コロナ禍は、まだまだ収まる気配がありません。でも、各国の株価は記録的な高値水準で推移しています。日本においても、2月には日経平均株価が30年半ぶりに3万円の大台を突破しています。世界的な金融緩和であふれたマネーは、記録的なものになっています。金融資産を持つ富裕層は、旺盛な消費に動いています。潤沢なマネーは、高額不動産にも流れ込む現状があります。ダイヤモンドや高級車、億ションなど高額品の市場が活況を呈しているのです。香港のオークションに出品されるダイヤは、事前の査定価格は27億~42億円にもなっています。中国では、2000万円を超える多目的スポーツ車が、販売台数の4割近くを占め、全体をけん引しました。マンションでは、平均価格が3億円前後の高額物件の売れ行きが好調です。ワクチン接種が進み、消費が急回復しているアメリアでも高額消費が伸びています。
心残りは、新型コロナウイルス禍で海外旅行にお金を使いにくくなった面がまだあることです。先を見る旅行会社は、着々と準備を整えているようです。パンデミックからほんとうに抜け出したとき、旅行への消費意欲が戻ってくると確信しているのです。その予備軍も、順調に育っています。純資産10万ドルを超す人数は、2019年時点で中国が1億1300万人になりました。海外旅行に出かけたり、高級ブランドを買ったりする人々は、この中間層に位置しています。アメリカも、純資産10万ドル超の成人数は、1億300万人になります。信じられないことですが、日本もこのレベルの資産を持つ人は5500万人になります。さらに、ドイツ、イイギリス、そしてドイツは、おのおの2500万人ということです。これらの人々が、海外旅行に高いニーズを持っているわけです。大好きな骨付き肉を目の前に置かれて、「待て」の姿勢でよだれをながしているお犬さんのようです。コロナ禍において、ワクチン接種が済めば、観光全体が急速に拡大するビジネスになってくるのです。
大英博物館の所蔵作品は、世界中から収集した遺物品で貴重なものです。もっとも、貴重な文化財を持ち去られた国々からは、怨嵯の声も漏れ聞こえてきます。英国人は、英国に来ればいつでも無料で、文化財を体系的に見られますと言います。その大英博物館が、2007年に全所蔵作品のネット公開を目指すプロジェクトをスタートさせたのです。ネットで観られるのならば,わざわざ博物館へ行く人は減るだろうと思われていました。でも予想に反して、ネット公開後、大英博物館の来館者は急増したのです。リアルな文化財を、自分の目で見たいという人たちも多いのです。博物館のデジタル空間での出会いが、リアルに「関心を持つ契機」となったのです。
確かに、コロナ禍の中で観光業は引き続き厳しい状況にあります。特に日本の景気を支えていたインバウンドは、市場が蒸発したと表現されるほどです。でも、国内に関しては、少し改善しているようです。出張や旅行の予約サイトを見ると、ビジネスホテルの価格も通常時に戻ってきています。旅行大手のHISは、非常に多くのオンラインツアーを企画しています。ネットを使って、バーチャルに旅行を実感してもらおうという試みが増えているようです。地方の産物が事前に送られ、同封されたスケジュールに従って、画面を見ながら自宅で味わう趣向などもあるようです。ネットが呼び水として、観光地に足を運ぶ人が増えることを期待しているのかもしれません。大英博物館を見るまでもなく、リアルとネットの融合に、ビジネスのヒントがあるようです。
ネットショップは、多数の商品からユーザが購入しそうな一部の商品を選んで提示します。このオススメのレコメンデーションは、あなたがこれまでに買った商品を調べます。それから、あなたが買ったものと同じ商品を買った他のユーザを見つけます。他のユーザが買った商品の中で、あなたがまだ買っていない商品をオススメします。あなたが買ったものと同じ商品のユーザの一覧と各ユーザの購入履歴を使うことになります。これらを照らし合わせて、他のユーザが買った商品の中で、あなたがまだ買っていない商品を見つけることになります。コロナで観光業は止まったように思えますが、今までの旅行履歴を参照して、サービスが行われることになるでしょう。でも、コロナ禍を経験した旅行慣れした人たちは、以前のサービスでは満足しないかもしれません。コロナ禍は、私たちに知恵を授けました。
一定の限度を超えないのであれば、無秩序にも利点があるものです。社会にとって役立つ人とそれほどでもない人がいることを、パンデミックは明らかにしました。あるフランス人は、「わが国を救ったのは金融マンや法律を巧妙に操れる人のおかげではなかった。フランスが倒れずにすんだのは、トラック運転手、看護師、医師、教員のおかげだった」と述べています。ある意味で、国家に必要な人材を明確にしたわけです。国家が危機に上手に対処し、転換期を切り抜けるために何が必要かを、このパンデミックは示したことになります。アメリカは、富裕層に税をかけて格差を解消し、炭素税を導入して環境問題に取り組むようです。前述のフランス人は、「フランスは、中国に工場を移動させました。その見返りに、中国はフランスにウイルスを移動させ、マスクや医薬品の生産は中国に残り続けている」と嘆いています。パンデミック前と後では、人々の行動は少し異なるものになるようです。
そこで、数多くある日本の観光資源を有効利用しようと考えてみました。英国の植物は、1500種のうち15種しか固有のものはありません。日本に自生するおよそ5300種のうち、1800種が日本固有のものです。この自然を観光資源として、利用することが考えられます。でも、それだけではものたりません。照葉樹林文化論に沿った旅行も、外国の方にはおすすめかもしれません。東南アジアや中国南東部、ヒマラヤに栄えたこの樹林帯は、現在はほとんど見られなくなってきます。たとえば、岡山県などの山地は、古代より窯業ではげ山になるケースが多かったのです。照葉樹林は、伐採など人為的撹乱をすると、落葉広葉樹の混交林に遷移してしまいます。日本にはこの遷移の移り変わり見る場所が各地にあります。伐採されると、裸地に一年生草本が生育を始め、多年生草本に移り変わり、マツ類が進出します。マツ類が進出した後、数十年経過するとコナラやクヌギなど落葉性のナラ属の木々が生育していきます。葉の広いナラ属が生育すると、その林床では次世代の落葉性ナラ属は育ちにくくなるのです。落葉性ナラ属が育ちにくくなると、代わりにシイやカシなどの照葉樹(陰樹)の稚樹が育つようになります。照葉樹の稚樹が育ちはじめ何十年かすると、落葉性のナラ属を抑えて優占種とる経過を取るのです。日本は、世界的な生物多様性を支えている生物多様性ホットスポットの一つになっています。その植物の鑑賞だけでなく、日本の風土の中で育ってきた固有の種も見ていただきたいものです。