アマゾンは、1997年の時点で250万タイトルものオンライン書籍コーナーを提供し始めました。数百万何もの書籍があるのに、書店は、それら書籍をすべて棚に並べることは不可能でした。でも、アマゾンのシステムは、書店が提供できるよりはるかに多くの書籍にアクセスできるようになったのです。消費者は、250万タイトルの書籍を簡単に購入できるようになりました。アマゾンの初期の方針は、合理的なものでした。現在、アマゾンは世界15カ国で通販サイトを展開していいます。世界で年300億のアクセスの集客力で、200万以上の出品企業にビジネスチャンスを与えたのです。アマゾンは、規模と利便性のあるこのモデルを他生活商品にも適用するようになります。アマゾンのシステムは、圧倒的な強さを発揮するようになりました。一方、あまりにも強すぎる1強多弱の支配構造の負の側面に、注目が集まるようにもなっています。このアマゾンが、アジアのネット通販で苦戦しているのです。
そこで、ネット通販業界において、圧倒的強さを持つアマゾンが、なぜアジアで苦戦をしているのか、その理由を考えてみました。ある小さな企業が、5年以上前から中古アップル製品をアマゾンを通して販売をしていました。年間で約1億1千万円を稼ぐ良いビジネスだったのです。そのビジネスが、アマゾンの突然の通告の一言でなくなってしまったのです。蛇足ですが、現在、GAFAの中では、熾烈な争いが始まっています。お互いの領域に入り込んで、利益を上げようとしているのです。アマゾンは予告なく、規約改定することがあります。便利なシステムでもありますが、不具合もあるようです。この背景にあるのは、データ独占の仕組みになります。アマゾンは、中小企業にも取引の門戸を開き、出荷や配送、在庫管理の面倒もみます。でも、出品企業が商品を多く売っても、顧客の性別や年齢、過去の購買履歴など詳細データはアマゾンのものになるのです。アマゾンへの出品企業は、商品別の売上高など限定的な情報しか受け取れません。一方、「現代の米」であるデータは、アマゾンに蓄積されていきます。このデータを使って、ネット通販の巨人が顧客分析や販促ノウハウを積み上げていくわけです。
アマゾンは2009年以降、蓄積した情報から、売れ筋を分析してプライべートブランド商品(PB)も開発していきます。おむつやビタミン剤、シャンプーなど100種類以上のPB商品を販売しています。出品企業がもたらしたデータは、競合商品の形に変えてアマゾンから販売されているのです。アメリカの雑貨大手は2018年末、自社の椅子がアマゾンに模倣されたと訴えを起こしています。この雑貨大手も、アマゾンを通して販売を行っていました。アマゾンは、この会社の購入者志向を分析していったのでしょう。好みに合わせて製品を開発したという経緯が透けて見えてきます。顧客と接するプラットフォーマーが、データを掌握して支配を強める構図ができたわけです。勢力が拡大して、1強多弱の支配構造の負の面が現れているということです。このアマゾンが、アジアで苦戦しているのです。
中国が強大市場であることは、誰しも認めるところです。そこで、アマゾンは市場の1%も確保できていない現状があります。中国では、アリババやテンセントが幅広いサービス市場を押さえています。その基本にあるのは、強力なアプリです。このアプリは、中国にはあるが、アメリカにはあまりないものです。スマホを便った決済や生鮮品の宅配などが、庶民の生活全般に取り込まれているのです。アリババとテンセントによるサービス寡占化が、進んでいるのです。中国は、スマホを指で操るだけで生活に必要なものはほは全て入る状況になっています。アマゾンは、単品の販売では優れています。でも、生活全般に及ぶサービスは、まだ準備ができていないのかもしれません。
中国への進出が難しいアマゾンは、東南アジアでも苦戦しています。ラストワンマイルの確保がままならないのです。ネット通販は、ラストワンマイルがネックになりつつあります。アジアの強みは、このネックを克服する多数のドライバーと交通手段を持っていることです。シンガポールに本拠地を置く「グラブ」という会社が、注目を集めています。この会社は、優れた配車アプリを使って、消費者を囲みつつあります。二輪車や三輪車、そして四輪車の運転手と消費者を、スマホで橋渡しする配車サービスが主要な事業です。この地域の生活は、二輪運転手や屋台などを利用しながら成り立っています。二輪タクシーや三輪タクシーが、地元に深く根ざしているのです。二輪車の運転手が宅配を担ったり、屋台の料理を出前したりするサービスは日常的に行われていました。このサービスにスマホアプリが加わることにより、より効率的になったということです。
このアプリには、人の移動や宅配、そして屋台の出前に加えて、次々にサービスが付け加えられているのです。2018年からは、ビデオ配信サービスも始まりました。2019年からは、ネットでの健康相談や診療予約できる医療サービスを東南アジア全域で始めようとしています。アメリカでも、動画配信、配車サービス、そしてネット通販などの巨大企業を生み出しました。でも、それは単体の商品サービスでした。アジアのネット通販や配車アプリは、生活を支えるサービス全般を囲い込むのが特徴になっています。医療や娯楽サービスも含めた配車サービスは、アメリカにはない強力なアプリになります。
アジア独自のネット経済圏が、力を増していることがわかります。
余談ですが、ビジネスチャンスあるとことに、人もお金も集まってきます。先見の明がある企業は、「グラブ」に出資する体制を取っています。中国では「滴滴」などが、この企業に出資しています。日本の企業では、ソフトバンクやトヨタ自動車なども出資者として名を連ねているのです。グラブは、配車だけでなく、アプリ決済や食事の宅配事業でも東南アジア首位を目指しています。市場で勝者になるためには、一気に消費者を取り組むことが大切になります。そのためには初期投資が莫大になります。その流れで、外国の資本を入れているのでしょう。日本の企業も資本投資だけでは、面白くないでしょう。サービスの質上げるためには、カイゼンや現場重視といった日本の経営の要素も必要になります。車を使うのであれば、自動車会社の車両の管理のノウハウも必要です。金融ノウハウもいずれ重要になります。パイの増大が見こまれる企業とパイの縮小している日本企業とは、相互補完的な関係が築ける条件が整っているようです。アジアの新しい企業が、消費者の生活を支援する有益なサービスを提供していってほしいものです。