ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

脱炭素社会とデジタル教育を成功させる町 アイデア広場 その778

2020-12-31 18:24:41 | 日記


 政府は2021年度予算案で、デジタル教科書の購入補助費として22億円を盛り込んでいます。本格導入の2024年度をめどに、無償で配ることを想定しているのです。政府が推進する生徒一人に1台のタブレット端末を配布する構想が、着々と進行しているようです。デジタル教科書で、情報化社会への対応を進める意図は、政府全体に見受けられます。政府はデジタル教科書の普及に向け、授業で使える時間の制限をなくす方針を固めました。これに呼応するように、民間の教科書会社も準備を整えています。大日本印刷は、教科書会社5社と連携しデジタル教科書の配信サービスを2021年から始めます。教科書会社が、デジタル教科書を提供し、大日本印刷が配信するわけです。
 政府は、社会の情報化への対応にはデジタル教科書の活用が欠かせないとみています。平井卓也デジタル改革相と河野太郎規制改革相が、萩生田文科省大臣に規制を見直すよう求めています。平井氏は「すべてデジタル教科書に置き換えるべきだ」とも述べています。紙の教科書も併用する案が、文科省の審議会では採択されているのです。アメリカでは2015年調査で、教科書を含むデジタル教材を初等中等教育機関の8割が導入しています。韓国では2018年で、小学校で8割、中学校の7割近くがデジタル教科書を使っています。紙の教科書とデジタル教科書の長所を取り入れた授業を、実証と検証を重ねながら確認したいのでしょう。実証と検証の事実を元に、より良い方向を選ぼうと文科省は考えているわけです。一方、デジタル庁は世界の趨勢を先取りして、デジタル化を一気に進めようとしているようです。教育のデジタル化を進めている先進国では、紙の教科書ではできない授業を行っているようです。クラウドシステムの構築と運用、音声やアニメーションを活用したデジタル教科書の配信などを徐々に実現しています。
 文科省は、先導的試行やモデル校を通じて、日本的なデジタル教科書の利用を行うことを目指したいようです。良いモデル校のヒントは、小さな学校にある場合があります。1つのスポーツが小さな町の小学校、中学校、高校が継続して素晴らしい成果を上げることがあります。全日本バドミントン大会では、桃田選手が優勝しました。彼は福島県の原発事故で被害を受けた富岡町の高校で力をつけました。この全日本選手権では、桃田選手の他にも富岡高校出身の選手が優勝や準優勝をしているのです。山村の小学校や中学校には、稀に都会などより優秀なスポーツ校が出てきます。指導力のある先生に恵まれれば、子ども達はみるみる上達することは、経験則として分かります。これをスポーツの代わりに学力では、どうでしょうか。国際バカロレア機構が認めた学校を卒業した生徒は、世界の有名大学に入学ができます。すでに日本にもいくつかの国際バカロレア認定校があるわけです。神奈川県相模原市の藤野地区には、シュタイナー学園があります。シュタイナー学園に通わせる親は、医師や建築家、芸術家など手に職を持つ人が多いのです。シュタイナー学園では、国際バカロレア認定校になることも多いのです。高い能力を持つ人たちは、子どもが自分と同じ境遇で学問や研究をしてもらいたいようです。そのような教育環境を地方で用意できれば、高度な人材を呼び寄せることは可能になります。このシュタイナー学園とデジタル教育が融合すれば、面白いことになります。
 政府のデジタル化と脱炭素政策は、急ごしらえの様子が見えます。欧米との政策比較が圧力になり、押し出されて作られた政策のようです。このような状況の場合、脱炭素社会においても、教育のデジタル化においても、準備のできている市町村は有利になります。有名な長野県の下篠村の事例があります。プールの総事業費は1億4千万円でしたが、下篠村はわずか42万円の負担でプールを作ったのです。国からの2つの補助金で1億円をもらいます。残りは交付金で消化していったのです。結果として、村が出したお金が42万円というお話です。国の縛りのない交付金や補助金は、積匝的に活用すべきです。縛りがあっても、その縛りが村のニーズにあえば活用する姿勢が必要です。この長野県の下篠村を、今回は北海道の増毛町に代えて考えてみました。
 2兆円の基金だけでなく、これから脱炭素社会を構築するために100兆円を超える資金が各地に投じられます。増毛町には、グリーンカーボンを利用した温暖化対策の先進的実績がすでにあります。この実績の上に、交付金を利用した洋上風力発電の建設を申請することは十分に考えられます。それを皮きりに、水力発電、風力発電、海洋温度差発電など再生可能エネルギー生産のオンパレードを実現していくわけです。脱炭素社会の進行具合を、世界は数値目標で押し付けてきます。増毛町が、その数値目標に貢献することは当然です。さらに、世界の国々ができない技術を披露することも楽しいことです。たとえば、海洋温度差発電からは、データセンターの誘致も可能になります。世界のデータセンターの計算量は、2010年から2018年にかけて6倍以上に増えています。計算量の増加によって、CPU (中央演算処理装置)に負荷がかければ、電力消費量も増えていくわけです。CPUは、負荷をかけると発熱します。冷却システムは、データセンターの消費電力量のうち2~3割を占めるのです。企業のデータセンターは、消費電力の効率化に努めています。海洋深層水の再循環を利用すれば、年間を通して、データセンターを冷却できるのです。8~9℃の深層水がくみ上げられる仕組みがあれば、優しいデータセンターが建設できます。世界が課題としている解決策を、一石二鳥で実現できます。海洋温度差発電所は、増毛町のデータセンターを誘致する有力な施設になるわけです。シリコンバレーのように「再エネバレー」になれば、優秀な人材は集まってきます。
 余談ですが、香港の優秀な人材を獲得しようと、各国は触手を動かしています。香港の優秀な人材を獲得するためには、どうすれば良いのでしょうか。シンガポールは、優秀な人材が安心して働ける子息の教育環境も用意しています。優秀な人材が安心して働ける子息の教育環境は、国際バカロレア級の学校の存在です。高度人材を海外から呼び寄せるためには、子弟の教育環境が大切になります。高度人材を呼び寄せるためには、お金や研究施設を充実させるだけでは十分ではありません。地域の教育が、高度人材のニーズにあう教育環境が求められます。
 そこで交付金の獲得になります。まず、再生可能エネルギーの生産と活用のモデル地域として交付金を得ます。次に、デジタル教科書と教育のモデル地域として交付金を獲得します。デジタル教育を高度化し、国際バカロレア級の授業を行うことになります。増毛町が再生可能エネルギーの生産のメッカになれば、人々が集まってきます。理想を高く掲げる町には、人が集まるものです。集まった人々の能力を高める環境が揃えば、安心して高度人材の家族はやってきます。高度人材が集まれば、情報量は急拡大します。そして、地域は豊かになります。近年は、環境に優しい村や町で働きたいという若者が増えています。持続可能な再生可能エネルギーを使いながら町を運営していくという構想は、今回の脱炭素対策に適合するものです。





脱炭素社会への技術革新と意識改革 アイデア広場 その777

2020-12-30 21:03:58 | 日記


 政府は、温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにする工程表をまとめました。脱炭素の投資を成長のテコにする戦略で、2050年に年190兆円の経済効果を見込んでいます。工程表は、洋上風力や水素など14の重点分野を定め、課題と対応策をまとめたものです。特に、目についたものは、洋上風力発電です。現在ほとんど普及していない洋上風力を、2040年までに4500万キロワットの導入を目指していることです。4500万キロワットは原子力発電所45基分に相当します。日本には、33基の原子力発電があります。それを凌駕する計画になります。この45基分は、再生エネルギー先進国であるドイツをしのぐ規模となるものです。世界最大規模の洋上風力設備を持つイギリスの再生エネルギーの割合は、2050年に約65%にする計画をもっています。再生エネルギーの導入で先を行く欧州主要国は、ドイツが42%、イギリスが39%と着々と温暖化対策を進めています。温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロの実現には、規制改革と技術革新が欠かせないという認識を各国は持っているようです。
 日本は、自動車が日本の基幹産業で、ガソリン車では世界をリードしてきたという自負があります。以前、アメリカの自動車産業が不可能とされたマスキー法案の基準を、日本の自動車産業界は楽々とクリアしました。でも、これからの基準は、馬車がガソリン車に移行した時と同じような変化がおきます。自動車の出現で300万頭の馬が失業したという現象もあります。そこに従事する人たちや馬具の産業も衰退していきました。自動車は、2030年代半ばに全ての新車を電気自動車(EV)などの電動車にする計画が目白押しです。今の自動車は約3万点の部品で構成するのに対し、EVは部品数が半滅します。でも、EVにはリチウムイオン電池というアキレス腱があります。リチウムが、10億台分を確保できない実情があるのです。とすると、水素を燃料とする燃料電池自動車(FCV)が次に登場することになります。FCVは、二酸化炭素は出しません。FCVは、燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを使って、モーターを回して走る自動車です。この車の弱点は、高価な触媒を使うことです。触媒には、白金を大量に使います。使われる高価な白金が、弱点になっているわけです。FCVは水素を燃料とするため、耐久性のある炭素繊維を使った高コストのタンクを使うことになります。この繊維を木材の「リグニン」から作れるようにすれば、ブレイクスルーになります。触媒を白金ではなく、塩化系の物質でできれば、同じように、ブレイクスルーになるでしょう。
 発生させた二酸化炭素の量と、ほかの場面で削減した二酸化炭素の量の差をゼロにすることが求められています。そんな取り組みの先進的事例を、台湾に見ることができます。台湾はスクーター通勤も非常に多いです。電動スクーターを持つ社員には、建物の近くの整備された良いスペースが割り当てられているのです。ガソリンで動くスクーターは、遠くの駐輪スペースに置くことになります。徐々に、ガソリンスクーターの使用者を減らしていく作戦のようです。その主旨は、二酸化炭素の排出を減らすという社会参加に繋がります。企業全体として、意識改革として取り組んでいるわけです。もし、日本のすべての駐車場が、電気自動車の駐車料金は半額とか、無料とするならば、電気自動車の普及は進むでしょう。さらに高速道路などの料金を下げれば、普及はより加速化されていきます。もちろん、駐車場などには、政府から助成がされることになります。その財源は、電気自動車の購入に際して助成される補助金を割り当てることになります。そして、人々の高い意識を後押しすることになるでしょう。
 その意識を高める、事例があります。コールドプレイは、イギリスで結成されたロックバンドです。全世界での売り上げは1億枚以上を記録し、グラミー賞7回受賞という記録を持っています。このグループが、2019年にツアーが環境に与えるインパクトが大きすぎると主張して、ツアーの中止を発表したのです。彼らは、ツアーを通じて排出する二酸化炭素と、セーブする二酸化炭素の量を等しくしたいと答えているのです。コールドプレイの行動に対して、世界自然保護基金が歓迎のコメントだしています。世界的に有名なアーティストが、地球を守る方向に動くことは素晴らしいと評価したわけです。音楽やダンスは、人類最古の文化です。人々熱狂させ、集団を凝集させる力も持っています。
 人間の音を聞くという機能は、海の生物の時代から進化してきた根源的なものです。水族館で、イワシの群れが一斉に方向転換する光景を見られます。魚群の一斉方向転換は、隣の魚の動きが水圧となり伝わることからほとんど同時にできることになります。鼓膜ができるまでは、水圧で危険を察知していたことになります。音は、鼓膜が振動することで感じます。魚類から進化した両生類のカエルは、水に浮く姿から分かるようにアゴは水の圧力も、空気中の音も感じることができる便利な機能を持っていました。アゴのあたりの骨を伝わる音は、骨導音という様式で感じます。音を感じる耳や骨の機能は、生死を決める重要なものでした。ある意味で、究極の快楽を感じ取る器官になることもできたわけです。音楽が人々を熱狂させ、一体感という凝集力を作り出す一つの理由かもしれません。音楽家の行動は、大きな影響力を持っているわけです。
 コールドプレイの行動は、人々の意識に徐々に食い込んできているようです。このグループより、さらに環境に配慮したグループが活動しています。U2は、アイルランドのロックバンドです。このグループは、グラミー賞22回も受賞しています。U2は、グラミー賞世界最多受賞記録を持つ社会派バンドの元祖でもあります。このグループが、2019年末に久しぶりに日本公演を行いました。この時のツアー公演は、水素エネルギーを使用したのです。極力二酸化炭素の排出をしないように配慮していたのです。日本公演において水素エネルギーを提供したのは、福島市にあるアポロガスという企業でした。ちょっと、残念なことは、これらの外国のバンドの行動に、日本のテレビ関係者や文化人の反応は冷ややかだったということでした。技術革新を推進する場合、技術の革新は当然ですが、人々の意識を変えることが重要になります。二酸化炭素の排出を抑制すること、もしくはゼロにすること、化石燃料の使用を減らすこと、もしくは再生可能エネルギーに切り替えること、再生可能エネルギーで作った水素を運搬する手段などのサプライチェーンの構築を大切にすることが、これからの課題になります。そのサプライチェーンを支える人々の意識も変えなければならないわけです。この生産から供給の流通網全体の流れをスムーズにしなければ、国際競争力を失う恐れがでてくることになります。日本の政府と国民が一体になり、炭素ゼロ社会に挑戦したいものです。


村や町から脱炭素社会のモデルを構築していく アイデア広場 その776

2020-12-28 19:57:04 | 日記

はじめに
 日本政府も、脱炭素社会の潮流に乗り遅れないように、いろいろな計画を立案するようになりました。2050年までに、温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標の実現を公約しています。公約の実現を目指して、環境投資で一歩大きく踏み込み2兆円の基金を創設しています。これには、自動車から排出される二酸化炭素のゼロを目指すことも含まれています。電気自動車などを導入しやすくし、その運用が上手にしていく制度や規制を構築しようとしています。水素を新たな電源として位置づけ、大規模かつ低コストの水素製造装置などの開発する構想もできています。さらに、行政のデジタル化進める関連費用は、1兆円を超える規模を確保しています。「5G」に続く次世代の通信規格「6G」に関しては、世界をリードできるようにする意気込みが見えてきました。情報システムを一元的に所管し、他省庁に勧告し是正できる強い権限を持たせるデジタル庁の設立は、政府の強い姿勢を示しているようです。
 日本はこの数十年、再生可能エネルギーの予算が、原子力発電の数十分の一にも満たない額で終始してきました。その中でも、太陽光発電に集中的投資し,その他は軽視されてきた経緯もあります。ところが、企業の事業の選択と集中を迫られ、太陽光発電からも撤退する日本企業が増えているのです。世界的には、再生可能エネルギーの普及や拡大が進んでいます。世界の市場で伸びる分野であるにもかかわらず、日本では撤退の対象になっています。現在、世界市場では、風力発電や波力発電のシステム、そして太陽光電池が一斉に開発を進めています。これらにも、日本は後塵を拝している現状です。太陽光や風力発電の分野で、日本企業は非常に高い技術力を持っています。やる気になれば、日本はエネルギー問題において、独自の地歩を築き上げる力も環境も整っているのです。

1、地方が突破口になる
 以前、北海道の増毛町までの鉄道の旅をしたことがあります。廃線が決まり、多くの鉄道ファンが列車に乗っていたことが印象に残っています。その増毛町が可能性を秘めた地域になろうとしています。この町は、海と山に恵まれた地方になります。最高峰の暑寒別岳の標高は1449mです。そこからいくつかの川が、日本海にそそぐ地形になっています。この地形は、小水力発電に適しています。もちろん、日本海から吹き付ける風は、風力発電にはもってこいでしょう。山あり海ありの地形は、脱炭素社会では垂涎の的になります。ボタンエビの漁獲高が日本一で、さらにアマエビやタコなどの水揚げも多い地域です。この町をモデルに、脱炭素社会の在り方を考えてみました。
 ニシン漁で栄えた北海道増毛町では、夏を迎えるとコンブが大量に採れるようになりました。増毛町の海岸は、5年ほど前まで、海藻が生えない磯焼けの海岸だったのです。日本製鉄が地元の漁協と組み、2014年から植生回復の実証事業を始めました。日本製鉄の狙いはコンブの植生の回復だけではなく、海藻が吸収する二酸化炭素対策でした。排出と同時に、その補完が企業に課される時代になっています。その先手を打つ事業だったのです。コンブの生育に欠かせない鉄分を、供給する仕組みを作りました。製鉄時に出る鉄分を含んだ砂利を土と混ぜて、ヤシの袋に入れて浅瀬に埋設を行ってきました。鉄分を供給することで、コンブの成長が1本当たりの重さが8倍も大きく育つ成果を上げています。日本海に面した海岸には、黒茶色のコンブが豊かに生えそろいます。これは、二酸化炭素の排出抑制のモデルを実現しています。豊かなコンブの育成が、脱炭素の有力な事例にもなるわけです。二酸化炭素を減少させる方法は、植物プランクトンを大量に繁殖させて、海底に自然に堆積させる方法も選択肢になります。そのためには、鉄分が必要になります。その実証実験をした先見性が、この増毛町にありました。

2、落差を利用した小水力発電
小水力発電は、1mの落差でも0.5kwの電力を作ることができます。1 kwの電力を作る建設費が、200万円といわれています。上手く運用すれば、2mの落差の1kwの小水力発電で、年間20万円の売電ができます。たとえば、渓流に5つの砂防ダ ムがあれば、その1つ1つで発電できるわけです。砂防ダムが5つあれば、そのすべてで小水力発電が可能になります。ダムの高さが10mクラスの小さな砂防ダムでも、発電は可能で、200kwの電力は得られます。200kwだとすると5つで1000 kwになり、2億円の売電が可能になるのです。増毛町にある暑寒別岳は、標高は1449mになります。この落差と水量を利用すれば、小水力発電所をたくさん作ることができます。この可能性を現実にしたいものです。
 バラ色の水力発電ですが、現実は厳しい情況も浮かび上がります。ある小水力発電の追跡結果は、75カ所のうち30件は消滅しているのです。稼働しているのは、40件の小水力発電ということです。小水力発電の追跡結果は、稼働状況が芳しくないといことになります。稼働状況が芳しくない理由は、枯葉などの流入で発電機能が低下をきたすことです。また、取水口などに土砂がたまり、稼働状況が低下することにあります。土砂などの除去に、苦戦していることが分かります。この苦戦を克服したところに、ビジネスチャンスあります。この維持やメンテナンス作業を行えば、稼働率は安定することになります。土砂や枯葉などの除去を、ロボットが自動的に行えばどうなるでしょうか。ロボット機能の向上により、応用範囲は広くなりつつあります。ロボットが動きやすい貯水口などの工夫により、土砂や枯葉の自動除去を行うことは可能でしょう。停滞している30の小水力発電が、再び稼動を始めることも夢ではありません。増毛町で小水力発電を効率的に維持する仕組みを確立すれば、全国各地の発電所のモデルになります。人材育成の基地としても、可能性を持つことになります。

3、海洋エネルギーの利用
 日本は、海に囲まれた国です。海の力を利用することも、選択肢になります。海の利用方法では、フランスにモデルがあります。フランスのモンサンミッシェルのあるノルマンディー地方南部サン・マロ湾はヨーロッパでも潮の干満の差が最も激しい所として知られています。この近くにあるランス潮汐発電所は,年間6億kWh,一般家庭の約25万世帯分の電力を供給しています。ランスの海域の潮位差は,最大で13.5m平均でも8.5mもあり,潮汐発電の最適地の一つになっています。ランス潮汐発電所は,年間 30~40万人の観光客が訪れ,地域経済にも大きな貢献をしているのです。
 海洋エネルギーには、潮汐,海流・潮流,波浪、海洋:熱、塩分濃度差の5種があります。それぞれ、メリットとデメリットがあるようです。上手に使い分ければ、面白いエネルギー政策が可能になります。世界の潮汐エネルギー量は、現在の技術を使えば、年間300 TWh以上のエネルギーを供給する潜在能力があるとされます。さらに海流などの潮流エネルギーは800TWhの可能性を秘めています。出力100万kWの原発換算で潮汐は54個分、潮流は91個分で125個分の電力量になるともいわれています。日本の原発の数は、全部で33基あります。そのうち稼働しているのは5基ということです。海の潮汐エネルギーと潮流エネルギーを使えば、現在の原発の供給量をはるかに上回るエネルギーが確保できる計算になります。
 日本には、太平洋沿岸に世界最強の潮流である黒潮が流れています。海水は空気の約850倍の密度があり,流速が同じならば850倍のパワーがあることになります。風力発電より、強いエネルギーを得ることが可能なわけです。さらに、海流は風向と違い、ほぼ休むことなく一定の流れを形成しています。プロペラと一体型の発電機なら、1年中コンスタントに発電できることが、実証実験で証明されています。プロペラと一体型発電機を数千個という単位で、黒潮に乗せて発電を行うわけです。このような発電を行えば日本の全電力需要を十分に賄える計算になります。これを増毛町の海に浮かべる計画も、面白いものです。たとえば、浮遊式潮流発電というものがあります。これに、セイリング式洋上風力発電を加味すれば、楽しい発電施設ができることになります。

4、日本独自の技術
 日本も政府は勇ましい発表だけでなく、着々と世界の潮流を乗り越ええる技術の開発をしています。沖縄県の久米島では、海洋温度差発電(OTEC)が行われています。このプロジェクトは、その連続運転が世界に先駆けたものとして国内外で注目されているのです。海洋温度差発電の高性能化については,佐賀大学海洋エネルギー研究センターが行っています。この温度差発電は,アンモニアのような沸点の低い物質と深層水を用いた循環型装置になっています。久米島の海水温は,表層で冬期22℃,夏期28℃と変動します。でも、200mの深さで安定し、600m地点で8~9℃となっています。この島の北東側の東シナ海側,沖合約2.3 km、水深612mから、海洋深層水の取水を行っていいます。海洋温度差発電は,海水の温度分布特性を利用してエネルギーを取得する方式です。
 久米島の海洋温度差発電能力は、数百kW以下の規模になります。この発電能力のみでは、経済性を成立させることが困難です。海洋深層水は、電力のみでなく他の広い用途が期待されているのです。久米島の。海洋深層水の取水量は日量13000トンと国内最大規模です。この8~9℃の深層水が沸点の低い媒体を冷やし、を21~30℃となる表層水の熱で蒸発させて、タービンを回転させて電気を発電させているわけです。冷却と蒸発を繰り返す循環再利用に、妙味があるのです。結論から述べると、実用化の点では,海洋温度差発電より海洋深層水利用が先行しています。海洋深層水の主な特徴は,低温安定性,富栄養性,清浄性です。海洋深層水は、豊かな魚場造成のための海洋肥沃化などが注目さされています。この海洋深層水に鉄分を加えれば、植物プランクトンがすぐに繁殖します。その植物プランクトンを目指して、魚などの海の幸が集まってきます。漁場ができるわけです。久米島の海洋温度差発電を、ボタンエビの漁獲高が日本一の増毛町で運用するようになれば面白くなります。海洋の生態系に対する目が一層厳しくなり、世界の水産業は海の漁獲から陸上での養殖にシフトしてきています。ボタンエビを陸上養殖して、いつでも国の内外に出荷できるようになれば、増毛町の産業をより厚みの増すものになります。

さいごに
 世界を飛び交う情報が、飛躍的に増えています。世界のデータセンターの計算量は、2010年から2018年にかけて6倍以上に増えています。情報が飛び交うことで、電気の使用量も増えています。C PU(中央演算処理装置)は、負荷をかけると発熱します。この装置の冷却にも、多くの電力が使われることになってきました。計算量の増加によって、CPUに負荷がかければ、電力消費量も増えていくわけです。この電気量は、世界全体の消費電力量の約1%を占めるとされているのです。企業のデータセンターは、消費電力の効率化に努めています。冷却システムは、データセンターの消費電力量のうち2~3割を占めるのです。冷却用のエアコンを使う従来方式は、新しい方式に代わられようとしています。
 世界のデータセンターが求める冷却のシステムです。8~9℃の深層水が常にくみ上げられる仕組みがあれば、環境に優しいデータセンターが建設できます。海洋深層水の再循環を利用すれば、年間を通して休むことなく、データセンターを冷却できるのです。海洋温度差発電所は、増毛町のデータセンターを誘致する有力な施設になります。水力発電あり、風力発電あり、潮流発電であり、そして海洋温度差発電ありと、再生可能エネルギーのオンパレードが実現できます。さらに、深層水には多くの利用方法が考えられます。ここに有能な人材を招致すれば、増毛町は素晴らしい地域になります。近年は、環境に優しい村や町で働きたいという若者が増えています。理想を高く掲げる町には、人が集まるものです。そして、豊かにすることに挑戦していくようです。



子どもの飢餓や自然破壊を賢く解決する仕掛け アイデア広場 その775

2020-12-27 17:57:25 | 日記

 アジアやアフリカの農園や工場には、環境破壊や児童労働の実態があります。具体的には、インドネシアとマレーシアにおいて、農園における森林伐採や児童労働が問題視されているのです。世界の消費者の目は、環境破壊や児童労働に厳しくなっています。今の流れは、経済合理性を貫きながら、環境破壊や長時間労働のないことが評価される時代になっているのです。特にESG (環境・社会・企業統治)への関心は高く、モノ言う株主による企業経営への関与も増えています。投資家も、環境問題や児童労働に細心の注意を払わざるを得ない状況に追い込まれているのです。今や部外者でも、原料の仕入れから、製品の製造、そして発送まで全体を把握することが可能になっています。企業に不利な事実が公になれば、企業のイメージは悪化し、株価の下落は確実になり、企業の収益が低下していくことになります。
 電気自動車(EV)は、環境に優しい車です。この自動車を現在のレベルで使用するためには、10億台のE Vが必要になります。EVの生産コストのうち、リチウムイオン電池は30~40%を占めています。この電池のコストの中で、コバルトは10%を占めているのです。コバルト生産量の60%が,コンゴ民主共和国で産出されています。このコンゴのコバルトは、児童労働で採掘された原料も流通しているといわれているのです。中国が、コバルトを購入する意欲は非常に高いものがあります。中国企業の爆買いで、コバルトの争奪戦が激しくなっています。価格が、この2年で3倍近くに高騰しているのです。世界の良識は、児童労働や人権を軽視した労働で生産された資源を極力避けて排除する流れです。人権を軽視したコバルト採掘に、世界は難色を示しているわけです。日本のパナソニックは、3年以内に電池のコバルト使用量を半減させる計画です。日本企業が、コバルトの使用量を減らす電池開発に取り組む理由は中国にあるようです。
 SDGsは、持続可能な開発目標とは国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲットから構成されています。要約すると、このままでは、地球に住む人々が生存できなくなるかもしれません。そうならないために、今できることをみんなで取り組もうというものです。世界各地にある問題を解決しながら、経済発展や開発を共にしていこうというわけです。たとえば、過激と思われるグリーンピースは2010年、コーヒーメーカーのネスレのパーム油が森林破壊を助長していると訴える動画を公開しました。さらに、オランタータンの生息を脅かしていると訴え不買運動に発展した事例があります。SDGs もESGも、この取り組みに関しては数値化しにくく、的確にアピールするのが難しい面があります。ESGの取り組みを、楽しくアピールして、いつの間にか目標を達成している仕掛けが欲しいところです。良い企業を認知して、この企業の商品を購入することが市民の叡智になります。
 パーム油は、食品、洗剤、化粧品などに使われ、スーパーに並ぶ商品の約半分がその恩恵を被っているといわれています。インドネシアとマレーシアのパーム油は、合計で世界シエアの8割超を占めています。アブラヤシは耕作面積から取れる油の量は、大豆の8倍で、製造コストも低いのです。世界自然保護基金(WWF)や英蘭ユニリーバが主導し、2004年に設立したのがRSPOになります。マレーシアに本部を置く非営利組織のRSPOは、パーム油をいくつかの段階に分けて認証をしています。RSPOに認められた農場や搾油工場と取引し、サプライチェーンを管理する必要があります。問題は、零細な小規模農園はほとんど認証がされていないことなのです。生産量の3割を占めるとされる小規模農園は、ほとんど認証外にあるわけです。そこで児童労働などの問題が生じているのです。
 日本の企業は、従来、商社などに調達を任せ、生産現場を把握していませんでした。そんな風潮では、世界から評価されないことになります。当然、世界の流れに回帰する動きがでてきます。花王は、インドネシアの小規模パーム油農園に労働環境改善などの支援を始めることになりました。認証油を得るには、森林破壊や児童労働がないことが必要になります。この動きは、欧米の企業が早期に取り組んでいました。早く動き始めた欧米勢は、サプライヤーとの関係性が深く、割安に大量調達できているというメリットを享受しています。花王は支援する5000農園で、2030年までにRSPOの認証を取得する計画です。認証を獲得できれば、品質の良いパーム油を、優先的に輸入することができようになります。1回の売り上げによる利益ではなく、一生の売り上げの利益を考慮する時代になってきたわけです。
 投資家の間に、環境や社会、そして企業統治を重視するE SG投資が広がりを見せることはわかりました。企業は資源の節約をし、二酸化炭素の排出を削減し、環境の配慮をした経営を行っていくことになります。発生させた二酸化炭素の量は、ほかの場面で削減した二酸化炭素の量の差をゼロにする工夫が求められています。二酸化炭素の量の差をゼロにすることを、オフセットといいます。面白い事例が、台湾にあります。台湾は、スクーター通勤が非常に多いのです。電動スクーターを持つ社員には、会社の建物に近くの整備された良いスポットが割り当てられています。ガソリンで動くスクーターは、遠くの不便な駐輪スペースに置くことになります。自然と環境に配慮する仕掛けが、会社の駐車場に作られていくわけです。ある途上国に進出した企業では、週に1回30分早めに退社させ地元のボランティア活動に参加すること奨励しています。彼らは、簡単な読み書きを教える活動をしているのです。社員にボランティア活動をさせる「対投資効果」は、きわめて大きいということが報告されています。
 チョコレートなどのパッケージには、ロゴがあります。このロゴは、カカオを採る現地の人たもとフェアに取引していますという証になります。このロゴは、チョコレート製造に関わる人たちにが、決して搾取はしていませんという証です。賃金を正当に支払っているという証でもあるのです。フェアトレードは、原材料から熔煎の過程まで、決して搾取はしていませんという証です。カカオの生産から生産工程で働く途上国の方は、貧困や飢えに悩まされる報道がされています。そんなときに、人々は何とかしなければと考えます。手っ取り早い方法は、ユニセフなど通しての寄付になります。でも、これだけでは知恵がないようです。ある知恵者は、寄付する人々の利益になる仕掛けを作りだします。運動不足や肥満が増え始めた中高年の職場では、カロリー制限をする人々が増えます。この社員食堂では、普段のたっぷりカロリーのランチを出していました。ここの調理人が、カロリー控えめな食事を選択するコースを作りました。控えめな食事で、食材を節約したのです。節約した食材の費用を、アフリカの子どもたちのお腹を満たすことに回したわけです。単に飢餓に手を差し伸べるだけではなく、同時に職場の健康にも配慮したウインウインの仕掛けを作り出しました。人のために役立つことをすることは楽しいことです。そして、そのことが自分のためになることなら、さらに楽しいことになります。



弁当もオリンピックもロボットが克服する アイデア広場 その774

2020-12-26 17:38:46 | 日記


 昼時のコンビニは、弁当を求めるお客さんで賑わいます。混み合うお店では、弁当を求める時間は長く感じます。昼の短い時間を有効に利用したい人々にとって、行列のできるコンビニはもう少し流れをスムーズにしてほしいと思うものです。お店の方でも、あらかじめお客さんの人数や求める弁当の種類が分かれば、それなりの用意ができます。弁当をコンビニに納める業者さんも、弁当の数や種類が分かれば、余裕を持って納入ができることになります。
 そこで、コンビニの利用者とコンビニ店と納入業者の方が、ウインウインになる仕組みを考えてみました。最初お断りしておきますが、技術的にできることと、費用対効果でできることには、壁があります。でも、この壁を乗り越えられたときには、快感がやってきます。弁当箱に具材を自動で並べるロボットは、すでにできています。人間の手の関節は限られており、その稼働範囲も限界があります。ロボットは、機能や目的に合わせて関節を自由に増やすことができます。目的達成をする費用対効果がリーズナブルであれば、弁当作成ロボットの採用が行われます。ITの進化に伴い、モジュールに使用される部品は、極小化されています。それに平行するように、ロボットの動きは繊細になり、人間の手の動きより自由度が大きくなってきました。この進化したロボットが、弁当の具材を詰める作業をするようになれば、今よりも数倍のスピードで作業を行うことができるようになります。
 あるロボットは、目の前のオモチャのブロックをバラバラに分解して箱に片付ける作業をスムーズに行います。箱に片付ける繊細な指の動きは、まるで人間のようです。人間より関節を多くしてあるロボットは、より滑らかで稼働範囲の広い動きが可能になるのです。この繊細な指の動きをするロボットは、10km離れた場所から人間が操作していたのです。通信の遅れがほとんど発生しない5Gを使用すれば、違和感なく人間とロボットが連動していきます。モニターを見ながら操作するわけですが、そのモニターの画質は高品質化してきています。人間の目よりもきめ細かに具材を写し出すことが可能になっています。さらに、モニターの画像は3Dなので奥行きが感覚でわかるようになりました。この3D画像のおかげで、細かな操作がスムーズにできることになります。食材や具材をより美しく、食べたくなるような配置にすることも可能になるでしょう。遠隔地から人間が操作することも素晴らしいのですが、それだけでは物足りません。この食材や具材を美しく並べる作業を、AIが自動的に行うようになれば、より楽しく楽になります。
 複雑な動きをロボットが行う場合、動き方をロボットに教える「ティーチング」が導入時の障壁の一つとなっていました。京セラは、このティーチングをクリアしたAIを、開発したのです。AIの認識した対象物に応じて、ロボットアームの動かし方とつかみ方を自動で調整する優れものです。AIを活用してティーチングを省く協働ロボットの商用化は、世界でも初めてといわれています。このロボットを、頻繁な設定変更が必要な少量多品種型の工場に導入するわけです。少量多品種の生産に優れたロボットを外販し、2025年に売上高300億円を目指す企業があります。この企業は、外部から調達したロボットアームに、自社開発したAIのソフトウェアを組み込んで性能のアップを図ろうとしています。さらに、ロボット単品の売り切りビジネスではなく、保守点検やAIの性能向上などを通じて稼ぎを増やそうとしています。ある意味で、保守点検のサブスクリプション(継続課金)型のビジネスを検討しているわけです。
 ある先進的な考えの持ち主は、中小企業の事務を集約する地域の「事務代行センター」を作ることを提唱しています。小さな会社が事務職を雇っていては、事業が苦しくなってきているのです。1社では成り立たない事務の合理化を、地域のいくつかの会社を集めて、事務だけを合同で行おうというものです。請求・支払・給与や保険業務などをすべて「事務代行センター」に委託するわけです。もし、この事務代行センターを、コンビニに納入する業者のセントラルキッチンに置き換えたらどうなるでしょうか。一定の地域のコンビニの弁当を、一ヵ所で作り、配送していくことになるわけです。コンビニの店舗数は、日本全国で5万店以上になり過剰な状態です。半径500m以内に数件のコンビニがあれば、競争も激しくなります。このコンビニに弁当を納入する業者も、生産と配送に苦労をしていることは、目に見えています。
 地域のコンビニ店が、協定を結ぶことになります。その上で、地域におけるコンビニの弁当を求める消費者のニーズを数量化します。この数字に基づいて、業者は弁当を作ることになります。もし、お昼に自分の食べたい弁当を確実に確保したいのであれば、スマホで予約すれば可能になる仕組みを作ります。その場合、値引きをするとか、ポイントを付与するなどの特典を付けることになります。事前の消費者の要望が把握できれば、セントラルキッチンの段階で対処が可能です。ロボットが、個々の弁当を作ることができるからです。各コンビニ店からの注文は、代行センターに届けられ、注文の弁当のスタイル、数、時間を把握します。把握した弁当をロボットが、自動的に作っていくということになります。配送は、地域の流通を使い円滑にコンビニ店、もしくは、会社や個人宅に配送されるかもしれません。
 余談ですが、新型コロナウイルスのPCR検査を自動化するロボットが売り出されようとしています。川崎重工業がロボットを使ったPCR検査を3分の1の価格で行おうとしています。このPCR検査は、検体の採取後、約80分で検査結果が判明するという優れものです。川崎重工業は、2021年4月にPCR検査サービス事業に参入すると発表しています。トレーラーで運べるコンテナに、ロボットを複数台配置します。ロボットの稼働時間を16時間とした場合、2つのコンテナで5千人分を検査できます。このコンテナを空港などに持ち込み、メンテナンスなども含めたサービスを提供する計画です。ロボによる新サービスは空港や、2021年に控える東京五輪の際の街中での検査を想定しています。でも、PCR検査だけでは面白くありません。検査直後に、そのウイルスにあったワクチンを提供するサービスを行ってはどうでしょうか。もちろん、接種を受ける本人とワクチンの副作用を考慮することは言うまでもありません。できれば、変異しているウイルスにも対応できるワクチンを用意できれば、ベストでしょう。安心安全の上で、日本でのオリンピックとパラリンピックを堪能してもらうことが、「おもてなし」なるでしょう。

水の脅威に悩む農業にビジネスチャンスを見出す アイデア広場 その773

2020-12-25 20:38:18 | 日記


 世界では、水がグローバルリスクであると認識されています。水のリスクは、人類の持続可能な開発に対して、深刻な阻害要因となるとされているのです。地球全体の水資源残存量は、地球上を循環する水のうち、全海洋への河川流出量になります。この河川流出量は、年間約4万K㎥と推計されています。この4万K㎥のうち、世界の人々は10%程度しか利用していないのです。1995年世界の年間水資源取水量は3800k㎥で、2025年には4300~5200k㎥に達するとされています。でも、約6億人あまりの人々が、安全な飲み水を容易に確保できない現状があります。これらの人々は、生活に必要な水を得るためだけに多くの時間を費やしているのです。そして、その水の確保をする人たちは、女性や子ども達が大半なのです。
 一方、自然は気まぐれで、渇水があるかと思うと豪雨ももたらします。タイで起こった洪水が、今でも脳裏に浮かびます。2011年のモンスーンの時期に、チャオプラヤー川流域のメコン川周辺で洪水が発生しました。タイの浸水被害は、甚大な被害をもたらしました。被害にあった企業の半数以上が、日系企業だったのです。7月から始まり3か月以上続いた洪水は、230万人に影響を与えました。この時の浸水被害の保険金支払い総額は、約9000億円で、東日本大震災の6000億円を超えたのです。台風19号が上陸した2019年の日本全国の水害被害額は、国内で過去最大の2兆1476億円でした。その上をいくのは、2005年にカトリーナの水害で世界の保険会社が支払った6兆3000億円が史上最大といわれています。今年に入り、アジアの観測拠点で7月に平年より5割以上降水量が多かった地点は、過去10年間で最多になります。加速する温暖化現象は、大気中の水蒸気が増加し、雨量はかさ上げされ豪雨になるケースが多くなります。アジアの観測拠点で、7月に平年より5割以上降水量が多かった地点は、全体の31%の53カになります。今年は、この現象が中国に多く見られました。中国では、1~9月に洪水が発生した河川は、例年より8割多いのです。
 世界で河川水害などにより経済活動が停止する経済規模は、2030年時点で年間1770兆円という予想があります。ある国際機関が独自のツールを用いて、インフラ投資の費用対効果の分析の際に抽出したものです。この分析によると、中国やインドなどアジア地域の危険区域は半分の850兆円を占めています。これによると、中国が最大でGDPの14%にあたる460兆円になります。中国が整備する場合、今後30年間に必要な合計投資額は55兆円になると試算しています。中国は今年の豪雨で、農業や養殖、商工業などの直接的な経済損失が3兆2千億円だったとされています。現状の被害を改善するには、それなりの維持管理費の負担を増やさなければならないようです。同様に大国のインドも、整備するために必要な資金は、20兆2千億円になるようです。この国際機関は、水害の甚大な被害と比べ投資の便益は大きいと述べています。
 地球温暖化による自然災害の増加が、アジア経済の脅威になってきました。インド大都市では、植民地時代の19世紀に造られた水路、地下排水路がそのまま使われています。市街地の開発が進む中で、旧水路が埋め立てられています。一方、新たな排水や治水のインフラ整備は、なかなか進まない状況があります。河川や沿岸部の水害は、大都市の近くに発生することが多く、損害も大きくなる傾向があるのです。アジアに比べ、EUは経済力も組織力もあるため、想定される被害のほとんどは適応によって避けられるケースが多くなります。アジアのもろいインフラが、被害を拡大する要因になっています。堤防などが何年かに1度の大水害に、どの程度耐えられるかという指標があります。これによるとインドが平均11年、中国も35年、そしてオランダなどは100年以上という数字が出てきています。世界で相次ぐ自然災害は、長期的に経済活動を不安定にする要因になっています。そんな不安定な時代に、ビジネスチャンスを見出すことも可能のようです。逆に考えると、不安な時代だからビジネスチャンスが転がっているともいえるのかもしれません。
 2019年のインドのスタートアップ数は、約9千社とアメリカやと中国に次ぐ多さになっています。特に、IT関係のスタートアップは、群を抜いています。その中で、インドで農業とIT (情報技術)を融合したあるアグリテックスタートアップの存在感が高まっています。この起業は、天候や湿度などのデータから栽培方法を農民に助言します。地域の気象データと農産物の栽培を組み合わせたものをAIに学習させるわけです。これを続けていくことで、作物のデータを蓄積して、よりよいデータ活用を開発しているようです。この起業は、アプリの利用料が無料とし、肥料や農薬の物販で収益をあげています。携帯電話の普及を追い風に、起業も農民も順調に経営を進めているようです。生産から流通、金融までアグリテックには、チャンスが生まれています。専門家が農業指導をするほか、肥料や農薬などを販売しています。このアグリテックスタートアップは、いわばインド版の「バーチャル農協」ともいえるものです。このようなスタートアップに、融資する日本の農協があっても良いと思ってしまいます。融資する場合、水害や干ばつのない安定した気候の地方で業績を上げている起業に狙いをつけてはどうでしょうか。このアグリテックの技術を、日本に輸入する発想も面白いかもしれません。
 インドの農家は、全体の約7割が1へククール以下です。平均年収は月1万4千円と国民全体の平均収入月1万6千円を下回る農家が大部分です。カルナタカ州のトマト農家クリコティさんのスマホには、毎日栽培指導のメッセージが届きます。「土が乾いています。明日の午後4時までに5リットルの水をやってください」などと、契約農家には連絡が届くわけです。畑には、気温や土壌の湿度などを計測するセンサーと通信機器が設置してあります。ある面で、先端の農業技術のように見えます。でも、肥料や農薬の流通網は、不完全なのです。必要な時に必要な肥料や農薬が、届かないということもあるのです。この不完全さを、このスタートアップがカバーしているともいえます。そこで、利益を上げているのです。
 温暖化が従来のべースで進んだ場合、災害の規模が一段と拡大する姿が浮かんできます。堤防などの防災設備への投資は、人命救命だけでなく、経済成長や雇用創出にも役立つことがわかります。一方、洪水対策には高額の費用が見込まれます。洪水だけであれば、国や個人の負担増も許容範囲かもしれません。でも、災害は洪水だけではありません。地震も台風も、豪雪や津波と自然の驚異は続きます。それらの災害すべてに備えようとすれば、不都合な真実も出てきます。これらの災害にすべて備えれば、脅威は減るかもしれません。でも、脅威が減っても経済的に貧しくなり、結果として幸福度はむしろ下がるケースも出てくるのです。気候変動を抑え込めば、人類が何の憂いもなく幸せに暮らせるようになるわけではありません。温室効果ガスの排出を削減しても、緩和に必要な費用のほうが大きくなれば、幸福度が下がるという現実もあります。
 リスクを削滅するのに必要な追加的費用と、追加的な便益が同じになる水準を最適とするという考え方もあります。そんな最適化の解が、試行錯誤しているインドのアグリテックに見出すことはできないでしょうか。渇水や洪水に強い作物や品種、その改良と遺伝子操作など、農家からのデータが蓄積されれば、アグリテックの活躍する場が生まれるかもしれません。農業分野では、乾燥や水不足などに強い品種の改良、観測システムの開発などの知見が手に入ります。これらの知見を日本の農業に生かすことは、ある面で合理的なことです。もちろん、資金の援助を行うことが必要条件になることでしょう。



宅配ドライバー不足から睡眠不足までの連想ゲーム  アイデア広場 その772

2020-12-24 17:24:21 | 日記


 スウェーデンの首都ストックホルムでは、タクシー運転手がいつも不足気味です。タクシー待ちの長い行列が常態化し、待ち人のイライラにつながっているのです。ストックホルムでタクシー免許を取得には、すべての通りに詳しくなければなりません。この町で運転手に要求される基本的な条件は、①道路に詳しく、②車の運転ができることになります。一方で、運転免許証を持ちながら、タクシーを運転できそうな失業者は大勢いたのです。そこである知恵者は、アイデアを出しました。失業中の運転手が、通常料金の8割でお客を乗せることができるようにしたのです。失業中だった免許証を持たない運転手は、給料をもらいながら道を覚えられるようになりました。乗客は、運転手に道順を教える代わりに、通常料金の8割で乗車できるというシステムです。道に不案内の運転手も、このシステムのおかげで地理に詳しくなりました。試験に挑戦して、タクシーの免許を取得する人も出たようです。失業者も乗客も、そして失業保険を払う自治体もハッピーになったわけです。
 このスウェーデンのアイデアを日本に当てはめたら、面白い発想が出てきました。日本では、宅配ドライバーが極端に不足しています。このドライバー不足の解決策が、アイデアとしてでてきたのです。郵便屋さんも新聞配達の方も、宅配の人と同じような仕事をしています。新聞と郵便物を配達する人は、地域の地理に精通しています。彼らは、雨の日も風の日も、そして雪の日も確実に届けるという厳しさを克服している人たちです。もう一つは、現在は多くの企業で、副業が認められる風潮がでてきているという要因です。宅配ドライバーに加えて、郵便配達と新聞配達の方に副業を認めてもらいます。そして、その3者のマッチングの仕組みを作るわけです。宅配の配送センターのシステムが一元化されれば、円滑な配送が可能になります。そして、副業から収入を多く手にすることができます。確実な配達は、正規の宅配ドライバーの負担を減らします。新聞と郵便物を配達する人材を、有効活用することは合理的なことになります。
 このような案を、「宅配ドライバーの強力なお助けマンは郵便と新聞です」というテーマでブログに投稿しました。すると、グーグルの129,000件のトップに載ることができました。さらに、「宅配ドライバーの強力」とブログに打ち込むと、5,060,000件のトップに載っていました。「宅配ドライバー」と入力すると、35,000,000件の中には影も形もありませんでした。でも、一応アイデアとしては認められた形跡はあるようです。このテーマのブログを書いている方の意見を見ていると、荷物や新聞を入れる容器に工夫が必要だという点がわかります。すでに、宅配と新聞や郵便を安全に入れる容器の開発も進んでいることが分かりました。郵便箱や新聞受けを大型にして、荷物も入れるようにしておけば、利用価値は広がるということです。
 この受け入れ箱の工夫を考えてみると、そのヒントがコンビニというお店にありました。コンビニを見るとわかりますが、商品の配置が合理的になされています。店の売り場は、商品カテゴリーによって4つの温度帯に分けられています。常温の棚には、日用雑貨、カップ麺などの加工品、菓子類などが置いてあります。20度の温度の棚には、おにぎりや弁当などです。次がチルドで、サンドイッチ、惣菜、麺類になります。最後は、冷凍でアイスクリーム、冷凍食品という具合です。配送物を入れる容器の開発などは、これからの4つの種類の品物をいつでも入れられるように工夫することが課題になります。日用品など入れておく場合は、容易になるでしょう。弁当やサンドイッチに類似した品物の宅配は、難易度が高くなります。この容器の開発が難しい時には、コンビニのお店に預けるという発想がでてきます。本人に、コンビニに取りに来てもらうというわけです。もっとも、どちらでも都合の良いほうを選んでもらっても良いことになります。
 コンビニは、葛藤がありました。本部がブランドイメージの低下を心配して、安売りを推奨しませんでした。廃棄のしわ寄せをオーナーがかぶり、弁当の廃棄処理の費用まで負担するという不合理がまかり通っていたのです。状況は変わり、オーナーの判断で、安売りも可能になりつつあります。お店は、廃棄の迫った弁当を安く売れば、廃棄費用は浮くことになります。売れない弁当を郵便配達さんが、スマホで注文のあった家庭に届けることは可能です。高齢者には、「近くて便利」なコンビニが、生活の命綱になりつつあります。コンビニに配達の足と聞く耳の機能を再整備すれば、地域の命綱としての評価は高くなります。コンビニ店が、荷物の受け渡しも行うようになれば、地域の中核になります。
 コンビニの売り上げは、弁当や総菜などの食物が中心になります。コンビの食材は、昔のように味を濃くすれば買ってもらえるという時代は終わりました。身体に優しく、強くする食材が求められているのです。健康志向の商品の中でも、特にタンパク質に注目が集まっています。タンパク質に注目が集まっている中で、面白い商品が開発されました。豆腐を作るときにできる「生のおから」は、栄養価が高いことが知られていました。「生のおから」の欠点は、腐敗の早いことだったのです。ある企業が、生おからを乾燥させるノウハウを確立して、パウダー状に仕上げることに成功しました。パウダーおからは賞味期限が約1年間と、筋肉愛好家には重宝な食材になります。ご飯やヨーグルトにかけて食べれば、いつでもたんぱく質の供給が可能になったわけです。運動によって脳が変わるという報告も多いのです。運動の頻度は週に3~5回で、エアロビクスやウェイトトレーニングを混ぜると良いことが分かっています。でも、運動だけでは、筋肉はつきません。運動後にタンパク質を供給しなければ、筋肉は増強しないのです。
 60代後半の人が、40分ほど速歩を1年続けたところ、海馬の容積が2%増加したという報告があります。運動が、記憶や脳の活性化に役立っているわけです。うつ病の患者さんは適度に運動をすることで、かなりの治療効果があることもわかっています。ミレニアム世代やZ世代は、健康維持から積極的に体を鍛え鍛えたい人たちもいるようです。健康志向の商品の中でも、特にタンパク質に注目が集まっている理由がここにあります。現在の健康観は、一定の筋肉が機能的に働くことを前提にしています。筋肉を効率的に鍛えるためには、体内でタンパク質を切らさないことが重要になります。炭水化物の摂取が減ると結果として、筋肉がやせ細るということになることがあります。炭水化物というエネルギーがないと、筋肉のタンパク質がエネルギーになってしまうのです。せっかく付けた筋肉がロスしてしまうわけです。筋肉を効率的に鍛えるためには、タンパク質を数回に分けて摂取すると良いようです。そして、睡眠は成長ホルモンを分泌し、筋肉を効率的に作ることが分かっています。
 健康志向の現在、多くの人々が、体重体組成計や血圧計、そして万歩計から、健康データを把握しています。リストバンド型の活動量計は、歩数や睡眠時間などをセンサーが計測していきます。歩数や睡眠時間のデータを、専用アプリで解析するサービスもあります。でも、体重体組成計や血圧計、リストバンドからのデータ収集は、スマホでカバーできる時代になってきたようです。眠気が、自動車事故を起こすことは知られています。メガネを掛けてもらい、3点式眼電位センサーや加速度センサーで、運転中の眠気を推定することができます。これも、目の動きは、スマホのカメラをかざしておけばわかるようになりました。運転席の頭上にスマホ置き、運転手の目の動きを捉え、センサーでクラウドに送信することができるようになりました。ドライバーの健康は、ある意味でとらえやすい環境になりつつあるわけです。ドライバーを長く続けていた方の健康寿命は、短いとされています。ここにも、課題が出てきています。
 高等動物の脳は、常に熱を持った状態で活動するようになりました。進化を加速したのは、哺乳類と恐竜を子孫に持つ鳥類になります。鳥型恐竜は脳の発熱が多いために、トサカが脳を冷やす役割を担っています。人間の場合、入眠の前に手足の指先が温かくなることが知られています。8時間の眠りのうち、6時間がノンレム睡眠、2時間がレム睡眠といわれています。ノンレム睡眠は大脳を鎮静化し、大脳の機能を回復させるための休養の時間になります。睡眠の時間まで、脳が活動的になると脳の機能が損傷します。深いノンレム睡眠の確保が、人間の健康を保証しているわけです。流通に従事した方は健康寿命が短いといわれている理由は、睡眠不足が日常化していたためともいわれています。宅配ドライバーの方は、睡眠をきちんととれる職場で働くようにしたいものです。働くときも健康な状態でお金を稼ぎ、ドライバーを辞めてからも健康に過ごす仕組みを作っていきたいものです。


脳疲労を軽減する先端技術と民間療法 アイデア広場 その771

2020-12-23 18:20:14 | 日記

 人間は、理性的に判断をするものだと信じられていました。でも、それだけではないようです。前頭葉が人間の理性で、扇桃体は恐怖の対象から守る感情ないし本能という見方もあります。扇桃体がストレスに過剰反応したときには、前頭葉がそれを抑えつけるメカニズムがあります。恐怖だとか外的脅威のようなストレス刺激が、強すぎて扇桃体が過剰に活動するケースが現れます。大きな試練に圧倒されると、理性が感情に乗っ取られてしまうことがあるわけです。前頭葉が扇桃体の恐怖を抑え込めなくなると、交感神経に作用して身体に異常な症状が発生します。扇桃体の恐怖を抑え込めなくなる症状としては、動悸や過呼吸などが一般的に知られています。扇桃体は、脳の中でも最も原始的な部位になります。この器官は、数億年前の魚類にも存在して、現在も人間の記憶に深く関与する中枢でもあるようです。
 理性だけでは、説明ができないこともあります。聖職者である牧師になろうとしている学生たちを、対象にした実験がありました。学生を2つのグループに分けて、次のクラスの教室に行きなさいと伝えるのです。一方のグループにも教室は教えるが、時間を指定しません。もう一方のグループには、9時までにと指定するのです。そして、ここからが、実験の核心になります。どちらのグループも、教室の移動中に困っている人に遭遇するように設定してあるのです。時間を指定されたグループは、手助けをしなかったという結果がでたのです。ゆとりがなくなった途端に、人を助けるという牧師の職業の本質を忘れてしまったわけです。牧師を目指す人でも時間が指定され、ゆとりがなくなった途端に、自分を失う人もいるのです。ここからわかることは、理性には現実的志向と将来に関する志向の両方が含まれるということでしょうか。
 幸福度の低い社員は病欠も多く、平均して1年に15日、他の社員よりも多く休むという傾向はよく言われることです。日記に楽しそうな内容を書いた修道女たちは、ネガティブな修道女より10年近く長生きしたというお話もあります。この場合、健康だから長生きをしたわけではないのです。幸福感があったから、健康で長生きをしたと捉えるようになります。幸福度を高める因子は、健康の度合いなどより、人との良好で安定したつながりといいわれています。幸福が、健康の「原因」として機能しているのであって、健康だから幸福なのではないともいえます。成功している人々ほど、人間関係を大事にし、それを推進力としています。最も成功している人々ほど、友人、同僚、家族との人間関係を大事にしているのです。いまでは、個人の幸福度をかなり正確に安定的に測れる診断の手法が確立されています。難しいことがあるとすれば、脳が絶えず自らを変化させるという点です。いわゆる脳は可塑性を持っており、良くも悪くもなるという特徴が、診断を誤らせることかもしれません。
 脳の治療は、難しいとされてきました。でも現代医学は、脳という臓器に対して直接的な治療を始めています。2010年から始まった脳を解明しようとする研究が、ホワイトハウス主導のプロジェクトとして行われているのです。アメリカでは、脳の先端研究が国家レベルで推進されています。脳の深奥部にまでに、到達する深部磁気刺激という磁気治療も開発されています。この磁気を用いて脳の活動を局所的に変えるrTMS(仮復経頭蓋磁気刺激法)と呼ばれる治療法深部磁気刺激は、強迫神経症、心的外傷後ストレス障害、薬物依存の治療に使われています。fMRI(健気共鳴機能画像法)やQEEG (定量脳波)の画像検査で治療ターゲットを絞り、そこの患部に磁気刺激を送り込むわけです。画像検査で治療ターゲットを絞り、患者ごとに最適な治療が施されてようになりつつあります。アメリカは、薬物依存の人々が多いから、このような治療法が開発されるのかと考えたりします。まさに、必要は発明の母ということになるようです。
 脳は体重の2%ほどの大きさにもかかわらず、身体が消費する全エネルギーの20%を使います。多くのエネルギーを使うのですが、効果的使い方と無駄な使い方が、脳にもあることが分かってきました。脳の消費エネルギーの大半は、デフォルト・モード・ネットワークの脳回路で使われています。デフォルト・モード・ネットワークは、Default Mode NetworkでDMN と略されています。このDMNは、脳が意識的な活動をしていないときに働くべースライン活動なのです。DMNは、脳の消費エネルギーの60~80%を占めています。何もしない状態でぼっとしていても、DMNは働いて、80%の脳のエネルギーを使うというわけです。DMN働き続ける限り、脳はどんどん疲れていくということでもあります。DMNの活動を抑える脳の構造を作っておかないと、本当の休息が人間に訪れないことになります。たとえば、うつ病の人たちには、あの時ああしておけばよかったというネガティブな思考を反復します。この反復思考も、DMNの働きを促し脳の疲労を増幅していきます。
 そこで、この疲労をやわらげる方法を考えてみました。食べ物や飲み物の期待を高める仕組みが、レストランには備えてあります。高級なワインほど、グラスの空の部分が大きくなり、ワインの量が少ないようです。グラスの上部を空にすることで、グラスに注がれたワインのアロマと香りがその空間に漂う最初に嗅ぐ香りが、のちに味わうワインの期待を創り出すのです。最初の一口が美味しければ、次に口をつけるワインも同じだと、脳は感じてしまいます。空間に漂う注がれたワインのアロマと香りが、飲む者の鼻を喜ばせます。この喜びが、お客にとっても、お店にとても重要なことになります。喜びには、疲労を軽減する働きもあります。
 美味いや不味いという反応は、お店にとって気になるところです。お店にいる人々が、全体としてどんな気分なのかを把握できれば、面白いことになります。お客様の身体情報や感情をデータとして収集できれば、お天気レーダーのように人々の情況を俯瞰できます。店内にカメラとバイオセンサーを搭載した器機を、店に設置します。これらからインターネットを経由して集められた情報は、位置情報とともに瞬時に解析されます。もしこれができれば、悲しい気分の人にはやさしい昧のスープを提供することもできます。気分が高揚しすぎているお客様には、心が落ち着くハーブティーを提供することになります。お店の演出が、お客様を満足させる仕掛けになるわけです。レストランや理美容室には、心を和ませる仕掛けが数多くあります。これらは、脳の疲労を軽減するものです。現在すでにあるものを利用して、課題解決をすることは、一つの選択肢になります。

日本の林業は内需と輸出で前途洋々です アイデア広場 その770

2020-12-22 20:10:27 | 日記


 南洋材の主産地のマレーシアやインドネシアでは、近年、環境保護の意識が高まっています。ピークの1973年に2679万㎥に及んだ南洋材丸太輸入量は、2019年に0.5%の13万4000㎥まで減少しています。2000年ごろ平均約80cmあったラワン材の丸太の直径は、伐採が進み最近は60cm以下になっています。資源の枯渇が、顕著になっているのです。一方、ロシアのプーチン大統領は、2022年1月から針葉樹など丸太での輸出を禁じると宣言しています。中国は、針葉樹丸太の輸入量の大半をロシアに頼っています。この輸入した丸太を加工して、フェンス材や家具などに加工して再輸出しているわけです。中国としては、困った事態になりつつあります。そこで、輸送費を抑えられる日本に目が向いているようです。「ロシア禁輸後に中国が日本の丸太調達を増やすだろう」との見方が、多くなっています。ロシア産の輸入量が多い中国が、日本からの代替でスギなどの丸太調達を増やす流れができるかもしれないわけです。
 2018年5月、マレーシアのサバ州政府が、森林保護を理由に丸太輸出を禁止しました。
日本は、環境問題の観点や国産材の積極的な活用の動きから、国産針葉樹合板への切り替えが進んでいるのです。SDGs(国連の持続可能な開発目標)の浸透などで、取引先の資材調達姿勢が急速に変わりつつあります。世界の林業は、開発型から循環型経済への転換が加速する節目にあるようです。この産業は、投資家や顧客から二酸化炭素の排出削減のほか、森林伐採の際などの環境整備や人権保護を求められています。ESG(企業経営や成長において、環境、社会、企業統治といった観点からの配慮が必要という考え方のこと)重視を見据え、植林を通じ二酸化炭素排出削減も併せて義務化されるようになりました。そんな中で、日本の取るべき進路は、意外と有利に展開しそうです。日本は国土の3分の2を占める森林をうまく活用すれば、循環型社会ができあがるのです。「近代林業」「バイオマス」それに「木造都市」の三つをうまく掛け合わせることで、未来は構築できそうです。
 一つのモデルが、日本のパルプ業界にあります。紙パルプ業界は、ESG重視の流れを受けて環境重視になっています。王子製紙の子会社である日伯紙パルプは、ブラジルの森林資源会社セニブラを傘下に持っています。王子製紙は日伯紙パルプを完全子会社化することで、セニブラの資源事業を一体運営に持っていこうとしています。セニブラを含めた王子製紙の森林保有面積は、57万へククールと日本企業で最大級です。この会社は、ブラジルでの植林も積極化する計画です。植林やパルプ生産など、森林資源事業を強化するわけです。足元では、パルプ販売やバイオマス発電などの資源環境ビジネスが営業利益を高めているのです。パルプを自社で賄うことで、環境負荷の少ない紙容器やパルプと樹脂の複合材料を開発しやすい体制を築いています。
 国内に目を向けると、日本の森林資源は、かつてないほどに充実しているのです。蓄積量も、約33億㎥と森林全体の約6割を占めています。日本は国土面積3779万haのうち,森林面積は2505万ha になっています。2505万haの森林のうち,約4割に当たる1,020万haが人工林です。人工林の年間蓄積増加量は、約5,300万㎥と過去最高の備蓄量になっています。2016年の木材の国内生産量は、2714万㎥でした。人工林には、まだまだ、2000万㎥以上の余裕があります。蓄積増加量と比較すると、十分に活用されているとは言えない状態なのです。これを活用する機運が、高まっています。
 2019年の供給量(製材用と合板用合計)は、1762万㎥と2002年の1.5倍と増加しています。国産針葉樹合板の生産量は、3年連続で過去最高を更新しました。2000年に1%だった合板の国産材自給率は2019年に45%まで高まっています。阪神大震災の教訓を踏まえた2000年の建築基準法改正で、耐震性が求められるようになりました。さらに東日本大震災や熊本地震で、より強度の高い分厚い合板のニーズが高まったのです。国産針葉樹や木材チップを接着剤で固めた中質繊維板は、安全性の視点からニーズが増えました。住宅の壁に使うスギなどの国産針葉樹合板の生産量が、過去最高を更新しているのです。国内業者も、不安定な外国産材から国産材にシフトしようとする流れが出てきています。
 東南アジアにおいて、広葉樹を使う南洋材合板の供給が難しい状況になっています。針葉樹の丸太の輸出大国であるロシアも、国内の林業育成を目的に輸出に消極的です。一方、中国は丸太を輸入して、それを加工した木材の輸出する生産工程を整備してきました。中国が、この生産工程を切り替えるのは難しい状況にあります。日本は、森林資源が豊富にあります。でも、長期的には人口減で新設住宅宅の需要は減る流れにあります。新設住宅の6割を占める木造の戸数は、2018年度が約55万戸でした。これが、減少していくわけです。でも、木材の供給量は増加している実情があります。ある面で、日本は恵まれた条件を持っていることになります。
 この恵まれた条件を生かす林業の町があります。兵庫県は,県土面積の67%にあたる56万haを森林が占めています。兵庫県宍粟市における2017年の素材生産量は、84,079㎥になります。この町に、わずか従業員9名で、年間10,000 ㎥以上の素材生産量を達成している有限会社があります。20代が7名、 30代が1名、40代1名と、多くが若手従業員でありながら活躍しています。彼らは、木材流通を生産者の視点ではなく、消費者の需要に基づいて計画的な木材生産を行っているのです。丸太を購入する製材工場や合板加工業者は、木材製品の種類ごとに求める品質が異なります。この異なる要求にこたえるためには、どの木を伐採すれば良いかを考えます。そして、利益が最大化になるのはどの木なのかという視点から、伐採する樹木を選んでいくのです。彼らは、最も高く取引される直径と長さの丸太の採材プランをコンピュータ上で算出していきます。算出したデータは、素材生産を行う森林現場の作業員と共有します。マーケットインの発想を取り入れ、生産性の向上および利益の最大化に取り組んでいるわけです。利益の最大化で、従業員の安定雇用を実現しているともいえます。このような企業が育っていけば、中国との交易も上手に行っていくことができるかもしれません。中国の生産工程にあった素材の加工を、日本国内で行うこともできるでしょう。

量子コンピュータが生産性の高い職場を作る  アイデア広場 その769

2020-12-21 17:00:04 | 日記

 誰もがつぶやけるSNSは、今では社会参加のインフラになっています。スマホにミカンやマスク、そして喉のいがらっぽさなどの言葉が出てくると、インフルエンザの流行が予測されます。身近病院でクラスターの発生などの言葉多くなると、新型コロナウイルス感染の予防に注意が行くようになります。短い文面から相手がどんな人かを確かめたいという研究は、世界各地で行われていました。SNSの文章を分析し「開放性」「誠実性」「外向性」「協調性」「神経症」などの傾向は、大まかに把握できるようになりました。その解析成果を「Big5」と呼んでいるようです。たとえば、「飲む」「歩く」「時刻表」などの単語を多く使う人は、「飲酒の習慣がある」の特徴であるようです。また、「いいね」をされた頻度が多い方は「漢字の読み書きの能力が高い」という具合です。
 SNSから知能や精神状態、生活習慣を見抜く実験に、総務省傘下の情報通信研究機構が成功しています。この実験では、AIが短文投稿サイトの情報から、人々の内面を表す23種類の特徴を推定しました。この実験は、数百の少ないデータでも、A1を賢く用いることで、新たな手法の開発したことに高い評価を得ているのです。ツイッターの投稿内容とアンケートの内容を、AIに学ばせます。学習を終えたAIは、ツイッターから人々の内面をあぶり出す規則性を次々と発見したわけです。今回の情報通信研究機構の解析成果は、「Big5」の一線を越えたと見る専門家も多いのです。知能や性格のほか、統合失調症やうつ病の精神状態、飲酒や喫煙の生活習慣も読み取る研究は、他の研究施設でも進んでいます。2018年、うつ病の兆候をフェイスブックに並ぶ単語から3カ月前につかめるとする研究が行われました。社内のSNSに流れる文章から、「うつ」の症状が現れることを3ケ月前に予測できると報告をしています。
 社員が心身とも健康な状態で働いてこそ、企業は発展できることになります。メンタルの不調は誰にでも起こるものでもあり、そして治るものでもあります。このSNSの読み取り機能を、「見守り」のシステムとして使用すれば、人々のストレスレベルを把握し、その分析も可能になるということになります。メンタルヘノレスへの対応には、問題を未然に防ぐ一次予防、すなわち早期に発見が大切になります。メンタルヘルスへの対応を、第三次予防の治療や再発防止のレベルで行うことはコストの面で無駄になります。Alの解析を「見守り」と思う人にとっては、この技術が光明となります。一次予防の段階で、社員を癒すことができる道具になるわけです。
 SNSのつぶやきから内面まで分かれば、脳の中にまで予防の網を張ることができます。毎回のつぶやきで文字数のばらつきが大きいほど、「統合失調症の傾向がある」とわかります。この場合、統合失調症の予防やカウンセリングが、早期に行うことができます。もっとも、その社員、もしくは研究者が統合失調症の傾向が出てきた時には、いわゆるゾーンに入った状態と捉える企業や研究所があるかもしれません。この集中力が極限まで高まり、創造性の活動が活発になっている時期に、ブレイクスルーが起きると期待をする場合もあるかもしれません。Alの解析を「見張り」ととらえず、「見守り」と捉えることもできるわけです。最近は、SNSを分析するだけでなく、その結果を素早く色彩で表現できる技術も実現しつつあります。光ファイバーの衣装をデザインし、光のショーを演じる授業を行っている学校もあります。脈拍が早くなれば、赤の光が強くなり、脈拍が遅くなれば、青の光が優勢になるのです。光のショーは、ツイッター上のやりとりに表れる感情を分析し、色を調節することも可能です。モチベーションの高揚や低下が、色で視覚されるというわけです。
 三井物産で面白い試みを始めました。この会社が目指すのは、オフィスを起点にした企業文化の変革になります。生産性が高い特定の部署の行動傾向を分析し、他の部署に役立ててもらう構想があるようです。3600人超の行動データ収集し。個人情報を伏せ、部署や役職の属性から分析するのです。天井に2500個の電波受発信器を設けスマホのアプリと連携して、位置情報を収集し分析していきます。社員の動きをデータで可視化することで、より効率的な連携手法を探る仕組みを作るわけです。この仕組みは、オフィス内での人の移動や在宅時のチャットなどの履歴データを組み合わせて解析します。在宅勤務の増加も考慮し、社員のメールやチャットの履歴データも判断材料にしていく大きな構想です。生産性の高い部署の人間関係、上司のリーダーシップ、空間の配置、他の部署との接触など、生産性に関するデータの蓄積や分析が可能になります。今後の成果が、見たいされるところです。
 三井物産の野心的な構想の成否のヒントは、学校のいじめ対策にあるのです。いじめられた子どもの成績は低下します。成績の低下は、子どもの脳内にコルチゾンを分泌が多くなるからです。コルチゾンは、記憶の中枢である海馬を萎縮させてしまいます。海馬が萎縮すれば、学習内容は記憶に定着しないことになります。クラス内のソシオメトリーを見える化をすれば、人間関係は分かります。ソシオメトリーから、孤立している子どもや仲良しグループも分かります。仲良しグループでも、成績が低下している場合、仲良しグループ内のいじめが疑われます。クラス集団のストレス量と,記憶量の計量的把握が、可能になりつつあるわけです。教師は、成績が低下の知見を元にクラス内の人間関係を円滑にする仕組みをつくるわけです。さらに言えば、優れた教師は成績を上げるために、クラス内の人間関係を作っていくわけです。成績を上げる人間関係の研究は、学校でも優れた教師によっていくつかのモデルケースがあります。課題は、人間関係が数多くなると、ベテラン教師でも対処が難しいという点なのです。
 最近、ソシオメトリーの課題を解決するツールが現れました。量子コンピュータのD-Waveは、「組み合わせ最適化問題」を解くことが得意です。このコンピュータは、ある組み合わせ最適化問題を解いたとき従来のコンピュータと比べて1億倍高速だったといわれています。宅配が1日に回るポイントが5カ所なら、すべてのルートの組み合わせは120通りになります。120通りの中から最短距離となるルートが見つければ、時間と燃料の節約になります。5人の人間関係も120通りあり、この中から最良の組み合わせをすれば良いことになります。回るポイントが10所だと、組み合わせは約360万通りになるのです。現実の社会には、組み合わせ最適化問題が非常に多く存在するのです。人間関係だけでも、これだけ多くの組み合わせがあります。ここに、ルームの配置、冷暖房の流れ、デジタル機器のなどの組み合わせ加われば、最適化問題はより複雑になります。心配をすれば、キリがありません。蛇足ですが、アメリカ国立研究所に所属する研究者の小学生お嬢さんは、D-Waveを使ってソシオメトリーのプログラムを作ったのです。このお嬢さんは、クラスの友達を互いの好き嫌いで2つの集団に分けるプログラムを作ったそうです。最適化の問題を解決する人材は、これから育ってくるということかもしれません。若い彼らが、三井物産の課題を解決することになることを期待したいものです。