ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

第二の緑の革命の主役はロボットだ    アイデア広場 その513

2019-10-31 22:24:31 | 日記


世界人口は、2050年には90億人に達すると予測されています。この人達の生きていく上で欠かせない食料を供給する農業が、重要な役割を担います。30年後の5割増産は、ハードルが高いようです。アグリテック(農業とテクノロジーの合成語)の飛躍が、この課題達成の鍵を握っています。需要と供給格差の「「フードギャップ」を解消するには、農業生産を5割以上も上積みする必要があるのです。30年後の5割増産のハードルは、依然として高い課題になります。
 人類は、20世紀以降、食糧生産において成功を修めました。「緑の革命」で、生産量を飛躍的に増大させたのです。この革命は、化学肥料や農薬の開発、そして灌漑施設や農業機械を駆使して成し遂げました。緑の革命は生産を大幅に増やし、人びとの飢えを軽減することに貢献しました。でも、土壌や水資源への汚染を促すこともしてしまったのです。今また、異常気象や干ばつなど世界の食料供給に及ぼす悪影響が懸念されています。水質などに不安がある中で、安心して食べられる農産物の生産が求められています。農業は、人間が健康に生きていける最低限の作物をいかに生産するかという課題に直面しているのです。
自然と向き合う農業で、生産性を大きく高めるとと期待されているのがドローンです。イスラエル軍の技術関連の精鋭部隊出身者が、設立したドローン会社があります。この社の特殊カメラの付いたドローンは、作物の葉一枚一枚まで判別する画像を高速で撮影することができます。時速200kmで自動飛行する小型飛行機は、品川区より大きい地域の画像を1時間で取得するのです。画像をAIが分析し、必要な場所だけに農薬の散布を指示するために、減農薬につながり、収獲も保証されます。日本のドローンも、負けてはいません。指定した農場の範囲内をGP Sを活用し自動飛行し、農作物の生育や害虫の発生状況を把握します。ドローンで撮影した画像データを解析し、農場で病害虫の発生箇所を特定することができます。もちろん、収獲にも貢献しています。
ケンブリッジ大学は7月機械学習を使ってレタスを自動で収穫すべジロボットを開発しました。レタスの状態が良く、収穫するタイミングを迎えた作物だけを識別し、傷をつけずに収穫できます。ほかの果物や野菜も収穫できるロボットを、開発中だということです。他方、アメリカのお話になります。カリフォルニア州の海岸沿には、イチゴの栽培が盛んな地域があります。ここの植物工場は、巨大で効率的な仕組みになっています。24本のアームとカメラが付いた機械が、成熟具合を識別して器用にイチゴを収穫します。イチゴがロボットのカメラから見える位置にあれば、収穫の正確性は人間よりも高いのです。このロボットはいつでも稼働し、東京ドーム1.7個分の土地のイチゴを3日で収穫してしまう優れものです。
次世代農業の柱とされながら、半数以上が赤字とされる植物工場の現実があります。中には、大量の水を使う負担の大きい水耕栽培の装置を導入せずに、利益を上げる植物工場もあります。神奈川県平塚にあるメビオールは、面白い植物栽培システムを採用しています。水や養分だけを通す特殊なフィルム使って、トマトを栽培しているのです。このフィルムは、病原菌など有害なものを通さないため、水替えなどのメンテナンス作業は必要ありません。灌漑設備が不十分な地域や水の汚染が進んでいる地域には、適した農業システムになります。2014年から、アラブ首長国に5000平方メートル規模のグリーンハウスを展開しています。また、2015年には、上海近郊などでも導入されました。
農業に、先端技術を活用する「アグリテック」が注目をあびています。アグリテック関連する起業への投資額は2018年に約70億ドル(7450億円)になりました。この分野への投資は、加速度的に増えており、2017年と比べ伸び率は4割と過去最高になっています。アグリテック関連する起業への投資額は、2018年と5年前を比較すると4.6倍の増加にもなるのです。人類の未来を左右するアグリテックの分野に、世界の頭脳とマネーを引き寄せられているようです。この関連分野には、ビッグデータやA I技術の普及により各地で起業が次々に誕生しています。この分野は、究極の効率化と安全性を目指しています。これが、行き着く先は無人の精密農業になるかもしれません。ロボットが、種を蒔き、肥料や農薬を使い、最適なタイミングに収穫し、消費地に配送までやってしまうようになるような気がします。種まきから配送までは、IoTで生産者と卸業者と消費者に流れが分かるようになっているかもしれません。作物の成長途上で、販売契約が結ばれることも夢ではないでしょう。
 余談ですが、植物工場には多くの電力を必要とします。植物には、再生エネルギーが合います。ドイツは、再生エネルギーが盛んな国です。そのドイツでは、全再生エネルギーの電力の3%が余剰になって、捨てられているのです。日本でも、九州電力などではこの問題を抱えています。ある再生エネルギー事業者は、風力発電の余剰電力を蓄電して活用するシステムを実証実験で成功しました。これが、本格化すれば、面白いことになります。掃除ロボット「ルンバ」の生みの親は、草刈りを自動化するAIロボットを開発しました。太陽光で蓄電し、各種センサーで障害物や植物を避けながら雑草を刈り取る優れものです。AIが優れたもので、機体に柔軟性があれば、野菜や果物の収穫も可能になります。再生エネルギーの電力を蓄電されていれば、そこで充電したロボットが、人間に代わり農作業をする姿も夢ではないでしょう。



野生動物対策としての緩衝地帯  スモールアイデアNO 336

2019-10-30 23:13:22 | 日記


 福島県のいわき市は、畑の農作物をイノシシの害から守るために、山にカボチャの種をまいています。地元の人たちは自衛手段として、山にカボチャを作ることをごく当たり前にしていたのです。人間の生産活動をする農村と動物の住む森林の間に、カボチャ畑という緩衝地帯を設けたわけです。いわきのカボチャの仕掛けは、地元に代々伝わる智恵ともいえます。長期的には、動物の住む森が落葉広葉樹林で埋め尽くされれば、危険を冒してまで里山に来ることもなくなるかもしれません。もっとも、森林を回復することが、野生動物問題を解決する一つの道になるようです。
 いわき市の事例に似たことを、アメリカのインディアンが行っていました。彼らのブルーベリー畑の周囲には、ジューンべリーという種類のキイチゴが植えられています。これは、ブルーベリーを守るために、畑の周囲にジューンべリーを植えているのです。ジューンべリーはブルーベリーよりも商品価値は落ちます。でも、実りが早く、丈も高いのです。飛んでくる鳥としては商品価値などは知らないし、腹がいっぱいになれば満足です。やってきた鳥たちは、先に熟すジューンべリーの方を食べます。熟すジューンべリーの方を食べる鳥を尻目に、人間はブルーべリーを収穫するという仕掛けです。
 江戸時代から明治時代以降、野生動物は乱獲状態にありました。生息数は著しく減少し分布も限られていたのです。過去1世紀は、野生動物の被害が無い状態で農林業が営まれてきました。でも、農村の衰退とともに、作物を食い荒らす野生のイノシシやシカが増えてきたのです。一般的に耕作放棄地とイノシシの被害には因果関係が認められるとまで言われるようになりました。1999年は、野生動物の保護から科学的管理への方向転換が図られたことが、ターニングポイントになりました。野生動物に対する国の政策が、保護から調整へと大きく舵を切ったのです。
 こんな野生動物への転換が進む中で、「熊が食べても良い畑」が賛否両論を引き起こしています。日本中からこれは「餌付けだ」いや、「クマの救世主だ」と様々な意見や論議がでています。宮城県の川崎町は、「牛タン」の里といわれるほど牧畜が盛んです。牛の飼料であるデントコーンの畑が、ツキノワグマに荒らされて困っていたのです。この解決策として、「ツキノワグマのすみかを守る会」の人達が熊が食べてもいい畑を作ったのです。山際でお腹がいっぱいになったクマは、危険をおかしてまで里の畑に来ることはないと考えたわけです。クマが食べてもいい畑の活動は、もう10年も続いています。確かに、農作物被害も減り、駆除されるクマの数も減っています。
 野生動物による被害の解決には、自然や社会の特性に応じた人為的管理の再構築が必要になります。野生動物の管理は、個体数管理、生息地管理、被害防除の3つをバランス良く実施することになります。被害を防ぐには、動物の生態と侵入する要因を調べ、被害発生の仕組みを知ることが大切です。山や森などの自然が荒れれば、動物の食べる食物はなくなります。飢えた動物は、里の食物を狙うことになります。人間の住む農村が疲弊すれば、動物の侵入を防ぐことができなくなります。動物の種類によっても、対策は違ってきます。一般的な対策には、動物の嫌う環境を整備すること、農地を守る侵入防止対策を整備すること、捕獲圧に重点をおいて適切な捕獲行うことなどがあります。でも、捕獲圧に対する耐性は、熊は弱く鹿はやや強くイノシシは強いという特性があります。熊には恐怖感を与えて、山に返すことで事足りると言われています。イノシシの場合、繁殖率の高さから強力な捕獲圧に加え個体数をたえず抑制しておくことが不可欠となります。
 余談ですが、イノシシの捕獲数は50万頭を超えています。でも、その数は、毎年増えているのが現実です。耕作放棄地の増加に伴って、イノシシの行動半径が広がるという状況が続いています。最近、脚ククリワナ猟がイノシシ猟に使われています。ワナ猟は少数なのですが、それでも5万頭程度はナワ猟で捕獲するようになりました。脚ククリワナ猟は、経費が安く、資格取得が容易で、規制が厳しくなく、単独で行える利点があります。難点は、脚ククリワナ猟が定期的に設置場所を見守る必要があるということです。もし、脚ククリワナを山と里の緩衝地帯に多数仕掛けてはどうでしょうか。もちろん、甘いカボチャの畑は山側に残した上で、里側に仕掛けることになります。仕掛けたナワを見回る仕事があります。これはドローンやセンサーに任すことになります。
 もうひとつ余談です。ポーランドも、野生動物の被害に悩んでいます。この国は、鳥獣を絶滅させずに、なおかつ農作物被害が発生しないような対策を取っています。その一つが、捕獲数を定めていることです。捕獲するわけですから、そこに利益が生まれれば、ハッピーとなります。彼らは、快適な狩猟環境を作り、外国人ハンターにイノシシの猟場を提供しているのです。その代金は、1頭に付き30万円で、貴重な外貨を稼いでいます。ポーランドの狩猟は、決められた餌づけをした場所で行なわれています。日本の耕作地放棄には、イノシシに好適な環境を提供しています。この場所を、外国人ハンターの憩いの場にしてはどうでしょうか。



創造性・スタートアップ・安全とリスク  アイデア三題噺 280

2019-10-29 17:31:51 | 日記

 アイデアや創造力は、学習した知識の蓄積の上でつくり出されていきます。新しく生み出されたアイデアは、後続のアイデアをつくり出すことに貢献します。これらの新しく生み出された知識は、後続の研究開発の創出にとっての重要な役割を果たしていくわけです。アイデアや創造力が増えれば増えるほど、課題を解決する発想法が出てくることになります。でも、限られた仲間や集団の中でつくられたアイデアの蓄積からは、新奇なアイデアが出てこないのです。仲間の中で流れる情報には多様性が少なくなり、アイデアも創造性も低い評価のものになっていきます。自分の専門以外の分野にも、知見を求めることです。あまり読まない分野の本を読むことが、大切と言われる所以です。
 起業(ベンチャー、スタートアップ)にたずさわる人達は、アイデアや創造性に富んでいます。ヒト・モノ・カネといった経営資源の流動性を高い社会においては、これらの人びとが活き活きと活躍できる場が用意されています。起業に参加したりすることには、スピンオフとスピンアウトがあります。スピンオフには、親企業から資本の提供を受けて独立するものが多いようです。大企業が自社で起業を設立し、その会社に投資をするというやり方になります。大企業が自社で起業を設立する方式はアメリカで始まり、日本でも広がるつつあります。
 たとえば、新しいタクシー会社を起業するとします。タクシー業界は、3割が待ち時間です。スマホとタクシーの予約が直結すれば、待ち時間の心配はなくなります。もうすでに、このようなサービスは行われています。そこで、ここにサブスクリプション(サブスク)を導入します。定額料金を支払うタクシーの乗り放題の仕組みを、取り入れるわけです。でもどのサブスクも、競争激化により選別が強まり、淘汰される企業が出始めている時代です。タクシー業界に参入しても、勝算があやぶまれます。そこで、自動運転と電気自動車を使うことにします。自動運転の技術がレベル4で、限定地区では、安全に通勤通学が可能になるでしょう。毎日、限定地区を決まったルートでタクシーのサブスクをするわけです。電車の定期券を想定すれば良いかもしれません。電車の通勤通学より便利なのことは、ドアーッドアーということでしょうか。
 単なる運ぶというサブスクでは、単純すぎます。ここに、コトサブスクを加えて付加価値を付けることもできます。電気自動車になれば、室内の構造は現在の自動車とは異なるデザインができます。通勤の時間に同じ会社の部署の社員が相乗りして、打ち合わせをする時間と空間を自動車の中に確保するわけです。打ち合わせのしやすい、空間にすることができます。これができれば、会社に着いてからのリードタイムは、短縮されます。この空間を、レベル4の自動運転で送迎することになります。通学の子ども達には、今日の学校で勉強する範囲やそのポイントなどを、タクシーに備え付けられた人工知能(AI)が教えてくれるサービスを付け加えることもできます。さらに、車に乗っている間に体温や血圧、そして脈拍など体調チェックなどのサービスを行うことで付加価値を付けることもできるでしょう。動く診療所の役割を担うかもしれません。
 世の中は、便利なツールが次々に出てきます。ツールが出てくれば、その利用法を考える人達も増えてきます。新しい発想をすることで、便利さが便利さを生み出します。この新しい発想のできることが、求められてることになります。でも、この必要なスキルを持った人を、すぐに市場から調達することは、意外と難しいのです。優秀な人材を雇用するためには、費用とプラスアルファが必要です。ヒト・モノ・カネといった経営資源の流動性を高い社会では、一定の条件を提供することで、これらの人材を確保できます。優秀な人達には、「やりたいことがやれる」ということが重要になります。このやりたいことと社会が求めるニーズ、そしてこの両者を繋ぐマッチングが、鍵になるようです。大きな企業では、社員の中から、それらの人材を選ぶことができます。いわゆるスピンオフという形で、起業を応援します。
 一方、より過激な起業が、スピンアウトです。この方式は、親企業からの資本提供を受けずに独立します。もしくは、大学でビジネスチャンスを見つけてて起業を目指す若者もいます。スピンアウトは、大企業や大学といった既存の組織では追求することが難しい課題とリスクを内在しています。でも、これらの課題の中には、大化けするビジネスチャンスがあるかもしれないのです。



サブスクリプション・人間の心理・定量定性分析  アイデア三題噺 279

2019-10-28 18:16:39 | 日記

 定額料金を支払って商品やサービ入を継続利用するサブスクリプション(サブスク)が、脚光を浴びています。サブスクには動画配信や衣料品レンタル、家事代行など実に十数種類があります。大きく分類すれば、デジタルサブスク、モノサブスク、コトサブスクになります。デジタルサブスクは、動画見放題などに代表されるものです。モノサブスクは、高級バックのレンタルや女性向け衣料品のレンタルがあります。コトサブスクには、3000円でコーヒー飲み放題とか定額で美容院の使い放題があります。どのサブスクも、競争激化により国内でも選別が強まり、淘汰される企業も出始めています。その中でも、食品宅配のサブスク市場は、離合集散が始まり、競争が激化してるようです。
 国内の食品宅配市場は2兆1000億円で、2023年度は2兆4000億程度と見込まれています。食品宅配市場は、ネットと流通の大手が相次いで参入するレッドオーシャンになっています。東京首都圏などでは、生鮮品などの食品がネット通販の主戦場になってきました。その中でも、アマゾンは首都圏で高い支持率を得ています。アマゾンの特徴は、首都圏の一部エリアで生鮮・冷蔵食品の取扱品目を2100品目に増やしています。この多くの品目の中から必要な商品を、ゼロから選ぶ手法を取り入れています。多くの食材の中から、ウェブ上で買い物カゴを埋めていくわけです。自由に選ぶので、個人のニーズに合った食材が選ばれているようになっているようです。
 競争の激化が続く食品宅配市場において、アマゾンを凌ぐ勢いのある企業があります。その企業は、オイシックスという会社です。サブスクの方式を取っており、会員はリストの中から不要なものを外して欲しい食材と入れ替えればよいというものです。後日、決めらた曜日にリストの食材が宅配便で受け取ることになります。リストには、生鮮食品とレシピと具材を組合せたキットなど15種類が入っているのです。会員は、好き嫌いや既に自宅にあるい食材などを考えて取択選択します。オイシックスの会員は、リストから不要なものを外すだけで注文ができるために、数分でちゅ注文が完成します。企業の方も5000軒の生産者と契約して、有機野菜などを調達しています。品質は、確かなものを用意してあるようです。企業の方も、会員が「買いたい」と考えた商品だけでなく、「買わない」と決めた商品を把握できます。普通は、買いたいモノのデータは集められますが、買わないモノのデータを集めることは少ないのです。ここにも、成功の秘訣があるようです。
 この秘訣のヒントになることが、ニューヨークにあります。、ニューヨークの高級デパートには、キャリアウーマンのファッションを助けるサービス係がいます。キャリアウーマンは、ハイクラスの人達とビジネス活動をします。服装もそれなりの服装になります。服装を選ぶことよりも、多くは仕事優先の行動洋式をとるようになります。そこで彼女達は、デパートの担当者に支援を求めます。キャリアウーマンが担当者に予算を伝えると、彼らは服やバックやアクセサリーを専用の部屋に集めます。彼らは、顧客の職業、髪の色、目の色、体型などを考慮し、商品を準備します。担当者の顧客の買い物記録には、去年買った商品の記録も残っています。キャリアウーマンが予約した時間に担当者の元に行くと、30分でワンシーズン分のワードローブがすべて揃ってしまうのです。顧客の昨年買った商品から、それに合わせやすい服や小物も選んでおいてくれます。クリスマスプレゼントも、家族、友人から会社の同僚、部下のリストと予算を渡せばよいのです。メモと予算を渡せば専門の担当者が考えて気の利いたプレゼントを用意しておいてくれる仕掛けです。時間をかけずに、仕事を続けることができるという点が、秘訣の一つです。この光景は、自分でする仕事と他人に任す仕事を臨機応変に行うキャリアウーマンの姿を見る思いです。
 もうひとつの秘訣のヒントがあります。ファストフードは、メニューが少なく、決めやすいように配慮されています。メニューの少なさには、人間の弱点を見据えた販売戦略でもあります。お客がメニューを見て選択することは、意外と心理的に負荷のかかることなのです。選択肢が多すぎると、選択することの心理的負荷が高くなります。この種の店は、食事の提供を素早くしなければなりません。メニューが、短時間で済む仕組みになっているわけです。この場合のヒントは、選択肢を少なくするという点です。
 ゼロから判断をするよりは、2~3の中から選択するほうが容易に、そして時間をかけずに選ぶことができます。アマゾンは、生鮮・冷蔵食品の取扱品目を2100品目に増やしています。その中から、美味しくて、栄養があるものを選ぶと言うことは、心理的に負担が多いことなのです。美味しくて栄養のあるモノに1日中こだわり続ける人には、負担を感じないことかもしれません。仕事に打ち込み、趣味に熱中している人には、食材を選ぶことに多くの時間を費やす時間が残っていません。一方、人間は困った存在です。季節にあわせて、旬の野菜を家族に食べさせたいなどと考えてしまいます。家族の好みを知り、季節感、適正価格、魅力的な料理をしてみないなどと考える人もいます。食材の選択から決定、そして満足できる料理という流れがスムーズになれば、心地良い食事になります。でも、これをゼロからやれば、仕事や趣味の邪魔になります。仕事も趣味も、食材の選択もバランス良くやりたいという人達が出てきます。この要望を、オイシックスは満たしているようです。
 オイシックスは、リストの取捨選択を週に1回、1年に最大52回繰り返してもらうので、膨大なデータを集められます。膨大な利用データを分析して、会員ごとの「カルテ」作成しているわけです。アマゾンは、希望の食材をビックデータとAIを駆使して顧客の好みを把握しています。でも、顧客が嫌うデータを集めることができません。オイシックスは、同一の顧客が選んだり、止めたりする食材のデータとして収集しています。ある意味で、データの定量的分析と定性的分析ができるデータを集積しているとも言えます。この会社の食品通販の原動力は、会員ごとの嗜好に応じて提案する食材リストということになります。このリストには、顧客が自分で決めるという要素が入っています。その決める時間が、少なくて済むという仕掛けも忍び込ませています。継続的に顧客を獲得していくためのデータ分析が、重要になってきます。サブスクは、データ分析を通じて付加価値を高めることが勝ち抜くための必須条件になるようです。速さ、容易さ、そして少し考えることがサブスクの勝者には、求められているようです。

人工知能はスキマ産業にも浸透してきた スモールアイデアNO335

2019-10-26 17:34:38 | 日記

 飲食サービス業に従事する人達は、2017年の平均給与が252万円になります。これは、業界で最も低い賃金になります。さらに、大半の飲食店は10年以内に廃業に追い込まれています。勘や経験に基づく営業が、低い営業利益をもたらしているようです。考え方を変えると、今が最低の地点にいるわけです。そうであれば、少し工夫を加えることにより、売上げを伸ばすこができるという楽観論が出てきます。有力なツールを使えば、より多くの利益を出すことが可能という考えが浮上してくるわけです。
 そこで、有力なツールを使って、業績を上げている事例を見てみました。伊勢市にある食堂は、来店客数を9割以上の精度で当てる予測技術を持っています。2019年8月は約1万人の来店があり、前日に立てた予測との誤差は1ヶ月間で203人だったのです。この技術の構築には、パソコンに記録をつけるところから始めました。そして、2016年に人工知能(AI)を使った来客予測システムが完成したのです。過去の売り上げ、近隣でのイべント、周辺ホテルの宿泊数などのデータから客数を予測するものです。予測した来店客数をもとに、予想売り上げやメニューごとの注文数を算出するのです。このシステムのおかげで、仕入れの量を最適化することができ、傷んだ肉や魚を廃棄することはほとんどなくなったのです。2012年7月期に1億円だった売り上げが、2019年同期は5倍近くになりました。
 タクシーの水揚げは、経験の有無が成果を大きく左右するとされてきました。タクシー運転手労働時間のうち、客待ちの時間が3割もあるのです。お客さんを見つける時間の早さで、水揚げに大きな違いが生まれます。この待ち時間に、AIというツールを導入した会社がありました。このAIが、新人とべテランの差を技術が埋めつつあるのです。どこで何台分の乗車があるか、どの方向に走れば乗客がいるかを、AIが教えるのです。過去の走行記録や気象のデータ、スマホから得る人の移動データを組合わせ、深層学習した結果を、予測乗車という形で運転手に教えてくれるのです。乗客の需要は、500m四方で区切ったエリアごとに表示され、そのエリアに行けば良いわけです。
 小売業であれば、POSの顧客情報と気象データ、SNSの投稿を組みあわせて需要を予測してきました。過去の時系列の販売データと、気温や湿度、そしてネット上の口コミや天候といった十数項目のデータを集めて来店客数ををA Iで予測する仕組みが多いようです。各項目のうち、どれが来客数に最も影響しそうか,AIが機械学習します。このシステムが優秀であれば、需要予測から商品の入荷調整を行い、通常より早い時期に発注が可能になります。納入業者も流通業者も、余裕を持って人員の確保や輸送手段の準備に万全を期せるわけです。特に運転手の不足などに対応するためには、不可欠なツールになります。天候不順に適応したシステムを持つ企業は、優秀な小売業者ということになります。
 複雑な機械学習のモデル構築や運用には、時間もお金もかかります。碁の専門棋士を破ったアルファ碁は、運用だけで30億円を使ったと言われています。精度を高めるためには、システム構築に何ヶ月も期間を要します。優れた企業は、人工知能をシステムに組み込んでいます。このシステムを運用するために、多くのソフトウェア要員を抱えています。複雑な機械学習の予測モデルを作る場合は、専門家による精度の検証が必要になります。今年の夏は西日本と東日本では、対照的な天候不順が続きました。これらの気象条件に、上手く対応したAIなどが確認できれば、各社のシステムの比較ができるかもしれません。天候不順を予想し、状況に応じた入荷をし、廃棄食品が少ない企業のシステムが優秀と言うことになります。
 効率化と顧客サービスの改善という相反する課題を乗り越えた企業が、勝ち残っていく時代です。ここで、見落としてはいけないことがあります。AIや機械学習の使用には、費用対効果を重視することになります。小規模であれば、低コストでAIを導人することが可能です。明確な目的と技術があれば、小規模でも機械学習が有効なのです。グーグルが、無償で提供するAIソフトがあります。このAIソフトを使って、キュウリ選別機を作った方がいます。この方は、AIを組み込んだキュウリ選別機を5万円以下で作ったそうです。目的にあった小規模な機械学習に、注目が集まるようです。予測の精度が上がるほど、目的を理解する人間だけができる判断の柔軟性が求められます。ある意味で、AIの予測技術をこなす人間の知恵が問われ続ける時代になったのかもしれません。




小学校の行事を削って先生の自主研修に回す  アイデア広場 その512

2019-10-25 17:29:51 | 日記

 人工知能(AI)の「東ロボくん」が、東大受験を断念しました。AIの進出に心配してきた人間には、ほっとしたところがあります。AIも、人間の領域にはまだまだ入れないという意味で安心したわけです。東ロボくんの実力は、センター入試模試を受けた40万人の中で上位2割に入る成績です。この成績ですと、23の国公立大学に入れ、500の私立大学に入れる立派なものです。もしスマホにこのAIが収納され、自由自在使うことが可能になれば、40万人の受験者は全て上位2割の能力を持つことになります。実現すれば、日本の人的資源は急速に豊かになるかもしれません。「東ロボくん」の断念を少し深く吟味すると、心配すべき未来が見えてきます。
 東ロボくんは、読解力に限界があるために上位2割の位置に甘んじたのです。別の面から見ると、2割に到達しなかった32万人の受験生も、読解力がなかったということができます。成績の良くない受験生は、東ロボくんと同じように、浅い読み方しかできていないというわけです。大学に希望する8割の学生が、教科書をしっかり読むことができていないという現実があるのです。受け入れる側では、大学の教育を受講できる能力を持って入学してほしいと考えています。でも、読解力が不足している実態が浮かび上がりました。しっかり読ませる指導が、小中高でできていない不都合な真実が浮き彫りにされたとも言えます。
 実情は、大学教育に耐えられない人材を小中高校側が提供しています。最低でも、主語や述語がわかり、動詞や形容詞、そして名詞の使い分けが自由自在にできること、教育漢字が全て読めて、書けること、国語辞典や漢和辞典が自在に使いこなせること、「方法序説」や「ローソクの科学」など基本文献を100冊ほど読破しておくことなどがノルマになるようです。大学では国際化に対応できる学力を持つ生徒を送り出して欲しいと望んでいます。
読解力は継続的に読書や書く学習をする中で、力が付いていくものです。このような子ども達を、小中高の側に育てることが求められています。
 子ども達の学力を向上させることに貢献する人びとは先生になります。日本の学校教育の弱点は、学力を高める以外の仕事が多すぎることです。日本の先生は、小学校54時間、中学校が56時間とOECDで最長の労働時間でした。一般的国々の平均は38時間で、日本よりはるかに少ない時間なのです。他国より、部活動などの「課外活動」が6時間ほど長く、事務業務が3時間ほど長くなっています。一方、研修などの教員自身の能力を高める時間は、小学校で0.7時間、中学で0.6時間になっています。この時間で子ども達の教育を任せて大丈夫なのかと心配になってしまいます。先生方の職能開発にかける時間は、小中学校ともに、OECDの国々の中で最低なのです。先生方が授業に専念する環境を整えることが、最も求められている国といわれる所以です。
 そんな中で、面白い取り組みをしている教育委員会があります。西白河地区小学校陸上競技会と東日川小学校陸上競技大会が、今年度を最後に廃止されることになりました。この地方は、枕詞で有名な白河の関のあるところです。もうひとつは、江戸時代において寛政の改革を行った老中の松平定信の城下町なのです。この小学校の陸上大会が長年にわたり、白河地方の小学生の競技力向上を目的に開催されてきました。これまで、参加校の先生方が大会運営を担当してきました。働き方改革の一貫として、教員の長時間勤務を改善する方向で廃止された事例の一つです。
 先生方の仕事は、子どもの学力を高めることです。この仕事に、専念してもらうことです。先生方に、質の高い学習を子ども達に指導してもらえる環境を整備する時期にきています。先生の仕事は、子供との接触を多くし、子供の成長を把握し、適切な援助をすることです。子どもが成長するためには、経験の蓄積が必要です。思考力や表現力を高めるためには、考えて表現する場を用意しなければなりません。思考力や表現力を高める質の高い学習には、時間も空間も知恵も工夫も必要になります。これらのことは、先生と子ども達が向かいながら築かれていくものです。
 先生は子供と授業することが最も大切だという当たり前のことができていないようです。教育委員会や校長は、無分別に先生方に子供の学習状況や生活状況の報告を求め、連絡を求め、相談することを求めます。いわゆる「報連相」を求めるわけです。でも、無分別な「報連相」は、先生と子供たちの接触する時間を奪っているのです。これは、文科省から始まり、県レベルの教育委員会への報告、校長から各先生にフィードバックされてきます。管理職は、先生が研鑽する時間の確保、子供たちと接する時間の保証することです。現実は、書類の作成に多くの時間が割かれています。白河の小学校陸上競技大会廃止で生み出された時間が、子ども達との接触や先生方の自主研修に使われることを期待しています。間違っても、無駄な「報連相」に使われないことを祈っています。







2000万円の備え・資産運用・快楽人生  アイデア三題噺278

2019-10-24 17:33:22 | 日記

 最近、住居の維持にお金がかかるという話題を目にするようになりました。日本には、654万戸あるマンションがあります。これらのマンションで、大規模修繕に備える積立金の不足に悩む例が増えているのです。一般に、マンションは各種の修繕備えて、積立を毎月するケースが多いのです。積立額を当初低めに設定し、数年後から増やしていく「段階増額式」が代表的なものです。もちろん定額制もあります。後年になるほど所有者が高齢になり、高額の支払いに困るケースもあるようです。問題は、積立金を増額しようとしても、マンション全員の同意を得ることが難しい点にあります。結果として、マンションの資産価値が減少していくことになります。大規模修繕を迎える建築から30年ぐらい過ぎた時期には、積立額の合計が700万円必要になります。
 もうひとつお金に関する話題は、老後に約2000万円の備えが必要と試算した金融庁の審議会が報告になります。確かに、マンションでさえ、700万円必要になるということであれば、老後の資金は心配になります。いずれ年金はもらえなくなり、2000万円では絶対に足りなくなると考える人も多いようです。一方、金融庁の2000万円の試算は、金融関係者に特需となっているのです。この報告書が公表された後の1カ月間で、投資信託を学ぶ授業の申し込みは2割増えたのです。大手ネット証券でも、積み立型の少額投資非課税制度(NISA)の口座開設が増え始めていると言います。
 これまでは短命社会であったから、老後の問題に心をわずらわす前に多くの人は亡くなりました。金の心配をしながら病気をするというのが、最も悲しい人生です。余談ですが、19世紀に活躍したドイツの名宰相ビスマルクは、ドイツを統一した中心的政治家です。彼は、軍事的にも優れた才能を持っていましたが、民衆を惹きつける術も心得ていました。60歳で年金を交付する政策を、実現させたのです。ビスマルクは、これでドイツ人の老後が安心だと宣言しました。でも、当時のドイツ人の平均寿命は、30~40歳で60歳まで生きられる人はほとんどいなかったのです。国予算を使わずに、希望だけを、国民に与えたわけです。
 平均寿命の短命だったこれまでは、老いる方法や老後を楽しく生きる方法を考える必要がありませんでした。人生100年といわれる現在、生きていれば苦しいことや面白くないことがあるのは当たり前です。でも工夫次第では、嫌なことを避けて、快楽を求めることができる時代です。倹約だけで人生が、終わったら寂しすぎます。自分が楽しめる趣味には、ちゃんとお金を使うことです。資産関係はできるだけシンプルにし、一覧表にすることも生活の知恵になります。これからは、はっきりした資産と負債のバランスシートを書ける能力も必要です。
 バランスシートをかけるためには、資産運用の知識や実践経験が大切になります。どうしたら恥ずかしくない方法で金を得るかは、人生の重要な課題になります。ある高校で、株式に投資するクラブができました。生徒がこのクラブに関心を持ったのは、社会保障を含めた将来の不安だそうです。単に希望すれば入れるクラブではなく、選抜をくぐり抜ける必要がありました。部員50人が、統計やプログラミング、そして株式投資などの勉学に励んでいます。ユニークな点は、投資部の特別顧問を務めるのはモノ言う株主として知られる村上世彰氏だったのです。村上財団が生徒1人当たりに20万円を支給し、実際運用の経験をするという設定でクラブ活動をしています。
 日本の高齢者の資金は、バブル経済が崩壊した1990年代から横ばいに推移しています。この時期、日本とアメリカの所得は、同じ水準でした。現在、75歳以上の高齢世帯における日本人の金融資産は、アメリカ人の半分以下になっています。日本と同じ水準だったアメリカでは、金融資産がほぼ3倍に増えているのです。株式投資や資産運用を、日本より上手に行っていたようです。日本でも、「当初は投資を怖いものだと思っていたが、それは知識が無いからだと分かった」という方が出てきています。ネットを使いながら、株式投資や資産運用に取り組む方も増えていく状況がでてきたようです。日本には、1100兆円の借金と1600兆円の資産があります。運用次第では、豊かになれる可能性があるのです。
 でも、将来に対する不安を持つ方もいます。将来に不安を持つ方は、生活の小型化をすることで乗り切ってはどうでしょうか。冠婚葬祭や近所付き合いの義理を縮小することは、ストレスの緩和だけでなく経済的にも良い効果をもたらします。ストレスが多くなれば、身体の病気や精神的に「うつ」が進行するケースもあります。腸内環境を整えれば、免疫力がアップします。美味しいモノを食べて、腸内細菌叢を快適にする実践も楽しいものです。笑いは、人間の免疫力を高めてくれます。落語や漫才を1年間テレビやラジオで収録しておけば、立派なコレクションができます。これを聞きながら、免疫を高めることも有意義でしょう。転ぶな、風邪引くな、義理を欠けの3つが、人生百年を快楽に過ごす秘訣になるかもしれません。


シニアが里山の復興に参加する   アイデア広場 その511  

2019-10-23 18:26:37 | 日記

 シニアには、時間的余裕があります。彼らは、健康についても、遊びについても十分に時間を使うことができます。健康志向の方は、有機野菜の愛好家が多いようです。野菜には、抗酸化作用のあるものが多いのです。過剰な活性酸素は、糖尿病などの生活習慣病やガン、そして老化を促進します。この活性化酸素の作用を抑制するものが、抗酸化作用の強い野菜になるわけです。旬の露地モノ野菜は、抗酸化力の豊富なものが多くなります。たとえば、食品成分表では、ホウレンソウ100g中にビタミンCが70~80mg含まれていることになっています。でも、旬の外れたホウレンソウには、10mg程度しか含まれていないのです。健康に気をつかうシニアは、信頼できる農家から新鮮な野菜を購入することが多くなります。最近は、食べるだけでなく、自分で栽培するシニアも増えてきています。個人用のレンタル耕作地が、都会のまわりにたくさん作られるようになりました。そこで、野菜の栽培に楽しみを見いだすシニアもいるのです。楽しみが昂じると、より本格的に自分の描く野菜を、存分に作ってみたいと希望が出てくるようです。
 そこで、里山で野菜を作りながら、地方の活性化などについて考えてみました。レンタル耕作地で、気兼ねなく有機野菜の栽培ができるようになりました。作物の生育と季節が密接に関係することが分かります。食材も気候との関連が深いことが、肌で感じてくるわけです。いつかは田舎で、本格的に作物を作ってみたいという気持ちが出てくる方も現れます。田舎に住みたいけど、いきなり移住だとハードルが高いとなります。でも、最近の状況は、田舎と都会の両方で住む環境が整ってきました。通常の賃貸物件でも、家賃は地方により月2万円程度のものが出てきています。キッチンなどを共用するシエアハウスや年数十万円の宿泊施設付き貸農園も現れてきました。農園付き宿泊施設などで、都市と農村の2拠点生活を始める人達も、ぼつぼつ出てきています。
 地方の古い空き家なら、驚くほど格安で手に入るケースがあります。耕地付きの古民家が、300万円程度で買える地方もあります。所有しなくても、借りたり、泊まるだけなら、少ない負担で2拠点生活が実現できる状況が生まれています。日本には、四季にあった野菜を食する文化が生まれました。四季のある国は、世界的に見ても数少ないのです。日本文化に共通していることは、気候の影響をうけていることです。縄文時代は採集文化であり、弥生時代は農耕文化でした。どちらも自然の恵みがなければ、豊かな生活はできなかったのです。その伝統は、私たちの深層心理の中にあるようです。
 里山の雑木林は、植林をしなくとも薪などの樹木を提供してくれます。コナラやクヌギのような広葉樹は萌芽更新し、それらの種子からも次世代の木が育ちます。広葉樹の森では、木を伐っても自然と元のような森になっていくのです。縄文も弥生も、木の利用を重視していました。燃料は、木に頼っていたのです。薪だけではなく、炭という形で利用する工夫をしています。炭のおかげで、日本の料理文化は多様性を備えることができました。
 昔、里山に住む人達は、農業に従事する一方で、林業をしていました。その中に、炭焼きの仕事もあったわけです。今は、化石燃料や電気にその地位が奪われています。昔の燃料は、そのまま里山に残っています。それも豊富に、使い切れないほどあるのです。もし、里山の炭焼きを行うことができれば、儲かるビジネスになります。里山の雑木林を限定区分けして、順繰りに伐採と炭焼きを繰り返せば、資源は枯れることなく、継続的に利益を得られる場所になるのです。
 ノスタルジックな農業や林業の思考を超えて、現代的課題に挑戦しようと考えました。ある地方都市ではシャッタ一通りが増え、商工会議所は何らかの対策を迫られていました。日本の多くの地域で、取り組んでいる課題です。空き店舗をそのままにして、資産価値を下げている地域が多いようです。中には、積極的に地域に投資をして、自分の土地の資産価値を上げることに長けた人びとがいます。地域に稼げるお店が増えれば増えるほど、彼らの資産価値は増大します。別の見方をすれば、地域が豊かになることを意味します。シャッター通りに、優良で稼げるテナントショップが入ってもらう努力したのです。稼げる候補に上がったのは、焼き鳥屋さんでした。焼き鳥は、好景気や不景気に左右されずに、安定した売上げを得ることができる特徴を持っています。
 商工会員の中で、昧の分かるスタッフ数人が、全国の美味しい焼き鳥屋を何百店も食べ歩いたのです。誰が食べても美味しいという店を、10店舗に絞り込みました。数年かけて、その店と「町に店と開いて欲しい」と交渉をはじめたのです。美味しい焼き鳥屋さんは無理をして、分からない町で商売をする必要はありません。今のままでも、十分に利益を上げられるのです。でも、商工会の熱意とは別に、美味しい焼き鳥屋さんの触手を動かすものが3点あったのです。焼き鳥屋さんを動かしたものは、地鶏の肉質が良く安価で手に入ることが一つでした。もう一つは、新鮮な野菜です。最後の決め手は、良質な炭焼き窯の存在でした。
 農園と都会の2拠点生活は、シェア経済の浸透で現実味を帯びてきました。都会の家も農村の家も、使わないときに民泊や簡易宿泊所として活用することができます。どちらも、一定の収入を得ることは可能です。住まいの維持コストを抑えることもできます。仲間との共同購入や運営を視野に入れるならば、1人当たりの支出はリーズナブルになります。田舎の住まいと農耕作業、そして林業の一端を担うことができるわけです。里山の荒廃が、問題になっています。でも、里山を美味しい焼き鳥屋さんの食材供給地にすることができれば、自分の健康を高め、都会と農村の生活を享受し、里山の復興に参加できるかもしれません。




ショッピングモールが健康の増進の中核になる   スモールアイデアNO334

2019-10-22 16:21:53 | 日記
 高齢化の進展により、日本の医療費は42兆円を越え、介護費が9兆円になろうといています。2025年には、医療と介護費の総額が74兆円になると推定されているのです。中身を見ると、不可解な点もあります。65歳以下は一人当たり17万円、65歳以上は72万円の医療費がかかっています。高齢になればなるほど、医療費を使っているのです。であれば、元気な高齢者が65歳の時のように、健康を維持することにより、医療費は節約できることになります。ちなみに65歳以上の高齢者が3500万人います。その方が元気でいれば、20兆円ぐらいが節約できる計算になります。医療費が、現在の半分になるのです。
 そこで、高齢者が元気になり、医療費がかからない地域の活動を考えてみました。1日当たり2000歩の身体活動を増やすことで、医療費が3~4万円を削減できるという試算もあります。活動できる場を設け、住民の皆さんが楽しく暮らしていけるようにすれば良いということになります。活動ができる場として、ショッピングモールを上げたいのです。ショッピングモールは、遊歩道や歩行者専用の買い物広場などのある大規模な商店街という設定にします。モールに来れば、仲間と楽しく、運動プログラムも各自に合わせて作られており、運動のしやすい場所も用意してあるという条件を整えるのです。高齢者が元気になれば、20兆円のお金が節約できるわけです。その節約分を前倒しして、これらの環境整備に使ってはどうでしょうか。
 市町村が、モールを応援する態勢を作ります。モールの近くに病院を集める工夫をしていきます。税の優遇や病院施設の補助など大々的に行います。若い夫婦を集めるのであれば、いつでも入れる保育園などが有効になるでしょう。モールの近くに無料の保育園を数多く作れば、若い親たちは安心してやってきます。病気に対する備えと保育が完備されれば、若い労働力が確保されます。若い労働力が豊富にあるとなれば、人手不足に悩む企業は争ってこの地域に進出して来るでしょう。モール周辺の消費者が、常に購買力をもっていることが大切な要件になります。地域経済の衰退は、モールの売り上げを低下させます。消費者が常に利用するモールは、近隣の小売店やレストランの売上げに良い影響を与えるます。行政は、主要バス路線のターミナルをモール内に設けることです。交通の便が良くなれば、モールへの客足は増加することになります。
 ここまでのお膳立てを済ませてから、高齢者の健康を高める工夫をしていきます。地域の健康を高める中核的スペースとして、ショッピングモールを育てていくことになります。長寿遺伝遺伝子は、運動することでスイッチが入ることが明らかになってきました。活動量の多い高齢者は、健康寿命が長いのです。早い時期から筋肉トレーニングを行えば、認知症のリスクは減少します。「二本の足は、二人の医者」という言葉があります。歩いている分には、急速な体力の低下はありません。歩いている分には、元気な高齢者でいることができるわけです。医療費を節約する高齢者ということです。そのためにも、老後は一定の運動をすることは必要になります。
 最近のモールは、空き店舗が目に付くようになっています。特に、衣料品店の撤退が目に付くようです。この空いた店舗を利用して、個々人にあった運動プログラムを進めていくことになります。もちろん、同好の士が集まって、モール空間を利用して運動をすることも良いでしょう。2000歩以上余計に歩けば、3~4兆円の医療費が節約できるわけです。雨の日も風の日も、モール内であれば、運動は可能です。
 でも、歩くだけでは、面白くないという方もでてきます。空き店舗を利用して、料理教室なども加齢を防ぐには良い手段です。単に運動をするより、頭や手先を使いながらの動くほうが健康寿命には効果的だと言われています。調理には、食材の鮮度の見極め、食材の値頃感、包丁さばきなど頭を使うと同時に手の運動も兼ねてしまう効用があります。高齢者になればなるほど、タンパク質を多く含んだ良質の食材を食べることが推奨されています。材料は、モール内に豊富にあります。料理教室で料理を覚え、材料を買って帰るパターンができます。このパターンが定着すれば、固定客を獲得したことになります。できれば、元気な高齢者だけでなく、足腰の不自由な高齢者の方もターゲットにしたモールの運営をしていきたいものです。足腰の不自由な高齢者の方でも、個人レべルでは衰えていく体力のスピードを急激に低下させないことが大切になります。一人で家にいるよりも、モールで毎日気分転換をしていくほうが、楽しいかもしれません。こんなショッピングモールができたら良いなと思います。



銀行の目利き・資金のだぶつき・楽しい不動産投資  アイデア三題噺277

2019-10-21 18:29:01 | 日記

 世界的な金融緩和により、投資資金がだぶついているという観測が流れています。その資金は、不動産に流れていると言われていいます。そこで、だぶついている資金の流れと、不動産業界について考えてみました。
2018年まで、高級マンションの売れ行きが好調だったタイの不動産市場が急低下していいます。タイのマンション需要は、2018年まで順調でした。ところが、2019年上半期におけるタイの首都圏の住宅販売市場は、前年同期比で13%も減少しました。この時期のタイの新築マンションの販売は、前年比約20%減の10万戸を下回ったのです。10万戸以下の販売は、2011年以降で最低の水準になります。不動産開発各社は、進行中の案件を全面的に見直し、戦略を変更せざるを得ない状況に追い込まれているようです。
 タイの不動産市場は、中国人の投資家の影響を大きく受けていました。中国人の富裕層が、投資先をタイの不動産に求める傾向が続いたのです。マンションを購入するために2019年前半に、外国から流人した外貨は3200億円でした。流入した外貨の3200億円のうち43%が、中国本土と香港からだったのです。でも、中国経済の減速や米中貿易摩擦による人民元安とバーツ高になり、環境が変わってきました。タイの不動産が相対的に高くなり、中国マネーの流人が退潮傾向にあるわけです。
 気候が穏やかで治安が良い地域は、不動産価格が高くなります。そんな避暑地が、アメリカフロリダのマイアミということになっています。このフロリダ州は、近年は大型ーハリケーンによる被害が増えています。30c mの床上浸水を2年に1度経験する件数は、2019年には10万件中5000件になっています。2050年には10万件中8350件に増加するという推定もあるのです。時間の経過とともに、多くの不動産が常に浸水の危険にさらされているとも言われています。ハリケーンや津波などの大災害は、気候変動がもたらす悪影響の一部です。これらより大きな問題は、継続な海面上昇によってもたされることだったのです。タイのマンションに流れた投資資金と同じように、多額の不動産投資資金がフロリダの避暑地に投入されています。気候学者から言わせれば、リスクのある地域の投資をしているわけです。
 ある会社は、フロリダ南部で保険業や銀行業に与える気候変動の影響ついて試算しています。浸水する物件のオーナーが抱える経済損失は、現在の10億ドルから、2050年には50億ドルになるというものです。マイアミで10万の不動産物件を選び、現状のまま気侯変動が進んだときのシミュレーションの結果です。アメリカで個人が不動産を持つ場合、30年ローンを組むのが普通です。洪水などで住宅価格が下がったりしても、ローンは支払い続けなければなりません。ある意味で、この30年間に、10億ドルから50億ドルの潜在的損失をリスクとして抱えることになります。もちろん、洪水などの慢性的なリスクの増大は、住宅保険や災害保険を提供する保険会社にとっても痛手となります。さらに言えば、地域全体の不動産価値が低下することになるわけです。
 気候変動による災害が増えていることを踏まえれば、保険料は上昇し続けます。マイアミの洪水は借り手と貸し手の双方が打撃を受ける恐れがあります。でも、銀行も住民も気候変動に伴う金融リスクについてそれほど気に留めていないのです。この変動がもたらすリスクの大半はまだきちんと理解されていないともいえます。その理由は、憶測ですが聖書を信じる風土にあるようです。アメリカ南部の人達は聖書を信じる人達が多いのです。聖書を信じる人は、進化論や温暖化にあまり関心を持たないようです。気候変動がもたらすリスクの大半は、金融機関の意思決定に組み込まれていないようです。フロリダ沿岸地域は、金融機関、住宅所有者に資産価格のショックをもたらす地域になるかもしれません。ここにも、だぶついた資金が流れている現実があります。
 日本では、地方銀行によるアパートなど投資用不動産向けの融資が拡大しています。投資用不動産は、担保も手堅いものがあります。銀行の抱える資金を、手つ取り早く融資として貸し出すことができます。アパートなどでは、融資額が1億円規模と高額になりやすいのです。銀行として美味しい、融資先になります。融資を受ける側も、節税対策の土地所有者や副収入を得たい人のニーズは根強いものがあります。銀行の収益のあがりやすい不動産融資に頼る構図が、浮き彫りになってきます。でも、国内銀行のアパート融資が、23兆円となっている事実を知れば、少し躊躇する人びとが出てきても不思議ではありません。このままのペースで、アパート経営が続くことはないからです。悪いニュースを自発的に伝えようとする人びとが、少なくなっています。事件が起きてからの発言が多くなることもやむを得ないところでしょうか。
 悪い流れがあれば、良い流れも出てきます。銀行の不動産融資が、小口案件にシフトしているケースもあるのです。不動産業者の信用リスクではなく、物件の収益性などから決める流れが出てきています。待機児童問題などで、保育所の新設ニーズは高いくなっています。保育所の経営者が、子ども達の才能を伸ばしている実績があれば、融資はに優良な案件として続いていきます。経営者の才能を見抜く金融機関の目利き力が、改めて問われることになります。ある保育園では、子どもの才能を伸ばし、親の信頼を得ています。この保育園は、保育室を増やして園児を受け入れています。増やした保育室には、銀行融資が使われています。良い保育園には、人が集まり、経営は安定して、利益を出す源泉になるようです。