸島では、中国の公船が侵入を繰り返しています。朝鮮半島の国には、日本海を越えて日本を攻撃する能力はありません。ロシアは、ミサイル軍と航空部隊を持っています。でも、大艦隊を使って日本を占領する能力に欠けています。現在、日本を攻撃してくる能力を持つ国は、中国軍になります。日本が独立国家として存在には、自らの安全と存続を自分の手で守らなければならないことになります。国を守るためには、敵に打撃を与えること、自国民の士気を高めることが求められます。敵国の行動を理解するためには、現在の軍事バランスや経済力を見るだけでは不十分です。その国の行動を理解するためには、国家としての振る舞い方の癖にまで知ることになります。敵国の理解には、歴史的経験の蓄積から形成されたその国民の価値観を知ることが重要です。これらを理解したうえで、安いコストで、相手を消耗させる手段が用いられます。尖閣諸島では海上保安庁の巡視船のローテイションを短期間にして、乗員の負担を軽減することが必要です。緊張、回復、リフレッシュ、緊張というようなサイクルを、乗務員には必要です。ストレスの高い勤務を長時間行うよりも、短時間で交代する仕組みがベターです。尖閣諸島における中国との緊張関係は、これからも長期化します。長期化に耐えられるように、乗務員の能力が劣化しない配慮が求められます。最小限の費用で、中国に対し有効な抑止力を維持し、長期に耐える戦略が必要です。そのためにも、最前線に立つ人員の健康と能力を守っていく仕組みが重要です。


「発掘された日本列島2020」が好奇心をくすぐる アイデア広場 その718

2020-10-29 17:58:19 | 日記

 先日、福島県の会津若松市で開かれている「発掘された日本列島2020」を見にいきました。ついでに、只見線に乗る2泊3日の旅の楽しい旅になりました。ソーシャルディスタンスを保つ環境が整えられた観光地は、過ごしやすいものです。1日目は、「発掘された日本列島2020」の資料を買うだけで、過ごしました。2日目は、只見線に乗りながら、景色を楽しみ、資料を読んで時間を過ごします。3日目に、満を持して発掘された実物や近年の考古学の実情を見聞したわけです。
いま、考古学の世界は静かな硯ブームに沸いています。文字のない弥生時代に、墨をする硯が発見されたというのです。今回、石硯と研石(炭ををすりつぶすための道具)が発見されました。これが発見されたのは、佐賀県の有名な吉野ケ里遺跡なのです。この石硯と研石は、過去の出土品詳細確認の整理の過程で見つかったものです。この発見により、各地の出土品の再検討が行われるようになりました。各地の出土品の再検討の結果、硯の可能性がある遺物が続々と「発見」されているのです。硯が発見されたことは、弥生時代に文字が使われていたかもしれないことを示唆しています。吉野ケ里遺跡に近接する有明海沿岸地域でも、弥生時代に文字が使われていた可能性が高まったわけです。弥生時代の文字がまとまって、出土すれば面白い発見になります。文字があれば考古学だけでなく、文字を通して当時を理解することができるようになります。弥生時代の人々が文字を扱っていたという意味で、硯は重要証拠になるわけです。
 文字といえば、日本三大碑の一つである多胡碑が有名です。幸い、この多胡碑も「発掘された日本列島2020」の展示に含まれていました。この碑は古代多胡郡が設置されたことを記念として設立されました。古代多胡郡の建郡を記す記念碑で、8世紀前半の建立とされています。実は、以前ここを訪れて実物を拝見しています。今回は、この碑とセットになっている史跡上野国多胡郡正倉跡が主要テーマでした。この正倉跡は、群馬県高崎市の利根川の支流である広大な谷の中にあります。上野国多胡郡正倉は、国家の権威を高めるために荘厳な倉庫群として建設されたものです。古代多胡郡は、国家の形成期に渡来人を登用して設置した全国でもまれな郡になります。東北を併合するための軍事的な政策を、古代国家が進めていました。その先兵として、東北地方に派遣されていく地域になります。多胡碑は、多胡郡正倉跡の北端から真北に約350mの場所に位置します。
 文字の次に関心を持ったものが、アスファルトでした。新潟県阿賀野市は、東の五頭山を背にし、西に阿賀野川が流れ、豊かな田園風景が広がります。ここにある石船戸遺跡は、縄文時代の晩期初頭から前葉の集落です。この遺跡は、焼土や大量の炭化した木の実やサケの焼骨が出土しています。石船戸遺跡からは、土偶や石棒が出土することから、盛んにマツリが行われていたことがわかります。これらの遺物は、大洞B~BC式土器、遮光器土偶や動物形土製品など、東北の影響を強く受けています。一方、石棒の石材には東北だけでなく、関東北部の石材も用いられているのです。このことは、広い交易圏からなっていた遺跡であることを意味しています。特徴的なことは、アスファルト塊を64点出土していることです。アスファルトは石油の一種で、粘着性が高く、土器の補修や石鍍の着柄に用いられました。
 展示されていた高さ8.6cmと9cmの遮光器土偶は,細部まで丁寧に文様が描かれていました。この新潟地方で出土した土偶に、アスファルトを使って接着をしていたわけです。この遮光器土偶の首の破損部分に、何度も修復した様子があるのです。私は、なぜ土偶がアスファルトで修復され、接着されていたのか不思議だったのです。通常の土偶は、全て破棄された状態で発見されています。ほぼ壊れていて、完形品はほとんどないものと思っていたのです。土偶においては、頭部のみの発見が圧倒的に多く、「頭と胴の上半と腕」がこれ遺に次ぐという先入観がありました。土偶はばらばらの状態で発見される事実は、欧米大陸の先史時代にも広く認められることでした。それが、アスファルトを折損面に塗布して接着修理していたわけです。確かに、石船戸遺跡の近くには、油田もあります。その資源を利用して、東北や関東の資源と物々交換をする下地はあったようです。私は、縄文の人々が、修復する思想があったのかどうかを知りたくなったわけです。好奇心が、一つ増えたことになるかもしれません。
 次に関心を持った遺跡は、「発掘された日本列島2020」の資料にあった北黄金貝塚です。
この貝塚は、北海道伊達市にあり、縄文時代前期(約6000~5000年前)の縄文時代前期の集落です。面白いことは、北海道の縄文人は本州の縄文人より虫歯が少ないのです。本州の縄文人は、木のドングリなどの木の実を多く食べていたために、でんぷんが歯に残り、そこから虫歯菌が繁殖していったようです。北海道の縄文人は、海産物を多く食べていたために、このようなことが起こらなかったようです。もう一つ、興味を引いたことがあります。貝塚からは、オットセイやエゾシカの骨もが見つかっています。海獣狩猟に用いられた鈷頭も、多く出土しています。その中に、鯨骨製骨刀が貝塚の中から出土しているのです。長さ33. 4cmの鯨骨製骨刀は、被熱により湾曲して出士しています。その刀の形が、握りがあり、そして鍔があるのです。銅製の刀を見なければ、模倣できないと考えてしまいました。縄文の時代から、中国との交易があったのではなかと想像してしまいます。
 最後に、日本には46万力所以上の遺跡が知られています。46万の遺跡は、単なる過去の遺産ではありません。遺跡は、土地の気候や風土に適応して地域独自の生活を営み、世代を繋いできたものです。日本の弥生文化は、西から東に移動してきています。渡来系の氏族が、東国に移動している事実からも明らかな事実のようです。移動する文化を各地方の豪族が、取捨選択して地域の文化を整えてきました。古墳文化の時期になると、近畿の大王の基準で古墳が作られるようになります。もっとも、それでも地域の特徴は古墳に残っていました。だとすれば、その逆に北海道の東から西へ波及した文化を、探したくなります。また、渡来系氏族が、ひそかに隠した竹簡などが出てくれば、楽しいことになるのではと、ひそかに期待しているのです。この好奇心が、読んだり書いたりする原動力になっているのかもしれません。

1週間の連想マップ  アイデア広場 その717

2020-10-28 17:57:27 | 日記


日曜日はスポーツで汗を流し

 野球でボールを遠くに飛ばせたいと、野球のプレイヤーはみんな思っています。野球のバットには、最も反発係数高いスウィートスポットがあります。ここにボールが当たると、ボールは遠くに飛びます。スウィートスポットにあたらないとバットが折れたり、手がしびれたりすることになります。バットが折れるのは投手がすごいのではなく、バッターの技術が未熟ということになります。巧みさを練習した人々は、この理屈が分かっています。ですから、野球のスポーツ中継を見ていても、投手と打者の駆け引きや心理戦の深い部分まで理解できて、見る楽しみが増幅することになります。スウィートスポットは、他のスポーツにも現れます。テニスでスウィートスポットを外す未熟な人ほど、振動が腕に伝わりテニス肘の障害になりやすいのです。見方を変えれば、肘の障害の多いテニススクールには、コーチの指導に問題があるわけです。そこが強い選手を輩出しているスクールだとしても、保護者としては避けるスクールになるということです。
 
月曜日はリストラを楽しんで

 最近、地方銀行の再編や銀行員のリストラが話題になっています。その中で、リストラが予想される大手銀行の人材を、地方の企業に紹介するビジネスがあります。地方の企業は、これらの優秀な人材を受け入れたいのです。でも、新天地に赴く銀行員に対して、どれだけ前向きなモチベーションを持っているのかを地元側は不安に思っています。リストラ後に希望する仕事と、実際に転職市場が求める求人の間には隔たりがあるものです。地元の受け入れ側は、給料が下がるので、プライドをきずつけることかもしれないと心配します。勤める側は、リストラ後に稼ぎたい金額と実際に稼げる金額の乖離に心配しています。リストラに押し出されてくる人材へ、期待が低い企業もあります。でも、優秀で何でもえり好せず仕事に取り組める高度な人材には、多くの依頼が入るものです。実力が認められれば、さらにレベルの高い仕事が任され、それに伴った収入を得られます。大手銀行の有能な人材が活躍すれば、地域の活性化の起爆剤にもなります。政府が地方に交付金を支給するより、より効果のある地方活性化に繋がります。地方の生産性も、より向上していくことになります。大手銀行も、リストラした人材が地方活性化に貢献するとなれば、社会的失墜を心配しなくともよくなります。三方良しになり、パッピーです。

火曜日と水曜日は農業にいそしんで

 農薬や化学肥料を使わない有機農法が、先進国で評価されるようになっています。有史以来、この農法を最も合理的に行ったケースが、ナイルの氾濫農法です。ナイル川流域には、肥沃なシルトが上流から「浸食によって移動」してきました。土壌鉱物は、その大きさにより磯、砂、シルト、粘土の4種類に分類されます。その中で、農業に適したものがシルトなのです。ナイルの洪水は、農作物と競合する雑草をすべて削り落として水没させていきます。ナイルの氾濫農法では、雑草は除去され、ほぼ完璧に耕作された状態になり、さらに施肥された状態になり、種播きを待つばかりの畑ができていたのです。ほぼ完璧に耕作され、施肥された畑が、労働コストゼロでできあがったわけです。ナイルのような農法に近いものが、焼畑農業になります。焼畑農業は、無施肥、無耕作、無灌漑、無除草剤、無農薬の農業です。現在の日本では農村人口の高齢化で、山間地にある農地がどんどん放棄されています。平成29年の荒廃農地面積は、全国で約28.3万haとなっています。焼畑農業は、耕作放棄地にも対応しやすい栽培方法になります。山間地の耕作放棄地周辺には、生物多様性が残っており焼畑農業には適地といえます。2~3年はその場所で栽培を行い、雑草が強くなれば、別の場所に移動します。焼き畑農業を行うサイクルを繰り返せば、生態系は守られます。氾濫原の農法と同じように、植え付ける穀物の種類を問わず、最も労働力を節約できる農業形態になります。一定の区間を焼いて、種を蒔くだけです。実れば収穫し、有機農産物を愛する人に供給すれば良いのです。糖尿病などの生活習慣病の最良の薬は、縄文時代の食事という説も出てきています。つまり、焼き畑農業で作られる穀物は、付加価値があるということになります。最小の労力で最大の利益を上げる農法になるかもしれません。

木曜日は国の安全を考えて

 中国の人口ボーナス減少などの予測も、可能になります。人口減少が中国軍事力を低下させることになれば、周辺国の軍事費も減少することになります。もし、そのようになれば、日本の防衛力を削減し、治安に従事する人的資源を、福祉厚生の分野に移動させることが可能になります。防衛・消防・警備の分野には必要最小限の人的資源を投入する仕組みにして、その人材を不足する分野に転用する発想が出てきます。そんなオプティズムだけでなく、厳しい状況が生まれるかもしれません。第二次世界大戦中、イギリス政府は事前にドイツ軍のエニグマ暗号を解読していました。でも、その後の迎撃戦を有利に運ぶため、イギリスの小都市コヴェントリーの爆撃を見逃したとする説が語られています。「小の虫を殺し大の虫を生かす」という戦術の話が出てきます。現在でも、この種の戦術は頻繁に使われています。軍隊は、生産性がありません。消費するだけの存在です。中国の軍事を増大させ、いずれ軍事費の浪費で国が貧しくなるのをじっと待ちます。それまでは、領海侵犯を最小限の人員と費用でじっと耐え忍びます。

金曜日は矛盾の中にチャンスをつかみ

 人類は、狩猟採集生活という環境の下で生存や繁殖に適応した構造を身に付けました。苦しみや悲しみは、発熱と下痢と同じ人類の遺伝子の適応システムを作り上げました。人はウイルスなどの病原体に感染したとき、発熱したり下痢をしたりします。発熱は、病原体から人間を守る免疫作用の現われです。下痢は、腸内に増えた病原菌を体外に排出する作用になります。人間の行う発熱や下痢という症状は、遺伝子による適応システムなのです。人が深い悲しみや苦しみに耐えられない場合、押しつぶされてしまいます。脳には、悲しみに打ちひしがれた心理状態が切れ目なしに続くのを、防ぐ仕組みが備わっています。涙は、感情の高揚にともなって起こる体内のストレス状態を緩和する働きがあったのです。一方、幼い子どもの泣き声を聞きその涙を見ると、親は保護せずにはいられない衝動に駆られます。幼児の涙は親の保護を求めて、通常は泣き声とともに発する信号です。でも、ある時は涙がストレスを発散する作用も果たしているのです。人の苦しみや悲しみのシステムは、人類の生存や繁殖に有利な結果を生み出していることがわかります。遺伝子の設計によって生み出される苦しみや悲しみは、子孫を増やすことにプラスに働くということになっているわけです。
 
 土曜日は知的スポーツを楽しみ

メジャーでは運動能力の高いアスリート系の選手を外野に配する傾向が出てきました。メジャーの内野守備は、近年データを駆使し、極端な守備隊形を取る方式が定着しました。内野が抜かれても、外野で抑えれば良いという考え方です。内野の運動能力のある選手であれば、外野に回したほうが良いというデータが多くなったともいえます。運動能力のある良い選手は、外野の守備固めに回し、2塁打や3塁打になることを阻止する外野の守備固めに回した方が得策という判断が主流になってきたのです。内野手には、「君たちは決められたところに立っていればいい」、そして、抜かれた場合はデータが間違っていたと割り切るようになったわけです。このデータ野球が、いい結果を残していることに驚きを覚えた方は多いようです。



狩猟採集生活に幸福原型を見出す アイデア広場 その 716

2020-10-27 16:25:35 | 日記


 個体を守る上では、痛みが身体運動を休止させる役目をしていました。でも、痛みがあっても、止めずに突き進む場面があります。スポーツの試合中に、足をねん挫しても、痛みを感じず競技を続ける選手がいます。試合終了と同時に、痛くなってうずくまる光景です。狩猟社会では、命をかけて戦っているときに、傷を負って痛みを感じればそれで命を落としてしまいます。生命が優先される事態では、痛みは感じなくなるように人間は進化したようです。この社会では、好奇心や遊びの精神も、「ジャングル由来の野生の心」とみなされていたようです。好奇心に満ちた狩猟民は、多く存在していました。好奇心を持つ彼らは、危険に挑戦して失敗する人もいました。結果として、好奇心保持者は競争に負けて、淘汰される流れになりました。逆の見方をすると、危険に挑戦するメンバーがいれば、他のメンバーは危険をおかさずに結果を見ることができます。いわゆるタダ乗り戦略です。タダ乗り戦略を採用した集団は、歴史の中で優位な立場を確保し、勝ち組になっていきます。生き残っている現在の人類は、ある面で勝ち組ということができます。でも、その心の中には、ジャングル由来の野生味をわずかですが残しているのです。
 愛国心にもとづく領土の主張は、強くなりがちです。私たちの感覚は縄張りという土地に対して、とくに敏感にできています。現代の私たちの心は「文明の心」ですが、その内側に「野生の心」がひそんでいます。なわばりを持つものは、なわばりを命がけで守ります。そこへの侵入者は、相応の覚悟が必要です。「野生の心」は「なわばり意識」から発祥しているともいえます。食べ物や住居を確保することは、じぶんが生きる最低限の資源の確保という意味で重要です。勝ち組の私たちには、生き残るための多くの仕組みを持っています。なわばりの原初的形態は、母親と複数の子供の関係に見られます。下に兄弟が生まれれば、上の子供は触れ合う回数が以前より減ります。母親に触ってもらう機会が足りない子どもは、欲求を満たせない状態になります。母親の気持ちを引き付けようと、子ども達はいろいろな行動を取ります。これも、母親という愛情のなわばりを確保しようとする行為になります。
 考えてみれば、怒りがあったほうが平和になるという分析も可能です。社会のルールを守らない人がいれば、糾弾して守らせるのに怒りや憤りが大きな役割を果たすことはよく知られています。敵が襲ってきたらしいという情報が感知できれば、恐怖がすぐさま臨戦態勢をとらせます。通常、戦いをすることは双方にとって高くつきます。この代償を軽減できるリーダーは、高く評価されてきました。恐怖を身につけた人は、生き抜くための高度な能力を身につけたリーダーとしと評価されていたのです。狩猟社会から農業社会に環境が変り、危険が減少し、恐怖の価値が変わりつつあります。文明社会では、恐怖を感じやすい「怖がり屋」は、勇気がないなどと否定的にみられるようです。ある大統領は、新型コロナを怖がらずにマスクをつけないことで、勇気を前面に押し出しています。
 余談ですが、日常的に怒りが生じるときがあります。いわゆる、イライラしている時に、怒りが出現します。お腹がすいているというだけでも、イライラしやすくなります。体が疲れていても、イライラしやすくなります。時間が足りなくなると、人々はとたんにイライラしやすくなります。自分の置かれた状況を理解すると、感情的になる前に、イライラから解放されます。つまり、理性が怒りの出現を、防止することができます。不思議なことですが、安らぎの家で、怒りが出ることが多いのです。家は、人目を気にすることなく自分のペースで仕事ができるくつろぎの場所です。きょうだいゲンカは、母親がいるとエスカレートします。ある意味で、安心する空間で怒りが発揮されるのかもしれません。そういえば、親子が帰宅する夕暮れ時は、大人も子供も体が休む準備を始めている時間帯です。つまり、イライラしやすい時間帯なのです。怒りについて、もう一言。叱るときは、子どもに「本気で怒っている」と思わせることが肝心です。怒りは、生きのびるのに必要な機能として、人間の進化のとおし、積み上がってきたものです。怒りには、力があります。
 狩猟採集時代は、衣食住が満たされると幸福に繋がりました。この狩猟採集時代は、現在社会では簡単に満たされる衣食住が、重要な幸福感の仕組みを形成していたのです。最低限の資源を確保することだけで、幸福を享受できたわけです。でも、幸福感は飽和しやすく、日常的な幸福は持続しにくいという特徴があります。生活の質が向上して、数年ほどすると生活上の満足度は、前のレベルに戻ってしまうことはよく経験することです。幸福感度が、人によって多様化しているのです。人間の幸福を増大させるならば、自分の持つ幸福の感度の多様性を認識しておくことになります。その上で、その時々の、また場所や雰囲気により幸福を獲得できるようにセットしておくことになります。でも、それは、難しいことにようです。幸福な人間とは、狩猟採集時代の不足した資源に満足する人たちになるかもしれません。もしくは、今の分限を知り、分限を超えない生活をする人たちにということになるかもしれません。「生きているだけで丸儲け」という心境が大事になります。



バリアフリーの思想から湧き出る多様性 アイデア広場 その 715

2020-10-24 17:53:23 | 日記
バリアフリーの思想から湧き出る多様性 アイデア広場 その 715

 2021年8月には、東京大会オリンピックとパラリンピックが行われます。日本のバリアフリー環境が、世界に紹介されることになります。日本の障害者の方や性的マイノリティの方に対する多様性の価値観が、世界との比較でみられることになります。日本の障害者の方が欧米に行くと、バリアフリーが整っていることに驚くそうです。車いすの障害者の方が、健常者と同じように生活できるように都市構造が整っていることのことです。さらに、意識面での配慮もいき届いています。テレビに日常的に放映されるテレビのワイドショーなどの番組では、障害者の方がゲストや常連として出演しています。英国のテレビ番組では、障害者を目にするのは普通のことになっています。日本のテレビ関係者が、英国のテレビ局を取材した後、使わせてもらったトイレでまた驚いたそうです。すべてが性的マイノリティにも配慮した、男女の別がないユニバーサルタイプの個室だったのです。障害者に対するバリアフリーの整備は、放送界全体に広がり、さらにそれが電波によって発信されているという現状です。日本の朝や昼のワイドショーでも、いろいろ障害者の方が出演して、健常者と違いのないことを発信していきたいものです。英国のテレビ局のバリアフリーは、多様性の価値を伝えるメデイアとしての先進性を表現しています。日本のバリアフリー政策でも、障害者の方が自然に社会に入り込む仕掛けが求められています。
 近年、障害者の視点を取り入れた商品や製品開発を行うことが,より良い製品づくにつながるという認識が広がってきました。障害者を雇用しているある企業は、2012年には全社員の3%にすぎなかった障害者雇用を、2019年には10人に1人まで増やしています。2023年には、12%に引き上げる目標を掲げているのです。昨年は、国の行政機関や地方自治体で、障害者雇用人数が基準より大幅に少なかったことが問題になりました。でも、民間の一部の企業では、障害者雇用のメリットを利用しようとしているのです。たとえば、言語障害を持つ方の特徴は、日本語を読むことができない外国人と重なりあうところがあります。この場合、製品開発は外国人観光客対象の企業のビジネスチャンスになります。絵や映像という形で、伝える工夫が生まれます。また、障害者の心身の特徴は、身体や認知機能の低下している高齢者と重なるところがあります。この重なりから、製品開発を進めていくことは,高齢化が進む日本の市場のヒントになるというのです。
 日本の認知症患者は、460万人を超えています。その予備軍が、400万人いるという事実が最近、公表されています。認知症は医学的な治療が重要ですが、日常生活の支援も効果的なのです。認知症を患っている方でも、自尊心、怒り、虚栄心、喜び、嫉妬といった人間の根源的な部分は変わりません。認知症を含めて障害者の方にとって重要なことは、他者との関係になります。人とつながってこそ、元気に生きていけることになるわけです。一方、健常者の方と違って、心身の体調における波が大きいのです。当事者が自信をもって行動する場合には、失敗しても家族の方は責めたり、怒ったりしないことが大切なようです。今できることを見守ってやることが、当事者を元気にする共通の方法になるようです。
 余談ですが、障害者の方と思春期の子どもには類似点があるようです。両者とも、自立を目指しています。親が子育てで目指すものは、子どもの自立になります。思春期を上手に抜け出せば、スムーズに自立の流れに乗ることができます。思春期に入った男の子は、動物的な欲求が働いています。男性ホルモンを大量に分泌し、活発に行動していきます。この時期の子どもは、自分を強く見せたり、虚勢をはったりすることがあります。目いっぱい背伸びしているときは、子どもの気持ちがはりつめ、不安定になっている時でもあります。この虚勢を張っているときに、親がちょっとけなしただけで、子どもの気持ちは簡単に崩れるものです。自信を喪失して、自立の道が遠のく場合もあります。「自立」とは、自分ひとりの力でなんとかするというものではありません。自立した人とは、自分の苦手なことを理解し、弱さを受け入れている人のことを指します。自立するために大切なことは、ほどよく相手に依存することでもあったのです。障害者の方の自立を考えた場合、適度に人々に依存し、弱みを正直に見せる勇気も必要になります。思春期の子を持つ親も障害者の支援者も、日々変わる個々人の心身の状態を読み取るスキルが求められます。状態の変化に対応する柔軟性が求められるわけです。
 そこで、一つの発想が生まれます。障害者、認知症、高齢者、思春期の人々の類似性に着目するわけです。さらに、次の要素を勘案します。バリアフリーは、物理的環境だけでなく、人的環境も大切な要素になるという視点です。幸福の国と言われるブータンは、物理的環境が整っていなくとも人々の満足度の国です。障害者、認知症、高齢者の方たちは、機能が低下しても、楽しいことができます。脳は楽しいことが大好きですから、楽しいことは誰もがしたいのです。社会とつながり、人とつながる仕組みがあり、そして支援する仕組みがあれば、機能が低下しても生き生きと暮らせるわけです。できないことは何かを考え、できないことだけ支援してもらうことです。支援する側も、できないことを見極めて支援します。その時のポイントは、「最後は自分でできた」」という感覚を持ってもらうことになります。人間関係に心地良さの雰囲気が流れていれば、前むきに、そしてアクテイブに進むようになります。この関係を作り出す現代のツールが、スマホになるようです。旅行をしながら、「スマホを杖に、楽しく、活き活きと」の一句を作る認知症の方に、そのツールの素晴らしさと可能性を見ることができます。
 最後に、思春期のお子さんの難しさの一端を考えてみました。最近の知見では、母親が子供に愛情を持つ時にホルモンが分泌されていることが知られています。その女性ホルモンは、オキシトシンという物質になります。この物質は、親子が触れ合うことで、より多く分泌されます。母親に触ってもらう機会が足りない子どもは、欲求を満たせない状態になります。下にきょうだいが生まれたりすれば、触れ合う回数が以前より減ります。一定の触れ合いで、心はバランスを保っていたわけです。それが崩れると、欲求不満の子どもは自分で自分を刺激して気持ちを整えようとします。不満を持つ子どもは、ひんぱんに自分で自分の体を触り、気持ちを整えようとするようになります。欲求不満を持ち、不安になったり、緊張したりしたとき、チックが現れる理由です。乱れた気持ちのバランスを回復するために有効な方法が母親にタッチされることなのです。思春期においても、この心の安定のシステムは変わっていません。中学生が虚勢を張っても、暖かい心理的ふれあいを続けること大切になります。思春期のソフトランディングを上手に行うコツになるようです。この暖かいふれあいの手法も、障害者、認知症、高齢者、思春期の人々に対して行う有効な支援になるようです。



新たなコミュニケーションモデルの出現  アイデア広場 その714

2020-10-23 18:28:59 | 日記


 新型コロナ感染の中では、多くの人々の不安がなかなか収まりません。そんな状況の中で、楽しく過ごしたいと願うのが人間です。危機の中で楽しく過ごす工夫は、古来いくつか見られました。ペストの渦中にあって、ボッカチオがデカメロンを書き上げ、世の中に楽しみを送り出しました。一緒に集まって、飲食をすることも楽しいことです。食事の場を設けること自体が、連帯や和解を促します。みんなで食べると、食事がより美味しく感じられることが共食の不思議な魅力です。このコロナ過で考え出された演出が、オンライン飲み会になります。私の知人も、オンライン飲み会を東京の友達とやったと話してくれました。このオンライン飲み会は盛り上がったのですが、何かが足りないと不満も残ったようなのです。確かに、2次元の画面を通しての会話は、日常的に行う会話とは異質なものあります。
 人類の700万年の進化から考えると、言葉を話すようになったのは極めて最近のことです。人類に言葉が登場したのは、数万年前からになります。歴史が浅いために、言葉を使って自分をあますところなく表現することは難しいのです。抽象的な言葉では、価値を伝えられない場面もでてきます。コミュニケーションには、言葉以外の要素もあるのです。コミュニケーションには、言語と非言語の2つがあります。非言語コミュニケーョンとは、言語以外で伝達する能力のことになります。この非言語コミュニケーションは、表情を読む能力や、場の空気を読む能力に重点が置かれるようです。相手の表情を読む力は、恋愛に限らずあらゆる場面で、必要不可欠な能力になっています。
 人間は言葉を操りながらも、相手の表情や目の動きを読み相手の気持を理解してきました。言葉だけでは、相手を評価し、理解することができないこともあります。コミュニケーションは、言葉だけでなく、表情や相手の動きを加味した相互理解なのです。2次元の画面では、相手の表情をうまく捉えることができません。3次元の画像で、より鮮明なものであれば、お互いの表情の把握が可能になるかもしれません。社会的スキルには、会話とともに、洗練されたマナーや身体言語と言われるものがあります。相手の事情に考慮しながら、上手に自己主張していくことは社会的スキルになります。現在のオンラインの画面では、これらを表示することが難しいようです。でも、親密な連帯感があれば、器機の不足分を補うこともできるようです。要は、IT器機の技術習得や慣れが必要になります。人間は、言葉や文字に数千年をかけて習熟してきました。オンラインでのコミュニケーションの習熟には、ある面で数千年かかるかもしれないというわけです。それほどでなくとも、IT器機の操作や画面に慣れることが必要のようです。この慣れが日常化した場合、文字以上の素晴らしい文化を人類にもたらす可能性が出てきます。そんな素晴らしい世界を見たいものです。
 コロナ過で、対面授業を控えている大学がいくつかあります。オンライン授業を行っているわけです。そんな大学で、問題が起きているようです。ある大学では、学生と大学院生、5100人余りにアンケート調査を実施しました。記名式にもかかわらず、全体の53%が回答を寄せたのです。そのアンケートをもとに、学生の悩みの内容、生活習慣などを分析したところ、1割以上の学生に中程度のうつ症状がみられたのです。リアルな学びの機会の喪失は、若者のこころに影を落としていたわけです。多くの大学はオンライン授業を続けてきており、入学後に実際に会った友人はごくわずかです。小中高校では、対面授業でオンライン教育を受けていませんでした。それがコロナ過で、オンライン教育を受けることになりました。そのギャップに、戸惑っていることがわかります。初対面のメンバーばかりの「オンライン飲み会」を開いても盛り上がらない状況が続きます。親密な連帯感があれば、盛り上がるケースも多くなります。でも、新入生同士では、その連帯感もまだできていない状況です。大学生活に慣れれば、オンライン飲み会と同じように、授業にも慣れ、コミュニケーションもできるようになるでしょう。
 オンライン授業を受けている大学生は、だらだらと日常の延長線で授業を聞き、授業に身が入っていないようです。そんなオンライン授業を上手に受けるヒントが、「化粧」にあるようです。不安の時代の今という時間を満足感で満たす役割が、化粧にあるというわけです。化粧に「テーマ」を持つ事で、日々少しずつ異なる自分を楽しむ事が出来るといいます。異なる自分を楽しむ事で、自らの気分も刷新され、1日1日が充実したものになるというのです。スマフォのカメラで自分の顔を写すと、自分の好みの化粧のイメージが映し出される仕掛けがあります。AIなどの最新技術を使ったオーダーメード化粧を、提案する企業もあるようです。オンラインで結ばれた自己満足と化粧のテクニック、そして世間の注目は得難いものだというわけです。授業に向かうダラダラ感を、学習課題の克服を前面に押し出して、乗り越える方法もあるようです。
 余談ですが、起業に求められているのは、作品の完成度ではなく、新しさです。起業家が、次々に新しいものを生み出すことに価値が問われるようになってきました。商品の質を極めるということに、あまり価値はなくなりつつある流れがあります。最初の商品を買ってもらった後のサービスがないと、そこから退潮が始まっていきます。できた商品やサービスにさらなるアイデアを付加するような企業活動が必要になっています。最初から完成された製品の評価は低く、最初は未完成でも時が経るにつれて完成度が高まる商品に注目が集まっているのです。大学でのオンライン授業の未完成、コミュニケーションの不備などが問題になっています。でも、このコロナ過の厳しい環境の中で、この環境を乗り越える工夫と知恵を出し合って、未完の大器たちが大きく成長することを願っています。



国内観光の興隆をサポートする アイデア広場 その 713

2020-10-22 17:53:16 | 日記


 新型コロタウイルスの影響が弱まり、景況感の悪化に歯止めがかかってきたようです。もちろん、まだまだ以前のような経済状況にはなっていません。その中で、業種によっては、希望を持てる分野も出てきています。天候にも恵まれた9月19~22日の4連休は、中国地方の主要観光地に多くの客が押し寄せました。松江市の玉造温泉街は4連休中、ほとんどの旅館が満室でした。山陰地方有数の温泉街である玉造温泉は、冬の予約も7割ぐらいが入っているようです。山形を代表する旅館、古窯(山形県上山市)では週末は満室になっていました。関係者は、東京解禁の効果が出ているといっています。冬の予約も例年の7~8割の水準まで回復しているようです。
 東北の宿泊施設はこれまで,地元自治体の支援策などで乗り切ってきました。10月最初の週末には、東北新幹線の利用者が増え、東北では満室となる旅館もありました。東北の宿泊施設は、1400万人の人口を抱える東京都の追加をチャンスと捉える関係者は多いのです。紅葉やスキーシーズンを控え、東北を訪れる観光客は今後増加が見込まれています。北と同じように、西の広島県尾道市にも多くの人出がありました。尾道市のロープウエイは、多くの観光客が訪れていました。尾道水道を見下ろせることで、人気の千光寺山ロープウエイやラーメンの店で行列ができていました。しまなみ海道のサイクリングルートを、巡りたいという観光客も多かったようです。しまなみジャパンが貸し出すレンタサイクル1000台は、フル稼働でした。
 鉄道による観光客も増えていますが、自家用車やレンタカーによる観光客も増えています。道の駅は、2020年7月には全国で1180カ所まで広がりました。北陸新幹線が延伸し、福井駅でレンタカーを借りて県内を観光する首都圏客が増えることが見込まれています。福井市の中心部に大阪市から約3時間、名古屋市なら約2時間30分で着きます。道の駅の利用者がさらに増える可能性があると予想し、各地で整備が相次いでいます。石川県には26カ所あり、富山県では16カ所になります。今後2年半で5カ所の整備計画がある福井のハイペースぶりは目を引きます。ある道の駅では、物販・飲食施設の品ぞろえを開業時から400品目増やして1500品目にして、観光客をお待ちしているようです。
 大都市圏を中心に、リースやレンタカーなど車を所有しない生活スタイルが広がっています。キャンピングカーなど乗用車以外の車種も導入し、新しい車の楽しみ方を提案しているのです。レンタカー会社の中には、アウトドアを楽しめるキャンピングカーなど他社にない車種をそろえる企業も増えています。三密を避けながら、ドライブで旅行を楽しむ人々も現れています。レンタカー会社が、病院や介護施設の送迎車両向けなどに売り込む流れも出てきています。一方で、懸念されるのが感染の拡大です。車からの感染が、不安視されているのです。不安があれば、それを解消するツールも開発されてきます。新型コロナウイルス対策として、タクシーなどの普通車向けの紫外線照射装置を開発した企業があります。車内清掃後に前席と後席各3分ずつの照射で、除菌できるという優れものです。紫外線照射装置をタクシー各社で使用し、利用者やドワイバーの安心感の確保につなげ工夫のようです。
 「GoTo」を利用して佐賀県に旅行し、感染が確認される事例も起きています。都市圏や周辺県では、感染再拡大への不安は尽きません。観光産業の期待は高まるが、新型コロナウイルスの感染防止策の重要性も一段と増しています。仙台市中心部の勾当台公園で、イベント「杜の都復活祭」が開催されました。復活祭での「すずめ踊り」は、踊り手がステージ上でマウスシールドをつけて披露するほどでした。岩手県沿岸を縦断する三陸鉄道は、乗客が10月に入って2割前後増えています。増えることはうれしいのですが、不安もあるのです。これまで沿線住民しか利用しなかった日中の時間帯に、車内が混雑するようになりました。日中の時間帯に車内が混雑しているため、感染リスクを懸念する地元民の声も聞かれるといいます。感染を防ぎながら、観光客を受け入れるための知恵が求められることになります。
 観光政策は、6000万人のインバウンドを目標にしていました。現在は、インバウンド需要は当面見込めない状況です。でも、インバウンドをこの機会に準備する観光地もあるのです。箱根湯本芸能組合は、ユニークな「芸者とオンライン飲み会」を始めました。「チアーズ!(乾杯)」と、パソコンの画面に映る芸者が「おちょこ」を持ち、声を上げます。入国規制が敷かれるなか、手軽に芸者文化に触れられるとして人気が高まっているのです。この「芸者とオンライン飲み会」は、参加者の7割が外国人客参加しています。芸者は英語も堪能で、要望に応じて日本舞踊や唄の披露もする趣向です。料金は30分の場合、1人当たり1650円で、英語の場合は2000円に設定してあるそうです。
 箱根だけでなく、埼玉県の川越市もオンライン観光を取り入れています。川越の観光は、これまでシンボルの「時の鐘」がある一番街周一番街の周辺に人気が集中していました。一番街周辺のほかに、「川越七福神」など3つのモデルルートの動画を10分ずつ作成したのです。画面越しでもファンを獲得できれば、コロナ収束後の誘客につなげる期待ができます。オンライン観光は、いつか現地に行ってみたいと思ったりするきっかけになり得るものです。さらに、オンライン観光は現地の実体験とは別に、新しい楽しみ方を見つける可能性を秘めています。そのヒントが、修学旅行にありました。多くの学校が中止した修学旅行に代わりに、ネットを活用した新たな旅を提案する動きがあります。千葉県流山市のシェアオフィスで、小学校の6年生22人が「オンライン修学旅行」を楽しんだのです。これはミステリーツアーと称して、現役の客室乗務員の機内案内で気分を盛り上げます。次に、バンコク郊外の家庭とオンラインで結び、現地の子供と交流を行っています。旅行による実体験も貴重ですが、オンラインを使った知的活動もこれからは求められるスキルになります。現在は、国内観光で実利をあげて、コロナ後のインバウンドに布石を打つ時期かもしれません。


ブランド米をブルーオーシャンの中で育てる アイデア広場 その712

2020-10-21 17:43:51 | 日記


 多くのブランド米が、特Aの評価を得るようになりました。ななつぼし(北海道)、青天の露震(青森県)、銀河のしずく(岩手県) 、そして定番の魚沼産米など最高レベルに認定された「特A」が過去最多の55品目になったのです。出品数は164で、うち55品が特Aとなったわけです。特Aは出品全体の3分の1を占め、各県のブランド米競争が苛烈になっています。美味しいブランド米が、溢れるようになりました。でも、今の米作りに対して、冷めた見方の人達もいます。1人あたりのコメ消費量は、年間54kgとピーク時から半減しています。ブランド米を食べる人の数は、それほど増えていないのです。特Aの米市場は、限られたレッドオーシャンの市場の中での競争に終始しているとの見方です。
私たちは、食べ続けなければ生きていけません。もっと食べたいという感覚を生じさせることで、私たちは生命を維持することができます。おいしさは、舌や口の中ではなく、脳で感じています。美味しいと評価されお米は、アミロース含量の低いものが多いのです。アミロース含量の低いコメは、冷めてもかたくなりにくく、おにぎりでも美味しく食べられます。アミロースは、デンプンの分子です。いわゆる糖分は、人類が生命の源として常に求めてきたものです。人間は、食べることにより心地よさや喜びを感じるように作られているともいえます。
 美味しい米粒の成分は、均等に分布しているのではありません。米粒の中心部にデンプンが集まり、外側に脂質やタンパク質などが集まっています。タンパク質が多くなると、米の表面の粘りが弱くなるのです。タンパク質の量が少ないほど米はやわらかくなり、多くなるほど食味が低下するのです。日本のモンスーン気候には、美味しいコメを作ることに適しています。高温で日射量が多い条件で稲が育つと、アミロースの含有量が低く粘りのある米ができます。一方、稲穂が垂れ下がるころに肥科をやりすぎると、米の表面にタンパク質がたまります。すると、美味しくないお米になります。美味しい米を作るためには、田植えの時期や肥料の与え方など栽培の仕方に細心の配慮が必要になります。このように配慮の重ねて作られたお米が、売れなくなっているのです。
 近年のブランド米の出現は、各都道府県の名誉がかかった競争のような様相を示しています。各県の農業試験場の新作米は、レッドオーシャンでの戦いに引き込まれています。コメを売り込む時には、特徴、他品種への優位性、消費者のニーズ、実績の4点が必要です。この4つの視点から、どのような機能が可能で、どのような機能が売れるのかを検討していく必要があります。コメなどの研究も、県単位ではなく、いくつかの県が集まって研究資金や人材を集中してはどうかという発想がでてきます。新作米の利点と欠点を分析する組織、時間とコストなどリスクを管理する組織、リスクを低い実験で試す研究機関などが求められます。「素早く実験」して結果を正確に比較する技術は、新作米開発と販売の重要な技術になります。予算の少ない県同士が集まり、日本や世界に売れるコメを作ってほしいものです。
 余談ですが、先日、ドライブで喜多方に行ってラーメンを食べてきました。ラーメンも美味しかったのですが、お店にあったパンフレットが興味深かったのです。そのパンフレットには、喜多方のラーメンだけでなく、福島県の美味しい食べ物一覧が載っていました。地方に多く人々を呼び込めば、地方に消費が生まれます。多くの人々が、長く滞在すれば、消費の拡大が見込まれます。事実、喜多方から裏磐梯にいたる道の駅やリゾート地は車や人々で混雑していました。一気に、コロナ以前の販売額を求めることは難しい状況です。でも、回復の兆しが見え始めました。そんな場合、「客単価」と「客数」と「購入頻度」という問題に分割しながら、売り上げを工夫することができます。たとえば、客数が増え、客単価も上がる状況の中で、購入頻度が以前ほどでもないケースを想定します。そんな場合、付加価値の高い商品を販売することになるでしょう。
 ソニーが開発したウオークマンは、世界のヒット商品になりました。この開発に当たって、ソニーは様々な機能を少しずつ搭載した機種や特性を変えた製品を2年間、試験的に投入していました。その小さな試験的試みの積み重ねの中から、ヒット商品であるウオークマンの機能を絞っていったのです。ABテストという手法があります。サービスやネットの世界などでは、複数パターンを素早く実験することを行っています。パソコンやスマホの企業のサイトには、見る人によって複数パターンあるのです。ABパターンの中で、企業側はユーザーの反応を瞬時に集計し、効果的なほうに統一していく作業を行います。複数パターンを素早く実験することで、よりよい製品に仕上げていく手法を実現しているのです。人々のニーズにあった農産物の開発を、限られた人員、予算、IT関係の分野と協力して開発してはどうでしょうか。
 世界の糖尿病人口は4億2,500万人に達しました。この病気の場合、カロリー制限が求められます。でも、個人の意志力だけでは難しいのです。もし、コメを食べるだけでカロリー制限ができれば、福音になります。コメの品種改良をするわけです。食物繊維は、肥満防止に良いということが分かってきました。小腸に達した食物繊維は、小腸のグルコースをからめとり、カロリーの摂取を妨害するのです。であれば、食物繊維の多いコメの新種を作れば良いことになります。もしできれば、4億2,500万人の消費者が生まれることになります。もちろん、日本と東南アジアのコメの品種は違います。現地のコメを使いながら、品種改良をすることになるでしょう。日本の優れた農業試験場であれば、この種の品種改良は容易でしょう。もし、品種改良に成功すれば、日本国内だけでなく、世界に坂路が開けてきます。


ブランド米とブレンド米  アイデア広場 その711

2020-10-20 19:33:02 | 日記


 ブランド米は、他と明確に区別される付加価値があり、同時に消費者に信頼されているものです。2020年産のブランド新米は、取引価格が2019年産の出回りものと比較して、8~19%下落しました。最高級米の魚沼産コシヒカリは、最も下落率が低かったのですが、8%安の1万8150円だったのです。生産量3位の秋田県産「あきたこまち」は、13%安の1万2950円と、6年ぶりの下落になってしまったのです。2020年産米の作柄概況は、秋田県の作況指数が「やや良」の105になっています。昨年度米の民間在庫は、高水準で推移しています。倉庫は、古米で溢れている状況です。10月上旬に新米取引が確認された22銘柄全てが、2019年産に比べて安くなっているのです。そこで、コメの生産と新しい消費パターンについて考えてみました。
 コンビニは5万5千店あり、セブンイレブンは2万店になります。セブンイレブンのおにぎりのコメの使用量は100gで、21億個を販売しています。この21億個は、数年前より60%も高い売上げなのです。おにぎり100個で10 kgになり、21億個で21万トンのコメを消費していることになります。日本のコメ消費量は、700万トン程度です。コンビニは5万5千店で、46万トンを消費していることになります。コンビニは、地域住民の昧覚に合わせてだしや具を変えています。地方の消費者の好みに合わせて、販売を行っています。おにぎりについても、コメの消費に協力をしていただきたいものです。さらに、消費者が必要とする機能性をおにぎりに持たせる工夫が必要になります。この工夫について、後で述べたいと思います。
 世界の人口は2015年で73億人、1965年の33億人か50年間で約2倍に増えています。食品関連企業は、世界的視野で顧客の価値志向に合わせていく流れになります。今世界の食の市場規模は、680兆兆円とされています。胃袋が増えれば増えるほど、食の市場は拡大していきます。日本の食品産業は経営を維持するために、「国外の顧客」に接近していくことも選択肢になります。自らの成長を実現するか、成長しなくても存続できる条件を構築するかという曲がり角にあるかもしれません。成長を取るならば、外国を目指すことになるでしょう。存続だけなら、国内でも食の市場はなくなりません。国外の新興国市場でも、高齢者向けの介護食、ペットフードなど、今後伸びる市場は、いくつか予想されます。国内のビジネス街では、朝は喫茶店、昼は大衆食堂、夜は居酒屋の三毛作店が増えています。消費者の動向に合わせた販売が、可能のようです。
 無駄とか価値がないこと、そして当たり前の中に、新たな発想のヒントがあるものです。原宿のカレーレストランは、専用のブレンド米で人気を上げています。カレーに合うように、コメの表面は硬めだが米の粒を大きくして、中身は甘くする配合が絶妙なのです。世の中の流れや要望に応じて、コメの販売をしている米屋さんがいます。彼らの配合の妙の中に、コメの消費を増やすヒントがあります。豆腐を作るときにできる「生のおから」は、栄養価が高いことが知られていました。この生おからを乾燥させるノウハウを確立して、パウダー状に仕上げることに成功しました会社があります。おからは賞味期限が約1年間と、筋肉愛好家には重宝な食材になります。ご飯にかけて食べれば、いつでもたんぱく質の供給が可能になったわけです。このおからは、体のどの部位に効果があるかまで記載できるため、機能性表示食品としての期待感が高いものがあります。コメの配合やおからをかけることの中に、コメ消費の拡大のヒントがあります。一定の特徴を持つコメを複数混ぜ合わせることで、消費者の望む機能食品になるという仕掛けです。
 土佐町の田んぼには、水質が良くなければ生息しない昆虫や水生昆虫が多くいました。その水質のために土佐の米は、粒立ち、香り、うまみ、粘りなどが優れていることが分かったわけです。昆虫の存在から、安全性とコメの美昧さや品質の良さも証明されたともいえます。水辺の生き物調査によって環境が良いことが証明され、大きな付加価値を生み出しました。また、猛禽類が生息しているような地域は、生態系が残っていると評価されます。猛禽類は、リスやヤマドリなどの餌生物がふんだんに住む森林がないと生きていけません。無農薬の農産物やそれを飼料とした家畜、そして有機加工食品の存在感が高まっています。猛禽類が生きていられる自然そのものが、大きな価値があることになってきたのです。生態系の維持は、観光資源にも農業資源にも寄与するわけです。コメをこのような場所で作ることは、それ自体が価値をもつことになってきたともいえます。
 食品ビジネスは胃袋産業とも呼ばれるように、人の胃袋の数が売上げに直結します。消費者の要求水準は高くなり十人一色から十人十色、さらに一人十色の時代となっています。余談ですが、オリーブ油は、イタリアが本場と言われています。特に、フィレンツェ産が有名です。フィレンツェのオリーブ工場は、各月で収穫商品特性の違いを知らせ打ち出し、料理法を提案しています。オリーブの収穫時期を、見極める技術を持っています。さらに、収穫から4時間以内の精油加工を行って、その品質の高さを維持しているのです。ミレニアム世代やZ世代は、この品質の高さに惹かれる世代でもあります。彼らは、健康維持から一歩進んで積極的に体を鍛え鍛えたい人たちでもあるのです。健康志向の商品の中でも、特にタンパク質に注目が集まっている理由です。筋肉を効率的に鍛えるためには、体内でタンパク質を切らさないことが重要になります。彼らにとって、健康志向の高まりとともにサシ(霜降り状の脂肪)の時代ではなくなっているようです。
 最後に、今やコーラやビールが健康をうたう時代となっています。日本と同様に欧州でも食の安全や安心に対する消費者の意識は強いものがあります。その中で、肥満や糖尿病に対する意識が高くなっています。日本の現在の成人の糖尿病人口は、720万人で、世界ランキングは9位になっています。世界はさらに多く、糖尿病人口は4億2,500万人に達しています。糖尿病患者が希望するコメは、食べても太らないコメです。食物繊維の多いコメは、カロリーを制限する機能があります。カロリーの吸収を、防ぐ働きがあるからです。食物繊維の多いコメと美味しいけどカロリーの少ないコメをブレンドすれば、糖尿病に優しい食事を提供できます。日本の5万5千のコンビニで、このブレンド米で作ったおにぎりを販売すれば、糖尿病患者の福音になるかもしれません。
 世界には、4億2,500万人の糖尿病患者がいます。コメだけではなく、小麦や大麦においても、食物繊維やカロリーの低い品種を作ることは販売を有利にします。日本のコメ作りは、コシヒカリ一辺倒です。各県の農業栽培センターも、同じような品種改良を行っています。視点を変えて、糖尿病患者が希望するコメや麦を作る方向に転換してはどうでしょうか。ピーエルシー米は、タンパク質を通常の20分の1にまで低減し腎臓の負担を軽滅する働きをします。タンパク質の低減は、人工透析にかかる医療費の抑制にもつながっています。日本の農業技術者は、このようなコメを作る技術を持っているわけです。肥満の家系の方には、肥満を防止するコメを提供していくことになります。大腸がんの家系の方には、より食物繊維の多いコメや腸内細菌を活発にするコメを提供していくことになります。肥満の家系と大腸がんの家系の方には、2つの病状に効果のあるコメをブレンドして提供することになります。この2つの病気は、これからも確実に増えていきます。増えるところには、ビジネスチャンスがあるわけです。こんな課題に、各県の農業試験場が挑戦することも面白いものです。地域の特徴をアピールする農業試験場が、本格的に健康に視点のおいた品種改良に取り組んでほしいものです。