フィレンツェが隆盛を誇っていた時代、優れた芸術家も次々に現れました。レオナルドダビンチやミケランジェロ、そしてラファエロの作品は、ウフィツィ美術館で見ることができます。レオナルドダビンチやミケランジェロの影響うけながら、ラファエロの能力は開花していったわけです。彼の偉大さは、先人達を学んで、独自の絵画に昇華させたことにあるようです。ウフィツィ美術館を見て回ると、美術の教科書に載っている絵画を見ることができます。この美術館の入り口からヴェッキオ橋までの長い距離に、これらの素晴らしい絵画が展示されているのです。まさに、世界遺産といえるものでしょう。名画は見るだけでも、感動やすばらしさを届けてくれます。でも、もっと深く理解したいという欲望もあります。
そこで、絵画のすばらしさとその理解を同時にかなえることを考えてみました。絵画作品の評価指標には、創造性、主題、質、の3つがあるとされます。ルネッサンスの3大巨人の作品は、この3つの要素がバランス良く備わっています。この3つを理解するためには、キリスト教文化やギリシアやローマの神話と歴史などの知識がないと鑑賞できないとされていました。いわゆる教養の有無です。3大巨人の絵画は、キリスト教やギリシャを題材にして描かれています。鑑賞する側に、知識の有無を問いながら作品を創作していったわけです。
絵画も時代により移り変わります。19世紀半ばになると、ヨーロッパで印象派が出てきてきます。彼らは、創造性をもっとも重視し、あまり質を重視しなくなります。印象派の絵を見ると、刷毛跡や筆のタッチがそのまま残っている作品が多いのです。以前の作品には見られない未熟さでした。彼らは、ユニークさを追求することばかり一生懸命になります。鑑賞する側がどう楽しむか、どうすれば心地よくなるかは完全に置き去りにされる事態になるわけです。
ここからが、ビジネスのお話です。世界の美術市場は約6.7兆円です。日本は、3000億円程度です。これからの可能性を秘めているというべきか、市場としては価値がないというべきか、迷うところです。市場の可能性を高める方法を考えてみました。絵画の面白いところは、知識があってもなくても楽しめるということです。印象派以前の絵画は、見る側に一定の教養がないと鑑賞することができませんでした。でも、印象派のころから特に知識がなくても、絵を楽しむことができるようになったわけです。印象派は、多くの市民の人気を獲得しました。要は、絵画をたくさん見て、自分の好みを見いだすことのようです。絵画を探すアプリを準備します。スマホにある絵画アプリで、世界の名画をいつでもどこでも鑑賞できる環境を用意します。良いと感じた絵画を、ピックアップできるようにします。ピックアップした画面を、自分の好みに応じて順序よく展示します。個人の美術館のできあがりです。8Kや16Kの高精細化された画像で、本物より素晴らしい美術館がスマホの中に作られかもしれません。スマホと50インチ程度の高画質のテレビに接続すれば、美術館よりステキな美の殿堂になるかもしれません。絵に関して知りたいことがあれば、その場でAIスピーカーに聞く仕組みも作れるでしょう。
でも、これではビジネスの市場としては狭いようです。もっと大きくしたいという要望もあります。日本の3000億円の市場を、1兆円ぐらいにしたいというものです。その場合、狙いは現代アートになります。日本人は、現代アートには非常に関心が薄く市場がほとんど存在しない状態です。スマホにある絵画アプリで、現代アートの名画をいつでもどこでも鑑賞できる環境を用意します。その現代アートの創造性、主題、質の3つの簡単な解説を加えます。現代アートの理解者を増やすわけです。理解者の中から、絵画に関心を示す人が現れれば、絵画購入者の裾野は広がるでしょう。余談ですが、現代のアプリは進化を続けています。絵画アプリの使用者は、徹底した追跡を受けることになります。検索結果のクリック率や各ページの滞在時間なども全部追跡されることになります。検索結果が出た後も、使用者の行動を全部追跡し、検索アルゴリズムに再活用されるようになります。これらの情報をすさまじい速度で処理していくわけです。現代アートに関心を持つ人を把握し、その購入者として育てていくことも可能になります。