ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

中国の発展と衰退と可能性   アイデア広場 その452

2019-02-28 23:03:33 | 日記

 アメリカと中国の通商交渉が、緊迫の度合を高めてきました。3月の交渉決裂を望まないのであれば、両国ともまとめやすい内容で部分合意しをすることになります。知財などの難しい問題は、継続交渉にするという扱いになるでしょう。知財侵害や競争阻害行為については、日本もアメリカやEUとスクラムを組んで中国に対峙することになります。もっとも、最近アメリカは、超党派で安全保障や諜報活動を重視するハイテク冷戦の様相を示しています。アメリカと中国の緊張は単なる貿易問題から、安全保障上の覇権争いに姿を変えつつあるのです。
 中国国内では、経済の変調が起きています。中国の民間企業が、税収の5割を納め、GDPの6割を生産し、都市雇用の8割を占めています。民営企業は経済フローの過半を占めているのですが、経済ストック(富)の分配では十分でない状態にあります。国営企業が利益を上げないにも関わらず、多くの富の配分を享受しているのです。民間企業が、資金の不足に悩んでいます。国営企業が富を取り過ぎて、資金不足の民営企業は発展できない状態にあるわけです。効率が高い民間企業を伸ばし、生産性の低い国有企業を縮小するべきなのです。一部の特権階級が利益を享受している姿は、望ましい状況ではありません。
 そんな中でも、中国の民間企業には成長する企業が現れています。近年、中国人の生活水準が高まる中、人々の関心は「モノ」から「精神的な豊かさ」へと移行しています。中堅上場企業の中には、娯楽や環境、医薬品分野の会社が上位に入ることも増えてきました。これらの企業は、社会の変化に伴う新たな消費者のニーズをしっかりつかんでいいるようです。例えば、豚肉は、中国人にとって必要不可欠な生活に根ざした食材です。現在日本でも、豚コレラが流行しています。中国でも、この危険は十分あるのです。ある民間企業は、ブタやニワトリといった繁殖用の動物向けに、予防ワクチンなどを開発し製造しています。観光産業が、重要な役割を担っています。湖南省の景勝地、武陵源の観光施設やホテルなどを、運営管理する企業があります。風光明媚な景観が人気のスポットで、空中散歩を楽しめるガラスのつり橋を新たに開業しています。人びとのニーズを満たす企画を次々に作り出しています。
 一部企業の活躍にもかかわらず、中国市民にも変化が見られます。2018年10月ごろから、経済の厳しさの到来を予感して、家計は倹約を心がけているのです。倹約の様子は、ぜいたく品にかかる消費税収の急落に顕著に現れています。この流れは、民間企業にも出てきています。厳冬の到来を予感して企業は、固定費の圧縮を急ぎ始めました。好調なはずのネット大企業が、人員整理の動きを始めているのです。でも、国営企業は、依然として資金や資材の不安がない状態になっています。国営企業は、このままでも安泰なのでしょうか。中国経済の一つの転機は、2008年のリーマンショック直後の64兆円投資でした。この投資ブーム開始から10年の間に、固定資産投資額の合計は7200兆円になったのです。7200兆円の投資を重ねていれば、優良な投資案件は底をつき、後に残るは不採算の案件だけになってしまいます。この不採算案件にも、地方政府は債権を発行し、湯水のように資金を投じました。これまで中央政府の暗黙の保証のおかげで、地方政府の債務不履行や倒産は起きませんでした。資金が公共事業に偏っていることは回収率が悪くなり、長い目で見れば経済の停滞に繋がります。最近では、金融機関は財政力が弱い地方政府の債券を購入したがらなくなっているのです。地方政府が地方に資金を投じるように、中央政府は、アフリカやアジアに投資しています。この資金も、十分に回収しているとはいえません。
 中国の欠点だけ見ていても、面白くありません。少し可能性のある対外投資について見てみました。中国は、ミャンマーが軍事独裁政権の当時から経済援助をしてきました。経済と軍事において強い関係を築いてきたわけです。ミャンマーは民主化されたとはいえ、まだまだ軍人の力が優勢です。中国の影響力は、根強く残っています。中国からミャンマー、そしてアフリカへのルートは、経済通路としての利点を持っています。中国はミャンマーを開発し、アフリカからの原油を中国に連ぶ通路にしようとしています。中国の弱点は、工業生産施設が深圳などの海岸地域にあることなのです。内陸部の発展が、中国を真の意味で豊かにする原動力になります。ミャンマーから雲南を通過して、中国の内陸部に工業資源を送ることができれば、中国全土が豊かになれるという理屈です。アフリカからマラッカ海峡を通過して、南シナ海を通過するルートには多くのリスクが伴います。リスクは少ない方が、良いわけです。中国の鉄道網は、公共投資で過剰なほど充実しています。ベンガル湾からミャンマーに陸揚げされたアフリカの資源は、鉄道を通して中国に運ぶことは容易にできます。そして、中国は、ミャンマーを通じて自国の商品をアフリカに送ることも可能です。ミャンマーの市場は、中国の企業とミャンマーの軍人が利権を握っています。当然、流通も容易になります。今まで投資してきたミャンマーと、中国の企業がウインウインになる仕組みはできているといって良いでしょう。
 中国の投資で問題になることは、お互いの国同士が利益を上げていく仕組みが上手にできていないという点です。せっかく建設した港や鉄道施設を、有効に使っていないのです。公共投資を増発にも、「毒を飲んで渇きを癒やすたけ」と批評する識者が増えています。非効率的な国有企業の利権に、メスを入れる姿勢が共産党には見られません。公共投資の暴走が、止まらないまま進んでいくようです。人民解放軍を退役した人達が、生活向上のためのデモをする様子が放映されていました。この映像は、すぐに消されたようです。中国の財政は、高齢化の急速な進行により今後の年金債務が課題になります。内部にも、多くの課題を抱えています。そして、外部にも多くの課題を抱えています。自由な発想のできる人材が出現すれば、意外と今までの債務を利用しながら問題を解決できる可能性も出てくると考えるのは独断でしょうか。中国経済は、短期的には大事にいたらず、長期的には悲観材料が多くなるという見方になっているようです。中国経済の減速は、今後も続くということでしょうか。その中に、光るダイヤモンドもあるということを知っておくと、ビジネスチャンスをつかむことができるかもしれません。
 最後になりますが、中国の人びとのニーズを捉えた中堅企業との連携は、ビジネスの目になるかもしれません。また、ミャンマーに物流センターや流通倉庫を作ることも、将来のビジネスチャンスに繋がるかもしれません。もっとも、倉庫群は中国に作ってもらって、その効率的運用を担うだけの方が利益を得ることができるかもしれません。

潜在的軍事力・はやぶさ2・平和憲法  アイデア三題噺 207

2019-02-27 17:25:57 | 日記
 以前、海外の人達が日本の軍事力は恐ろしいという発言をしていました。私は戦争をしない日本が、なぜ軍事大国とみられているのか分かりませんでした。日本は、平和憲法で戦争をしないと決めています。その証拠に、この70年間、日本は武力行使をおこなったことがありません。でも最近、世界の中には日本の潜在的軍事力を恐れている人達がいることが、分かった次第です。軍事力には、攻撃と防御の2つの能力が必要です。
 そこで、日本の潜在的軍事力がどんなものかを考えてみました。軍事関係者は、自衛隊の装備は世界的に見て相当なものだと言います。例えば、日本の通信傍受能力は高く評価されています。1983年6月にソ連(現在のロシア)の戦闘機が大韓航空機を撃墜した際に、自衛隊はその通信を傍受していたのです。1995年3月にオオム真理教が、サリン事件を起こしました。このことは、民間宗教団体がサリンという毒ガス兵器を作る能力をあることを世界に示したのです。軍隊でもない一般市民が化学兵器をつくる能力のあること具現したわけです。
 軍事力の中核は、核兵器と核ミサイルになります。2019年2月に、はやぶさ2号は、小惑星りゅうぐうに無事着陸しました。この小惑星は、地球から3億km離れた地点にあります。そのりゅうぐうに、はやぶさは上空から目標地点にゆっくり着陸したのです。半径3mしかない目標地点に、着陸したわけです。これは、軍事的にみると空恐ろしい技術になります。核兵器の実験は数多くされていますが、もっとも有効な方法は上空で爆発させることです。その意味で、広島や長崎の原爆はもっとも被害を受けやすい核爆発だったといえます。はやぶさの着陸技術は、空中で自由に核爆発させる核兵器にの運搬能力のあることを示しているのです。蛇足ですが、核ミサイルが地上で核爆発場合、空中で爆発するよりも被害は少なくなります。
 はやぶさ1号は、小惑星で採取したサンプルの回収に成功しています。この意味は、大気圏突入の摩擦熱を克服したということです。北朝鮮のミサイルは、長距離を飛ばすことには成功しています。でも、ミサイルが摩擦熱を克服しているかどうかは、まだ不明のようです。日本の技術は、核弾頭ミサイルを作る能力があるとこを意味しています。しかも、半径3mの範囲に落とすことができる技術なのです。北朝鮮は、プルトニウムを30~40kg持っているとされます。プルトニウムからは容易に核兵器を作れます。日本は、このプルトニウムをトン単位で持っているのです。核兵器の原料を豊富に持ち、そして高性能のミサイルを製造する能力を持つ日本がその気になれば、核弾道ミサイルを含めた強い軍事力を保持する潜在力があると世界は見ているわけです。
 現在の宇宙探査は、中国とアメリカが先頭でしのぎを削っています。両国の競争の背景には、安全保障上の重要性が高まっていることがあります。アメリカは航空宇宙局(NASA) だけで、年間予算は約2兆2千億円を使っています。さらに、防衛関連も含めると4兆5千億円前後と推定されています。中国の予算は明らかではありませんが、アメリカと同等の予算を使っていると推定されています。日本の宇宙探査は1800億円で、防衛省の宇宙関連予算を合わせても3000億円程度です。やぶさ2の成功は、日本の民生技術高さを世界に示しました。できれば、軍事に転用できる技術を、民生用に特化して使用している日本姿勢を世界に理解してもらいたいものです。



コンビニは地域の何でも屋になる   スモールアイデアNO 248

2019-02-26 16:35:54 | 日記

 2018年の全国コンビニ売上高(大手7社の既存店)は、9兆7千億円になりました。売上げは増えたのですが、客数は3年連続で前年を減少しているのです。利用客のうち60代が2割を占めて、客の高齢化も確実に進んでいます。コンビニは、POSデータを分析し商品の売れ行きに応じた商品を適時提供してきました。このデータで得られるのは、性別や年代別の購入履歴などのマスデータだけでした。現在必要とされるのは、個人の情報になりつつあります。アマゾンなどの通販勢は、人工知能も活用したデータ解析で個人に照準をて合わせています。コンビニも、マスから個人に販売戦略を変えつつあります。その中で、これから確実に増える高齢者に、照準を合わせているところもみられます。
 そこで、これからの望ましいコンビニついて考えてみました。高齢者は、スーパーよりも近くにあるコンビニを求める傾向があります。高齢者というと、黄昏に向かうというネガティブな人びとを想像しがちです。でも、それは一部の高齢者で、多くの高齢者は元気に生活しています。元気を保つ工夫も、彼らは怠らないのです。毎日のリズムを整えながら暮らしているシニアは、満足度は高いのです。本が好きで、図書館に借りに行き、1度に1冊ずつ借りるシニアがいます。図書館に歩く機会を増やし、かつ知的好奇心を満足させているわけです。楽しみの中で、身体と脳の機能を維持しているのです。脳は使えば使うほど、その機能を維持してくれ、認知症を予防する効果があります。
 本を読んでいる人の健康寿命は長いのです。健康寿命が長い人の多い地域は、医療費や介護費が少なくても済みます。コンビニのコーナーに、自治体の貸し出す出張図書があれば、本を読む人は増えるでしょう。コンビニで使用するスマホアプリに、図書館の本を希望すれば届ける仕組みを作っておけば良いのです。マイナンバーカードで、貸し出しが可能のなれば面白い仕組みになるかもしれません。健康なシニアを、より健康にする地域の仕組みの中核に、コンビニがなるわけです。
 とは言え、年とともに心身が衰えていき、悩みを増しながら、日々苦しむ人びとも出てくることは加齢の宿命です。普段から、自分が追い込まれたときにどうするかを常に考えておくことも大切になります。自力で、買い物がでできない時の決断とそれ以後の日常生活を想定しておくことになります。ウーバーテククノロジーズによる外食の配達サービスなどを、利用することになるかもしれません。当然、地域のコンビニの御用聞きサービスを利用することあるでしょう。独力でトイレに立てないとか食べ物を口にできないという段階に進めば、介護施設に入ることになります。でも、独力でできるだけ頑張りたいというシニアもいます。これらの人びとには、中食の宅配と食事を支援する介護人の派遣サービスも必要になるかもしれません。
 余談ですが、高級な高齢者用施設では、自由に施設内で料理もできるようになっています。料理は、脳を多様に使いますので、脳の老化防止に有効なものです。脳は使わなければ、それを不要なものとして捨ててしまう断捨離の名人だとも言われています。一度、ある能力を断捨離してしまうと、なかなか元にもどすことができなくなります。施設はそれを知っているために、できるだけ脳の衰えを防ぐために、料理の施設を準備しているわけです。いでいるのです。
セブンイレブンは2018年6月にスマホアプリを刷新し、購買履歴履に合わせた個別の商品の提案を始めました。このアプリの利用率の高いお店は、客数の伸びが大きいという結果を出しています。他のコンビニも、個人の購買履歴に合わせた商品やサービスを提案するようになり始めました。希望ですが、高齢者の元気な方でも、加齢が進んで元気のない方でも、「こうあってほしいと望むこと」をアプリに組み込んでおき、必要な時に利用できるような仕組みを作ってほしいものです。食事の配達サービスだけでなく、高齢者が求める知力や体力を養成するソフトもアプリに組み込んでおくわけです。こんなアプリができたら、老後は楽しいでしょうね。


アフリカの農業は蛙跳びで発展する   アイデア広場 その451

2019-02-25 21:18:47 | 日記
 アフリカの人びとに食糧を十分に供給できる農業生産は、過去においても、現在においても課題になっています。アフリカの農業生産性は、先進国の4分の1から5分の1にすぎないのです。中国や日本は、肥料を大量に使って高い生産性を上げています。これらの国では、1㌶ 当たり300kgの肥料を使っています。アフリカでは、10kg程度なのです。肥料産業は、経済が近代化していくときの基軸となる産業の一つです。それが、遅れているわけです。逆に考えれば、肥料などを豊富に使用する近代農法を導入すれば食糧不足の問題は解決するかもしれません。
 3大肥料の原料は、リン酸肥料がリン鉱石、カリ肥料がカリ鉱石、窒素肥料が天然ガスになります。天然ガスからは、窒素肥料がいつでもつくれます。アフリカでは、リン鉱石がモにモロッコやセネガルで産出されます。カリ鉱石の鉱山はエチオピアに鉱床があるといわれています。天然ガスは、アフリカが宝庫ともいわれるほど豊富にあります。アフリカは、自力で3大肥料の原料を確保し、生産する潜在力を持っているのです。ただ、工業がまだ未発達の状態になっています。
 そこで、アフリカの食糧自給について考えてみました。アフリカの経済成長を見通した場合、工業化が進むことは容易に予測ができます。できれば、工業化プラス、農業技術の貢献が求められるようです。品種改良が、まず考えられます。従来の品種改良は、交配を繰り返す方法で長い年月がかかりました。もう一つは、放射線などで突然変異を起こし、狙った機能を持つ品種を選抜する方法でした。これに代わる新しい方法が、遺伝子組み換え技術でした。現在、全世界の大豆の約80%、トウモロコシの約30%が、遺伝子組換え作物で栽培されています。日本でも、膨大な量の遺伝子組換え大豆とトウモロコシが輸入されています。さらに、この技術の上をいくと考えられるものが、ゲノム編集です。ゲノム編集は自然に起きる突然変異に近く、安全性に優れています。この技術は、遺伝子組み換えと違い、他の生物の遺伝子を入れないという特徴があります。ゲノム編集は変化させたい遺伝子が分かれば、昧や栄養などを自在にに変えることもできます。遺伝子組み換えは、耐病性の機能など限られています。それとは対照的に、ゲノム編集は広範囲な利用が可能です。しかも新しい品種を、3年程度で開発できます。アフリカの自然環境や社会のニーズに合わせて、新しい品種の開発が可能です。
 アフリカにおいては、ゲノム編集を率先して行う国の出現が求められます。候補の国は、ルワンダのようです。この国は、1994年のルワンダ大虐殺が記憶に残っています。でも、今は変わりました。ルワンダ政府は汚職が少ないことでも知られ、腐敗認識指数では2018年に世界48位です。日本が18位、韓国が45位、インドやトルコが78位、中国が87位という比較からも、清潔度は明らかです。汚職が少ないことや会社設立が容易なこと、そして治安の良さは評価されて、海外資本が安心して進出しているのです。アメリカのメロン大学を誘致し、コンピュータ修士課程を開講しました。ご存じのようにメロン大学は、自動運転の先駆的研究を行った大学です。この時の開発技術者が、各企業の中心的存在になって、自動運転の完成を目指しています。ルワンダは、電子政府プロジェクトも行っています。さらに、ドローンを活用し血液を病院に届けるサービスを展開している国なのです。まさに、リープフロッグを実際に行っている国ということができます。ルワンダは、交配や突然変異による品種改良、そして遺伝子組み換え技術を飛び越えて、ゲノム編集へと最先端の農業技術を利用とすることのできる位置にいるわけです。
 アフリカの総面積は3022万k㎡で、耕地面積は260万k㎡になります。日本国土の7倍の耕地面積をもっているわけです。アフリカは農業国であり、全労働人口の6割が農業に従事してます。このままでは、農業生産性は低く、食料自給は厳しい状況が続きます。でも、ゲノム編集で収量の多いイネやトウモロコシなどを作れば、自給率は向上します。蛇足ですが、日本では、ゲノム編集で収量の多いイネを開発しています。栄養の多いトマトも開発しました。これは、血圧の抑えるアミノ酸の含有量が通常のトマトの15倍という優れものです。また、近畿大学などではと、筋肉量が通常の1.2倍あるマダイを開発しています。アフリカにおいて、これらの技術を使用して、耕地を2倍の520万k㎡に作物を栽培すれば、自給率は向上し、農民の生活は豊かになります。豊かになれば、肥料を買う余裕も出てくるでしょう。ルワンダ人の多くがもつ起業家精神は、さらなる工夫を加えるかもしれません。少ない肥料で多くの収量をあげる品種を、ゲノム編集で開発するかもしれません。余剰農業生産物ができれば、輸出に回すことができます。食料輸入をしていたアフリカが、輸出の基地に代わるわけです。食糧安全保障の面からは、望ましいことです。日本もこの支援に協力していきたいものです。
 余談ですが、日本政府は、ゲノム編集の作物が遺伝遺伝子組み換え食品と違うという前提で審査しています。政府は、変化させた遺伝子の内容や有害物質の有無などの情報を届け出れば、ゲノム編集の作物を認る方針です。新しいゲノム編集がどういうものか分から何となく不安を抱く人も多いことは事実です。ゲノム編集による品種改良には、消費者に受け入れられるかは不透明な面があるのです。伝子組み換え食品が世にるとき、消費者に研究者の考えを押しつける部分がありました。そのしこりが、現在でも残っています。ゲノム編集では、消費者と研究者の相互理解の機会つくることが望まれます。


長時間労働・仕事のできる人・良い上司・  アイデア三題噺 206

2019-02-24 17:30:48 | 日記

 日本の職場環境は、まだ労働者にとって危険が多い国だと欧米の人びとが思っているようです。日本の正社員は、年間2000時間働いて、夏休みは1週間ほどしか取れません。欧米では、1600時間働いて、1ヶ月のバカンスが取れるのです。働く時間は短いのですが、日本と同じ給料をもらっています。例えば、サービス業はサービスを継続して提供する業種になります。サービスをする人の補充が効かなくなると、シフトの穴を空けられずそのまま長時間勤務になります。実は、長時間労働よりも睡眠不足のほうが危ないのです。
 そこで、日本の労働の問題点を解決する上司の姿勢を探ってみました。過労になりやすい人は、1人で自分の担当業務を抱え込みやすい社員になります。仕事はどうしても、「できる人」のところに行くことが多いという経験則があります。同じ業務量でも、自分がわからない苦手なところがあると疲労がたまります。仕事のできる社員は他の人と協力して、苦手な仕事を得意な人に回す方法を知っています。互いに協力できる体制ができていると、疲労かたまりにくい上に、仕事の効率は向上していくという好循環をつくり出します。
 新入社員の方は、会社は平等でないことを理解することです。仕事に得手不得手を持つ社員がいるのです。特に、協力関係が上手いっている職場が、配置転換や移動が起きた場合がに問題が起きます。人間関係が変われば、仕事の段取りも変わっててきます。仕事の内容が変わり、適応できない社員も出てきます。良い上司は、仕事が上手くいかなくなると、どのように乗り越えるかの的確なアドバイスができます。上司は、1日の作業量を明確にして、部下に明示しながら仕事を進めます。でも、手っ取り早く仕事をできる人に頼む理不尽な上司も多いのです。
 長時間労働が問題になるのは、単に「量が多い」ということだけではありません。この問題を深刻にする要素は、「仕事に高度な質」を求められることなのです。仕事の量が多く、質的にも大変な労働になっている場合は大変です。このような実情の中で、みんなに迷惑かけたくない、仕事があるから休めない、会社の評価が気になるなどのストレスがたまっていきます。余談ですが、11時間のインターバル規制というものが、欧米などでは採用されています。夜12時まで残業した社員に対して、11時間の勤務が免除されるというものです。この社員は、翌日の午前11時まで勤務が免除されるのです。無制限の残業を、防止する制度です。シフトで欠勤が出ても、次の日は十分な休息を取れる仕組みです。
 できる上司は、部下の仕事の得手不得手を把握し、人間関係を考慮しながら仕事を進めていくことができます。こんな上司に当たれば、ラッキーです。でも、困難な場合は、防衛措置を準備しておくことです。遅くまでがんばる日と比較的早く帰る日を決めて、仕事にメリハリをつけることになります。できれば、土日にしっかり休む方法を考えることです。月曜日の仕事量が多く仕事の難易度が高い場合、あえて土日に出勤して作業する場合もあります。平日の負担を平準化する工夫も、選択肢の一つになるかもしれません。

子孫を残す・甘い鳴き声・究極の進化   アイデア三題噺 205

2019-02-23 17:53:47 | 日記

 生物は、優れた子孫を残すために、努力と工夫を重ねてきました。進化の歴史を見ると、どんなに努力をしても、全ての生物が子孫を繁栄させてきたわけではないことが分かります。多くの鳥類やコオロギ、そしてカエルなどは、好ましい声でメスをなんとか口説こうとします。男らしい声を奏でるコオロギは、ホルモンの分泌のレべル高く健康であることをメスに示しているわけです。でも、鳴くときには、酸素消費率は大幅に上がり、筋肉中の乳酸も蓄積し苦しい状態になるのです。オスは何日も鳴きつづけると、数日ほど休息してエネルギーを補給することが必要になります。
 今回は、オスがメスを獲得するハッピーな状態になる時、注意しなければならないことを考えてみました。幸福を求める時に陥るリスクを、改めて考えてみたかったわけです。
オスのコオロギは、メスに気に入られるために翅をこすり合わせることで音をだします。この声を聞いているのは、コオロギのメスだけではないのです。ヤドリバエ科の寄生バエは、コオロギの鳴き声を聞くことができます。このハエは、ほかのどんな昆虫にも例を見ない複雑な耳を進化させました。この寄生バエのメスは、幼虫を育てるための宿主としてコオロギを利用します。このハエは、鳴いている雄のコオロギの上に舞い降りて、寄生バエの幼虫をオスのコオロギの体内に穿孔するのです。
 寄生バエの幼虫は、まずコオロギが鳴くために使っている翅をすり合わせる筋肉を食べ始めます。この部分の筋肉が食べられると、コオロギは鳴くことができなくなります。声が出なくなれば、他のヤドリバエは、このコオロギにはやってこないことになります。幼虫は、安心してコオロギの中で成長できるわけです。寄生バエの幼虫は成長するにつれて、コオロギを内側から食べつくし、最終的には殺してしまいます。その後、成虫として外界に進出することになります。他の昆虫間のやりとりを聞き取る能力は、寄生生物が餌である宿主を探すために重要なものだったのです。もちろん、進化の頂点に位置する人類は、このような危険を察知する能力を備えています。もっとも、中には察知できずに、子孫を残すことに失敗した人達がいたことも想像できます。
 100年前のお話になりますが、ヤドリバエがハワイを侵略したのです。この地域のコオロギは、このハエに苦しめられました。仲間が、次々に犠牲になっていったのです。コオロギへのヤドリバエの寄生率があまりにも高くなった頃、変化が現れました。コオロギが、幼虫の寄生を阻止する適応行動を取り始めたのです。コオロギが、鳴かなくなったのです。鳴かないコオロギには、ヤドリバエ類が寄生できません。このハエは、GPSのないナビゲーションを持って、うろうろするような状態になったわけです。コオロギが鳴かなくなった突然変異は、翅の形状を変え、音が出ないようにしたものでした。このコオロギは、寄生を阻止するための究極的な進化をしたわけです。オスのコオロギは鳴くことができず、交尾したければ、通りがかりの雌を捕まえるしがない状態になったそうです。最近のITによる諜報活動の進化は、何となくコオロギに類似しているようです。

8億人を相手に小売業を展開する    アイデア広場 その450

2019-02-22 18:10:00 | 日記

 日本の企業は、日本の厳しい消費者に受け入れらる製品が世界でもいい商品だという認識をもっていました。でも、企業から見て良い商品が、必ずしも消費者に受けいれられないことを知ったのです。それは東南アジアなどの販売で、韓国や中国に負けてしまってからでした。世界に通用する販売戦略を構築できる人材や企業が、求められるようになりました。こんな企業が、インドに出現しました。それは、ストアキングという企業です。
 そこで、インドで急成長しているストアキングについて調べてみました。インドの総人口は13億人ですが、その7割に当たる8億人が地方部に住んでいます。地方はネットの普及率が低く、携帯電話もネットに接続できないタイプが主流になっています。インドのネット通販は、ネット環境が良好な大都市に照準を合わせて、業績を伸ばしてきました。でも、ストアキングは同業大手と戦略を変え、地方に照準を合わせました。この会社は、8億人の住むネットが利用できない消費者に照準を合わせたのです。ストアキングの売り上げは、1年間で倍増するという成果を上げています。
 蛇足ですが、インドのネット通販市場は急拡大しています。2018年は3兆7300億円と2015年の3倍近くになっています。2023年には、9兆円を超えると推定されています。これは、、日本の全国百貨店売上高の6兆円超えて、日本のコンビニの売上げと同等の売上げになります。インドでは大都市だけでなく、地方にもネット通販の波が徐々に広がり始めているのです。
 地方に照準を合わせたストアキングの販売戦略は、合理的なものでした。個人宅には宅配せず、それぞれの田舎町で拠点となる雑貨店に注文を受けた商品を卸す仕組みです。雑貨店へ、住民が来店する仕組みを取っています。店頭に欲しい商品がない場合、店員が専用アプリで商品を注文するわけです。店員が注文した商品を、ストアキングが数日以内に商品を届けます。客が注文時にまず商品の代金を支払い、雑貨店はは数%の手数料を得る仕組みです。
 この会社は、インド南部や西部を中心に10州で4万の雑貨店と契約をしています。これらの店を通じて、2億1500万人に商品を売り裁いているのです。ストアキングは、大量発注をすることで、メーカーから安く商品を仕入れています。それを、低価格で雑貨店に卸すことができます。雑貨店も仕入れコストを安く抑えることができて、有利な販売ができるわけです。このストアキングの優れている点は、地方の多言語の課題を克服したことです。インドの紙幣を見ると分かるのですが、英語を始め17の言語で書かれています。アプリには、17の言語をスムーズに使える工夫が加えてあるのです。ストアキングのアプリは多言語に対応し、地方の人には使いやすいために利用者が急増したわけです。大企業が目を付けていなかった8億人という地方を、ターゲットにした先見の明に感心しました。これは、アフリカで話題になっているベースオブピラミッド(BOP)に通じるものです。さらに、多言語に対応するアプリをつくり出した創意工夫が、素晴らしい点です。インドのIT技術の汎用性を、示しているようです。
 余談ですが、インドの13億人は、ビジネスにとって魅力的な国です。魅力的な国には、外国の有力企業が進出してきます。2013年には、アマゾンも地方の潜在力に目をつけました。アマゾンはストアキングと協業し、ストアキングが契約する400店舗で衣料品を売る試行錯誤を始めています。店には試着室も備えつけて、販売に力を入れています。アマゾンは、一人ひとりの消量費者の購買履歴から、お薦め商品を提案するスタイルに移行していくでしょう。プラットフォームを構築し、主導権を握った時点で、個々の企業と独占契約を結ぶ従来の支配形態を確立していくようです。でも、さすがにインドは、したたかです。インド政府は、外資系のネット通販企業に対し、メーカーなど商品の仕入れ先との独占契約を禁じました。外資系の企業は、商品の囲い込みなどが難しくなりつつあります。国内産業を守る防波堤が、政府主導で構築されてきたわけです。特定企業と一定の割合以上の取引をすると、価格決定権が取れなくなります。この節度が偏ると、そこから価格決定権のほころびが生まれ、命取りになることはアマゾンの商法を見ていれば分かることです。インド政府は、先手を打ったのかもしれません。インドからは、ゼロからイチを生む創造性のある人材がまだまだ出てくるようです。日本の企業もこのような人材と協力しながら、インドの事業を開発していきたいものです。

 

アメリカの農業から日本の農業の進む方向を考える  スモールアイデア NO 247

2019-02-21 17:41:26 | 日記
 衛星画像やIT情報技術を駆使して、農地をきめ細かく管理する精密農業が注目されています。アメリカでは、26k㎡の農地にダイズ、米、綿、トウモロコシを栽培している農家があります。この農地の全体を、常時正確に把握するのは非常に難しいものがありました。この困難さを、衛星やITを使って容易にするサービスが生まれているのです。農場で使うコンバインには、GPS 受信機や収量計を搭載してあります。この農機は、運転しながら刻々と土壌水分データを記録整理できるセンサーも備えてあります。作物を刈り取りながら、測定した結果を地図に表示し送受信ができる優れものです。
 そこで、アメリカの農業から日本の農業の進む方向を考えてみました。除草剤や種子企業として有名はモンサントは、精密農業関連のサービスビジネスを増やしています。この会社は、気象情報の農業利用技術やノウハウを蓄積してきました。人工知能を使い、どこに何を植えたら利益が最大になるかなどのソフトを提供しているのです。作物の育ち具合を、正確に把握できる「健康度マップ」や、年間の収量予測も表示できるソフトです。農家は、農地の区画ごとの降水量や収量の情報をものとに灌漑水量を調整できるようになっています。降水量、気象衛星画像などを総合し、使いやすく加工してパソコンやスマホでも使えるようにしてあります。このサービス料金が年間10万円ですが、26k㎡の農地には十分見合うものになっています。農家は、市場から作物を求められる時期に求められる量を作れれば良いわけです。そして、廃棄をできるだけ少なくすることが求められています。この要求には、「健康マップ」のソフトはしっかり答えているようです。
 一方、日本の農業事情はどうなっているでしょうか。農家の高齢化と人材不足が、深刻化しています。でも、危機の裏側には、チャンスが待っています。少ない人数で、広い農地を耕作するチャンスが生まれているのです。高い品質の作物を作れば、市場が受け入れてくれる下地は整っています。日本でも、アメリカなどをモデルに精密農業による生産性向上と農業活性化の動きが出ています。日本の人工衛星「みちびき」は、精密なGPSが特徴です。これを利用する技術が農業分野に取り入れられれば、より緻密な耕作を無人でできるようになります。スマホ画面に作物の生育具合がわかるカラーの衛星写真を見ながら、肥料や農薬を散布することが可能になります。もちろん、散布は自動飛行のドローンが行うことになります。散布と同時に、より精密な土壌の状況を把握することが可能でしょう。衛星とドローンにより生育状況をを調べれば、より繊細な耕作が可能になります。
 アメリカでは、コメの収量に加えて、食味も分かるセンサーも実用化しているようです。生産量では、アメリカ農業にかないません。日本では、各地域の人々の好みにあったコメを開発することになるかもしれません。できれば、海外の人びとの舌を満足させるものにしたいものです。日本の場合、みちびきに対応した安価な農業機械の普及が課題なるでしょう。これは、ドローンにもいえます。質の高い農産物を安く、容易に、提供する仕組みが望まれます。日本の得意技である小さくして、正確に、速く、そして美味しい作物を作って、利益を上げてほしいものです。

本能を歓喜させる闘い  スモールアイデアNO 246

2019-02-19 07:33:16 | 日記

 スポーツの試合中に足をねん挫しても、痛みを感じないことは、よく経験することです。そして、試合が終了と同時に痛くなるのです。しかも、かなりの重症だったりします。稀勢の里は、ケガを押して優勝決定戦に臨み、優勝と横綱を勝ち取りました。でも、このケガが原因で、次の場所から横綱としての責任が果たせなくなり、引退を余儀なくされました。ケガにもめげず戦う稀勢の里に、日本中の相撲ファンは感動しました。でも、引退の原因になったこの1番に、疑問を持つ人達もいました。相撲ができる体調を保ちながら、継続的に相撲を続けることも大切でなないかという疑問です。衣食住の確保が第一で、その後に勝負があるという生き方が望ましいというものです。
 そこで、このケガをしながら闘う意味について考えてみました。動物が進化する中で、痛みが、肉体の運動を休止させる役割を担ってきました。捻挫などの痛みがあれば、普通は運動を辞めることになります。でも、そうではない場面もあることを、私たちは経験しています。命をかけて戦っているときに、傷を負って痛みを感じ戦いを辞めればれば、それで命を落としてしまいます。生命がより優先される事態では、痛みは感じなくなるような原始的本能が存在しているのです。痛みよりも戦いを優先する行為に、人びとの本能に火が付き歓喜をわき起こします。
 余談ですが、ポトラッチという交互に贈り物をする儀式があります。太古の時代に、種族の中にある二つの胞族の間で行なわれていた儀式でした。ポトラッチは、根源的な闘技的本能に根ざすものといわれています。自分のもっとも大切なものを、惜しげもなく与えていく闘いでもあります。最後に、与えるものは命になってしまうこともありました。ギリシャの時代になりますが、この地では体育や音楽の競技が行われました。ここには、飲み比べの闘いもあったのです。飲み比べの勝者には、勝れた飲み手への賞も設けられていました。この飲み比べの大会に参加した者のうち、35人がその場で死に、6人は後で死んでしまったのです。命をかけて闘う競技は、ある意味で最高のものを相手に送るということでもあったようです。この場合、ギリシャの神々に贈るということでしょうか。このポトラッチの様式は、ギリシャだけでなく、地球上のあらゆる種族に見られる闘技的習慣になっています。
 日常の苦しい労働を続けるなかで、祝祭日を期待しわくわくする人びとがいます。日々の労働で少しずつ働いて、お金を貯めていきます。少しずつ貯めたお金を、年に一度の祝祭日に、日頃の鬱憤とともに一気に吐き出す行為が世界各地で見られます。村のカーニバルなどの伝統的あるいは宗教的行事には、この光景が見られます。日本の祭りにも見られます。欧米の復活祭や南米のカーニバルなどに、富を蕩尽する光景が見られます。祭りは、共感の場となり、大集団の結束力を高める役割をしました。その祭りの中に、人びとを惹きつけるものがあります。痛みを感じない闘う力士や命を落とすかもしれない競技者の存在が、その祭りを盛り上げます。臨戦態勢の中にいれば、その狂気に酔いしれます。でも、臨戦態勢が長く継続することはありません。停止するする工夫も必要です。
 最低限のルールを確保し、時間と場所を決め、そこだけで戦いをするほうが良いする社会ができてきました。通常、真の闘いをすることは、双方にとって高くっきます。ほどほどの闘いで、満足することを覚えたわけです。生命よりも戦いを優先する行為を封印し、日常的闘いで満足する姿勢になります。でも、時たま、生命より優先する闘いが、見られる時があるのです。それが、歓喜を呼び覚まします。稀勢の里や貴乃花の最後の一番は、そんな歓喜を呼び起こしたのかもしれません。



教育格差社会・スランプを乗り切る・居心地の良い状態  アイデア三題噺 204 

2019-02-19 07:20:14 | 日記
 国民の中に大きな格差があると、居心地の良い場所にはなりません。人は他人と比較して、自分の幸福を確認することが多いのです。デンマークの国民は、人間の生き方として「平等」が重要な価値であると信じています。この国の政策は、この平等を大切にする理念を持っているようです。デンマークは、国民に年金や医療介護、失業した場合の福祉サービスを手厚く提供しています。理念と政策が一貫しており、国民も満足度の高い生活をしているようです。一方、日本は経済的豊かさを高めてきたのですが、幸福の実感は十分ではないようです。その不満の一端は、教育制度にあるようです。高所得者の子どもの大学進学率は、低所得者よりも数倍も高くなっています。日本における機会の不平等は、子どもが教育を受ける際の格差に如実に見られるものです。格差は、居心地の悪いものです。
 そこで、居心地の良い状態について考えてみました。衣食住が満たされていれば、満足という時代がありました。でも、最近は、良いファッション、良い食べ物、そして良い住居というように、居心地の良い立ち位置を求めるようになってきました。世界には、1日2ドル以下で生活する人達が6億人以上存在しています。日本では、一時間バイトすれば十分に2ドルの3~5倍以上の収入を得ることができます。欧米では、移民の問題が注目を集めています。誰しも、居心地のよい場所と悪い場所があります。悪い場所から良い場所に移動する傾向は、古今東西変わらない歴史です。
 心理学には、メンタルスぺースという概念があります。自分の心理的な固有の領域に、他者が入ってくると不快を感じる距離と考えれば良いかもしれません。欧米のバスに乗る人達は、一定の乗客が乗っていると、運転手が「もう乗れません」というと納得するそうです。日本人ならば、ギュウギュウになってもとにかく停車駅にいる人を乗せて、次の停留所に向かいます。欧米人のメンタルスペースは広く、日本人のメンタルスペースは狭いということになります。でも、経済の発展や豊かさのレベルが上がると、このスペースが広くなるのです。普通車のグリーンを利用する人も増えました。新幹線通勤も増えています。家の間取りも広くなっています。居心地の良い場所を求めるようになっているわけです。
 余談ですが、多くの人は、運動技能ができないとか、仕事がスムーズにできなくなったというスランプを経験しています。この中で、スランプをポジティブに捉える人達がいます。スランプが次のステップに登るための準備期間、つまり一種のチャンスだと捉える人達です。このスランプを、いろいろな試行錯誤をとおして抜け出すわけです。その試行錯誤は、自分の財産になります。スランプは、次のステップに登るためには必要不可欠のものになります。普通の人は、スランプを抜け出したときが居心地の良い場所になったと感じます。達人は、スランプにあるときから、居心地の良い状態になったと感じるわけです。格差に苦しめられたとき、達人の境地になれれば、ポジティブな生活ができるかもしれません。いずれ良い状態になれるように、工夫をするわけです。物理的スペースよりも、精神的スペースでの居心地の良さを追究してはどうでしょうか。