ファンタジアランドのアイデア

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グローバル人材を育成する大学入学共通テスト アイデア広場 その803

2021-01-28 17:24:43 | 日記


 最後のセンター試験に比べ、新しい大学入学共通テストは、地歴と公民の問題冊子がそれぞれ10ページ以上増えていました。それを読みながら、必要な要素を取捨選択する情報処理能力が試されている問題形式になっていたようです。狙いは、複数のテキストや資料を読み比べる情報処理能力を見る問題のようでした。新手の出題形式が多く、図表をふんだんに使っています。複数の資料や文献を読み解く問題が、数多く出題されたという経緯です。英語のリーディングは、従来のセンター試験よりも1千語ほど多い5千語以上になっていました。英語では、話し手はこれまでは米国人が多い傾向がありました。今回のテストでは、英国人や日本人も採用され、語感の多様化がはかられたようです。情報処理と語群の大量化、そして多様化がこれからの大学入試傾向になるようです。もっとも、この傾向は一般社会で求められる能力ということになります。
 知識の読み取りの優れた学力も重要ですが、読み込んだ知識を課題に応じて可変化する能力も求められています。グローバル化や高度情報化の現代社会を生き抜くためには、いくつかの力が必要です。一般的には、「①自律的に活動し②道具を相互作用的に使い③異質性の高い集団のなかで役割を果たす」というものになります。今回の大学入試テストは、世界の流れに通用する人材を選択する方式に見えました。
 九州大学では、教育データの活用に取り組んできました。今回のコロナ禍においても、その取り組みが生かされているのです。19000人の学生と8000人の教員に、学習管理や教材配信システムが提供されています。現在開講中の4800科目で、データの活用が可能になっています。教育のデジタル化は、学生の質疑の応答や教材へのアクセス記録を容易に収集し活用できる環境を整備しつつあります。将来的には、小学校から大学、そして社会人教育までの教育データを本人の同意のもとに蓄積する構想をもっているようです。デジタル教育の導入により、学習履歴をデータベースとして蓄積が可能になり、そのデータを利用する仕組みができるわけです。客観的な教育効果のデータを得られ、生徒や学生だけでなく、教員の客観的な指導力の評価も可能になるというものです。
 もうすぐ、デジタル教科書が作られます。1つのタブレットに、小学校1年から高校3年までの学習内容を系統的に配置も可能になります。このタブレットに、学習書や補助教材もタブレットにインストールできることでしょう。このタブレットに、①自律的に活動し②デジタル機器を相互作用的に使い③異質性のあるアクティブラーニングの教材を入れておけば、世界の流れについていける人材を育成できるわけです。デジタル教科書ができれば、誰でも、どこでも、どのような進度の速さでも学べるようになります。さらに、デジタル教科書にオンラインが接続されれば、教育の範囲はさらに広く便利になります。学習意欲のある子供は、どんどん前に進むことができます。教育デジタル化では、学習履歴データが自動的に記録されます。
 学習履歴データベースの蓄積が実現できれば、高校や大学の入試や企業の採用選考は大きく変わります。今までは、教育の効果を測る指標として、学力や学歴、そして知能が重視されてきました。現在の高校受験や大学受験そして就職活動にともなう各種試験は、無駄が多い仕組みになっています。今回の大学入学共通テストでは、複数の分野の情報を咀嚼し課題を解決する問題が出されています。でも、50万人の受験生の課題解決問題を、短時間で採点することは難しいというその限界も露呈しています。一発勝負の試験や面接だけでは、十分な能力の把握は難しい面があるわけです。蓄積された学習履歴データを活用した入試方法は、大学が求める学力やデジタルツールのスキルレベル、そしてコミニニケーション能力などを明示しておけば、その能力を持った生徒たちが受験をします。それらの能力を持つ生徒に、有利になる配点をしておけばよいわけです。大学が求める学生を絞り込むのには、客観的な学習履歴データの利用が公平で合理的な選抜方式になります。事前に大学の要求水準と生徒の持つ能力が、マッチングすれば良いのです。マッチングの基準が、生徒の小学校から高校までの学習履歴データになるわけです。学習履歴データには、①自律的に活動②デジタル機器を相互作用的に使う能力③異質性のあるアクティブラーニングでの活動歴などがあることになります。
 文部科学省は、2025年までに小中学生全員に1人1台タブレットもしくはパソコンの配備を目指していました。それを、2020年度中に、小中学生全員に1人1台情報端末の配備を早めようとしています。そして、もうすぐデジタル教科書が作られます。すると、小中高の教科書が、タブレット1枚に収納されることも可能になります。学習履歴もタブレットに蓄積していくこともできるわけです。親の立場からも国立場からも、優秀な子供をより優秀に育てたいということになります。社会の要請も多様になります。社会が変われば、学校に求められる学力も変わります。社会の要請により、小中高の学習内容は変わっていくわけです。デジタル教育も変わっていきます。ある意味で、可変性のある教育システムの構築が求められるわけです。
 日本の教育現場のハードソフト両面のデジタル化は、遅れが浮き彫りになっています。この遅れを、悲観する人々も多いようです。でもデメリットをメリットに代えることは、歴史上いくらでもあったことです。すでに行っている国とこれからやろうという国には、メリットデメリットがあります。デメリットは、このままでは遅れてしまうということです。メリットは、すでに実践している国の良い事例やインフラの長短を知ることができます。その上で、先進国(途上国の先進事例も含む)の事例を参考にしながらシステムを構築し、最適化した教育のデジタル化を始めることができるのです。社会が変われば、学校に求められる学力も変わります。社会の変化に柔軟に可変化できるシステムを構築することができれば、日本のデジタル教育を飛躍的に向上させることが可能です。後発の利を生かして、産学共同で国民の学力向上と不足する人材の育成とその能力の向上を図ることができるわけです。
 子ども1人が1つのタブレットを持ち、オンライン教育を受けることが可能になります。ITインフラの整備が進み、デジタル教科書も実現してきます。デジタル教科書の副教材やデジタル学習のソフトが進化すれば、学習は進みやすくなります。教員は個々の生徒の学習履歴を瞬時に把握でき、それに応じた課題が出せます。子ども達の脳の発達は、急速に進んでいきます。年上の子どもの動きや学習を見ているだけで、次の日にはできている子ども達がいます。教材に子ども達が合わせるのではなく、子どもの発達に教材を合わせるようにする仕組みがベターになります。小中高のデジタル学習内容が一つのタブレットに集約されていれば、子どもの発達に合わせた教材配列が可能になるかもしれません。ある会社は、人工知能(AI) が生徒の疑問点に答えるチャボット機能を開発しています。この開発の狙いは、子どものつまずきの原因となる基礎まで遡って、基礎が分かる問題を出題し、弱点の克服につなげることのようです。これをより積極的に使うならば、興味関心のあることを、今以上の能力を向上させることに利用できます。小中高のデジタル学習内容とチャボット機能、そして子どもの関心と能力がかみ合えば、クラスや学年を超えて、学べる環境が出来上がります。
 教育の世界には、ピグマリオン効果というものがあります。ある権威者から、「この子は伸びますよ」とある教師に告げたのです。この教師が、その言葉を信じて、子どもを見ているとその子供は実際に伸びたのです。実は、ピグマリオン効果は、教師の期待が子どもの成績を直接伸ばすものではありません。子どもの成長を「期待」する教師の応答が、子どもを伸ばす重要な要素になります。教師が子どもの成長を信じ、期待することは、教師と子どもとのやりとりの量と質を変えるのです。つまり、教師の応答に子どもを伸ばすヒントがあるわけです。質の高い教師と子どものやり取りをAIの装備したチャボットができるようになれば、教育革命になります。チャボット機能を向上させ、子ども達に質の高いやり取りを行うわけです。小中高の一貫したデジタル学習履歴とチャボット機能、子どもの関心と能力、そしてピグマリオン効果を組み合わせれば、面白い授業風景が見られるかもしれません。自律的に活動し、デジタル機器を相互作用的に使い、異質性の高い集団のなかで役割を果たす環境の中で、将来のグローバル化に貢献できる人材を育ててほしいものです。