ファストとスローを融合する宅配の機微 アイデア広場 その1120
速く安く食べられる食事に、ファストフードがあります。現在の社会常識では、時間的な効率が重視されます。短時間で効果的に、消費者の希望する食事の提供が求められるわけです。ファストフードの提供は、素早くしなければなりません。そこには、人間の弱点を見据えた販売戦略もあります。料理のメニューを見て選択することは、意外と心理的な負荷が高いものになります。選択肢が多すぎると、選択することの心理的負荷が高くなるのです。選択をして美味しくなかった時の責任は、自分自身で取らなければなりません。選択から決定、そして満足という流れがスムーズになれば、心地良い食事の時間になります。もし逆の場合になったと時、その時間は後悔の時間になります。ファストフードは、メニューを絞って少なくして、決めやすいように配慮されています。さらに、短時間で済む仕組みになっています。満足も不満も、短時間で済むようになるわけです。一方、ファストフードの対極に、ゆったりと食事を楽しむスローフードがあります。スローフードの代表が、高級レストランになります。人気レストランは、価格、機能、五感のすべてを満たしてくれます。いい匂い、歯応えも良く、インス夕映えも良い、気の置けない友との会話も楽しいという場と時間を用意しています。そこでは、客層に合わせた懐かしさを刷り込まれている味や匂いを提供しています。その時代の風景や音楽を流しながら、食事を演出しています。まさに、過ごす時間に価値がある情景です。
このような食事におけるファストとスローの流れが、EC (電子商取引)業界に及ぶようになりつつあります。日本の宅配便の取扱数は、年問50億個に迫り、「宅配クライシス」が深刻化していることは周知のとおりです。たとえば、メルカリは2021年10~12月期には国内の月間利用者が2千万人を突破しました。取扱量が、5年前の3倍以上になっているのです。もっとも、アマゾンジャパンの取り扱い個数は年間約7億個で、最大の取扱量になります。メルカリの急成長は、この巨人に迫りつつあるわけです。でも、この急成長が、日本の宅配網に与える負荷が膨張していることも意味しているのです。生命線の配送が揺らげば、メルカリの成長にもブレーキがかかることになります。メルカリは、この配送の壁を解決する術を見出したようです。解決のヒントが、スローフードになります。その具体策が、「ゆっくり宅配」になります。メルカリを利用する方アンケートの結果が、「ゆっくり宅配」を具現化しているのです。利用者6千人へのアンケートにおいて、約9割の方が「今より 数日遅れても良い」と答えています。EC (電子商取引)は、当日配達や翌日配達を競ってきました。その既成概念を覆す方針に、注目が集まっています。
ヤフーが、2024年度までにほぼ全商品の翌日配送を目指すなど、ECの主流は「安く早く」になっています。」でも、ボトルネックは物流にあります。ある物流大手の幹部はこのままでは、運び切れなくなると苦境を語っています。国内の営業用トラックの積載率は、2020年度に4割を切りました。これは、4割の積み荷と6割の空間で輸送と行っていることを意味します。6割の無駄の理由は、早く届けるために荷台が埋っていなくても走らせるために起きています。配達日程に幅があれば、空きスペースを埋められます。配送時期を遅らせられれば、荷物が集中した日の分を翌日に移すなど業務を平準化できるのです。ゆっくり宅配ができれば、荷物で空きスペースを埋めることができます。必要なトラックの数の数も、ドライバーの負担も、大幅に減らすことができるのです。ゆっくり宅配ができれば、荷物で空きスペースを埋めることができて、温暖化ガスによる環境負荷も引き下げられるわけです。
海外ECの導入事例では、到着が遅い代わりに送料が安くなる仕組みがあります。日本でも、ドライバー不足が表面化した2018年秋、アマゾンが有料会員限定のキャンパーンを実施したことがあります。当日や翌日に届く「お急ぎ便」を選ばず通常配送にした消費者に30ポイントを還元した事例がそれにあたります。メルカリは、現状小型荷物でヤマト運輸とは1個175円で、日本郵便とは1個200円で利用者が発送できる契約を結んでいます。ゆっくり宅配にした場合、配達に余裕ができて、価格を安くできる可能性が出てきます。早く提供することが、宅配の市場原理でした。でも、新しい流れは、株主、顧客、従業員、「地域社会」と「自然」を大切にすることになりつつあります。宅配だけでなく、多くの要素を満足させる全体最適の視野で考えなければならない時代になっているわけです。
部分最適を全体最適にするという流れは、業界の枠を超えて進んでいます。アサヒ飲料と日清食品は、共同配送に踏み切ることになりました。アサヒは茨城県の工場で生産した飲料を佐賀県の配送センターに輸送します。このとき、積載重量の限界を超えないように調整しているので、トラックの荷台には隙間があるのです。この荷台の隙間に、軽い日清の即席麺を積み込むわけです。トラックの空間を、有効利用することになります。同じようなことは、サンスターとキューピーでも行っています。サンスターの容積は軽い歯ブラシが中心のために、重量ベースでは限界値の6割を使い、荷台の容積の8割を使ってきました。この場合、営業用トラックの積載率は4割程度で、積載能力も十分に生かされていないわけです。ここに、キューピーの調味料を一緒に積み込むことで、重量ベースで9割を活用できるようになったのです。積載能力を確保するためにも共同配送に踏み切る企業が増えています。経営効率とカーボンフリーの一石二鳥を実現しているのです。
余談になりますが、人は便利さ、速さだけではなく、密度の濃い時間の過ごし方も求めるようです。モノも情報も過剰で、再現できない時間の価値が高まっているのです。たとえば掃除についての事例があります。吸引力の強いダイソンの掃除機より、高級箒(南部箒)が東京などの大都市部で人気を集めています。デザイン性の高い高級箒で行う掃除の時間が、それ自体価値があるというのです。所有欲のモノ消費の時代が過ぎて、体験欲のコト消費を迎えています。高度成長期には、強力な吸引力を持つ掃除機が、家電製品として購入されてきました。でも、ゆとり派の消費者は、岩手県九戸村の高倉工芸の南部箒を選びます。長柄が3万~10万円になる南部箒を買うのだそうです。南部箒は無農薬の天然素材を使い、絨毯でも掃除機以上にほこりがとれるといいます。使う方は、夜遅く帰宅しても掃除機はかけられないが、箒は静かにできるという利点を述べています。食の世界にファストフードとスローフードがあるように、掃除にもファストとともにスローの世界が出現しているのかもしれません。
速く安く食べられる食事に、ファストフードがあります。現在の社会常識では、時間的な効率が重視されます。短時間で効果的に、消費者の希望する食事の提供が求められるわけです。ファストフードの提供は、素早くしなければなりません。そこには、人間の弱点を見据えた販売戦略もあります。料理のメニューを見て選択することは、意外と心理的な負荷が高いものになります。選択肢が多すぎると、選択することの心理的負荷が高くなるのです。選択をして美味しくなかった時の責任は、自分自身で取らなければなりません。選択から決定、そして満足という流れがスムーズになれば、心地良い食事の時間になります。もし逆の場合になったと時、その時間は後悔の時間になります。ファストフードは、メニューを絞って少なくして、決めやすいように配慮されています。さらに、短時間で済む仕組みになっています。満足も不満も、短時間で済むようになるわけです。一方、ファストフードの対極に、ゆったりと食事を楽しむスローフードがあります。スローフードの代表が、高級レストランになります。人気レストランは、価格、機能、五感のすべてを満たしてくれます。いい匂い、歯応えも良く、インス夕映えも良い、気の置けない友との会話も楽しいという場と時間を用意しています。そこでは、客層に合わせた懐かしさを刷り込まれている味や匂いを提供しています。その時代の風景や音楽を流しながら、食事を演出しています。まさに、過ごす時間に価値がある情景です。
このような食事におけるファストとスローの流れが、EC (電子商取引)業界に及ぶようになりつつあります。日本の宅配便の取扱数は、年問50億個に迫り、「宅配クライシス」が深刻化していることは周知のとおりです。たとえば、メルカリは2021年10~12月期には国内の月間利用者が2千万人を突破しました。取扱量が、5年前の3倍以上になっているのです。もっとも、アマゾンジャパンの取り扱い個数は年間約7億個で、最大の取扱量になります。メルカリの急成長は、この巨人に迫りつつあるわけです。でも、この急成長が、日本の宅配網に与える負荷が膨張していることも意味しているのです。生命線の配送が揺らげば、メルカリの成長にもブレーキがかかることになります。メルカリは、この配送の壁を解決する術を見出したようです。解決のヒントが、スローフードになります。その具体策が、「ゆっくり宅配」になります。メルカリを利用する方アンケートの結果が、「ゆっくり宅配」を具現化しているのです。利用者6千人へのアンケートにおいて、約9割の方が「今より 数日遅れても良い」と答えています。EC (電子商取引)は、当日配達や翌日配達を競ってきました。その既成概念を覆す方針に、注目が集まっています。
ヤフーが、2024年度までにほぼ全商品の翌日配送を目指すなど、ECの主流は「安く早く」になっています。」でも、ボトルネックは物流にあります。ある物流大手の幹部はこのままでは、運び切れなくなると苦境を語っています。国内の営業用トラックの積載率は、2020年度に4割を切りました。これは、4割の積み荷と6割の空間で輸送と行っていることを意味します。6割の無駄の理由は、早く届けるために荷台が埋っていなくても走らせるために起きています。配達日程に幅があれば、空きスペースを埋められます。配送時期を遅らせられれば、荷物が集中した日の分を翌日に移すなど業務を平準化できるのです。ゆっくり宅配ができれば、荷物で空きスペースを埋めることができます。必要なトラックの数の数も、ドライバーの負担も、大幅に減らすことができるのです。ゆっくり宅配ができれば、荷物で空きスペースを埋めることができて、温暖化ガスによる環境負荷も引き下げられるわけです。
海外ECの導入事例では、到着が遅い代わりに送料が安くなる仕組みがあります。日本でも、ドライバー不足が表面化した2018年秋、アマゾンが有料会員限定のキャンパーンを実施したことがあります。当日や翌日に届く「お急ぎ便」を選ばず通常配送にした消費者に30ポイントを還元した事例がそれにあたります。メルカリは、現状小型荷物でヤマト運輸とは1個175円で、日本郵便とは1個200円で利用者が発送できる契約を結んでいます。ゆっくり宅配にした場合、配達に余裕ができて、価格を安くできる可能性が出てきます。早く提供することが、宅配の市場原理でした。でも、新しい流れは、株主、顧客、従業員、「地域社会」と「自然」を大切にすることになりつつあります。宅配だけでなく、多くの要素を満足させる全体最適の視野で考えなければならない時代になっているわけです。
部分最適を全体最適にするという流れは、業界の枠を超えて進んでいます。アサヒ飲料と日清食品は、共同配送に踏み切ることになりました。アサヒは茨城県の工場で生産した飲料を佐賀県の配送センターに輸送します。このとき、積載重量の限界を超えないように調整しているので、トラックの荷台には隙間があるのです。この荷台の隙間に、軽い日清の即席麺を積み込むわけです。トラックの空間を、有効利用することになります。同じようなことは、サンスターとキューピーでも行っています。サンスターの容積は軽い歯ブラシが中心のために、重量ベースでは限界値の6割を使い、荷台の容積の8割を使ってきました。この場合、営業用トラックの積載率は4割程度で、積載能力も十分に生かされていないわけです。ここに、キューピーの調味料を一緒に積み込むことで、重量ベースで9割を活用できるようになったのです。積載能力を確保するためにも共同配送に踏み切る企業が増えています。経営効率とカーボンフリーの一石二鳥を実現しているのです。
余談になりますが、人は便利さ、速さだけではなく、密度の濃い時間の過ごし方も求めるようです。モノも情報も過剰で、再現できない時間の価値が高まっているのです。たとえば掃除についての事例があります。吸引力の強いダイソンの掃除機より、高級箒(南部箒)が東京などの大都市部で人気を集めています。デザイン性の高い高級箒で行う掃除の時間が、それ自体価値があるというのです。所有欲のモノ消費の時代が過ぎて、体験欲のコト消費を迎えています。高度成長期には、強力な吸引力を持つ掃除機が、家電製品として購入されてきました。でも、ゆとり派の消費者は、岩手県九戸村の高倉工芸の南部箒を選びます。長柄が3万~10万円になる南部箒を買うのだそうです。南部箒は無農薬の天然素材を使い、絨毯でも掃除機以上にほこりがとれるといいます。使う方は、夜遅く帰宅しても掃除機はかけられないが、箒は静かにできるという利点を述べています。食の世界にファストフードとスローフードがあるように、掃除にもファストとともにスローの世界が出現しているのかもしれません。