ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

ペロポネソス戦争・覇権国家・価値観  アイデア三題噺 292

2019-12-31 15:40:51 | 日記

 米中の摩擦や英国のEU離脱など、世界の趨勢が不透明になりつつあります。地球温暖化に象徴されるように、環境の悪化も顕著なってきました。将来が見通せない状況に不安を感じる方も増えているようです。でも、天気予報などは、1週間先くらいまでならばかなりの精度で当てることができます。人口統計などは、数十年先までほぼ正しく予測できるようになっています。国際情勢も大きな潮流に限れば、数年先まで予測可能です。説得力のある未来を予測して、提示することができれば、ビジネスチャンスにもつながる時代でもあります。未来をよりも早く知り、そして先んじて対応できるなら、ビジネスチャンスも得られるというわけです。
 そこで、不安定な世界を先取りできる情報獲得力を高めることについて考えてみました。米中摩擦が、厳しさを増してきました。アメリカにとって、中国というライバルを落ち目にすることが重要な国家戦略になっています。第二次世界大戦後は、ソ連がアメリカの軍事的政治的ライバルになりました。その後、一時的に日本が経済的ライバルになったことがあります。これらのライバルに、すべてアメリカが勝利を収めています。そして現在、中国がライバルとして台頭してきています。このような現象は、歴史の中で数多く現れていたようです。有名な事例では、古代ギリシャに見られます。
 2400年前の古代ギリシャでは、スパルタとアテネとの間に対立が起こりました。古代ギリシャでは、最強の陸上兵力をもつスパルタと、海上交易の新興国アテネとの間で、ペロポネソス戦争が勃発したのです。ペロポネソス戦争は、新興国アテネが旧覇権国家スパルタの地位を脅かしたことに原因がありました。スパルタとアテネとの間に対立は、古代ギリシャ世界を巻き込んだ戦争に発展していきます。覇権国家と新興国家が戦争を避けられない状況を「トゥキュディデスの罠」と言います。このような状況になった場合、武力だけでなく、お互いの正当性を主張することが多くなります。もちろん、自国の優位性を主張する場合、相手の欠点を指摘する戦術も多用されます。
 中国の習近平国家主席による新疆ウイグル自治区の非公開の演説内容を、ニーヨークタイムズが特ダネとして報道しましました。それまで中国政府は、強制収容所ではなくテロ防止のために建設した職業訓練センターだと説明してきました。でも、この報道が世界に広まり、中国政府のウイグル族への弾圧の様子を示した内部文書を巡り欧米の中国批判が強まっています。イギリス政府は、新疆ウイグル自治区への国連監視団の受け入れを求めるようになりました。ドイツのマース外相も、中国は人権に関するルールを遵守すべきだと批判しています。自由や平等への意識の強い欧米諸国では、批判が高まっています。一方、アジアやイスラム圏の中国批判は、欧米ほど広がりを見せていないようです。アフガニスタンやチエチエン紛争、そしてアラブの春の混乱の二の舞になることを、中国が防いでいることを評価しているのかもしれません。
 中国政府の一部当局者は、新疆ウイグル自治区において極めて厳しい統制下にあることを認めています。今回の流出文書と中国政府の言動から明らかになった点は、ウイグル族に対する弾圧が行われていること、そしてその弾圧が必要だという点でした。新彊ウイグル自治区の政府は、この政策によって新疆ウイグル地域が非常に安定していることを内外に表明したところです。ある意味で、国家資本主義を推進する中国は、欧米のルールで振る舞う意志のないことを示したのです。むしろ、厳しい規制と繁栄する経済的政策は、素晴らしい組み合わせだと主張しているほどです。厳しい規制と経済政策が、テロや過激派に効果的に対処していることは評価されるべきだとしているのです。欧米の常識からすれば、中国の世界観が、西側とは全く異なる価値観によって支配されている点が明らかになったともいえます。ある時代ある地域において、「テロ」と解釈される行為が正義に代わることは歴史の中に現れます。ある時代のテロが、歴史の変遷のうちに、「テロ」でなく、正義の革命になることもあるわけです。中国が世界の覇権を握れば、新疆ウイグル自治区の政策は、正義の行為と解釈される時代がくるかもしれません。西側には、いくつもの不自由や不平等があります。でも私は、中国の世界観より自由と平等を標榜する西側に身を置くことに満足しています。
 そこで、喫緊の課題として、隣国で何が起こっているかを知り、それに対応する方法を考えてみました。例えば、北朝鮮が次に何をやろうとしているのかを見てみます。北朝鮮が、「ミサイルを発射するかどうか」を予測してみました。北朝鮮には、いくつかのミサイル発射基地があります。その発射場に、車両の出入りが頻繁になってきました。この車両の出入りが、2週間前に比べて倍増してきました。燃料トレーラーの出入りが、発射場に通常の倍以上になったという状況が出てきたわけです。次に、北朝鮮の指導者が、ミサイルの発射を示唆する談話が出てきたとします。この指導者が宣言したことは、過去に高い確率で実施されているという経緯があります。これらの2つの事実から、ミサイルの発射の可能性は高いという仮説が成り立つわけです。でも、仮説の構築は、対応の一部に過ぎません。
 燃料トレーラーの出入りと指導者の発言の相関関係を考察する目的の一つは、因果関係を見つけ出すことにあります。この因果関係が明確にできれば、相関関係の明確化より未来予測の確度が高められます。因果関係が分かれば、現在の事象の原因を捉え、未来に起こる結果を予測できるわけです。北朝鮮の状況を分析すると、経済的に困窮しています。いつまでも、国民にこの状態を強いることできないようです。貿易が自由にできれば、この困窮は緩和します。現在、北朝鮮に対して行われている経済制裁の解除が、北朝鮮の狙いだということが浮かび上がります。経済制裁の解除のためには、核の放棄が求められます。でも、核を手に入れた国が、核を手放すことはないようです。すると、北朝鮮の問題は、すぐには解決に向かわないという次の仮説が出てきます。ミサイルの発射や核開発の情報に一喜一憂することなく、経済制裁とミサイル開発の推移を見守ることになります。もちろん、開発を進めれば、制裁を強化することになります。
 もう一つの例題を考えてみましょう。中国国民は、ナショナリズムを日常的に的に強く煽られています。海外旅行中は別として、国内ではSNSなどの媒体も規制の対象になっています。共産党を批判するツイートは、即座に削除されていくシステムが構築されています。中国本土の多くの人々は、香港で何が起きているかを正確には知らされない状況があります。あらゆる空港や鉄道地下鉄の駅には、監視カメラや検問所が設けられ設けられています。常にテロが起きる驚異の中で暮らしているといっても、過言ではないのです。でも、厳しい監視体制に対する国民の不満の兆候はありません。香港情勢も、政府の流す情報が主流になっています。香港市民の暴力映像を流して、警察権力の行使する映像は流されない仕組みになっています。西側諸国から見れば、異常と思える体制に中国国民が溶け込んでいるようです。西側の理想は、中国に一朝一夕には根付かないと考えるべきかもしれません。
 体制や価値観の違いを理解したうえで、情報を集めることになります。中国の情報を評価する場合、西側の感覚で判断することをしないことです。中国の価値観と西側の価値観を考慮しながら、評価していくことになります。価値ある情報を集めるには複数の情報ソースにアクセスし、情報の真偽を確かめることになります。新聞であれば、読売と朝日を読み比べるなどの配慮が必要になるかもしれません。さらに、詳しく知ろうとすれば、専門家の書いた本を複数読むことになります。より詳しく知ろうとすれば、専門家の過去10年程度の論旨の変化などを比較することも必要になるかもしれません。中国に関して言えば、専門家によってはかなり論旨の変化が見られます。10年間の中国の状況とその変化、そして、その因果関係をある程度正確に記述している方の情報を、信頼することになります。



凱旋門賞に勝てるサラブレッドを育てる  スモールアイデア NO 351  

2019-12-28 17:50:58 | 日記

 
中央競馬(JRA)の売り上げは、7年連続で増えています。2011年には、年間2兆2935億円でした。でも、2018年には2兆7950億円にまで回復しています。馬券の売り上げが伸びている時期は、景気が好調という経験則もあり、世の中が平和という意味で喜ばしいことです。もっとも、悲観的な方は、1997年の絶頂期は4兆円だったことを上げて、現状を嘆く方もいるようです。JRAの競馬場は、10カ所(札幌・函館・福島・新潟・中山・東京・中京・京都・阪神・小倉)あります。 そして、レースは年間に3450もあるのです。そのレースの中から厳選して馬券を買えば、失敗は少なくなると考えるマニアもいるようです。競馬は、100円で大人が遊べる数少ないゲームです。この大人のゲームを、楽しんでいる方も多いのです。多くのファンを抱えながら、JRAはその要望に応えようとしています。その要望の中に、強いサラブレッドの育成があります。JRAの豊富な資金をもって世界中の名血を集め、すばらしいサラブレッドを生み育てていることを世界の競馬関係者が評価しています。
 そこで、これからも強いサラブレッドを育成する仕組みを考えてみました。最近の競馬界で注目すべきことは、外厩の活躍になります。外厩とは、美浦や栗東のトレセンの外にある設備が充実しているトレーニング施設のことです。JRAのレースの合間に美浦の厩舎などと外厩を行き来して、調教や調整を重ねる競走馬が増えてきているのです。外厩は競馬を細かく検証して、各馬のポテンシャルから最善の調教方法を見出だそうと努力しています。多くの馬房がある外厩は、さまざまな馬の血統やタイプのデータを急速に増やしてきているのです。多くのデータは、美浦や栗東で行われていた育成法の固定観念を打ち破るカギにもなりつつあると言われています。
馬はとても臆病で、小心な動物です。臆病で警戒心が強くなければ、生き延びることができない環境で生存してきたのです。馬は常に近くに捕食者がいないかと、周囲に気を配って生き延びきた動物でもあります。わずかな危険の兆候も見逃さないために、眼や耳、そして素早く逃げる走力を進化させてきました。視野が約350度とひじょうに広く、自分の真後ろまで見ることができる特徴があります。さらに、両方の耳を独立して前後左右に動かすこともできます。これらはすべて、厳しい自然の中で生きるための能力であったわけです。この習性は、人間に飼いならされた現在でも、サラブレッドの中に残された特質になっているのです。馬の蹄は人間では中指の爪にあたり、馬は4本の中指で立っている動物です。中指4本で、500㎏程度の馬体を支えているわけです。走るときには、2本の中指で秒速15m以上のスピードで500㎏の馬体を運ぶ運動をします。サラブレッドは、オリンピックの100mの金メダリストよりはるかに速いスピードで走る動物でもあるのです。このような厳しい運動をするために、競走馬がレースや調教のために体のどこかに問題を抱えていることが普通のようです。「だましだまし」走らせる場面も、出てくることもあります。
サラブレッドは、短距離向きの血統になります。短距離に向いている馬は、速筋の割合が多くなります。速筋は、瞬発力を出すことに優れた筋肉です。この速筋の短所は、長い時間にわたって力を出すことができないことです。つまり、長距離には向いていないということになります。人間の陸上競技の短距離選手の場合、速筋と遅筋の割合はおよそ70%と30%と言われています。ちなみに、遅筋の力は弱いのですが、長く運動を続けることができる筋肉になります。長距離選手になると速筋が30%で遅筋が70%となって大きな違いがでてきます。速筋と遅筋の割合をサラブレッドで調べてみると、速筋が87%で遅筋が17%になるのです。いかに、短距離向きで、長距離向きでないかがわかります。このサラブレッドを、訓練によってダービーの2400mにまで走れるようにする仕事が、調教師をはじめ、厩舎関係者の役割になるわけです。したがって、新馬戦といえば1200~1600mなど短めのレースが多くなります。新馬にはキツいとされる1800~2000mといった長めのレースを走る馬は、数が少なかったのです。
競馬関係者の夢は、ダービー馬を育てることです。そのためには、短距離の体質を長距離の体質に変えていくトレーニングが求められます。その課題の一つが、心肺機能の強化になるわけです。心肺機能を強化するには、秒速14mより速いスピードで走ることが有効な負荷になります。これは、馬の蹄の構造からすると、非常にリスクの高い負荷になります。でも、ダービーの夢をかなえるためには、必要なトレーニングを行わなければなりません。心肺機能の強化し、有酸素能力を高めるためには、酸素摂取量を増やし、酸素を体内に行き渡らせることが求められます。そのためには、人間でも行うインターバルトレーニングや長距離走と同じような原理のトレーニングを行うことになります。脚元への負担を軽減しながら、一定のトレーニングをすることになるわけです。JRAは、そのために坂路コースやウッドチップコースを設けました。坂路コースは平坦コースより遅いスピードで走っても、同様の負荷がかかるのです。遅いスピードは、馬の脚元への負担軽減になります。ウッドチップは、ダートに比べると格段に脚元への負担が少ない優れものです。サラブレッドは、体のどこにも問題がない馬はいないと言われています。坂路コースとウッドチップの採用は運動の強度は高めながら、故障の少なくしてきたのです。蛇足ですが、最近はウッドチップよりもさらに脚元への負担が少ないニューポリトラックのコースが採用されています。
 日本のサラブレッドの育成方法には、目覚ましく進歩を遂げています。でも、その上をいく国も現れています。ドバイの競馬は賞金総額も高く、優れたサラブレッドや調教師が集まっています。そこでは、競走馬を強くする試行錯誤が行われています。ドバイの調教師の管理馬が、香港やドバイのレースで活躍しくいるのです。ドバイの厩舎には、トレーニング用マシンを設置しているところもあります。競走馬専用のトレッドミルで、騎手が騎乗しなくてもトレーニングができるのです。騎乗しなくてもトレーニングができるので、脚元や背中への負担を軽減できます。トレッドミルを使う際、馬の安全性に関しては専門のスタッフが2名ついて、万全を期しているようです。ある面で、日本の坂路コースやウッドチップコースよりも、サラブレッドの負担を軽くしながら、有酸素能力を高めるトレーニングをしていることになります。室内で行うトレッドならば、速さや角度を自由に変えることができます。心拍数を計測し、適度な負荷を与えることが可能になります。これらのデータを蓄積していけば、強いサラブレッドを作ることに貢献していくことになります。もちろん、日本の外厩もトレッドミルを設置し、強いサラブレッドの育成に努めています。
 最後に、希望になります。優れた日本のサラブレッドが、外国のレースで苦戦をしています。すでに、外国産のサラブレッドに負けない競走馬を育てていると思うのですが、凱旋門賞などでは勝てないレースが続いています。理由は、日本のサラブレッドがヨーロッパの馬場への対応が難しいからだとされます。デコボコがなくどこも同じように平坦な馬場が、良い馬場です。馬場のどこを走っても、同じ感覚で着地できることが走りやすい馬場が良いということになります。日本の馬場は、この意味で非常に良い馬場なのです。でも、ヨーロッパの競場はデコボコの馬場で、日本と同じように走れないという問題があるのです。よく整備された均一な馬場で走っている日本馬は、ある意味では過保護になっているともいえます。ヨーロッパで勝つためには、荒れた馬場に適した走り方をマスターする必要があります。そこで、提案になります。JRAには、東京や京都など10の競馬場があります。この一つをヨーロッパ並みの荒れた馬場にしてはどうでしょうか。そこで、ヨーロッパの馬場に適したサラブレッドを選び、そして育成していくわけです。凱旋門賞の賞金6億円とかサウジの賞金が20億円(優勝は10億円)を獲得できるサラブレッドが現れることを願っています。



農協と農家  アイデア広場 その522

2019-12-26 17:57:04 | 日記


先の参議院選挙で、農業団体が支援する2人の参議院議員の励ます会が秋田で行われました。せっかくの励ます会の支援にかかわらず、秋田選挙区の代表は落選し全国比例の参議院議員は当選しました。東北では秋田だけでなく、岩手、宮城、山形も農政連が推す自民党候補が相次いで落選しました。農業の世界では、19990年代まで、農協を通して政治力を発揮してきました。この当時は、農協が政治を左右する大きな力があったのです。でも、農協の政治力が落ちてきています。
地域の農業関係者において、有力者の役員に政治家タイプと呼ぶ人達が減少する傾向があります。農協の大型化が進み、金融分野に詳しい知識を持っている人が力を持つようになってきました。政治より金融が優先される流れが、この業界でも強まっています。コメの消費は、減少しています。でも、園芸作物や畜産は日本の農業の中では元気な作物になっているのです。全国比例で当選した参議院議員は、野菜など園芸作物や畜産の知見が豊富な人たちでした。コメできちんと収入を得られないことに不満を持つ農民もいる一方、園芸作物や畜産農家にはうれしい流れも出てきています。この流れが、コメ一辺倒に傾斜した農協に変化をもたらしているようです。農協の政治離れとでも呼ぶべき現象を引き起こしているのかもしれません。
夏場に並ぶ新米は早場米と呼ばれ、旬を感じさせる食材としてスーパーの定番になっています。早場米は、新潟県や北海道などの主産地より早く収穫できるコメです。旬を感じさせる早場米ですが、消費は振るわない状況にあります。2019年産の新米の店頭価格は、おおむね高値で始まりました。値上がりの背景には、農協が農家からの買い付け価格を引き上げたことがあります。これは、コメできちんと収入を得られないことに不満を持つ農家に配慮したものでしょう。でも、スーパーなど消費者と日常的に接している売り手側は、早場米の仕入れを減らしているのです。コメは近年、高値が続いており、消費者のコメ離れに拍車がかかっています。パンの消費額は、コメを3割上回っている現実があります。お客さんと日常的に接しているお店は、消費者の動向を直近で見ながら商品を仕入れていきます。コメは、その意味で後れを取っているようです。
 減少するコメの消費を回復させるヒントが、コーヒーの生産国に見ることができます。コーヒーは干ばつなどの被害を受けやすく、価格も変動しやすく、経済的には不安定な作物です。1945年以降始にまった冷戦は、1990年ごろまで続きました。冷戦の初期において、経済が不安定な諸国に共産主義が広まる傾向がありました。西側諸国は、この広がりに危機感を持ったのです。特に、アメリカ合衆国のおひざ元にある中南米諸国には、その危機が広がりました。その経済対策が、コーヒーの生産国で実施されたのです。中南米の赤化を恐れた西側諸国は、中南米諸国と「国際コーヒー協定(1962年) 」を結びました。西側諸国は、中南米諸国が有利になる価格でコーヒーを購入する仕組みを構築したわけです。住民の安定は、共産主義が広がることを防ぐ有効な手立てになっていました。
でも、冷戦終結後の1990年に、「国際コーヒー協定」が停止します。共産主義の驚異がなくなったために、西側諸国は、中南米のコーヒー農家に対する支援中止に踏み切ったわけです。実は、協定で品質が横遊びになったため、アメリカのコーヒー関係者が不満を高めていたのです。コーヒーは出来の良い農園の豆も、そうでないものも一緒にまとめて集荷と精製が行われていました。玉石混淆のコーヒーは、西側諸国の消費者に不評だったのです。アメリカには、もっと高品質な豆を求めるスペシャルティコーヒー運動が起こりました。現在は、コーヒーの生産国も、品質の良いものは良いものだけを選んで、消費者に届けるようにしています。結果として、世界中にコーヒー愛好家が増え、コーヒーの生産が順調に伸びているのです。
農業の世界では、19990年が一つのエポックになるようです。日本においても、1990年以前は、農協を中核とするコメ農家が政治に強い影響を持っていました。いわゆる保守勢力は、西側の同盟を補完する勢力として経済的に支援されてきたわけです。コメを政府が高く買い取り、安く市場に放出する仕組みができていました。でも、この方式は消費者に良いコメも悪いコメも区別することなく、消費者に供給するものでした。これは、中南米のコーヒー農家に対する支援と同様の仕組みだったのです。日本のコメ農家と中南米のコーヒー農家の違いは、国際化を認めるか、認めないかにありました。日本の農家が求めたことは、政府によるコメの買取価格の引き上げと農産物開放の阻止でした。中南米のコーヒー農家は、国際化を受け入れ、自助努力を推し進めました。1990年から2010年の期間は、日本の農家は停滞し、外国のコーヒー農家はたくましくなったという結果をもたらしました。
現在は、日本においても消費者と農家の生産者が、直接に取引する仕組みができてきました。良い作物を提供する農家が増えることは、「食の安全」をもたらし私たちの健康増進に繋がります。農家も、安全で高品質なものを求める消費者のニーズを把握するようになりつつあります。例えば、無農薬で有機栽培のコメを求める消費者が増えています。無農薬有機栽培米で完璧なまでに美味しいと認められた米が、1俵10万円で取り引きされる現実もあります。レアな高品質のコーヒー豆も、同じような取引価格の高騰が見られます。
最後に、提案になります。コメ離れで、売りにくくなっている現実があります。売りにくくなっているコメを、スムーズに販売する仕組みを作れば、みんながハッピーになります。農協が、消費者と農家のニーズをマッチングする機能を持ってはどうでしょうか。例えば、関東の新米が出回るようになれば、西日本産の売れ行きが低下します。低下が長期間にわたり続けば、農家も農協も、そして西日本の消費者も困ります。農家の所得が減れば、地域経済の活力も低下することになります。消費者が、おいしいコメと園芸作物を求めていれば、その作物を栽培することが効率的です。多くの農家は、この消費者のニーズを経験的にしか把握できません。でも、農協の組織力を使えば、このニーズの把握することは容易でしょう。農協は作物の買い上げではなく、情報の提供によって利益を上げる仕組みを作る時期にきているのかもしれません。


給食用ロボット・子ども食堂・AIと人間の共生  アイデア三題噺 291

2019-12-24 17:14:20 | 日記


 福島県福島市の大波小学校跡で、ドローンの飛行体験の催しがありました。地上での飛行は法律的に難しいために、体育館で行うこともあるようです。地方では、統廃合される小中学校が増えており、廃校になる学校も多いのです。これらの学校には、給食施設などが残されているところもあります。これを、利用しないでいることは勿体ないことです。活用されていない施設を、無償で民間の業者に開放してはどうでしょうか。施設に投資する資金を給食業務に使えれば、安いコストで栄養豊富な給食や弁当を提供できます。
 そこで、活用されていない施設を有効活用する仕組みを考えてみました。孤食する高齢者へ弁当を宅配するサービスが、ビジネスとして成立するようになりつつあります。弁当箱におかずを詰める作業は、多く人手が必要です。弁当や総菜などは単価が安く、多品種少量生産のため機械化が難しいとされてきました。導入しても、採算が取れないというものです。「必要は発明の母」の言葉通り、弁当業界にも新しい流れが起きています。低コストで、人手をかけない弁当の生産工程を工夫する業者も現れています。ロボットの性能を向上させて、惣菜を詰めることのできるロボットを開発しているのです。人と並んで唐揚げやミコトマトなどを弁当箱へ詰め込めるヒト型ロボットが作業を始めました。
 もし、民間業者が無料で学校の給食施設を使用できれば、ロボットの購入費や運用費を賄えるかもしれません。民間業者から、学校へ給食が提供されるようになっています。ロボットに汎用性があれば、高齢者の方にも弁当を提供することが可能になります。さらに、
勿体ないという思想がありますが、この学校の給食施設と子ども食堂を合体してみてはどうかと考えたわけです。ボランティアの方々が、無料で安価な食事を提供する「子ども食堂」が全国に広がっています。「人はパンのみにて生くる者にあらず」という言葉あります。食べるだけでは、何となくものたりません。子ども食堂を、先端技術の啓蒙の場所として利用する案はどうでしょうか。ここにやってきた子ども達が、体育館でドローンの操縦を体験してもらいわけです。ドローンだけでなく、プログラミングなどの実技コーナーを設けておくことも考えられます。子ども達がドローンやプログラミンのスキルを学んで理解するには、実際の体験が不可欠です。子ども食堂にやってきて、ドローンの操縦が楽しいとか、プログラミングも楽しいと実感し、身近に感じられるようになったら成功といえるでしょう。
 学校の跡地が、子ども食堂だけでなく、地域の人びとに給食を提供する食糧基地になれば、有効活用できたことになります。余談ですが、子ども達に弁当を作るロボットを観察して貰います。そこから、いろいろな意見を聞き出すことも有意義かもしれません。いっそ、子ども達とロボットが一緒に弁当を作成してはどうでしょうか。ロボットは、まだまだ細かな点において、汎用性がありません。子どもでの方が優れている点もでてくるでしょう。将来、人間はAIと共生していかなければならない立場にあります。小さい時から、そんな訓練を受けておくことも必要かもしれません。

オリンピックからビジネスの利益をひねり出す工夫  スモールアイデア NO350

2019-12-21 17:05:09 | 日記


 2020年のオリンピック・パラリンピックは、感動をもたらす場面を多く提供することでしょう。この成功は、観光国日本をさらにアピールする機会になるかもしれません。事故もなく大会運営が終了すれば、日本の治安や安全性の評価はますます高まります。先に行われたラグビーワールドカップは、大成功でした。テレビでも、大々的に報道され、その感動の余韻に浸る人は多くいます。海外のマスコミも高く評価をしていました。でも、それらの既存のメディアよりも、SNSのポジティブな言葉が圧倒的に多かったことが、成功の証になっています。メディアとSNSの複合的な評価が、ラグビーワールドカップが大成功という結果を実証しているわけです。
 そこで、オリンピックやパラリンピックが、成功という感触をいち早く捉える仕組みについて考えてみました。SNSなどのツイート数が最も少ない時間帯は、早朝5時頃になります。そこから徐々に増加していきます。朝6時ごろは「明るい」、「眠い」、「健康的」、「穏やかな」、「がんばろう」など言葉が目立ってきます。朝は、比較的ポジティブな言葉が目立つようです。これらの現象は、ネットの世界で起きていることです。でも現実の世界においても、朝起きたばかりの時には、セロトニンやアドレナリンの分泌が高まり、やる気が実際に出てくる時間帯でもあります。ネットと現実の世界は、別個の世界であるどころか、切り離しえないものになっているようです。ネットと現実は、ますますその連関が密接なものとなっていくことは間違いないようです。ここに、ネットから現実を知る工夫や仕掛けの可能性が見えてきます。オリンピックやパラリンピックの成功は、メディアやSNSのポジティブな言葉の多さによって、ある側面は計られるようです。ある意味で、この成功は、国内外のメディアの高い評価やSNSのポジティブなツイートが数多く発信されることで明らかになるともいえます。もちろん、別の側面では、経済効果などの数字も評価の対象になるでしょう。
 そこで、ポジティブな言葉から、オリンピックをとらえ、ビジネスにつなげる仕組みを考えてみました。疲れるという言葉は、普通の夜に多く出てきます。朝とは逆に、ネガティブな言葉が多く出てくるのです。これは、ある面では当然の現象です。1日の疲れが夜に出てきて、眠りにつくために体が準備している状態になるわけです。活動に必要なセロトニンが、体を休めて睡眠にいざなうメラトニンに代わっていく時間帯でもあるわけです。もし、オリンピックやパラリンピックの期間を通じて、夜も昼もポジティブな言葉で溢れるようになれば、私たちに心地よさを提供していることになります。「素晴らしい」とか「感動した」などの言葉が、多く出てくれば、心地よい状況に満たされることになるわけです。ある意味で、成功ということになります。
 オリンピックを見て心地良い気分に浸っている状況を、ビジネスの視点から利益を上げる仕組みを作り出そうと試みることは当然でしょう。幸福感で満たされているときに、消費を刺激することは、合理的な手法です。感動をもたらした選手のユニホームには、希少価値が付きます。これを限定販売することは一つの販売方法になります。日本人が感動した場面は、世界の人々も感動することは多くなります。感動とともに、選手の身に着けていたユニフォームやシューズもあこがれの対象になります。このユニフォームなどは、日本人だけでなく、世界をターゲットにしたレアものを販売することも選択肢になります。ユニホームだけでなく、シューズなどもその対象になります。単品として販売する手法に加えて、希少価値のあるユニホームを「オマケ」として抱き合わせで販売する方法もあるかもしれません。ユニホームをおとりにして、より高価なものを買ってもらうという手法も選択肢になります。
 オリンピックの勝ち負けや感動をもたらす種目が、事前にわかっていれば、ユニホームの販売方法が効率よくできます。勝ち負けや感動をもたらす種目の予想技術は、思ったより進んでいるようです。イギリスのブックメーカーやアメリカ企業による金メダルの獲得予想などは、大きく外れることはありません。この予想に加え、観衆がどんな感動を望んでいるかを把握すれば、準備はオーケーです。
 余談ですが、SNSの解析ノウハウをうまく使えば、日本の1憶3000万人の実態を浮かび上がらせることも可能だと言われています。たとえば、会社や学校が昼休みになる12時台に、ツイート数が小さなピークを迎えます。次に、夕方から夜に向けて再び上昇し、22時台がツイート数の最多になります。この時に、「疲れた」という言葉に注目して調べていくと、「疲れた」という言葉を含んだツイート数は、22時台に最も多くなります。この数字を見て、私たちは22時に最も疲れる人が多いと即断してしまいます。でも、「疲れた」の本当のピークは、夕方の5時なのです。本当に疲れた時には、ツイートをする元気もなくなっているわけです。疲れのピークから少したったころに余裕ができて、「疲れたよ」というツイートが増えるわけです。ツイートをうまくまとめれば、国民や特定のグループの実態の「見える化」ができるというわけです。
 オリンピックでは、通常より多くのツイートが飛び交うことになります。1億人の実態が分かったからといって、ビジネスの対象を1億人にしてはいけません。1億人に売るという販売方法よりも、より小さなグループに狙いを絞って、商品やサービスを用意することになります。対象を絞った限定販売を行うわけです。もちろん、世界的レベルで情報を瞬時に収集できる企業は、日本のアスリートだけでなく、他国のアスリートが演出した素晴らしいパフォーマンスも対象にするかもしれません。




飼料として注目される昆虫  スモールアイデア NO 349

2019-12-19 17:11:08 | 日記

 世界的に、昆虫食や昆虫の作った飼料などに注目が集まっています。2014年、カナダのバンクーバー市は、すべての野菜廃棄物のリサイクルを義務づける法律を可決しました。多くの企業は、リサイクルを義務づけるこの法律が現実性をもたないと非難したのです。でも、困った企業が多ければ、それを解決した企業にはビジネスチャンスが訪れることになります。そして、このチャンスを待ちか構えていた会社があったのです。カナダのエンテラ社は、野菜の廃棄物を利用する仕掛けを作っていました。この会社は、グローバルな問題である食品廃棄物と人類の栄養不足という2つの課題の解決策を用意していたのです。そして、廃棄物を受け入れることで、この会社は確実に稼いでいます。
 一般的に、企業は食品ロスの削減に、コストをかけながら取り組んでいます。もっとも、家庭の食品ロスの割合が増えているという事実もあります。どちらにしても、食品ロスが大量に吐き出されている現実があります。大量の売れ残り、古くなった野菜やサラダなどを廃棄する大手食料品店は存在していました。これらの企業は、リサイクルを義務化された条例に苦慮していたわけです。この野菜の廃棄物を有料で受け入れる施設ができたのです。古い果物、野菜など甘酸っぽい匂いのするゴミの山を積んだダンプカーが入ってきます。野菜廃棄物を満載したダンプの重量を計ると、積荷を下ろし、あとで空車の重さを計ります。その重量差によって、廃棄物の重量を把握するわけです。エンテラ社は「廃棄物」を有料で受け取り、ミキサーにかけてドロドロのジュースにします。このジュースを、アメリカミズアブの幼虫に食べさせるのです。
 驚くべきことですが、5 kgのアブの幼虫が100トンのくず野菜を餌として食べてしまうのです。この5kgのアブの幼虫は、6トンの肥料と6トンのタンパク質の豊富な幼虫を作ります。幼虫の糞と蛹の抜け殻が、6トンの肥料になります。アブの糞から作られた肥料は、地元の農家や家庭菜園に利用されています。タンパク質の豊富な幼虫は、ニワトリや魚の高品質の飼料になります。
 農薬や肥料を多量に使う集約的な農業が行なわれている地域では、水が汚染されるケースが出てきます。さらに、家畜などを併用している地域では、温室効果ガスを大量に排出することになります。酪農や混合農業は、大量の水と栄養を生態系から奪うことで成立します。ある意味で、生態系に対して水質汚染をもたらしているわけです。牛肉、豚肉、鶏肉を1ポンド生産には、それぞれ5300リットル1900リットル1520リットルが必要になります。集約的農業を行う地域では、有害な窒素化合物が水路に漏れ出して地下水層にしみ込むケースもあります。そして、二酸化炭素の排出も多くなるのです。でも、アブからタンパク質を作る場合、水を使う必要がありません。むしろ、餌として使う果物や野菜から水分を回収しているのです。アブは、実質的に水の生産者といえるわけです。エンテラ社は、年間1520万リットルの淡水を回収できるとアピールしています。
 地球のいろいろな地域で食べられている昆虫は、1900種になります。人間による昆虫食には長い歴史があります。一般的に人気がある昆虫食は、カイコ、イモムシ、アリ、イナゴ、コオロギ、セミなどがあります。アミノ酸組成の豊富なカイコの蛹は、良質なタンパク質と脂質の摂取源として優れています。世界保健機構(WHO)も、カイコが人間の食用に適するタンパク質だと認めています。カイコの栄養成分は、炭水化物の吸収を遅らせて食後の高血糖を緩和する作用もあります。昆虫は、鉄や亜鉛のような「造血」ミネラルが豊富です。ミツバチやシロアリは、鉄欠乏症に有効な食物源としての可能性を持っています。コオロギとミールワームは亜鉛が多いのです。これらの昆虫を組み合わせた昆虫食を、サプリメントとして製品化できれば、優れた鉄欠乏症の予防食品になるかもしれません。
 でも直接、昆虫を食べることに現代人は拒否反応を示すようです。多くは、養殖魚や家畜の飼料として利用されています。ヨーロッパイエコオロギは大規模な養殖が成功し、国内消費用と輸出用に販売されています。この昆虫は、養殖に必要な物的インフラも最低限で済みます。昆虫は、家畜に比べて生産に伴う全般的な資源使用量も少なくて済むのです。家畜、家禽、水産物養殖の飼料に利用することは、合理的な手法です。タンパク質生産手段が、昆虫養殖に移行することで、環境保護に貢献することが可能になりつつあります。昆虫食は、世界の貧しい地域に住む零細農民の世帯の収入を増やし、栄養状況を改善する可能性を持っています。世界のエンジェル投資家達が、こうした新興昆虫企業に大金をつぎ込んでいる現実も見逃せません。



中国のアフリカ豚コレラを収束させる方法  スモールアイデア NO348

2019-12-17 17:53:18 | 日記


 中国国内で、家畜伝染病アフリカ豚コレラのまん延が深刻化しています。その影響が、アメリカと中国の大豆輸入にも波紋を投げかけているようです。中国では2018年8月に、遼寧省藩陽市の養豚場で感染が初めて確認されました。感染地域の周りを封鎖して、すでに110万頭もの豚を殺処分しています。2019年3月の豚の飼育頭数は、前年同月比19%減まで落ち込んでしまったのです。アフリカ豚コレラのまん延で、中国における豚の飼育頭数が減少しています。
 ジニ係数が、0.4を超えると暴動が起きる警戒水域になります。ジニ係数は、社会における所得の不平等さを測る指標になります。日本は0.3.で、中国は0.5という状況です。中国において、豚肉は庶民の食卓に欠かせない食材の一つです。豚肉価格は、2019年の冬に過去最高を更新するとの予測が出てきました。中国の歴史を見ると、国民が食べられない状況になったとき、王朝を転覆させるほどの暴動が起きています。中国政府は、豚肉の価格が高騰すると、在庫を放出し価格を抑えてきた経緯があります。今回のアフリカ豚コレラのまん延においても、豚肉の供給を続ける策を取らなければならない状況にあります。中国の豚肉消費量は5500万トンで、世界全体の半分を占めています。現状では、なりふり構わず、豚肉や鶏肉、そして牛肉の輸入を増やす策を取っています。
 アフリカ豚コレラは、1912年ケニアで報告例がありました。徐々にヨーロッパに広がり、2007年にはロシアに侵入したのです。アフリカ豚コレラにかかった豚は、1週間程度でほぼ100%死亡します。このウイルスは、豚肉に3~6が月残存し、活性を保ち続けるのです。アフリカ豚コレラは、スペイン産ハムで140日間残存したことが報告されています。流行した国々では、根絶に最低5年はかかっています。これから推定して、中国市場の規模や衛生基準の低さを考慮すると、10年はかかるといわれているのです。
 食料の大生産拠点であるアジアで、農水産業に最先端技術の導入が始まっています。タイの大手企業は、人工知能(AI)による養豚に取り組んでいます。この企業は、中国への進出にも意欲的です。豚の動きをモニターし、食欲がなかったり、運動量が落ちていたりする豚を瞬時に把握しています。カメラを使い、豚の飼育区域に許可なく入ると、即時に管理者に連絡できるシステムも作動可能しています。このシステムには、靴の裏にウイルスをつけたまま人が入ることを防ぐ狙いもあります。ウイルスに感染した可能性のある映像を記録し、時刻や場所、そして病気が広がった場合に、その感染路をたどれるようにする工夫です。感染防止に細心の注意を払うのは、世界的に豚肉の供給に不安が広がっているからなのです。高性能のカメラやAIを導入するには、コストがかかります。これが、企業の課題になっている点でもあります。
 中国には、「天網」と「雪亮」という二つの監視システムがあります。「天網」は、都市部の犯罪予防を目指しています。香港のデモなどで、監視カメラの破壊が報道されています。監視カメラを、民主派の人たちは攻撃対象にしているようです。これは、中国本土の監視体制を嫌う現れなのでしょう。中国には、監視カメラはすでに27億台が設置されています。人口の2倍以上のカメラが、生産され設置されているのです。都市部の顔認識AIカメラのカバー率は、ほぼ100%だと中国当局が言っています。画面に映る人間の身元を、数秒で割り出す高性能のAIカメラも配備されているようです。このAIカメラの性能は、数万人単位の群衆の中から約60人の指名手配犯を割り出し、逮捕に結びつけるほどのものです。中国には他にも、スマホへのダウンロード記録、生体情報、位置情報などの個人情報が集積されています。これらをAIカメラと結び付けて監視をしているわけです。この監視システムを、アフリカ豚コレラ蔓延を阻止するために利用できないものでしょうか。
 民間旅客機が本格的に登場したのは、第一次世界大戦後の1920年代からです。旅客機の商業化は、軍事用に開発されていた飛行機を民間に転用したことに始まります。巨額の軍事費を投入して、エンジンやプロペラの性能を高めてきました。軍が基本的な形を作った後で、民間が中間の投資を省略して、成果だけを借用する方式だったともいえます。先進的技術がある場合、追加的な投資の少ない分野を狙うビジネスの選択肢もあるわけです。
技術の汎用性が高ければ高いほど、派生的ビジネスが生まれていきます。
 ここからが、最後の提案になります。中国では、個人情報と監視カメラを組み合わせた監視体制が完成しつつあります。中国の軍事費は20兆円と言われていますが、監視体制を含めた治安維持の費用も、同じ規模の20兆円だとフランスの研究機関は指摘しています。中国でも、農業におけるデジタル化は進んでいる企業はあります。これらの企業が、治安関係の監視技術を借用することはできないものでしょうか。
 タイの大手企業はAIを使用して、養豚に取り組んでいます。豚の動きや食欲不振、そして運動量が落ちた豚を瞬時に把握しています。感染しても瞬時に対応できる体制をとっているわけです。さらに、感染経路を遮断する工夫も練っています。カメラを使った監視網を構築しています。靴の裏にウイルスをつけたまま豚の飼育場に入ることを防ぐ仕組みを作っているのです。豚の移動を記録し、時刻や場所、そしてその経路をたどれるように工夫しています。中国において、世界に類のない感染の爆発が起こった理由は、豚を生きたまま農村から都市部に移動させたことにあります。そのために、他国で行っている対策では、封じ込めに成功していないようです。素早く、感染経路を把握し、ウイルスの移動を遮断する処置が必要です。お分かりのように、中国には高性能のAIカメラで人の移動を把握する監視体制が構築されています。これを人間の社会から、豚舎に移すだけで可能なのです。優れたAIカメラを豚舎に設置して、感染経路をたどる監視カメラの利用をすれば、格安の費用で豚コレラを抑制する仕組みが作れます。中国には、その技術的下地があります。発想力のある起業家と監視のエキスパート、そして養豚農家がスクラムを組めば、10年で収束と言われたアフリカ豚コレラを、5年以内にハッピーになるかもしれません。

 


都市鉱山国家としての日本  アイデア広場 その521  

2019-12-14 11:33:11 | 日記


つい最近の新聞を見ると、世界景気の先行指標とされる銅の国際相場が上昇しているといううれしい記事を目にしました。中国とアメリカの歩み寄りを好感し、銅は1トン5974ドルと前日から67ドル上昇したというものです。でも、銅の相場を見ていくと、安心もできない状況なのです。アメリカと中国の貿易戦争が本格する前の2018年前半につけた7000ドル台から見ると、はるかに低い相場なのです。世界景気の減速による製造業の落ち込みが、銅の実需を蝕んでいるようです。2019年5月の時点では、世界の銅地金の消費量が2497万トンと予想されていました。でも、この年の11月において、この消費量は2457万トンと下方修正されています。
 そこで、景気のバロメーターのメタルといわれる銅について調べてみました。銅地金の世界消費量の5割を占める最大需要国の中国では、銅の輸入が鈍くなっています。この国の新車販売が、9月まで15カ月連続で前年の実績を割り込んでいるのです。新車の生産が停滞するとそれにつれて、部品向けの銅需要が減少します。この流れは、家庭電化製品にも及んでいます。世界の銅の半分を消費していた中国の経済停滞が、銅の価格を下げているともいえます。現在は、銅鉱石生産で世界最大のチリの政情不安が、買いの材料になっているようです。それでも銅の相場の回復には、時間がかかりそうです。今回の価格上昇は、今年春につけた6500ドルにも届きそうにもありません。当面は5600ドルから6200ドルの狭いレンジで値動きが続きそうです。
鉄を東の横綱とするなら、銅は西の横綱です。銅の不安定さは、枯渇が懸念されていることです。2005年ごろ世界の銅の年間消費量は、1800万トンでした。経済成長の著しい中国は、当時440万トンを消費し、世界の24%を占めていました。当時の価格がトン当たり2000ドルでした。現在は、6000ドルですから、その高騰ぶりがわかります。2017年には、銅の年間消費量2400万トンになっています。銅の生産量は、現在の2500万トンの水準を超えることはなく、早晩落ちるだろうと考えられています。
このことは、銅の価格をさらに高くなることを意味します。銅の特徴である導電性の高さから、送電線、配線等の電線、電子電気機械に使われています。さらに、電子部部品から自動車や航空機など多くの分野で使われています。現在の産業社会では、不可欠な金属になっているのです。中国の一人当たり銅消費量は、3.3kgになります。この消費量は、日本の4分の1アメリカの3分の1なのです。まだまだ、銅を必要としている国ということになります。経済が停滞したとは言え、中国は5%以上の成長を続けています。この成長には、銅が不可欠です。さらに、成長著しいインドも銅の需要が増加しています。加えて、アフリカ諸国も、銅を必要とする成長の時期になりつつあります。銅をはじめとするベースメタルは膨大な消費量になり、さらに需要が伸び続けることは容易に想像できます。でも、銅を生産し供給する国々には、多くの問題が横たわっています。
これは、2010年以前のお話になります。コンゴのカタンガ州の銅・コバルト鉱山で、6万7000人の人たちが働いていました。このカマタンダ鉱山では、1日当たり3ドルを稼ぐために働いているのです。ここでは、大人に混じって200人の子供が地下25mの深さで働いていました。鉱石を掘って、洗って袋詰めにして、ブローカーに売るのです。ブローカーは、その鉱石を州都ルブンバシにある中国企業の精錬所に供給します。手掘りの鉱石を精錬してできた銅地金やコバルトは、最終的にソニーやノキア、サムスンに売られたということです。
世界の発展途上国で、貪欲にメタル資源開発をおこなっているのは、国際資源メジヤーといわれる企業群です。メジャーは植民時代の権益を引き継いで、歴史的にアフリカの資源をわがものとしてきました。鉱山対象のファンドマネーは、毎年20%の資金運用成績を求められました。高い資金運用成績を求められる中において、キレイ事だけではすまない現実があったようです。鉱山の採掘における児童労働問題は、1800年代の欧米では否定されました。でも、欧米では否定された植民地支配の名残が、21世紀おいても行われていたのです。もっとも、手を汚すのは、ジュニアといわれる探鉱会社と地元の下請け企業に移りつつあります。
発展途上国における資源開発は、自然環境の破壊や貧困を助長する場合も多いのです。資源が発見されたとしても、その場所は自然や生態系が豊かで、先住民族が住んでいる地域になるケースも出てきました。環境や地域住民に影響が大きい開発プロジェクトでは、地元の人たちの同意が必要になります。合意が取れない場合、反対する住民の暗殺、拷問、拉致などの事件が実際に起きていたのです。メタル資源採掘が引き起こす問題には、産出国の貧困や政権の腐敗と結びつくケースがあります。欧米のメジャーの資源開発は、資源産出国には利益をもたらさないケースが多いという現実がありました。
 そんな欧米の資源開発に対して、中国が進出してきた2005年頃には、チャンビシ鉱山の開発は、ザンビアの人びとに歓迎されました。でも、2005年4月には、チャンビシ鉱山において、火薬庫の爆発が起き49人が死亡したのです。この年のチャンビシ鉱山の災害死亡者は、合計71人になりました。中国企業の安全対策の水準は低く、また安全管理の意識も低かったのです。チャンビシ鉱山では、賃金が月100ドル程度でした。この100ドルという賃金は、カッパーベルトにあるインド資本のコンコラ銅鉱山の4分の1以下だったのです。中国企業も、アフリカの人々に低賃金で危険な労働を強いていたわけです。
資源メジャーはアフリカの未開発の資源をめぐり、中国企業との競争に巻き込まれる状況になりました。国家を挙げて資源獲得に邁進する中国に対して、欧米メジャーはタジタジになります。正攻法では、勝てない状況になりました。そこで、メジャーは集まり、中国対策を立てます。メジャーが討議した中国対策のーつが、国連に働きかけることでした。アフリカにおける中国の資源開発のやり方については、多くの問題が指摘されていました。2000年代ごろから、企業の社会的責任(Corporate Responsibility =CSR)が問われ始めます。この流れを利用して、より高い環境保護と労働安全基準を求めるように、国連から中国に圧力をかけてもらうに案が出たわけです。この当時の企業のCSRは、「お化粧」程度のものでした。このお化粧が、現在では各国の巨大年金ファンドを動かすまでに成長し、実質的な力を発揮するまでになりつつあります。蛇足ですが、メジャーの狡猾な戦術に対して、中国も反撃をしています。中国は国連での影響力を拡大しようとしています。国連拠出金を増やし、国連の幹部職員を増やしているのです。中国の狙いは、中国共産党による資源外交や少数民族対策に対する海外からの批判を封じることにあります。批判する国に対して、陰に陽に圧力をかけています。中国にとって、国連を非難される場所から安全地帯にすることが狙いになっています。そして、その狙いは一定程度、成果を上げているようです。
世界では、し烈な資源争奪戦がくり広げられています。資源の発見が、地理的に不便な辺境で開発が難しくコストのかかるところが増えています。この開発には、児童労働、奴隷労働など、深刻な人権侵害の舞台ともなってきました。自動車やデジタル機器の上流に、鉱物資源があります。その鉱物資源は、開発の手が伸びていない熱帯雨林などに残されるだけになっています。でも熱帯雨林に開発が及ぶと、この地域の生物多様性が破壊されることを、心ある人びとは認識し始めたのです。彼らは、資源開発、児童労働、自然破壊などにかかわる企業活動に対して、抑止力を発揮するようになります。金融機関が社会的責任を放棄した企業を支援する場合、この金融機関の利用を止めるという手法を取るわけです。企業の社会的責任が、厳しく問われる時代に入りつつあるようです。
「銅は取れない」、「必要とする人々は増える」、「価格は高騰する」という状況を、2025年には80億を超え、人類はこの課題をどう克服するのでしょうか。この解決のヒントが、今年度における中国の銅の輸入状況の中に見ることができます。中国は2018年末から銅分が低い廃電線など低級な「雑品」スクラップの輸入を禁止しています。さらに、今年7月から上級スクラップの輸入にも新たな規制を導入しました。ちなみに、中国はプラスチック製の被覆線をつけたままの低級銅線を受け入れてきました。それが、被覆線を除いた銅のみを輸入する方針に変わったわけです。日本には、被覆電線を分解処理する業者が少ないのです。日本はコストがかかる産廃処理を、中国に肩代わりしてもらっていたともいえます。
 日本の銅の消費量は、93万トンです。このうち63%が電線になります。驚くべきことに、銅地金は、毎年約10万トンがスクラップになって出ているのです。このうち、リサイクルされている銅は4万トンに過ぎません。6万トンの銅地金は、いまや大変に貴重な資源です。6万トンの銅を精錬するためには、銅鉱石を1000万トン掘る必要があります。このとき鉱脈周辺の鉱石にならない岩石も、1000万トン以上掘って廃棄しなければなりません。銅地金6万トンは、銅鉱石1000万トンと岩石1000万トンを掘るコストと同等の価値があることになります。毎年10万トンの銅スクラップが排出されることは、まさに「都市鉱山」になるわけです。中国は、日本のスクラップを拒否する姿勢を示しています。日本のピンチです。でも、ピンチをチャンスにする仕掛けを作れば良いわけです。
ヒントは、中国が低級な「雑品の銅スクラップ」の輸入を禁止にあります。各国が中国に輸出していた「雑品」スクラップを日本が輸入し、リサイクル事業を行うことにします。中国はプラスチック製の被覆線をつけたままの低級銅線を受け入れてきました。でも、リサイクルには有害物質を出して、大気汚染を悪化させました。中国は、健康意識が高まっています。大気汚染は、忌み嫌うものになりました。日本が本格的にこの事業に取り組めば、汚染の除去装置などを容易にクリアできる技術があります。途上国の鉱山開発より、都市鉱山開拓を目指すことが望ましい方向です。世界の「雑品の銅スクラップ」を日本に輸入して、都市鉱山の日本をアピールすることも面白いかもしれません。

スルメイカ不漁・ブリの豊漁・気候異変への挑戦  アイデア三題噺 290

2019-12-12 17:48:05 | 日記

 今年は、サンマの不良が伝えられて久しくなります。最近ようやく、店頭で目にするようになりました。印象は、「小さい」、「高い」というものでした。スルメイカを扱う関係者は、不漁にあえいでいるようです。先日、函館の「朝市市場」を覗いたら、やはり品薄状態でした。函館の2018年度の取扱量は、約840トンと過去最低だったということです。スルメイカの相場の高騰が、今年も続きそうです。サンマもスルメイカの漁獲も不振が続くようです。最近、我が家でも正月の定番だった「いかにんじん」を作らなくなりました。北海道の太平洋側は海水温が平年より5~6℃高くなっており、サンマやサケが寄り付かない状態にあるようです。地球温暖化に伴う海水温の上昇が、これまで獲れていた魚が不漁にしてしまったのでしょうか。
 でも、良く調べると、獲れない魚がいる一方、豊漁になる魚もいたのです。全ての魚が捕れなくなっているのではなく、マサバやブリなどの漁獲量は増えているのです。何十年のサイクルで、魚種交代という現象が起きています。この魚種交代といえる典型的な魚は、マイワシとカタクチイワシがよく知られています。マイワシは、1980年代に年間450万トンと漁獲量のピークを迎えました。そして、2005年には2万トンほどまでに激減したのです。現在は、30~40万トンとわずかだが回復傾向にあるようです。マイワシは、日本でも古くから、食料や肥料に使われてきたなじみの魚になります。
 カタクチイワシは、1980年代の漁獲量が10万トン程度でした。この魚は、2000年代に入ると50万トンほどに増え、今は20万トンほどになっています。カタクチイワシは、小魚のときに「シラス」と呼ばれ、日本ではなじみの食材として知られています。日本を取の巻く漁場での漁種交代という現象は、数十年規模で起きています。豊漁と不漁が、数十年のサイクルで起きているということです。この変動の原因が分かれば、サンマが不漁だとか、スルメイカが不漁だということに一喜一憂しなくとも良いのかもしれません。一般的に、不漁の原因は海水温の上昇とされています。世界の平均海面水温は、過去100年間に0.54℃上昇しました。その中でも、日本近海の太平洋や日本海、そして東シナ海では、世界平均より大きい1.1℃の海面水温増加になっています。そのような事実が、海面水温の上昇説を広げているようです。
 でも、海は海面を流れる海流だけでなく、海の深層を循環する「深層循環」もあります。この循環は時間をかけて、高緯度域(極域)の冷たい海水が低緯度域(熱帯海域)へ運ばれていく流れになります。そして、その逆に低緯度域の暖かい海水が高緯度域に運ばれる流れもつくります。深層循環は地球にとって、あたかもエアコンのような存在ともいえます。この流れが、数十年単位で起きるとすれば、魚の不漁や豊漁のサイクルを知るヒントになるかもしれません。もう一つ、渡り鳥のコース変更が示唆を与えるかもしれません。器機をつけた放鳥から人工衛星を介して、情報をリアルタイムで受信する方法をバイオロギングといいます。このバイオロギングの調査から、鳥の渡りのコースがしだいに変化してきていることがわかってきました。異常気象の年は、鳥が移動する位置の風向が大きく変化していたのです。鳥の移動のデータは、気象衛星の記録ともよく合致しています。鳥の渡りのコースがしだいに変化する原因は、おそらく地球温暖化によるものだともいわれています。これが温暖化よりも、深層循環による影響だったら、鳥の能力も侮れないものになります。
 余談ですが、シジュウカラが卵を多く産む年は、虫が多く発生します。虫の発生を予測して、卵を調整しながら産んでいるわけです。この予知能力は、環境に一定の前兆が現れたとき、この鳥の気候DNAの因子が「スイッチ・オン」し、卵をたくさん産むことになるようです。気象の予測は、スーパーコンピュータを縦横に使って行います。でも、気候の変化は複雑で、十分な予測ができない分野もあります。鳥行動や深海において、まだまだ未知の分野があります。これらの知見が蓄積されたときに、漁種交代という現象が明らかになるかもしれません。
 寒流と暖流が衝突する場所は、潮目と呼ばれます。この場所は、プランクトンが大量に発生し魚のえさ場になることでしられています。日本では、寒流の親潮と東シナ海の暖流の黒潮のぶつかる三陸沖が、この潮目を起こす場所になっていました。三陸沿岸は、栄養豊富な水が河川から流れ込み、沿岸漁業や養殖に適した場所になっています。さらに、水深が130m程度の広く続く海底も、漁場としての立地条件を高めています。太陽の光が底まで届きやすく、魚が成長するために必要な海藻やプランクトンの成育に適した環境を用意しているのです。サバやイワシ、サンマなどの魚やワカメやホタテなど魚介類が豊富に捕れる漁場になっています。
 ところが、海面水温の上昇に伴い、寒流の親潮の勢いが弱まり、暖流の黒潮が強まるという現象が起きています。寒流と暖流がぶつかる場所が北海道方面に移動しているのです。
比較的暖かい海で獲れるブリの豊漁が、北海道各地で続いています。北上したブリが北海道沿岸ではサケの定置網に大量にかかるようになったのです。日高漁協では、2010年10トンだったブリの漁獲量が昨年914トンに急増しました。2017年の道内のブリ漁獲量は、10年前の3.4倍の7686トンに跳ね上がっています。スルメイカは激減したが、ブリは豊漁になったというわけです。
 ピンチをチャンスに変えることは、人間の知恵です。函館市や北斗市では、ブリのブランド化を目指して大消費地に販路を求める取り組みを始めました。船上で良型のブリを選んで血抜きの処理を施した後、ブランドタグを付け氷詰めにします。鮮度を落とさないようにして、東京の豊洲市場などに送くるようになりました。ブランドの品質を保つために、漁協が抜き打ちでチェックするなどの工夫もしているようです。ひとつでも不良品があれば、ブランド力は低下します。結果として、利益を上げることができなくなります。北斗市では、イカの珍味を製造する会社が養った煙製技術を生かしてブリの煙製を開発しました。材料費が5分の1と安いので、大幅な収益増が見込まれています。海洋環境の変化に対応して、漁業者が協力して漁獲物の付加価値を高めるために試行錯誤をしているようです。
 北海道で獲れるようになった魚を、高級魚としてブランド化して販売することになります。これを地元の新たな産品として本気で売り出すならば、営業体制から、宣伝、流通経路を持っていないと、商品化はできません。利益を上げるのであれば、六次産業化が有利とされます。六次産業化とは、一次産業と二次産業、三次産業を連携し数字を掛けると六になるというものです。この六次産業化を成功に導く仕掛けは、料理のレピシにあると言われるようになりました。健康に良い食物をより美味しく、そして効果を上げる料理法を食材に添えて提供するわけです。料理レシピを毎月ホームページにアップし、レシピ作成に集中的に投資をする手法も選択肢になります。料理レピシが認められると、地域に食材や商品の知識が増え、その料理のノウハウが形成され、ブランド物を売りやすくなるという流れになります。ブリのレピシを例に挙げれば、ブリと大根は定番になります。北海道のブリと大根も、もちろん候補の一つになります。でも、姉妹都市を作り、北海道のブリと相性の良い大根を生産している他の都市とスクラムを組むのも面白いかもしれません。ブリと大根の姉妹都市になってしまうわけです。ブリと大根のブランド物が、ネット通販で同時に配達され、お互いの美味さを堪能できる嗜好を試してみたいものです。

コーヒーが景気判断の指標になる  スモールアイデア NO347

2019-12-10 14:51:20 | 日記


低温が続いた2019年の夏は、コーヒー消費に異変が発生しました。例年、暑さが厳しくなるから7月はアイスコーヒーの販売が伸びる傾向がありました。平均的売上比率は、ホットコーヒーとアイスコーヒーの販売比が40%対60%と言われていました。それが今年の夏は、ホットコーヒーが55%と多い状態が続いていたのです。いわゆる逆転現象でした。もっとも、7月29日には気象庁が関東甲信地方での梅雨明けを発表しました。この梅雨明けを発表から、都内の気温は上昇し、都内のカフェでもアイスコーヒーの需要が急速に伸びてきたのです。気温が30度を超えてくると、9対1の割合でアイスコーヒーが圧倒的に多くなります。蛇足ですが、一杯当たりの豆の使用量では、アイスコーヒーの方が多く使用します。さらに、アイスコーヒーは強いコクを出すために、ロブスタ種をブレンドすることも多いようです。
 今年は、コーヒー生育が順調で、2019年4月の時点で豊作の観測が出ていました。アメリカ農務省は、コーヒー豆の世界生産は1億6900万袋で、1億6800万袋の消費を上回るとの豊作予想を立てていました。消費量より生産量が多くなれば、価格は低下します。このような流れから、コーヒーの国際価格が安値で推移していたのです。ところが、11月になって、この予測が覆り始めました。11月になると、10月に比べ13%も値上がりしているのです。2019年11月現在、コーヒー豆の国際価格が上昇しているわけです。
 そこで、値上がりの原因を、探ってみました。ブラジルの2018~9年の生豆生産量は、前年度比25%増の6300万袋(1袋は60kg)と予測されていました。前半の気候は順調に推移し、その予測を裏づける流れだったのですが、ブラジルに2つの異変が起きたのです。その一つは、ブラジルのコーヒー産地が乾燥に見舞われている点です。乾燥が続くと、コーヒー豆の成熟に支障をきたします。豆が大きくなるためには、この時期に土壌に十分な水分が必要になるのです。天候不順が、豊作を不作に変えるかもしれないとなったわけです。この状況が、コーヒー相場の押し上げる原因になっています。
 もう一つの原因は、通貨にありました。2019年11月現在、ブラジルの通貨であるレアルが、ドルに対してレアル高になっているのです。ブラジルの財政赤字の削減期待で、レアル相場が上昇したのです。コーヒー豆は、ドル建てで取引されています。ドル建て取引が進むと、ブラジルの生産者や輸出業者はレアル建の輸出意欲が低下します。日本でも、円高になると輸出が苦しくなる状況を似ています。ブラジルの生産者の輸出意欲が低下すると、コーヒーの需給が引き締まるとの見方が広まったわけです。この見方に、介入した人々がいたのです。結果として、気候不順とレアル高という2つの要因が、コーヒーの価格を引き上げていると言えます。余談ですが、その後12月にはレアル安になっています。コーヒーの価格がどうなるか推移をみているところです。
コーヒーの消費量が、世界的規模で増加しています。消費需要は世界的に底堅く、中長期的には相場上昇を招く要因が多いのです。その要因の一つに、東南アジアを中心とした世界的なインスタントコーヒーの消費拡大があります。一度コーヒーの香りや味に親しんだ人達は、末永い消費者であり続けるわけです。ある意味で、タバコの愛好家と同じような仕組みになります。コーヒーの愛好家は、浮気をしない固定客であるともいえます。愛好者を増やし固定客にしてしまえば、持続可能なビジネスになることを意味するわけです。
コーヒー豆は、主にレギュラーコーヒーに使われるアラビカ種とインレスタント向けの安価なロブスタ種があります。ロブスタ種は、世界のコーヒー豆生産量の約4割を占めています。ロブスタ種の世界生産シェアは、ベトナムが世界の首位で40%を占めています。ブラジルは25%で、次に位置しています。インスタントコーヒーに使う豆、ロブスタ種の国際価格が、9年ぶりの安値圏で推移してきました。指標のアラビカ種は、4月上旬13年ぶりに安値をつけたわけです。でも、この11月に異変が起きて、高値に流れる状況になっています。
 余談ですが、アメリカのスターバックスは、世界最大のコーヒーチェーンです。特に全米各地の地域から1日4回集められる店舗売上高の数字は、景気を敏感に反映します。売り上げから導き出される景気判断は、かなりの精度でアメリカの景気状況を反映しています。アメリカ国民の消費動向の情報が、日々時間単位で把握できることを意味しています。経済指標としてアメリカ個人消費支出が、毎月月末に発表されています。この指標は、意外と重要でアメリカの景気判断に強い影響を与えています。この指標を事前に得ることができれば、人の先を制することができるわけです。でも、この指標より、スターバックスの景気判断の方が速く正確にわかるという人々もいます。スターバックスほど、人の行動や人の置かれている状態に大きく依存している企業はないようです。そこから生まれる情報は、いろいろな企業に有益な価値を産生するかもしれません。スターバックスの持つ情報を、売り買いする仕組みを作るのも面白いかもしれません。