アパートバブルに終息の兆しが、起き始めています。利便性の高い駅前とそれ以外の地域では、空室率の差が大きくなっているのです。入居者の募集でJR栃木駅から徒歩30分の物件に、空き地や山々に囲まれたある地域があります。ここに今夏に完成した新築の物件の20部屋のうち、10%しか埋まっていないのです。地方では空室が埋まらず、一定期間の無料貸しをアピールする物件さえでています。アパート供給はまさにバブルの様相を呈しているのです。
アパートバブルを牽引したのは、地方銀行です。「土地持ち地主にアパート営業をかけろ」を合言葉に、全国の地方銀行が一斉に融資を行いました。相続税対策と低金利を背景に貸家の新設着工は、2年近く高い伸びが続けたわけです。2016年度は、全国に43万戸程度が供給されています。節税効果を強調し、将来の空き室のリスクを十分に説明しない地方銀行に対して、風当たりが強まっています。
大半が空室になっている部屋には、「中学生以下の子ども一人につき賃料5,000円オフ」とか、「賃借者は契約から三ケ月間賃料無料」などの値下げが行われています。日本の住宅総数は、世帯数より約16%多く、新築のアパートの供給がなくとも量としては十分に足りている状態だったのです。日本は「住宅過剰社会」という世界に類を見な住宅い状況にあるのです。空き家が、800万件もあるのですから。さらに今後、人口の5%を占める団塊の世代が75歳を迎える後期高齢者となります。避けては通れない人口減少・超高齢社会に突入します。2025年は大量相続時代を迎え、団塊世代の大量の持ち家は空き家になります。この団塊世代の大量の持ち家が、中古住宅市場に大量に供給されるようになります。すると、住宅過剰がさらに進むことになります。
そこで、有り余る過剰の空き室を価値あるものにする方法を地方銀行の立場から考えてみました。普通に考えると、人口減少が加速する地方で年間数千戸単位の新規供給を続けることは不合理なことでした。でも地方銀行は、収益を穴埋めするため一斉にアパート融資に動いたわけです。一部の大手地銀は咋年、顧客を建築業者に紹介する見返りに、手数料を受け取ったともいわれています。過当な手数料獲得に動けば、その分安く建てたい地主の方は不利益を被ることになります。これからの問題解決策は、融資した物件が価値を持つように支援すれば良いことです。交通の利便性が高く、生活がしやすく、街並みがきれいで、将来の発展が見込める物件は、値下がりをせずに優良物件として活用されています。優秀な人材である地方銀行員が、不良物件を優良物件に変えていく知恵を出すチャンスかもしれません。
そんな銀行員になったつもりで、知恵を出してみました。生活がしやすい地域は、人々が集まってきます。人々が集まる地域は、お金の流れが活発になり、豊かな場所になります。空き室が少なくなり満室になれば、地域は豊かになるという理屈です。まず、空き室のない地域を考えてみます。高齢者が一人でマンションの一室に暮らし、近くに子ども夫婦が暮らしている風景をよく見るようになりました。子育ての支援を親世帯に求めて、親と子がお互いに近くに居住する傾向が強まっているのです。同じ家への同居でないことに違和感を持つ方がいるかもしれません。二世帯住宅にして住めば、孫の子育て支援はより効率的できると考えがちです。でも、違うのです。若い人と年寄りとでは、まず食べる物が違うし、寝る時間、起きる時間も違ます。同居をすれば、嫁と姑などの問題も発生します。この問題は昔からあり、若い人と年寄りの関係をより円滑にするために閑居や隠居という住宅タイプが生まれるようになったのです。有り余るアパートの空き室を、二世帯住宅用にしていくことが工夫の一つです。少し離れた部屋に、老夫婦と若夫婦が住む仕組みを作ります。孫が生まれたときは、老夫婦が面倒見ることになります。若夫婦は、安心して共働きをすることができます。ゼロ歳児の保育費用は、自治体が行えば、一人につき500万円ほどかかります。もし、それを老夫婦が保育所に代わりに育てると、地方自治体は予算が節約できます。自治体が老夫婦に60万円の補助金を払っても、440万円の節約になります。その補助金で老夫婦のアパート代を無料にします。半分は自治体が補助し、半分は地主の持ち出しにする案です。地主には、若夫婦の分と老夫婦の半分の借家代が入ることになります。
今後、借家を考える場合、高齢者の一人世帯が課題になります。このようなときは、老人がグループで入居する場合、半額にするのです。高齢者が1人で生活すると認知症や健康状況が、賃貸契約のときに問題になります。孤独死などの問題が、貸す側からすると不安になります。グループで入居することになれば、高齢者の話し合いやコミュニケーションがしやすくなります。老人だけを割り引く、アパート経営をすることにするわけです。さらに、1年間グループ関係が続けば、家庭菜園の土地が提供されるなどのメリットを享受できるようにします。
共働きの場合、子どもが病気になったときの対処方法が難しいのです。インフルエンザになれば、保育園にいくことができなくなります。自分たちが仕事に行けなくなります。、病児保育室があれば、子どもが病気になっても安心して働きに行けます。ゆとりあるアパートの部屋を、病児保育室にするのです。もちろん、病気の子どもができたときには、看護師や医師と契約をして臨時に見てもらう仕組みを作っておきます。
この地域は、若い夫婦が安心して働ける地域になります。子ども夫婦が近くにいる老夫婦も安心して、生活できる地域になります。高齢者が安い賃貸料で生活できる地域にもなるわけです。一人暮らしの高齢者には、話し合う仲間もできる仕組みが作られていきます。子ども達は、地域の高齢者に見守られている地域になります。子ども達もそうですが、生活する環境は老若男女などがさまざまな人達と接することで全ての人々は健全な発達が約束されるのです。駅から徒歩30分の物件で、空き地や山々に囲まれた地域が、優良物件になる可能性はあるのです。保育所の心配や子どもの病気を心配する必要のない環境であれば、生活のしやすい地域になります。健康が確保されれば、空き地や山に囲まれた環境は、ある面で理想的な居住地になります。地方銀行がこの地域に、企業でも誘致すれば、優秀な働き手はすぐに手に入るのです。
従来の銀行業務が、AIに奪われるという事態はすぐそこまできています。優秀な銀行員が行う従来の住宅ローンに対する融資ならば、AIのほうが力を発揮するようです。でも、ベンチャー企業への融資は、AIには難しい領域です。担保となる資産のないベンチャー企業を査定する仕組みが明確でないために、AIが判断できないのです。融資関係の仕事において、急激に変化する競争分野の判断では、まだまだ人間が担い続けるという見方が有力です。アパート経営は、「作る」から「使う」方向に発想を変える時期になっています。「使う」ノウハウを新たに銀行員の方に工夫していただき、地主の方も、賃借人も、銀行も三方良しの繋がりになってほしいものです。もっとも、この繋がりに、自治体も関与し、地域の資産価値を上げて、税金を増やすことができれば、万々歳です。