ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

130万人が亡くなる多死社会に備える

2017-01-31 18:12:39 | 日記
130万人が亡くなる多死社会に備える

 日本で亡くなる人は、2015年130万人を超えました。この数は第二次大戦で日本人が死亡した260万人を、2年で凌駕していくものです。団塊の世代は今後、死亡者数が急増していきます。2039年の167万人でピークになります。それまでの期間、日本は第二次世界大戦の悲惨な死亡状況より、さらに多くの人が去って行く時代になるのです。この多死社会に対する備えが、まだまだ不十分です。死をタブー視することなく、準備することが求められています。健康寿命を満喫しているキンさんに、トット記者が話しを聞きました。

記者「短期間で、死亡者数がこれだけ急増する日本の現象が、世界から注目されています。どのような状況になっていくのでしょうか」
キン「人口統計学などの見地からすれば、以前より予想されていたことです。学問の常識と、一般人の意識には乖離があります。日頃付き合いのあった人達が、ポロリポロリとお亡くなりになっています。その現実が、学問のレベルに人々の意識を引き寄せているともいえるのです。自分の思いを残しておきたいと、エンディングノートを購入する人が増えています。でも、このノートを最後まで書いた人は、2%程度です」

記者「自分の考えを綴るということは、素晴らしいことですよね。でも、それが完結しないのは、不思議です」
キン「自分が判断出来なくなった場合に備えて、受けたい治療を明確に示す事前指示書には70%の人が賛成しています。でも、実際にこの指示書を作っている人は3%です。余命が少なくなったとき、80%の高齢者が自宅で過ごしたいと願っています。でも、逆に80%の人達が、病院や高齢者施設など自宅以外でなくなっているのです。終末期の具体的な生活や療養については、考えたくないという人が多いのですよ」

記者「人間の弱さを見たように思います」
キン「そこで弱さを感じるようでは、起業にはなれませんよ。130万人が死亡していく現実、終末期のことは考えたくないという高齢者の存在に商機を見いだすのです。東京23区内での孤独死は、2013年度で7440件です。これらの方には、身内の人もいます。これらの親族に代わり、遺品を整理する業者への需要が増えているのです」

記者「親族の方が、やれば済むのではないですか」
キン「はい、なかなか難しいこともあるようです。多くの遺族は、賃貸物件から退去などの切羽詰まった状況になります。死後何日もたって発見されたような場合は、臭いの除去や殺菌・消毒も必要です。臭いがきつい部屋での整理は、慣れない人には困難なのです。期日以内に退去作業をし遺族に遺品をお渡しするには、この種の仕事に精通した遺品整理業者に、お願いしたほうが良いようですよ」

記者「確かに葬式やお墓などについては、心の準備ができています。でも、故人の遺品までには思いが及びませんね。仕事内容と費用は、どうなのですか」
キン「ある孤独死の事例では、遺品がトラック3台分で、作業は3人で2日間の料金が、13万円でした。現金や貴重品、思い出の写真などのは、処分する前に必ず立ち会いの方に確認しながら作業を進めます。作業員は、できるだけ女性を1人加わると良いですね。故人が女性の場合、男性には見られたくないものもあるものです」

記者「確かに、毎年130万人以上が死亡するということは、そのことに関わる仕事が増えることになりますね。時代を先取りする人なら、ビジネスチャンスと捉えます。ところで身内に迷惑をかけないために、高齢者が気をつけておくことはどんなことなのでしょうか」
キン「終末医療についての自分の意思を、明確にしておくことですね。万が一のときの治療について、病院から事前意思表明書の提出が求められます。本人の意思がわからないまま、治療を選ばなくてはならない場合もあります。家族の精神的負担は大変なものですよ。『心肺停止になったとき心肺蘇生を希望するのか、しないのか』、『気管切開を行うか』など、本人が決めておくことです。その場で、子ども達に決めさせるということは、酷というものです」

記者「もちろん、生きたいという人も多いのでしょうね」
キン「当然です。頑張りたいガン患者に、医師がホスピスを勧めて、患者が意欲をなくすこともあります。今は、医師の方が患者や家族の意向を尊重して治療に当たることが当たり前になっています。本人が望んでいれば、危篤になっても病院に行かず、住み慣れた自室で最期を迎えることもできます。望まぬ延命を拒否する自由もあるのです。ちなみに私の母は、延命処置を『全部いらない』と意思が明確でした。子ども達は、余裕をと笑顔で最後まで尽くしましたよ」

記者「自分の終末の不安を減らすことは、残った人生を充実させると聞いたことがあります。不安を減らす方法は、どのようなものがあるのでしょうか」
キン「私の場合、お墓ですね。ある町の墓地は、40%が無縁墓でした。少子化や過疎が進み、墓守が絶えてきたのです。荒れ果てた墓や不法投棄された墓石を、各地で見かけます。そうはなりたくないですね」

記者「確かに、日本でも公営墓地や合葬式の墓の事例が増えています。今後も、増えていくのでしょうか」
キン「入った墓が無縁にならないと確証が得られれば、不安は軽くなりますね。居住地と出生地がずっと同じという人は、10%程度しかいません。住まいの近くに墓を移したいと希望する人が増えています。貧しくても、誰でもが遺骨を納める場所を確保できる福祉の観点が求められます。そうすれば、喜んで相続税をはらえるんですが!」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。




日本と世界の政治情勢を考える

2017-01-30 16:55:27 | 日記
日本と世界の政治情勢を考える

 アメリカ大統領は、予想に反して共和党のトランプ候補が当選しました。彼は、メディアを信用しません。ツイッターで自分の主張だけを、発信続けています。今のところ、世界はそのツイッターに翻弄されているといってもよいでしょう。でも、羊飼いの少年が、あまりにも「狼か来た、狼が来た」と叫べば叫ぶほど、人々の関心は遠ざかっていきます。今回は、黒田さんに宿題を出されたトット記者が、世界の政治情勢について説明します。

黒田「戦後72年間にわたって、日本はアメリカの動向に最大限の注意を払ってきました。アメリカがくしゃみをすれば、日本は風邪を引くとまで言われていたのです。トランプ大統領になり、日本の状況はどうなるでしょうか」
記者「アメリカの動向を最大の指標としてきた日本の土台が、揺さぶられるのは間違いないようです。救いは、現在の安倍政権が世界的に見ても、極めて強い政権基盤を持っていることです。欧米の政治状況と比べれば、日本の社会は平穏さを保っているといえます」

黒田「安定しているようには、見えないという有識者もいます。平穏さの根拠は何ですか」
記者「円安と株高は、日本企業に収益の改善をもたらしています。昨年の急激な円高環境と様変わりしています。今年の3月の決算は、多くの企業が増益基調を維持できるという予想です。経営者の多くは、積極的に投資や研究開発ができると考えています。為替や株価の動向に関係なく、企業体質の強化や成長戦略を実施しようとしているのです」

黒田「日本の少子高齢化、1千兆円にも及ぶ借金財政、日銀の異次元緩和というサイクルが、長続きしないという有識者もいます。日本の財政が破綻すれば、国際協調どころではないとの意見もあります。どういう策があるのでしょうか」
記者「現在の良好な経済状況を起点にして、賃金増加から消費が拡大していく好循環を推進していくことです。財政破綻には、奥の手があります。1千兆円の国債を返済する場合、現金で返すことになります。1千兆円の現金は日銀が印刷すれば良いのです。アメリカがドルを印刷して、赤字を克服していることと同じことをするのです。でも、そこまで日本経済が追い込まれてはいません」

黒田「ずいぶん大胆な奥の手ですね。トランプ大統領は、法人税の減税やインフラの投資の拡大、規制緩和などの産業促進策を打ち出すとの観測が上がっています。それに呼応するように、アメリカの株価は順調に上がっています。アメリカの経済が加速すると、どうなるのですか」
記者「アメリカの経済が成長を続けると、世界中からアメリカに資金が流入します。少なくとも、アメリカ経済の回復は、日本経済にも好影響をを与えるのは間違いありません。でも、新興国からアメリカに資金が流出しています。苦境に陥っている国も出始めています。新興国企業のドル建て債務は、3兆ドルを超えているのです。これらの国では、社債の発行が急減しています。信用力が落ちていることを意味しています」

黒田「これからのアメリカに対する世界の国々の対応はどうなるのでしょうか」
記者「嘘をつきながら、アメリカの大統領になった者はいませんでした。少数派を抑圧する候補が勝利するシナリオは、民主主義の後退を意味します。経済グローバリズムへの反発が、彼を勝利に導きました。アメリカとイギリスでは、国際協調を拒否し、自国中心主義の道を選びました。戦後世界の成長と安定を支えてきた国際秩序が、漂流することになると考えています。トランプ大統領の政策に期待すると同時に、期待外れだった場合のリスクに備える対応を行う二段構えになるでしょう」

黒田「国際協調主義は、激しい攻撃にさらされると予想されます。EUなどでも右翼が勢力を伸張するという見方が有力です。どのように私たちは行動すれば良いのでしょうか」
記者「アメリカでもEUでも右翼の思想に感化された個人が、増殖を続けています。一時は成りを潜めていたヘイトグループが、大手を振って主張をし始めているのです。これらの暴力を伴う行動は、イスラム過激化の思想と類似性があるようです。でも、民主主義がいかに脆弱だとしても、これよりマシな制度があるわけではありません。地道ではありますが、自立した一人一人の意見を認め合うことが大切になります。健全な合意を作り上げられる社会を、逆風の中で作り上げていくことになります。鍛えられた民主主義は、より逞しくなりますよ」

黒田「希望の光は、何かありませんか」
記者「イスラエルの観光客が、長野県の外れにある八百津町に訪れるそうです。主要観光ルートから外れた町に、訪れる理由は『命のビザ』にあります。八百津町にある杉原記念館に、年間8000人ほど訪れるのです。世界大戦中ナチスに迫害されたユダヤ人に、『命のビザ』で脱出を助けた杉原を偲ぶために訪れるのです。訪れるユダヤ人は、杉原の業績を紹介するヘブライ語のビデオ見て涙するそうです。人道的であることは、人種や民族を超えて共有されるものです。できるかどうかはわかりませんが、インドのガンジーのように非暴力・不服従の精神で行動ができたら素晴らしいのですが」
黒田「行き先の不透明な世界を、少しだけ考えていますね。今日は60点です」


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遊び心を育てる

2017-01-27 17:32:10 | 日記
遊び心を育てる

 日本は、貧しい国から豊かな国に豹変しました。でも、経済的豊かさは達成できましたが、心の豊かさには疑問符が付くようです。心が貧しくなったと言う方もいます。でも本当にそうなのでしょうか。伊勢神宮は、式年遷宮が行われました。その厳かな儀式は、多くの日本人に感動を与えています。宮司さんをはじめ儀式を司る人々は、伝統に基づいた所作を披露しました。多くの人々が日本中から集まり、繰り返し参拝を行っています。この様式は、ディズニーランドと多くの共通点があります。巨大な集客力、徹底した人材教育、大胆なリニューアル、どれもが緻密にそして計画的に行われているのです。今日は平賀さんに遊びの心についてトット記者が話をお伺いしました。

記者「伊勢神宮とディズニーランドを、似たようなものという大胆な意見があります。どうなのでしょうか」
平賀「近代の遊園地は、巨大な回転木馬に象徴されます。これらの回転する装置は、産業革命の動力になった蒸気機関です。蒸気機関による回転木馬が、19世紀後半の遊園地の革命をもたらしたわけです。それが20世紀になると、ジェットコースターなどの絶叫マシーンに変化していきます。幼児に『高い高い』とか『ぐるぐる回す』と喜ぶ姿を見ることができますね。『いないいないば!』などの繰り返しも喜びます。これらは、遊戯の要素にあるイリンクス(眩暈)とミミクリ-(模擬)なのです。ミミクリ-は、ミッキーマウスなど童話の登場人物だと思って下さい。」

記者「遊園地のイリンクスとミミクリ-は、分かりました。それと神社の共通点は何なのですか」
平賀「イリンクスは、一瞬だけ知覚の安定を崩し、明晰な意識に一種の心地良いパニックを起こそうとする遊びです。シャーマンがこの状態の中で、お告げをつける場面を映画などでよく見ると思います。宗教には、陶酔とかのイリンクスの要素がつきものなのです。さらに、この状態を保つ装置がスタッフ(ディズニーではキャスト)といいます。スタッフは、その役割を遂行するために教育されています。伊勢神宮には、皇學館大学までありそこで儀式の行い方などを修行していくわけです。ディズニーランドのキャスト教育は、洗練されたものとして良く知られていますね。要は、役に徹する仕組みが、似ているのです。さらに、その巨大な装置は、観客を飽きさせないように時期が来ればリニューアルされていきます」

記者「なるほど、イリンクスとミミクリ-の視点から見ると、共通点があるということですね。ところで、産業界でも遊びの要素を取り入れていると聞きますが、実情はどうなっているのですか」
平賀「広告業やファッション業界、そして玩具やゲームメーカーは、遊びを現場に持ち込むことに寛容ですね。遊びに熱中する人は、どこか異常なエネルギーを発揮する力があります。遊び重視の職場では、仲間意識やネットワークが大きな価値を持っています。大きなエネルギーで課題を解決し、ネットワークを拡大できる人材は貴重な戦力です。これらをの人材を上手にコントロールする仕組みが、求められているのです」

記者「なるほど、それでシリコンバレーなどの起業では、遊びの空間が用意されており、遊び感覚で仕事ができるように配慮されているわけですか。ところで最近の子どもは、遊びが下手になっていると聞いています。子ども達の活力がなくなれば、将来の日本の活力に影響します。どうすれば一生懸命に遊ぶ子どもを育てられるのでしょうか。」
平賀「今の大人達は、ベーゴマやメンコに夢中になっていました。子どもの顔には、3つの顔があります。親に対する顔、学校の先生に対する顔、友達に対する顔です。子ども達は、この3つの顔を使い分けて自分の感性を磨きます。その中心には、遊びがありました。以前は、缶蹴りやベーゴマ、そして今はゲームですね。動物の子どもは、小さいときはみんながじゃれています。でも、成獣になると途端にじゃれなくなります。天才といわれた平賀源内は私の祖先ですが、死ぬまで子どもの純粋さと遊び心を持ち続けました。その姿勢が、多くの発見や発明を生み出したのです。子どもに遊ぶ環境を整えることです。でも全く安全な環境ではなく、少しケガをする部分も残して置いた方が良いかもしれません」

記者「遊びは、見直されてきています。長寿社会になり、健康寿命の大切さが理解されてきました。遊び上手な人は、健康寿命が長いと分かってきたのです。どうすれば、遊び心を極められるのでしょうか」
平賀「確かに、定年後に趣味がないという人が増えているようです。定年後から遊ぶためには、できるだけそれ以前に遊ぶノウハウを身につけておくことです。良い遊びは、一人で、お金をかけず、死ぬまで、世間や流行に流されないものです。遊びは、年を取ると共に楽しみを極めるものでありたいですね」

記者「人類は絶滅の方向に向かっていると聞いたのですが、どうなのでしょうか」
平賀「はい、そういう説もあります。6600万年前に新生代が始まり、哺乳類は地球上の環境に適応し多様化してきました。1000万年前から現在に至るまで、ヒト科に属する種は徐々に減っています。人類の定義は、直立二足歩行する大型の尻尾のないサルです。尾っぽのあるサルは、仲間の種を増やし、さまざまな環境で生き延びて繁栄しています。現在の人類は、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの4種です。一般に思われているのとは逆に、尻尾のないヒト科は絶滅の方向にあります。樹上生活を送るチンパンジーやゴリラは、扁平足です。ヒトの土踏まずの発達は、直立二足歩行で長距離を移動していたことを示します。新しい環境に挑戦していたのです。その挑戦の姿勢が、ヒト科にはなくなっているのかもしれません」

記者「新しい挑戦をヒト科が、躊躇しているということですか。挑戦を志すためにはどうすれば良いのでしょうか」
平賀「元気で活動している人の行動パターンが、参考になります。高齢者には、非常に魅力てきな方とそうでない方に分けられます。魅力的な方は、遊び上手です。遊びを楽しんでいます。好奇心が強く遊びに熱中している方は、前向きでボケけるということがありません。遊びを通じて人生を充実させることも、挑戦といえるでしょう」

記者「遊びの要素が、社会の至る所にあることが分かりました。遊びを軽視しないで、生活を楽しもうという気持ちが湧いてきました。人類として、活力ある生活をするためにも遊びを極めたいと思います」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。



2017年の新しい技術開発

2017-01-26 16:18:28 | 日記
2017年の新しい技術開発

 トット記者に、アドバイザーから宿題が出されました。今回は藤堂さんから、2017年1月1日の全国紙を5つ読んで、新しい技術開発について述べよというものです。今日は、その報告を行います。聞き手は藤堂さんで、報告はトット記者です。

藤堂「新しい技術開発には、スクラップアンドビルドが必要です。そのような先端的企業について、話して頂けますか」
記者「はい、2050年までにエンジンだけで走る車は、ほぼゼロになります。電気自動車の時代になるわけです。この時代には、点火プラグの市場はなくなります。日本の独壇場ともいえるこの技術が必要のないものになるのです。この企業では、プラグの材質を利用して、人工骨とか人工関節の開発が始まっています。スクラップは点火プラグで、ビルドは人工関節などになります」

藤堂「人工骨とか人工関節よりも、本当の人骨をiPS細胞で作ったほうが良いのではないですか」
記者「iPS細胞は、まだまだ高価なのです。むしろ人工関節などは、プロ野球の投手には福音になるかもしれません。ご存じの通り、投手の肩は消耗品と言われています。肩関節の摩耗が、選手生命を短命にするのです。でも、人工関節なら摩耗は起こりません。筋力を強化すれば、より速いボールや変化球を投げることができるのです。問題は、これが野球協約で認められるどうかということでしょうか」

藤堂「確かに、パラリンピックでも義足は、素晴らしい性能を持つようになりました。健常者より速く400mを走る選手も珍しくありません。世界陸上やオリンピックの参加の有無にまで、問題が波及しつつありますね。ところで、人工知能(AI)の利用についてはどうですか」
記者「AIが急速に発展し、人間の業務を奪ってしまうということを懸念する人達がいます。でも、人間から仕事を奪う怪物だと避けたりしないで、上手に社会に取り込む視点が大切になります。例えば、コールセンターは、常に人手不足で悩まされています。コールセンター向けのAIが、開発されています。このAIは、極小で映像や音声、センサーやテキストのデータを複合的に処理できる優れものです。オペレーターの回答支援、問い合わせの自動対応、顧客の要望、SNSの分析を同時に行うことができます。業務を重ねることによりデータを蓄積し、より顧客の満足のいく回答を行うこともできるように作られています。もちろんオペレーターの負担も随時軽減していくのです。でも、突発的な事態には、この機械は対処できません。AIをどのような部分に導入すれば、使いこなせるのかという議論が、進んでいくことになります」

藤堂「日本の技術が、世界に認められたものにはどんなものがありますか」
記者「国際宇宙ステーション(ISS)へ食料や水を運ぶ『こうのとり』の活躍ですね。ISSの物資補給機は、アメリカ、ロシアを含め4機種あります。こうのとりは飛行士の食料や水、そして実験装置など6トンの荷物を運べます。物資補給機では、こうのとりの輸送能力が最大で、大型の船外用物資を運ぶ唯一の機種でもあります」

藤堂「日本も活躍していますね。順調にいっているのですか」
記者「近年、アメリカとロシアの物資補給機は、事故が相次いでいます。物資補給機で無事故なのは、6回連続で成功している日本だけです。日本独自のドッキング方式は、最初批判されていました。でも、成功が相次ぐ中で、日本方式が当たり前になっています。費用対効果を高めるためにコストを半減し、輸送能力を2割増やす改良型も開発中です。宇宙では、日本が活躍していますよ」

藤堂「技術力で評価されることは、嬉しいものです。飛ぶということでは、ドローンも話題になっています。これは、どんな状況ですか」
記者「農業や林業の分野で、ドローンの利用法が広がっています。ドローンに通信機能とカメラを搭載し、スマホで遠隔操作する方式が確立してきました。スマホで操縦しながら、作物や森林の生育状況を把握することが容易になっています。操縦が難しい場合に備えて、ドローンに備え付けてあるAIが自ら飛び方を判断することも可能になっていますよ」

藤堂「ドローンとAIを結びつけるわけですか。面白い発想ですね」
記者「ドローンの開発現場で見てきたのですが、興味深かったですよ。ドローンが浮き上がり、風で機体が崩れてもすぐに立て直して元の場所に戻ってくるのです。安定飛行の秘密は、周囲の景色を学習し、自ら飛び方を判断するAIにあるということでした。高低差のある果樹園など広い農地でも、生育状況を極め細かく把握できます。高精度のカメラを使えば、画像密度の精度が上がります。画像の精度が上がれば、AIの深層学習効果が著しく向上することができます。ドローンのAIが生育状況を把握し、農薬散布や肥料の散布を学習することも可能になります。最終的には、状況把握から散布まで自動的に行うことも夢ではないということです」

藤堂「確かに画像認識から深層学習を行い、情報を蓄積していくことはAIの得意技ですね。あと日本の産業に明るい話題は、ありませんか」
記者「はい、鉄道事業が面白いですね。世界の鉄道需要は2011年から2013年の平均で、20兆6千億円になります。それが2017年から2019年には24兆2千億円に膨らむと推定されています。中国受注の高速鉄道事業が、各地で計画の遅延やトラブルで暗礁に乗り上げています。日本の鉄道は、高品質で高価格の不利を抱えていました。でもここに来て、初期費用の高さも必要な投資であることを、各国が理解するようになってきています」

藤堂「それでも、中国の安価な鉄道工事費には、食指を動かされる国は多いのではないですか」
記者「中国の悪口になってしまいますが、アフリカには、中国の援助で建設された政府の建物が、すでに老朽化しています。最初は大きくて、見栄えがしたのです。今は、痛みが激しく、維持費も高く付くようです。以前は中国の援助の象徴が、現在はマナスイメージになっています。裕福になってきた新興国では、品質に対する要求は徐々に高まっているのです。高品質で高価格の日本製品が、新興国では憧れでした。その憧れが、ちょっと努力すれば手に入れられる位置にいることに気づいてきたともいえます。私の宿題は以上です」
藤堂「よく調べて、まとめてありました。正月の新聞は分量も多く、質も高い記事が載っています。各新聞社とも、力を入れて特集を組んでいます。それをまとめることは、レベルの高い知識を獲得できるチャンスでもあります。70点の合格です」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。


高齢者にお金を使ってもらう

2017-01-25 17:54:06 | 日記
高齢者にお金を使ってもらう

 久しく言われていることですが、資産を持つ高齢者がお金を使うようになれば、世の中のお金の流通が活発になります。お金の流通速度が上がれば、経済活動は活発になるのです。税金は至る所から政府や市町村に還元され、教育にも研究にも予算を回すことができます。保育所などで問題になっている待機児童ゼロの解決も、夢ではありません。今回は、高齢者の方にお金を使って頂く仕組みについて、藤堂さんにトット記者が話を伺いました。

記者「高齢者の市場は、まだまだ未開拓という意見があります。これについては、どのような突破口があるのでしょうか」
藤堂「商品を売る側とかサービスを提供する側が、間違った考えを持っていたのです。高齢者を、哀れな老人と捉えていました。彼等に年寄り臭い洋服を売ろうとしても、売れるはずがありません。ある昭和一桁生まれの女性は、集会に行くときは赤い靴を履いていくそうです。帰るとき、赤い靴は1足だけですぐに分るのです。他の高齢者は、皆同じようなくすんだ、いわゆる老人色の靴なので探すのに苦労していたそうです。この赤い靴を履くような消費者を育てることが、一つの突破口になるでしょう」

記者「どのような企画が求められるのでしょうか」
藤堂「高齢者に歓迎された企画に、『フルムーン夫婦グリーンパス』があります。これは、青春の雰囲気と高級感を盛り込んだものだからヒットしたのです。衣服にしても、高齢者になればなるほど、若さを強調するものが求められるのです。マンネリ化を打破するような商品を連発していかないと、高齢者の消費は市場から遠ざかってしまいます」

記者「高齢者の美的感覚も、消費活動に関与するものなのでしょうか」
藤堂「日本の『道』のつく芸術の根底には、美があり、快があり、楽があります。茶道、華道、剣道などの修行は、厳しいものです。でも、一定の技を修得すれば美しいというものが分かってきます。美しいものを美しいと感じ、表現することは、精神的高揚に繋がります。『道』の芸術には、道具が必要になります。茶道では茶碗であり、剣道では日本刀になります。これらは高価なものです。高齢者になればなるほど、美の境地に深く没入できます。と同時に、高価なものが必要になります。美は、高いレベルでの消費活動を促すものなのです」

記者「確かに大量生産・大量消費ではありませんね。でも、高額消費の場が高齢者の周辺には存在するわけですか」
藤堂「はい、美は時代の精神を破る力があります。上手に導き出すことができれば、商品のブレイクスルーをもたらすこともあるのです」

記者「そんなことが、可能なのでしょうか」
藤堂「江戸時代、儒教は幕府の重要な精神的支柱でした。女性を美しいと感じる捉え方は、儒教の教えからは逸脱したものです。そんな中で、浮世絵は儒教の精神を突き破り、美人画の全盛をもたらしました。日本だけでなく世界にその美は大ききな影響を与えたことは、ご存じの通りです。役人が腐敗した文化文政の時代に、新しい浮世絵の文化が栄えたのです。今の時代が、腐敗していたとしても、そして格差があったとしても、文化は栄える潜在力をもっています」

記者「確かに浮世絵が全盛を迎えたとき、版画師や摺り師なども華々しい仕事をしています。単なる消費以上の技術の爆発が起こったわけですね。新しい企画は、時代が受け入れるニーズと一致して初めて売れるようになるわけですか。」
藤堂「そういうことです。時代を覆う精神的価値観を打ち破ったとき、新たな商品、文化ともいえる消費爆発が出現します。団塊の世代は、ビートルズの出現でこれを体験しています。まったく違った音楽が出てきたかと思うと、瞬く間に世界を席巻していったのです。アップルのアイホンなどもその例になりますね。今の高齢者には、変革に対応する柔軟な姿勢と巨大な資金があるのです。何かの刺激を契機に、一気に吹き出るかもしれませんよ」

記者「消費の行き着くところは、最終的どういうものなのでしょうか」
藤堂「消費の個性化が進み、高級化の方向に向かいます。高級化の行き着くところは、お金の値打ちのつけられないサービスや情報になります。高齢者の余暇やゆとりは、ますます増加していきます。彼らは、自分の価値観を基準に、消費活動を楽しんでいます。売り手は、彼らの眼力に耐える商品を作り、提供することが求められるわけです」
記者「若者から流行を作り、それを全世代に波及させる仕組みに限界が来ているわけですね。対象を絞り、コアな消費者を開拓する必要性がわかりました」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。

インテリジェンス その3  過去のアメリカ外交文書が教えること

2017-01-24 17:16:00 | 日記
インテリジェンス その3  過去のアメリカ外交文書が教えること

 中国は、アメリカの軍事施設や国防省に悪質なサイバー攻撃を仕掛けていました。アメリカも、あらゆる国の軍事施設にサイバー攻撃をしていることが分かっています。アメリカが、同盟国の情報も盗み取っていたことも、スノーデン報告により明らかになりました。2015年にアメリカと中国の首脳会談が開かれ、知的財産の機密の窃取に関する合意が得られました。今回はトット記者が、インテリジェンスに詳しい黒田さんに話を聞きます。

記者「中国からの日本に対する標的攻撃が、2015年ごろから目立つようになってきました。これはどうしてなのでしょうか」
黒田「アメリカと中国の合意ができてから、中国の標的攻撃の対象が、アメリカから日本などの周辺国に移ってきました。中国の国家関与が疑われる攻撃は、防衛産業やハイテク産業を狙うことが多いのです。過去3年間で中国には、72のサイバー攻撃グループが確認されています。72のサイバー攻撃グループのうち13のグループは、人民解放軍の支援を受けているといわれています」

記者「アメリカとの合意以後、他国に波及しているというわけですか。中国のサイバー攻撃は、他国の要人の脅しや味方に引き入れるためにも行われているというのは本当なのですか」
黒田「自国に都合の悪い要人の情報を握る活動は、どこの国でもやっていることです。今回のアメリカの大統領選挙でも、ロシアはヒラリーに都合の悪い情報を流しています。自国に有利に働く要人を味方につける工作が、行われていることも常識です。話は飛びますが、中国は欧米の価値観が国内世論に浸透することを警戒しています。天安門事件では、外国の情報機関からNGOを通して学生達に多額の資金が流れていました。天安門事件は、中国にとって非常に苦い体験でした。その後中国当局は、このような流れを阻止するために防諜活動を行っている面もあります。今年に入り、中国国内の外国NGOの約1000団体に、活動を縮小させる法規制を行うとされています。防諜活動と合わせて、国内の引き締めを図っているわけです」

記者「他国に対する干渉をやってもかまわないのですか」
黒田「これは、中国だけがやってきたことではないのです。近年、日本の占領期からそれ以降のアメリカの外交文書が公開されてきました。その中にアメリカの日本に対する干渉が、はっきり見てとれます。文書を見ると、アメリカの対日本政策は、共産主義に対する防波堤にすることでした。アメリカの優先事項は、日本を同盟国として西側にとどまらせることだったのです。日本にソ連に対する強い敵意を持ち続けさせ、ソ連の友好国にならないように情報操作をしていました」

記者「アメリカが日本に行っていた情報操作とは、どんなものなのですか」
黒田「北方領土問題を、日本とソ連の間で解決することを防ぐことが一つでした。もう一つは、日本人の目がアメリカの沖縄占領に向かわないようにすることです。この二つを達成するために、日本の再軍備と安定的な親米保守政権の基盤づくりを行ったわけです」

記者「公文書を読んで、どういうことがわかったのですか」
黒田「この文書を読むと、日本の大手メディアの重役が、便宜供与の恩恵を受けています。便宜供与の中に、アメリカメディアへの視察旅行や派遣なども含まれていました。この供与を受ける中で、アメリカの各種シンクタンクと繋がりを財産として持つようになります。彼らは、親米的になって帰国するわけです。帰国するとシンクタンクからの情報に基づく、親米的報道をするようになります。アメリカ国務省は、『保全経済会疑獄』のリストを持っていました。そこに名前のあがっていた首相になる前の池田や佐藤の政治生命に関わる情報を、握っていました。でも、保守安定政権を求めるアメリカは、この情報を公にはしませんでした。これらの情報を流せば、池田も佐藤も政界から失脚したことでしょう。結果として長期的親米政権を作りあげたのです。でも、アメリカに無断で中国と国交を結んだ田中首相に対しては、ロッキードに関する不利な情報を流しています」

記者「アメリカの政策は、成功したわけですよね」
黒田「はい、アメリカ政府は、税金を払う国民に情報公開を行っています。国家安全保障にマイナスにならない限り、公開する国なのです。日本の戦後政治の暗部は、アメリカの情報公開によって明らかになることが多いのです。『保全経済会疑獄』は、1954年に起きました。そのとき救われた池田は1960年から4年間首相をし、佐藤は1964年から8年間の長期にわたって首相を務めています。アメリカの望む親米保守政権を実現したわけです」

記者「北方領土の帰属をめぐって、日本とソ連の2国間での解決を妨害したと述べられました。これを詳しく説明して下さい」
黒田「ご存じの通り、サンフランシスコ平和条約が1951年に調印されました。日本の独立が認められたわけです。このときソ連は、この条約に調印しませんでした。当時、60万人ともいわれるシベリア抑留者が、帰国できずにいたのです。鳩山首相は、北方領土はとりあえず二島返還とし、残りの二島の問題は後回しにする案を考えていました。ソ連側もこの案で合意し、平和条約の締結を考えていました。シベリア抑留者の帰国を急いだのです。でも、このときアメリカは、平和条約を締結されることを望んでいませんでした。メディアは、アメリカの意向を受けたように四島返還を強く報道しました。鳩山は、シベリヤ抑留者の帰還と漁業協定の合意という共同宣言で鉾を治めざるを得なくなったのです。それ以降、60年にわたってソ連・ロシアとの平和条約は結ばれていません」

記者「北方領土は、初期のころ千島列島とか南千島列島と記述されていたそうです。それが北方領土と記述されるようになりました。その経過はともかく、複雑な事情があったようですね。ところで、アメリカと中国が同じと話されていました。どういうことなのでしょうか」
黒田「中国も、メディアに優遇処置を与えていました。自国の政策を良い意味で報道してくれるメディアを優遇していたわけです。それに応えるメディアも、存在していました。文化大革命という不幸な事件がありました。当時、この事件を文化の大改革と報じたメディアもありました。でも、今では、権力闘争だったことが明らかです。過去の事実と現在の状況を、理解する能力を常に磨いておくことも必要ですよ」

記者「わからないことも多かったのですが、報道を鵜呑みにするのではなく、少し長いスパンで物事を見ることが大切だとわかりました」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。



町のど真ん中の直売所

2017-01-23 09:58:28 | 日記
町のど真ん中の直売所
 
 道の駅や農家の近くには、直売所がたくさんあります。でも、町の真ん中に大きな直売所があるところは少ないようです。ヨーロッパなどの町を歩くと、必ず広場があります。その広場を中心に家並みが広がっています。特にカトリック教会のある町では、広場が市場になったり、祭りの場になったり、臨時の遊園地になったりしています。人が集まり、商売が成立し、人々を高揚させる装置が広場なのです。ファンタジアランドの町にも、人々を高揚させる直売所を作りました。直売所の魅力と首都圏の農業について、蒲生さんにトット記者がインタビューしました。

記者「直売所が、有利な点はどんなところなのでしょうか」
蒲生「一般に100円のジャガイモを市場に出した場合、小売店25.6円、仲卸8.5円、卸の手数料4.9円、農協15.4円、そして農家の取り分は45.5円になります。直売所の場合、100円のジャガイモを90円で売ったとしても、手数料が15%ですので77円が手元に残ります。農協で共同販売するより、近くの農産物直売所で販売した方が、農家の手取りが増えるのです。新鮮な作物を消費者に安く提供して、その上儲けも多く出るという仕組みになっています。ただし、リスクを覚悟した上です」

記者「それは、儲かりすぎですね。どうして、みんなが直売所で販売しないのでしょうか。町のど真ん中の直売所なら、消費者にも便利ですよね。消費者も生産者もウインウインの関係ができますよ」
蒲生「利益を上げていくために必要なことは、決まった量を決まった時に届けるシステムの構築が不可欠です。農家も均質で規格の揃った作物やサービスを安定的に提供しなければなりません。一定の量を揃え、定時に直売場に届けるのは、農家の大きな努力と高い生産技術が必要になるのです。高齢化や兼業農家が増え、この要求に対応できない状況もあるのです」

記者「高度な農業生産技術者を一定程度確保しなければ、直売所の経営は難しいということですね」
蒲生「はい、生産者と消費者の間の信頼関係も大切になります。安さだけでは、長続きしません。ファンタジアランドの直売所の農作物は、農薬や化学肥料の使用に独自の基準を設け、その基準をクリアした作物だけを並べています。基準を設けたために、市民の方から『安心・安全』の支持を得ているわけです」

記者「確かに、安全安心は消費者の願いですね。最近評判の有機野菜などの販売も行われているのですか」
蒲生「試験的には行っていますが、難しい点が多いですね。有機野菜の品質を維持しながら安定供給することは、個々の農家の努力だけでは難しいのです。有機農業の継続には、安定した耕作地とその維持、そして確実な販路の確保が求められます。賢い消費者の存在も、不可欠です。さらに、有機農業に詳しい指導員の支援も大切になります。トマトやナスで無農薬栽培をしています。でも、環境に負荷をかけずに栽培するするためには、堆肥投入量も減らして行かなければなりません。直売所は、決められたものをきちんと出すことが求められます。有機野菜は、品質が均一な野菜工場の野菜とは異なります。この点でもう少し時間がかかると思います」

記者「直売所は、人口密集地でも成立可能な販売方法だと何となく分かりました。ところで、農家の経営で大切なことは、どんな点ですか」
蒲生「一番大切なことは、収益率です。手間と経費をかけずに利益を上げることが理想です。日本の農家は良い農作物を作りだすことに精励しすぎ、価格にあった農作物の出荷という点で遅れを取っていました。個々の農家が、農作物の品質、肥料や農薬の費用と労働時間などを考慮した生産方式をすすめていくべきなのです。ファンタジアランドでも労働力の投入と農作物の品質、そして利益のバランスを取ることにに工夫を凝らしているところです。小規模でも完成度の高い農業を目指し、投入した労働力や資金に見合った収益を確保できる農産物の生産と販売を行っています」

記者「利益を上げるには、規模を拡大していかなければならないと思うのですが。違うのですか」
蒲生「市場規模を追えば、規模の経済性の競争に巻き込まれて、市場維持のために膨大な費用や努力が必要になります。一定の限られた消費者に対して、適正なサイズとスピードで栽培や販売を行うことのほうが大切です。過剰な需要に振り回されず、適性に儲けるのです。農業は、頭脳と体力を消耗する仕事です。休まず働けば、疲労が蓄積し集中力が落ちます。疲労の中で作物を作れば、人も作物もリスクを抱えることになります。『最小努力で最大の利益』が、現在のファンタジアランドの戦略になりますね」

記者「今年は北海道に台風が上陸し、ジャガイモやタマネギの高騰を招いています。収穫を安定させるにはどうすれば良いのですか」
蒲生「現代では、野菜は気温が低ければ出荷は減少し、好天が続けば予想よりできすぎて豊作貧乏になってしまいます。売れ残る野菜を生産するために農薬や肥料を投入することは無駄になります。できすぎた野菜は畑で潰してしまわなければ、市場の購買力を超えて価格が暴落してしまいます。生産と販売チャンネルの適正化は、難しい問題です。大規模農場では、これからも続く課題といえます。中小農家では、この点小回りが利いてリスクは軽減されます」

記者「ファンタジアランドの直売所とは違いますが、首都圏近郊の農業に勢いがありますね。どうしてなのですか」
蒲生「首都圏は、農業産物の提供する地域としては最も潜在能力のある消費地です。わずか120k㎡の土地に3300万人が住み、その地域の生産力はイギリス一国に匹敵します。首都圏の飲食市場は、世界最高の市場でもあります。ミシェランガイドでは、世界のどの首都よりも多くの三つ星レストランがあるのが東京です。プロの腕を磨く戦場が東京です。プロが料理する食材の価格は、基準が違います。高級パティシエがモンブランを作る場合、質の高い『栗』を求めて歩きます。金に糸目は付けないで買い付けを行うのです。ある店では秋限定のモンブランを、1000円以上を越す値段で販売しました。もちろん、則売り切れです。首都圏の農業は、品質の高いものを作れば売れる市場が控えている強みを十二分に生かしています」

記者「道の駅における直売も、評判が良いようです。町中の直売所と道の駅の違いを教えてください」
蒲生「全国の道の駅をマーケティング調査の結果、観光客向けの土産市場ではやがて行き詰るという報告があります。遠くの観光客より、地元市民を対象にした公設市場的なものにしていくことが現実的です。遠くの方の要望に応えながら作物を並べるより、地元の要望を聞きながら品物を並べたほうが、期待に応えられます。作物も容易に提供できます。近隣の人々を大切にし、近隣の人々に助けられる市場が、町の直売所といえます」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。



インテリジェンス その2 サイバー攻撃に備える

2017-01-22 19:03:34 | 日記
インテリジェンス その2 サイバー攻撃に備える

 2016年6月に日本有数の旅行会社であるJTBから、679万人分の個人情報の流出がありました。欧米では、発電所や製鉄所を狙うサイバー攻撃が増加しています。これらの攻撃によりウイルスが制御システムに侵入すると、大きな事故が起きかねません。全世界が、サイバー攻撃に対する備えを急務として対策に取り組んでいます。今回は、サイバー攻撃に詳しい藤堂さんに、トット記者が話を聞きました。

記者「IoT(インターネットオブシング)が注目を浴びるようになりました。その中でも、セキュリティの問題があります。実情は、どうなっているのですか」
藤堂「IoTに対する攻撃の発信源は、中国が最も多く34%、ついでアメリカが28%、ロシアが9%と続きます。ドイツの製鉄所では、攻撃によるハッキングで操業停止しいる事例も出ています。海外では、深刻な被害が出ているのです」

記者「エンジンの稼働状況をネットで把握し、消耗具合などデータをとり、IoTで生産と販売を円滑に行うことができます。これを行えば、タイヤの消耗と消耗部品の準備予想ができるようになります。在庫を減らすことが可能になるということです。IoTのすばらしさではないでしょうか」
藤堂「コマツや日立精機は、提供した製品の世界中の稼働状況の把握などはとっくにやっています。それに基づいた生産も行っています。彼らはそれをIoTとは言っていないだけです。アメリカやヨーロッパが、常に日本上り優れていると思い込むのは、間違っています。むしろ、日本のほうがネットのセキュリティに配慮した生産方式を、確立しているといっても良いのです」

記者「日本にも、そんな企業があるのですか」
藤堂「デンソーとトヨタの設計開発現場は、ネットではなく専用線でつながっています。高い精度や安全性を要求される日本の現場は、今のネットでは安全性も通信速度も不十分なのです。工場と販売の繋がりがすべてがインターネットでなければならないということはありません。現在のレベルのネット環境では、ネットの使用は安全性を確保できない無法地帯につなぐことと同じなのです」

記者「インターネットと機械を結ぶことには、リスクもあるということですか」
藤堂「はい、ドイツの製鉄所など例から、攻撃されればある程度の確率で被害を受けることがわかっています。日本の工場内ネットワークは進んでおり、大事な場所のセキュリティは確保しています。データを工場内で処理し、インターネットで外部に出して良いもの、出してはいけないものの情報を振り分ける知的作業を行っているのです」

記者「なぜ、工場内でデータの選別をするのですか」
藤堂「たとえば、フォルクスワーゲンは、中国でほとんどの部品を現地調達できたと言います。でも、エンジンの内部に使う高級ボルトとナットは、この企業もドイツから直接仕入れています。ボルトの数は、高級車なら4000本程度になります。その中には、特殊設計による高級ボルトが必要な部位は残るのです。ボルトも標準化できるところは標準化し、その上で進化を続けています。その中にあって、オープン化した標準ボルトとオープン化しないクローズ化の特殊ボルトのせめぎ合いがあるのです。オープン化した標準ボルトなら、リスクのあるネットで情報をやり取りしても、それほど問題にはなりません。でも、クローズ化した特殊ボルトの機密を、ネットから取られることになれば、損害は大きくなります」

記者「IoTの導入により、便利に簡単になると未来の工業を楽観的に見ていました。でも、そう簡単ではなかったのですね」
藤堂「工場内の機械がネットに繋がっている場合、攻撃にさらされれば操業停止や情報漏洩の危険があるとこと前に述べた通りです。サイバー攻撃からシステムを守るために、暗号の強化などでの対応を急いでいるわけです。工作機械の各企業では、サイバー攻撃の対策でマクロソフトと協業を決めています。自動車会社では、クラウドとのデータをやり取りする際のセキュリティを確保するシステムの構築を急いでいますね」

記者「最近、パソコン内のデータを勝手に使えないようにして、元に戻す見返りに金銭を要求する手口も頻発しています。どう対処すればよいのでしょうか」
藤堂「現在にこの種の被害にあっている個人のパソコンは、26300台、法人のパソコンが7900台です。自力でデータを復元できるように、重要なデータはバックアップを取っておくことです。この種の嫌がらせは、一匹狼型の嫌がらせが多いようです」

記者「どうしてこのような、犯罪が成立するようになったのでしょうか」
藤堂「デジタル技術を使うコストが、驚異的に低下しているのです。高速ネット回線やスマホの普及で、ITインフラが整い、一匹狼でもこの種の犯罪を行いやすくなったともいえます。多くの人々がデジタル機器を使いこなし、ITインフラのサービスを使えるようになったということです」

記者「この種の犯罪を防ぐ方法はあるのでしょうか」
藤堂「防ぐには、人材の養成になるでしょう。2020年から日本政府も小学校にプログラミング教育を導入する予定です。学校に導入されても、プログラミング教育を行える教員は限られてきます。英語教育と同じように、教員の柔軟な能力の問題が立ちはだかっています。導入しても、専門的に指導できる人材が少ないということです。現在実績を上げているのは、民間のプログラミング教室ですね」

記者「どのような活動をしているのですか」
藤堂「小学校から高校生に1年かけて、プログラミングを教えます。教えるのは、大学生  や大学院生達です。スマホアプリやゲーム開発に、5コースに分かれてプログラミングを身につけるわけです。現在150種以上のアプリを一般公開しています。そのアプリに対するダウンロードは、30万回に及びます。このような基礎的人材を育てることが、サイバー攻撃対策の一つになります」
記者「サイバー攻撃の執拗さが少しわかったように思います。一番の収穫は、暗号は破られる運命にあるという冷徹な事実でした」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。



アムール川流域の農林業開発に三陸地方の漁協が参加

2017-01-21 17:19:28 | 日記
アムール川流域の農林業開発に三陸地方の漁協が参加

 日本とロシアの首脳会談を踏まえ、極東開発などの80に及ぶ合意文書が交わされました。ガス田開発などの項目には、大きな注目が集まりました。それと並行して、アムール川流域の森林保護に関する合意文書が注目を浴びています。この中には、この流域の農業開発も含まれているのです。しかも、その事業に参加する民間企業が、三陸地方の漁協なのです。この事実の裏に隠された事情を極東や三陸地方に詳しい菅江さんに、トット記者が話しを聞きました。

記者「いや、驚きました。どうしてアムール側と三陸地方が結びつくのでしょう。その辺から教えて頂きますか」
菅江「『風が吹けば桶屋が儲かる』式のお話になります。三陸沿岸は、世界でも有数の漁場であることをご存じでしょう。漁場の条件は、プランクトンが豊富にあることです。三陸の海は、北上川など多くの川から、窒素やリンを海に運んでいるのです。でも、これだけでは、豊かなな漁場にはなりません」

記者「私の知識では、プランクトンの有無しか分からないのですが。たとえば、瀬戸内海は貧栄養化が進んでいることは、よく知られています。瀬戸内海では約20年前から養殖ノリの色落ち現象が目立ってきました。海苔の生産も佐賀県に移っています。その原因は、瀬戸内海沿岸部の工場の排水浄化能力が高まり、窒素やリンが海に流れ込まなくなったことです。窒素やリンがなければ、プランクトンが育たないことだけは分かります」
菅江「はい、その通りです。でも、もう一つ前に抑えておくことがあります。プランクトンの生育には鉄分が欠かせないのです。植物プランクトンは光合成をする際に、鉄がないと葉緑素をつくれません。河川の源は、森林です。そこから流れ出す鉄分が海の生物を豊かにするのです」

記者「なるほど、それで森は海にとって、大切だといわれるようになったのですか」
菅江「そうです。もっとも、森から鉄がそのまま流れるわけではなく、フルボ酸鉄という形で流れてきます。この物質は河川を通して海へ運ばれ、海の植物プランクトンに取り込まれます。フルボ酸鉄が多ければ多いほどプランクトンも増えます。森林が豊かに繁り、その森を通る川の水が流れ込んでいる海では磯焼けも少なく、海藻も豊かに育つわけです」

記者「フルボ酸鉄を確保するためには、今まで通り日本の森林を大切にすれば良いと思うのですが」
菅江「日本の川だけでは、足りないのです。アムール川流域の森林でつくられたフルボ酸鉄が、この河川を通してオホーツク海へ運ばれます。フルボ酸鉄がオホーツク海から、千島海流に乗り三陸沖に達しているのです。電力にたとえると、ベースロード電源は、アムール川のフルボ酸鉄なのです。日本の漁師の生活を守るためには、アムール川流域の森林環境を保全することが新しい課題になったわけです」

記者「宮城産のカキや貝類が美味しかったのは、アムール川からのフルボ酸鉄が関与していたのですか。でも、今まで通りなら、別に開発をしなくとも恩恵は受けられると思いますが」
菅江「アムール川流域の農林開発には、もう一つの狙いがあります。ロシア極東を、農産物の生産基地として育成することなのです」

記者「ロシア極東では、寒冷気候のために農作物の収穫は難しいのではないですか」
菅江「一般的には、そう考えられています。でも地球の温暖化は、想像以上の速さで進んでいます。北海道では、米が取れないという時代から、北海道の米は美味いという時代になっています。土地が広いというだけで、価値がある時代なのです。40年前まで不毛の地とされていたブラジルのサバンナ地帯の『セラード』は、今では大穀倉地帯になっています。初期には日本が農業援助をした地域です」

記者「確か、アメリカが大豆輸出を禁止し、日本がとても困った時がありました。そこで輸入のする地域を、分散化したわけですよね。食料安全保障の一環として『セラード』開発を行ったと聞いています」
菅江「その通りです。食料安全保障は、非常に大切です。ブラジルで行ったことをロシアの極東で行っても不思議ではありません。この地域の人口は、減少しています。農業開発が進めば、人口は増加します。ロシアはセラードと同じような豊かな土地と農産物を手にします。日本は、食料安全保障の切符を手にするというウインウインの関係ができます」

記者「食糧増産も良いのですが、どうしてそこまでして、三陸地方が支援する必要があるのでしょうか。三陸地方が関わる案件ではないと思うのですが」
菅江「話は飛びますが、農業の輸出国として有名なオランダがあります。オランダは、肥料を多量に使います。ここで使われた肥料の窒素やリンが農地から運河を通じて、ドーバー海峡に流れていくのです。ヨーロッパのドーバー海峡では、よく太ったアジが大量に獲れるのです。この太ったアジは、化学肥料の使用量が多いオランダに面していることと関係があるのです。蛇足ですが、ドーバーの潮流と『関アジ』の国東半島の潮流が似ています。美味しいアジがヨーロッパでも食べれるかもしれませんよ」

記者「アジの話はわかりました。それがアムール川とどう関連するのですか」
菅江「アムール流域に農作地帯ができれば、肥料を多く使うようになります。その肥料から生じる窒素やリンは、アムール川、そして間宮海峡を通ってオホーツク海に流れていくのです。もちろんそこから、三陸海岸に流れてきます」

記者「なるほど、アムール川のフルボ酸鉄だけでなく、窒素やリンの富栄養化した養分がオホーツク海や三陸海岸に流れてくるというわけですか」
菅江「はい、海は豊かになります。食料安全保障となれば、政府も力を入れるわけです。今の国際情勢は、『一寸先は闇』という状態です。できるだけ、保険をかけておくことが必要になっています」
記者「国際情勢の機微が、少し分かったようです。次もよろしくお願いします」


インテリジェンス その1 無差別監視と通信傍受の世界

2017-01-20 16:17:11 | 日記
インテリジェンス その1 無差別監視と通信傍受の世界

 9.11のテロが起きた後、全世界の人々に対する無差別監視が始まりました。情報機関によるネット通信の傍受は、ルールを無視して行われています。世界中の人々から通話記録やメールが、無断で補足されているのです。スノーデンの暴露により通信傍受の実態が、明らかにされました。人々にとって、違法な通信傍受についての議論ができる環境になったともいえます。インテリジェンスに詳しい黒田さんにトット記者が、最近の通信傍受の話を聞きました。

記者「NASAは、地球規模での通信傍受を行っています。グーグルやアップルなどのシリコンバレーの有力企業が、NASAと関係しているといわれています。実情は、どうなのですか」
黒田「アメリカは、自国の被害には過剰に反応します。9.11テロ以降、その反応が異常になっているといえます。企業が暗号化のソフトを開発するとき、NASAは企業と協力して、ハードとソフトにセキュリティホールを埋め込みました。IT企業がソフトを開発するとき、NASAは暗号にトラップドアを仕込んだわけです。トラップドアからは、暗号が容易に引きだせるのです。セキュリティホールを埋め込む際に、企業が自発的協力する場合と法的命令で協力する場合があります」

記者「9.11テロでは、通信傍受には成功していたと聞いています。でも、情報量が多く、適切に分析できなかったことが問題だったとされています。その点、英国政府通信本部(以下、通信本部)は優秀だといわれています。どうしてなのでしょうか」
黒田「通信本部は、24時間で390億以上の情報を収集し、独自の情報を生み出すことができます。アメリカもその優秀さに一目置いて、2009年から2012にかけて通信本部に1億ポンド支払っています」

記者「イギリスにできて、アメリカにできないのはどうしてですか」
黒田「実はこの通信本部でも、困ってきているのです。現在の通信傍受の課題は、ネットへの侵入だけではありません。大量のデータを読み込み、それをどう分析するかになっています。暗号化されたデータを、1時間に200万件を解読し、分析することはイギリスでも困難になりつつあるのです。通信本部の直面している課題は、スマートホン利用者の急増です。スマートホンの暗号が高度化し、解読に手間取ることに直面していることです。イギリスは自国の盗聴技術や優秀さをアメリカに示さなければならない立場にあります。情報を、買ってもらっているからです。現在、暗号解読の公開問題を出して、優秀な人材の発掘と採用をおこなっているところですよ」

記者「NASAが、通信本部の通信傍受に資金を提供していることはわかりました。この傍受は、どのようにして行われているのですか」
黒田「20世紀初頭、世界の海底ケーブルは36万kmに達し、その大部分がイギリスが所有していたのです。この海底ケーブルを使って、イギリスは情報通信において独占的優位を確立していました。イギリスには、海底ケーブルから盗聴する技術の蓄積があるのです。NASAは通信本部と協力して、海底の光ファイバーケーブルに盗聴器を仕掛けました。この通信本部が収集していたのは、グーグルやヤフーの国際センターを結ぶケーブルからです。光ファイバーケーブルは、大手通信会社が共同で運営管理しています。通信本部は、イギリスのファイバーケーブルの上陸地点に盗聴基地を設けました。そこでケーブルへの侵入と情報収集、そして分析を行っているわけです」

記者「NASAは、全世界のネットや携帯電話の盗聴を行っています。通信本部は、大手ネット通信企業と手を結びネットを監視しています。万全の対策の中で、なぜテロを防ぐことができないのでしょうか」
黒田「二つの理由があります。一つは、世界に流れる情報量が加速度的に増加していることです。全世界の情報に侵入することと、それを実際に読み解くことは別の次元の話になります。もう一つは、民間企業も政府の言いなりに、セキュリティホールを提供しなくなってきたことです。暗号化を高度化して、顧客の信用を得ることに重点を置いているのです」

記者「そういえば、FBIがテロ事件で、アップルにアイホンのロック解除を要請した報道がありました。アップルは、それを拒否したということですよね」
黒田「はい、結局FBIはアップルに頼らず、テロ事件のアイホンのロック解除に成功したと発表しました。このセキュリティを破ったのは、日本サン電子のイスラエル子会社です。イスラエルは徴兵制があるため、軍事技術に精通している起業家が多いのです。この国は兵役で軍とビジネス界を行き来することで、セキュリティ技術が磨かれてきたのです。アップルの鉄壁のセキュリティを破ったのは、旧端末から新端末にデータを移す技術を応用したと考えられています。メンツを潰された、アップルは、有名な暗号技術者を社外からスカウトしてセキュリティの強化を図っています」

記者「イスラエルが、素晴らしい技術を持っていることはよく分かりました。どうして、それほど素晴らしい技術を得ることができたのですか」
黒田「イスラエルは、ユダヤ教の国です。イスラム教の国々に囲まれています。パレスチナ問題もあり、常に戦争状態にあるのです。その中にあって、情報こそが、国を守る砦になるわけです。アラブ各国の情報を、常に収集分析しています。特に、欧米諸国が注目しているのは、アラビア語の情報収集とその分析能力です。欧米は、アラビア語に習熟した専門家が少ないのです。テロ国家のイスラム国は、もうすぐ崩壊します。その後のテロの拡散が、各国の心配の種です。東京オリンピックも、テロの標的になることが予想されます。イスラエルのノウハウが、必要になるかもしれませんね」

記者「暗号は、破られないためにあるわけですよね。なぜ、簡単に破れてしまうのですか」
黒田「現在主流の暗号は、コンピュータが素因数分解の問題を解くことに時間がかかることを利用しています。問題を解くとき、速く解ける方法がなければ安全だという考え方を、『計算量的安全性』といいます。安全であることを数学的には証明ができないが、速く解ける方法がないから安全だとしてきたわけです。暗号や暗号解読法は、計算能力の高いツールが利用されるようになれば、解読可能な範囲が広がります。計算量的安全性は、計算技術の進歩と共に、破られる運命にあります。常に、更新の必要があるのです」

記者「計算量的安全性は証明可能安全性と違い、速いコンピュータが誕生すると安全でなくなることが分かりました。それでも、通信傍受がここまで全世界で行われていることに驚きました。次もよろしくお願いします」


ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。