政府は2021年度予算案で、デジタル教科書の購入補助費として22億円を盛り込んでいます。本格導入の2024年度をめどに、無償で配ることを想定しているのです。政府が推進する生徒一人に1台のタブレット端末を配布する構想が、着々と進行しているようです。デジタル教科書で、情報化社会への対応を進める意図は、政府全体に見受けられます。政府はデジタル教科書の普及に向け、授業で使える時間の制限をなくす方針を固めました。これに呼応するように、民間の教科書会社も準備を整えています。大日本印刷は、教科書会社5社と連携しデジタル教科書の配信サービスを2021年から始めます。教科書会社が、デジタル教科書を提供し、大日本印刷が配信するわけです。
政府は、社会の情報化への対応にはデジタル教科書の活用が欠かせないとみています。平井卓也デジタル改革相と河野太郎規制改革相が、萩生田文科省大臣に規制を見直すよう求めています。平井氏は「すべてデジタル教科書に置き換えるべきだ」とも述べています。紙の教科書も併用する案が、文科省の審議会では採択されているのです。アメリカでは2015年調査で、教科書を含むデジタル教材を初等中等教育機関の8割が導入しています。韓国では2018年で、小学校で8割、中学校の7割近くがデジタル教科書を使っています。紙の教科書とデジタル教科書の長所を取り入れた授業を、実証と検証を重ねながら確認したいのでしょう。実証と検証の事実を元に、より良い方向を選ぼうと文科省は考えているわけです。一方、デジタル庁は世界の趨勢を先取りして、デジタル化を一気に進めようとしているようです。教育のデジタル化を進めている先進国では、紙の教科書ではできない授業を行っているようです。クラウドシステムの構築と運用、音声やアニメーションを活用したデジタル教科書の配信などを徐々に実現しています。
文科省は、先導的試行やモデル校を通じて、日本的なデジタル教科書の利用を行うことを目指したいようです。良いモデル校のヒントは、小さな学校にある場合があります。1つのスポーツが小さな町の小学校、中学校、高校が継続して素晴らしい成果を上げることがあります。全日本バドミントン大会では、桃田選手が優勝しました。彼は福島県の原発事故で被害を受けた富岡町の高校で力をつけました。この全日本選手権では、桃田選手の他にも富岡高校出身の選手が優勝や準優勝をしているのです。山村の小学校や中学校には、稀に都会などより優秀なスポーツ校が出てきます。指導力のある先生に恵まれれば、子ども達はみるみる上達することは、経験則として分かります。これをスポーツの代わりに学力では、どうでしょうか。国際バカロレア機構が認めた学校を卒業した生徒は、世界の有名大学に入学ができます。すでに日本にもいくつかの国際バカロレア認定校があるわけです。神奈川県相模原市の藤野地区には、シュタイナー学園があります。シュタイナー学園に通わせる親は、医師や建築家、芸術家など手に職を持つ人が多いのです。シュタイナー学園では、国際バカロレア認定校になることも多いのです。高い能力を持つ人たちは、子どもが自分と同じ境遇で学問や研究をしてもらいたいようです。そのような教育環境を地方で用意できれば、高度な人材を呼び寄せることは可能になります。このシュタイナー学園とデジタル教育が融合すれば、面白いことになります。
政府のデジタル化と脱炭素政策は、急ごしらえの様子が見えます。欧米との政策比較が圧力になり、押し出されて作られた政策のようです。このような状況の場合、脱炭素社会においても、教育のデジタル化においても、準備のできている市町村は有利になります。有名な長野県の下篠村の事例があります。プールの総事業費は1億4千万円でしたが、下篠村はわずか42万円の負担でプールを作ったのです。国からの2つの補助金で1億円をもらいます。残りは交付金で消化していったのです。結果として、村が出したお金が42万円というお話です。国の縛りのない交付金や補助金は、積匝的に活用すべきです。縛りがあっても、その縛りが村のニーズにあえば活用する姿勢が必要です。この長野県の下篠村を、今回は北海道の増毛町に代えて考えてみました。
2兆円の基金だけでなく、これから脱炭素社会を構築するために100兆円を超える資金が各地に投じられます。増毛町には、グリーンカーボンを利用した温暖化対策の先進的実績がすでにあります。この実績の上に、交付金を利用した洋上風力発電の建設を申請することは十分に考えられます。それを皮きりに、水力発電、風力発電、海洋温度差発電など再生可能エネルギー生産のオンパレードを実現していくわけです。脱炭素社会の進行具合を、世界は数値目標で押し付けてきます。増毛町が、その数値目標に貢献することは当然です。さらに、世界の国々ができない技術を披露することも楽しいことです。たとえば、海洋温度差発電からは、データセンターの誘致も可能になります。世界のデータセンターの計算量は、2010年から2018年にかけて6倍以上に増えています。計算量の増加によって、CPU (中央演算処理装置)に負荷がかければ、電力消費量も増えていくわけです。CPUは、負荷をかけると発熱します。冷却システムは、データセンターの消費電力量のうち2~3割を占めるのです。企業のデータセンターは、消費電力の効率化に努めています。海洋深層水の再循環を利用すれば、年間を通して、データセンターを冷却できるのです。8~9℃の深層水がくみ上げられる仕組みがあれば、優しいデータセンターが建設できます。世界が課題としている解決策を、一石二鳥で実現できます。海洋温度差発電所は、増毛町のデータセンターを誘致する有力な施設になるわけです。シリコンバレーのように「再エネバレー」になれば、優秀な人材は集まってきます。
余談ですが、香港の優秀な人材を獲得しようと、各国は触手を動かしています。香港の優秀な人材を獲得するためには、どうすれば良いのでしょうか。シンガポールは、優秀な人材が安心して働ける子息の教育環境も用意しています。優秀な人材が安心して働ける子息の教育環境は、国際バカロレア級の学校の存在です。高度人材を海外から呼び寄せるためには、子弟の教育環境が大切になります。高度人材を呼び寄せるためには、お金や研究施設を充実させるだけでは十分ではありません。地域の教育が、高度人材のニーズにあう教育環境が求められます。
そこで交付金の獲得になります。まず、再生可能エネルギーの生産と活用のモデル地域として交付金を得ます。次に、デジタル教科書と教育のモデル地域として交付金を獲得します。デジタル教育を高度化し、国際バカロレア級の授業を行うことになります。増毛町が再生可能エネルギーの生産のメッカになれば、人々が集まってきます。理想を高く掲げる町には、人が集まるものです。集まった人々の能力を高める環境が揃えば、安心して高度人材の家族はやってきます。高度人材が集まれば、情報量は急拡大します。そして、地域は豊かになります。近年は、環境に優しい村や町で働きたいという若者が増えています。持続可能な再生可能エネルギーを使いながら町を運営していくという構想は、今回の脱炭素対策に適合するものです。