日本の漁業 その1 養殖漁業と魚粉
今年の土用丑の日は、7月30日(土)です。皆さんウナギ料理に舌鼓を打つことでしょう。すでに中国からウナギが空輸されてきて、税関を通過しています。ご存じのように現在のウナギは、養殖で育てられています。ウナギの善し悪しは、魚粉によるといわれています。特に、高品質のペルー産の魚粉は、栄養面において飼料として欠かせません。この魚粉が2014年には不足し、ウナギの値段が「うなぎ登り」になったことはご存じの通りです。今日は、養殖漁業と魚粉の関わりを蒲生さんに、トット記者がインタビューします。
記者「今年のウナギは、平年より安くなると聞いています。どうなるのでしょうか」
蒲生「ペルー産の魚粉が、7月中旬で1トン20万円程度です。これは2014年と比べて3割以上安い価格です。養殖魚の飼料原料となる魚粉が、内外で軒並み下落しました。その意味で、平年よりは、安心価格で食べられます」
記者「ペルー産の魚粉は、なぜ注目されるのですか」
蒲生「クロマグロを30kgに育てるために、500kgの餌が必要です。海洋生態系で食物連鎖の下に位置する小魚を『餌魚』といいます。餌魚には、マイワシ、ニシン、カタクチイワシ、シシャモなどの小魚がいます。餌魚は、海洋生態系の中で最も大量に生息している魚です。これらの魚は、大きな群れを形成しています。プランクトンの豊富な海に群れを作って生息しているため、餌魚は容易に大量に漁獲できる魚でもあります。ペルー沖は、この餌魚であるカタクチイワシの大漁場なのです。このイワシを魚粉にして、世界の養殖業者に供給しているわけです。この魚粉の価格の上下動が、世界の養殖業者の注目を集めるのです」
記者「大漁場なら、毎年一定の漁獲だが確保できるのではないのですか。確保できると分かれば、価格は安定すると思うのですが」
蒲生「はい、そうもいかない理由があります。例年ペルー政府は4月ごろに漁獲枠を発表し、4~7月にかけて漁をすることになります。今年は漁獲枠の発表が6月まで、ずれ込みました。でも、曲がりなりにもカタクチイワシの漁獲枠が180万トンと決まり、市場に安心感が広がったのです。ペルーで遅れていた魚粉の供給不安が薄れるとの見方から、国際価格が急激に下がったのです」
記者「供給不安があれば、もっと値上がりするのではないのですか」
蒲生「苦い経験があります。2014年のカタクチイワシ漁を、ペルー政府が中止を決定しました。結果として魚粉が供給出来ず、養殖魚の値上がりが起こりました。各国の企業は、ペルー政府が中止の決定を行うかもしれないと考えています。そのリスクを念頭において、対策を練っています。今回は漁の遅れで、ペルーの魚粉生産会社の資金繰りが悪化したようです。安値で中国の需要家に販売されました。ペルー業者の足下を見られ、安値販売に繋がったようです。魚粉の在庫はあるという観測が、国際価格を下落に導いたともいえます」
記者「ところで養殖魚といえば、クロマグロが思い出されます。クロマグロの養殖が、優先された理由はどんなところにあるのですか」
蒲生「マグロ漁は、最近になって大規模漁業の世界に登場してきたのです。タラやニシンに比較すると、新参ものです。マグロの中でも、クロマグロやメバチは近年価格が急上昇したものです。サバ科に属するクロマグロやメバチ以外のカツオなど多くの魚は、管理目標よりも資源量が多く良い状態にあります。クロマグロは、高い市場価格と旺盛な需要によって、漁獲量を高めてきました。この二つが、クロマグロの捕獲努力量と漁獲量が急増してきた理由になります。ソマリア沖の台湾クロマグロ漁船は、軍艦が護衛されながら入漁をしています。それだけ、利益があがるのでしょう」
記者「人間の美食とは、恐ろしいものですね。急激なクロマグロの漁獲量の増加は、絶滅種になるとの警笛を鳴らしています。なされています。そこで次に取られた方策が、クロマグロの完全養殖ということだったのですね」
蒲生「これからの養殖業は、高級魚が対象になります。養殖業の飼料コストは、全養殖コストの6~7割になります。餌の確保が、最大の課題になるわけです。餌は小魚をそのまま与えるか、小魚をペレットにして食べさせるかになります。現在の養殖場では、生餌の利用から魚の成長に合わせた各種のペレットへと餌料を転換しつつあります」
記者「ペレット餌料に魚粉が、一定の割合で入っているわけですね」
蒲生「はいそうなります。今の養魚法は以前より、数段に進んでいます。餌を効率的にタンパク質にしていく、餌の開発も進んでいます。魚粉の国際価格の変動から、魚粉を少なくする配合まで、開発されています。大豆のミールを使った飼料の開発も進んでいます。どこの成長時点で、どんな餌料を与えれば良いのか、時間と共に正確さを増してきているわけです」
記者「ある面で、工場生産のようになっているわけですか。養殖場がある限り、漁場で獲れた魚は、必ず餌魚として売れるということになりますね」
蒲生「はい、今は冷凍庫の余裕がある限り、魚問屋はどんな魚でも買い入れます。イワシ、サバ、サンマなど一度に大量に獲れる魚は、どれだけ豊漁になっても値がつきます。養殖場で使う餌料は、漁獲物の最後の受け皿になるのです。冷凍技術が進歩した現在は、漁獲があれば冷凍して保存し、いつでも餌に転換できる体制ができています。薩摩揚げやちくわは、これらの原料になるすり身の冷凍技術と保管技術の進歩で、いつでも大量ストックや大量生産、そして安定供給が可能になっていますよ」
記者「ウナギやマグロの値段が、遠く離れたペルーのカタクチイワシの捕獲によって、影響されるとは思いませんでした。土用丑の日は、安心してウナギを食べたいです。今日はありがとうございました」
注意
ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。
今年の土用丑の日は、7月30日(土)です。皆さんウナギ料理に舌鼓を打つことでしょう。すでに中国からウナギが空輸されてきて、税関を通過しています。ご存じのように現在のウナギは、養殖で育てられています。ウナギの善し悪しは、魚粉によるといわれています。特に、高品質のペルー産の魚粉は、栄養面において飼料として欠かせません。この魚粉が2014年には不足し、ウナギの値段が「うなぎ登り」になったことはご存じの通りです。今日は、養殖漁業と魚粉の関わりを蒲生さんに、トット記者がインタビューします。
記者「今年のウナギは、平年より安くなると聞いています。どうなるのでしょうか」
蒲生「ペルー産の魚粉が、7月中旬で1トン20万円程度です。これは2014年と比べて3割以上安い価格です。養殖魚の飼料原料となる魚粉が、内外で軒並み下落しました。その意味で、平年よりは、安心価格で食べられます」
記者「ペルー産の魚粉は、なぜ注目されるのですか」
蒲生「クロマグロを30kgに育てるために、500kgの餌が必要です。海洋生態系で食物連鎖の下に位置する小魚を『餌魚』といいます。餌魚には、マイワシ、ニシン、カタクチイワシ、シシャモなどの小魚がいます。餌魚は、海洋生態系の中で最も大量に生息している魚です。これらの魚は、大きな群れを形成しています。プランクトンの豊富な海に群れを作って生息しているため、餌魚は容易に大量に漁獲できる魚でもあります。ペルー沖は、この餌魚であるカタクチイワシの大漁場なのです。このイワシを魚粉にして、世界の養殖業者に供給しているわけです。この魚粉の価格の上下動が、世界の養殖業者の注目を集めるのです」
記者「大漁場なら、毎年一定の漁獲だが確保できるのではないのですか。確保できると分かれば、価格は安定すると思うのですが」
蒲生「はい、そうもいかない理由があります。例年ペルー政府は4月ごろに漁獲枠を発表し、4~7月にかけて漁をすることになります。今年は漁獲枠の発表が6月まで、ずれ込みました。でも、曲がりなりにもカタクチイワシの漁獲枠が180万トンと決まり、市場に安心感が広がったのです。ペルーで遅れていた魚粉の供給不安が薄れるとの見方から、国際価格が急激に下がったのです」
記者「供給不安があれば、もっと値上がりするのではないのですか」
蒲生「苦い経験があります。2014年のカタクチイワシ漁を、ペルー政府が中止を決定しました。結果として魚粉が供給出来ず、養殖魚の値上がりが起こりました。各国の企業は、ペルー政府が中止の決定を行うかもしれないと考えています。そのリスクを念頭において、対策を練っています。今回は漁の遅れで、ペルーの魚粉生産会社の資金繰りが悪化したようです。安値で中国の需要家に販売されました。ペルー業者の足下を見られ、安値販売に繋がったようです。魚粉の在庫はあるという観測が、国際価格を下落に導いたともいえます」
記者「ところで養殖魚といえば、クロマグロが思い出されます。クロマグロの養殖が、優先された理由はどんなところにあるのですか」
蒲生「マグロ漁は、最近になって大規模漁業の世界に登場してきたのです。タラやニシンに比較すると、新参ものです。マグロの中でも、クロマグロやメバチは近年価格が急上昇したものです。サバ科に属するクロマグロやメバチ以外のカツオなど多くの魚は、管理目標よりも資源量が多く良い状態にあります。クロマグロは、高い市場価格と旺盛な需要によって、漁獲量を高めてきました。この二つが、クロマグロの捕獲努力量と漁獲量が急増してきた理由になります。ソマリア沖の台湾クロマグロ漁船は、軍艦が護衛されながら入漁をしています。それだけ、利益があがるのでしょう」
記者「人間の美食とは、恐ろしいものですね。急激なクロマグロの漁獲量の増加は、絶滅種になるとの警笛を鳴らしています。なされています。そこで次に取られた方策が、クロマグロの完全養殖ということだったのですね」
蒲生「これからの養殖業は、高級魚が対象になります。養殖業の飼料コストは、全養殖コストの6~7割になります。餌の確保が、最大の課題になるわけです。餌は小魚をそのまま与えるか、小魚をペレットにして食べさせるかになります。現在の養殖場では、生餌の利用から魚の成長に合わせた各種のペレットへと餌料を転換しつつあります」
記者「ペレット餌料に魚粉が、一定の割合で入っているわけですね」
蒲生「はいそうなります。今の養魚法は以前より、数段に進んでいます。餌を効率的にタンパク質にしていく、餌の開発も進んでいます。魚粉の国際価格の変動から、魚粉を少なくする配合まで、開発されています。大豆のミールを使った飼料の開発も進んでいます。どこの成長時点で、どんな餌料を与えれば良いのか、時間と共に正確さを増してきているわけです」
記者「ある面で、工場生産のようになっているわけですか。養殖場がある限り、漁場で獲れた魚は、必ず餌魚として売れるということになりますね」
蒲生「はい、今は冷凍庫の余裕がある限り、魚問屋はどんな魚でも買い入れます。イワシ、サバ、サンマなど一度に大量に獲れる魚は、どれだけ豊漁になっても値がつきます。養殖場で使う餌料は、漁獲物の最後の受け皿になるのです。冷凍技術が進歩した現在は、漁獲があれば冷凍して保存し、いつでも餌に転換できる体制ができています。薩摩揚げやちくわは、これらの原料になるすり身の冷凍技術と保管技術の進歩で、いつでも大量ストックや大量生産、そして安定供給が可能になっていますよ」
記者「ウナギやマグロの値段が、遠く離れたペルーのカタクチイワシの捕獲によって、影響されるとは思いませんでした。土用丑の日は、安心してウナギを食べたいです。今日はありがとうございました」
注意
ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。再度申し上げますが、現実の世界ではありません。虚偽の世界のお話の中に、有益だなと思うことがあるかもしれません。虚偽の世界のことを、現実の世界で試してみることは、推奨されることはあっても、禁止されることではありません。ただし、利益をあげても損害を受けても、自己責任ということをおわすれなく。