インドは、近い将来中国と肩を並べる経済大国になるといわれています。インドネシアは、世界第4位の経済大国になると新聞で報道れています。この理由は、人口ボーナスにあります。人口増加率が高いアジアの新興国は、総人口に占める生産年齢人口比率が非常に高いのです。これらの国々は、経済成長を高める「人口ボーナス」期にあるとされています。インドには、右肩上がりの市場があります。ここには、適切な教育育や研修さえ受ければ大きな労働力となる膨大な若い労働人口があるのです。
でも、懸念もあります。インドの場合、約4660万人に上る子供が発育阻害の状態にあるとされています。発育阻害は、乳児への不十分な栄養補給や不衛生な環境などによって起こります。この状態になった子供は、学業で苦労することが多く、後の人生を左右するのです。不安を増幅していることは、発育阻害の状態で成長した子供が母親となっていることなのです。発育阻害の母親から生まれた子供も、母親の影響を受けて栄養不良になる悪循環に陥いるケースが多いわけです。
発育阻害の問題は、世界の発展途上国の新興国でも深刻になっています。この問題は、フィリピンやインドネシアといったアジアの新興国でも深刻なのです。フィリピンでは、子供の3人に1人が発育阻害の状態にあるとみられるています。十分な食事を取ることもできず、教育も受けられないままに、地方に暮らす多数の貧しい人びとが存在しているのです。フィリピンでは、子供の発育阻害の状況は過去20年間ほとんど変わっていないといわれています。栄養不良が現代の労働に向かない人材になり、経済成長を妨げるのではないかという懸念が広がっているわけです。労働力を生み出す膨大な青年達が、役に立たない人材と化する不安が出てきているのです。
発育阻害にならないようにするには、人的資本への投資は有効です。栄養改善のために、1ドルを投資すると最大16ドルの経済効果をもたらすとの推計もあります。インド政府は、発育阻害の子供の割合を22年までに25%に減らす目標を掲げました。たインドネシアでは2017年、年に約39億ドルを投資して発育阻害の解決をめざす政策を掲げました。発育阻害に関連して、各国が負担するコストは巨額にのぼります。でも、政府機関だけの対策では不十分のように見えます。
政府とともに、国民の健康や生活を豊かにする民間の活動も盛んになっています。インドでは、慈善活動と利益獲得の両方を狙うインパクト投資が広がっています。この投資金額は2025年には8800億円の規模になり、2016年の6~8倍に増えていく見込みです。この投資は、世界でも注目を集めています。例えば、インドのオデイシャ州では、乳業の近代化が遅れていました。生乳の大半が、地元で消費されていたのです。酪農家の収入は少なく、地元の生活は苦しい状態でした。ここに起業家が、殺菌など近代的な設備を持つ工場を立地して、高品質の牛乳乳製品を作ることを可能にしたのです。品質と鮮度を保つ容器に入れるなどして、販売先を他の地方にも拡大しました。この起業と契約する農家の3~4割は、過去5年間で収入が2倍になったのです。起業家は従来より高価格で生乳を買い取るために、酪農家は潤い地域に雇用も生まれました。地域と起業の好循環が生まれたわけです。結果として、発育阻害児は減少していくことになります。
インドは多くの社会問題を抱えながらも、経済成長の中で多く投資家が育ってきています。起業家精神も旺盛なのです。投資家の中には、社会的貢献が十分ならば、金銭的リターンが市場平均より低くても良いと考える人達も少なくないのです。もっとも利益を上げれば、投資先が新規株式公開をする際に持ち株を手放し、投資したお金を回収することも忘れていません。ここで上げた利益を、次の社会問題を抱えた分野に投資していくわけです。日本は、2018年の経常収支が20兆円弱の黒字になりました。日本企業が海外の株式や債券の配当などから得る所得収支が黒字で拡大しているわけです。この株式投資の一部を、社会問題に挑戦している起業家の事業に投資してはどうでしょうか。経常収支の1%の2000億円を投資すれば、10年で5倍以上のリターンを得ることが出来るかもしれません。そして、アジアの諸国からは、発育阻害を減らしてくれた国としての賞讃を得ることができます。