中国人のホタテ好きは、歴史的なもののようです。北海道が蝦夷地と呼ばれていた時代から、ホタテやコンブを輸入していたのです。その見返りが、蝦夷錦でした。江戸の大商人が喉から手が出るほど欲しがった中国の豪華な衣服です。中国では、おかゆやスープに干し貝柱は欠かせません。でも、中国の海域は環境汚染でホタテの餌となる珪藻類が減少しているのです。さらに、養殖の効率を上げようと貝の養殖密度を上げたために、成長不良のホタテができています。ホタテの主要輸出国であるアメリカは、不漁になり世界的に供給が追いつかない状態が続いています。
ホタテ市場は、年々消費が増加しており、その値段も高騰していく傾向が続いています。ホタテを安定供給出来れば、有力な産業になることは確実です。日本の農産物の輸出は、1兆円に近づいています。その中で最も多い品目が、ホタテ貝なのです。和牛肉の247億円やリンゴ140億円をはるかに上回る477億円となっています。毎年、輸出は3%ずつ伸ばしています。北海道を訪れた中国人観光客は、大量に買っていく姿が定番で見られます。日本のホタテの値段は、あちらから見れば、まだまだお得感があるようです。
北海道の北に位置するサロマ湖には、「ホタテ御殿」が建ち並んでいます。ホタテ養殖をしている佐呂間漁協組合員の年収は、5千万円を超えプロ選手並の所得になっています。この漁協組合員の平均貯金額は、2018年に1億5千万円を超えたとも言われています。ホタテは、稚貝から成長するまで4年かかります。この貝は、主に植物プランクトン(珪藻類)を捕食して育ちます。その植物プランクトンは、太陽光を浴びながらリンや窒素などの栄養塩を吸収して育ちます。ホタテがエサにする植物プランクトンは、窒素やリンを吸収するためには鉄分が必要になります。この貝はは海水中のプランクトンを食べて成長するので、フルボ酸鉄の過不足がが成長を左右することになります。この海域には、アムール川からオホーツク海に運ばれるくるフルボ酸鉄が豊富にあるのです。
以前サロマ湖は、小さなカキやエビがいるだけの資源が乏しい湖でした。稚貝の放流や流氷対策、漁獲ルールの策定、漁協は毎月の会議で漁業者が意見を出し合いながら、組合員は持続可能な養殖場に育てていったのです。漁師は自分の腕を大切にするので、一匹狼が多いのです。でも、1人の力は限られています。サロマ湖は、雨や春の雪解けなどで水質の状況はいつも変わります。サロマ湖に設置したセンサーから水温や塩分濃度などのデータが、スマホに届きます。その水の様子を把握し、良く育つようイカダの場所や貝をつるす高さを調節していくのです。毎朝、スマホで湖の様子を点検する作業は欠かせません。
一定量の質の高いホタテを毎年生産すれば、確実に売れる市場が世界にあるのです。みんなでやっていこうという意識になれば、持続可能な養殖ビジネスが構築されます。湖を酷使することなく、養殖場を適正に維持していったわけです。漁獲が安定し、裕福になったのは平成になってからだということです。令和になっても、持続可能な漁獲を創意工夫しながら続けてほしいものです。