ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

失敗を許容する職場も良いものだ アイデア広場 その 749

2020-11-30 19:30:58 | 日記

 子どもの周りから危険なものを遠ざけることによって、事故を防ぐという考え方があります。子どもが怪我をしないように、公園から箱ブランコ、回転塔、遊動木などが次々と撤去される光景があります。事故を起こさないように、いろいろな手立てが工夫されています。危険なものを遠ざけることと似たようなことは、大人の世界でも行われています。極端なことを言えば、手術をしなれば医療事故は起きません。電車を走らせなければ脱線事故は起きませんし、飛行機を飛ばさなければ墜落もないわけです。そして、事故が起きると再発予防対策が立てられます。この対策は、以前の蓄積された対策に積み重なるように、重厚なものになりがちです。でも、行き過ぎた対策は、リスク感覚を鈍らせると懸念する声も出てきています。公園から遊具が無くなったために、遊びの能力が衰えて、日常生活のつまらないことで大けがをする子供が出てきています。事故を減らすことだけ考えて、肝心の成長発達の目標を忘れては何にもらないという声の存在も無視できないようです。
 1977年カナリア諸島の管制官の間違いで、ジャンボ旅客機が衝突し、乗員乗客583人が死亡しました。大西洋のカナリア諸島の飛行場で、管制官の指示を取り違えて2機のジャンボ旅客機が衝突炎上してしまったのです。ヒューマンエラーによる事故は、新聞を見るとセンセーショナルに報道されることがあります。これらの事故は詳細に調査分析され、その原因が報告されています。それらの分析からは、保守作業員、パイロットなどのエラーが引き金となって起きているという報告が多くなっています。ルールを守ることが、安全目標を達成するために最重要なことされてきています。対策として、個人の性格や行動特性に基づいて研修や指導を行うことになります。でも、このような安全管理を推進した結果、既に十分すぎるくらいに存在するルールが、さらに増えという不都合な現象もみえてきます。
 叱責や処罰では、エラーを防げません。事故を起こす環境は、設備や磯械の不具合だけでなく人間もその要素を構成しています。そのためにエラーが起きることを前提に、システムを設計し、改良していくことが一般的です。有名な「1対29対300の法則」は、ハインリッヒの法則として有名です。大きな事故が1つ起きる前には、事故につながりそうなことが29あり、さらに目に見えいような危険なことが300ほどあるというものです。これらの知見を獲得している企業は、ほとんどの危険な事象に対して多重の防護壁を築いています。事故を跳ね返す仕組みがあるために、大きな事故はめったに起きないわけです。失敗しても、技術システムがカバーしてくれる「バックアジプシステム」を組み込んでいるわけです。事故についての理解を深め、チームワークを高めることは有効です。でも、個人とチームへのアプローチではエラーの確率を下げられても、ゼロにすることはできないのです。
 硬直した現場では、ルールで決められていないことに直面したとき、自分勝手に判断せず、必ず上の判断を仰ぐように指示されています。現場は決められたとおりに作業を行うこと、決められたこと以外はやらないよう命じられる職場もあります。でも、自主的判断がなければ、仕事に誇りが持つことができないものです。仕事に誇りが持てなければ、仕事の質も低下していきます。安全という事象を、「よい仕事を続ける」という視点で評価する方法もあります。仕事には、生産性という面での評価が付きまといます。「しない、できない」だけでは、良い仕事とは言えないのです。現場の創意工夫と臨機応変な対応が奨励され、皆が仕事に誇りを持って働くようにする仕組みが求められます。
 将棋界では藤井壮太棋士と「ひふみん」、こと棋士の加藤一二三九段が注目を集めています。加藤棋士は、かわいいと人気者になったのです。以前、百歳を超えた双子の「金さん銀さん」が人気者になりました。赤ちゃんや子供と、老人がなぜ同じく「かわいい」のでしょうか。かわいいには、無害さの要素もあり、それが人気の一つの要素になっています。私たちの身体は、毎日、外からエネルギーを摂らないと維持できません。どうせ毎日食べるならば、料理の工程を楽しみに変えたいという人も現れます。楽しみは、人間に害を与えません。ある面で無害で、有益なものです。料理の行程を経て、炊事をした最後にごちそうが待っているのですから、調理は本当に楽しい仕事になります。人生を豊かに、楽しくしくくれるモノならば、その欲望を恥じることも、否定することもないというわけです。かわいいとか無害というというものは、人間の生活に何らかの意味を与えているのかもしれません。
 仕事をする目的は、よい製品を作ること、よいサービスを提供することになります。少しでも、ルーティンワークが楽しくなるように工夫をしたほうが生産的といわれています。すべての仕事で、120点を目指す必要はないようです。せいぜい80点を目指せば良いのです。80点なら余裕があり、エラーや失敗にも、随時対応できる余力ができます。余裕といえば、休日出勤にも、いくつかのメリットもあります。仕事を抱えたまま日曜日を過ごしても、月曜日からの仕事が大変になるだけです。大変だとわかっていれば、心理的に苦痛になります。人のいない職場で、集中して仕事をこなすためには、不必要な外からの刺激をできるだけ遮断することになります。広々とした職場で、一人能率的に仕事を行うことも、余裕を産み出します。ちょうどいいサイズの仕事なら片づけも簡単で済み広々とした空間で気持ちよく送れるというわけです。
 モノやルールに、人生を振り回されていることは本末転倒です。仕事では、時間をムダに使わないことが求められます。モノを持つには、お金が必要になり、空間を必要とし、時間が必要になることを意味します。ちょうどいいサイズの生活なら、お金や時間に振り回されることはありません。気をつけたいことは、仕事のスケジュールを過密にし過ぎないことです。仕事の成果を適当に上げながら、失敗や事故の割合を軽減する姿勢が求められます。失敗は起きます。事故も起きます。これらが起きた時に適切に対処できる人は、失敗や事故を経験した人ということになります。ある程度、失敗を許容する職場も良いところなのかもしれません。

がんに打ち勝つ健康寿命 アイデア広場 その748

2020-11-29 18:16:19 | 日記


 福岡県に住む90歳代の男性は舌がんの患者が、九州がんセンター(福岡市)に入院しました。この患者は、高齢だったために主治医は一度、切除手術をためらったそうです。でも、健康状態などを調べると、運動能力や持病の重さ、精神状態や家族の支援体制には問題がありませんでした。高齢者は同じ年齢でも、抗がん剤の効き方や副作用が体への影響や負担の違いが生じやすいのです。事前に評価しないと、体が弱った高齢者への多すぎる抗がん剤の投与は、治療を続けられないケースもでてきます。標準的に決まった治療より、体への負担を落とした方がよい患者もあるのです。もちろん、年齢以上に若い方には、抗がん剤の投与が有効なケースも増えてきます。この方の場合、手術をして術後の経過は良好で、抗がん剤で治療中だということです。がん治療に「耐える力」を評価しながら、治療する術式も開発されているようです。このことは、もとが健康であれば、がん手術もスムーズにいくということです。
 以前から高齢者の健康状態などの機能を調べて、病気の治療に生かす動きはありました。近年、高齢がん患者の健康状態に合わせた治療の重要性が増しています。でも、健康状態に合わせた治療を実施している医療機関はまだ少ないのです。日本人の半数が、一生のうちに一度はがんを患う時代です。日本の人口は1億2000万人ですので、6000万人ががんにかかるという計算になります。がん治療は、患者の年齢や元気さを医師が感覚的に判断し、治療の種類を決めることが多いのです。機能評価を取り入れている病院では、年齢が高くても、標準的な治療を安全にできるとは考えていないようです。この機能評価には、歩行や着替え、食事、家事や交通機関の利用など一人暮らしに必要な動きが可能かを見る項目もあるようです。超高齢化社会のがん治療として、この機能評価が普及する兆しが出てきています。
 九州がんセンターは、2018年9月に老年腫蕩科を開設しました。センターでは75歳以上の初診の全てのがん患者に、簡易な健康状態の評価を実施しています。看護師が、栄養状態、内服薬、歩行や抑うつなどを5分程度で問診し、0~17点で採点します。点数が低く必要性の高いと判断した患者には、1時間かけて老年腫傷科で機能を評価するのです。高齢のがん患者の運動能力や認知機能の有無を、「高齢者機能評価」として丁寧に調べます。評価の中には、運動能力で4メートルを歩く速度の時間などを測るものがあります。椅子に座った状態から、足の力だけで立ち上がるのにかかる時間などを測るものもあります。がん患者の運動能力や認知機能、生活を支える家族の有無などを調べることになるようです。
 この評価で面白いなと持ったものが、家族の支えという項目でした。家庭の支えは、家族構成や経済力、介護する人とされる人の性格により家庭ごとに異なります。前向きな状態で介護にあたることが、支援される方にも、支援する方にも良い影響を与えることになります。家族の支援があるかないかで、治療経過に良い影響を与えたり、悪くなったりします。ある事例では、息子夫婦と娘夫婦、そしてその子供を含めた5人で、「ローテーション」を組み、支援にあたりました。一人に負担が、集中しないように家族間で配慮していたそうです。大切なことは、一人の限界をわきまえておくことのようです。頑張る人には、「休みを与えなければならない」という体制がとても大切です。支援の「ローテーション」を組めるかどうかは、大きな「家族の実力」になります。この病院では、こんなところまで見ているのかと感心してしまいました。
 がん患者の7割強は、高齢者が占めています。高齢者の健康状態や認知機能などを、事前に詳しく調べる必要に迫られます。機能を評価には、抑うつ傾向などの精神状態、直近の栄養状態の調べがあります。これらのチェックに加え、持病や同居する家族の有無もあるわけです。高齢患者の健康状態、運動能力、そして認知機能を点数化します。全ての結果を点数化したうえで、主治医へ提案する仕組みになっています。抗がん剤の使用量や期間、手術の有無、治療の種類や体への負担などを、主治医へ提案するわけです。運動能力などが低下した患者には、がんの治療に加えて、筋力維持のリハビリや社会参加を促すこともあるようです。高齢者の一人ひとりの「耐える力」を把握して治療をする動きがでてきたのです。とすれば、治療に耐えられる体や精神力を養っておくことも、求められます。
 元気で積極的な人が増えれば、仲間との繋がりが広がり、心身の状態は維持向上していきます。仲間同士で、会話というキャッチボールを上手に続けられることが、脳の若さを保つことにもなります。個人で、仲間と一緒に、そして地域で活動する場を設ければ、治療に耐えられる心身の状態を事前に作っておくことが可能です。宮城県の柴田町にある仙台大学では、高齢者向けの運動プログラムを開発しています。この大学と柴田町が連携して、運動の習慣づける活動を行っているのです。大学の学生さんが、運動のために集会所に来た高齢者の補助を担っています。この交流を、楽しみにしている高齢者も多いのです。仙台大学内には、高齢者専用の負荷の低いトレーニングマシンを備えています。面白いと思えることには、手を出してみることです。脳は、楽しいことが大好きです。そして、楽しいことは長続きするものです。
 加齢が進むにつれて、健康状態などの個人差が大きくなる傾向があります。日本人の平助寿命は、女性が87歳、男性は81歳と世界最高水準で推移しています。日常生活を問題がなく送れる健康寿命でみると、女性75歳、男性約72歳になっています。このことは、女性は老後の12年間は、日常生活に不自由しながら過ごすことを意味しています。男性は、9年間になります。この不自由期間をできるだけ短縮したいと、多くの高齢者は希望しているわけです。高齢化が急速に進む中、健康寿命をいかに伸ばすかという課題に直面しているともいえます。がんにも負けないハッピーなシニアライブを過ごしたいのであれば、若いうちから楽しい訓練の積み重ねも必要のようです。訓練が楽しみになれば、よりパッピーな生活と老後が待っています。


脱炭素社会に必要なレアアースを上手に使う アイデア広場 その747

2020-11-28 17:42:40 | 日記

 中国の王毅外相は、「日本の漁船が絶えず釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な水域に入っている」主張していました。この談話聞いて、10年前の尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁巡視船が衝突した事件が思いだれました。その後、中国が対日輸出を事実上停止しています。いわゆる2010年の「レアアース・ショック」です。中国が対日輸出を事実上停止したとき、欧州など第三国を経由して輸入したことが思い出されます。その中国が、戦略物資や先端技術の輸出管理を厳しくする輸出管理法を施行する12月1日が近づいています。輸出の許可制が導入される戦略物資には、中国が高い生産シェアを握るレアアースが含まれています。この法律は、アメリカへの対抗が狙いになっています。でも、中国からレアアースを調達する日本企業は身構えています。10年前の記憶が、鮮明に残っているのでしょう。いまのところレアアース相場は静かです。各国の需要家が、中国の輸出に不安を感じていることは明らかです。以前の教訓から、日本は官民でレアアースの国内消費量の60日分を目標に備蓄しています。日本も、手をこまぬいていたわけではありません。
 10年前の民主党政権は、中国の供給に頼ってきたレアアースの調達先を広げようとしました。カザフスタンでは、ウランの精製時にレアアース(ジスプロシウム)が副産物として取得できました。ジスプロシウムは、ハイブリッド車や電気自動車に使う磁石に不可欠な素材になります。当時、カザフスタンを訪問中の枝野経産相は、この国の産業相と会談をしています。カザフスタンで、枝野経産相は日本向けレアアースの共同開発と輸出拡大を進める方向で合意を取り付けています。レアアースの一種であるジスプロシウムをカザフ国の工場で、年間60トン生産することになりました。当時の日本の総需要(約500トン)の約1割を、確保できる見通しを取り付けたわけです。漁船との衝突事件以来、日本の官民は連携してレアアースの「脱中国依存」を急ぐ姿が、10年前にありました。
 レアアースは17元素の総称です。ネオジムやジスプロシウム、テルビウムからは、高性能磁石をつくることができます。電気自動車には、駆動用に耐熱性のモーターが使われます。このモーターには、ジスプロシウムが不可欠です。少量を加えるだけで素材の性能を高めるため、「産業のビタミン」とも呼ばれています。ハードディスク駆動装置や電気自動車、風力発電機のモーターなどで幅広く使われている元素になります。脱炭素社会には、必要不可欠な物質なのです。そして、レアアースは兵器に不可欠な元素でもあるのです。
 レアアースは、中国に偏在しているかのように思われています。でも、レアアースの偏在は、中国政府によって人為的につくり出されたものだということが真実なのです。この物質の分布は世界に分散しており、偏在が問題になるようなメタルではないのです。かつては、アメリカやオーストラリア、ロシアが生産の中心でした。中国のシェア1990年ころは30%でした。その後の20年間で、97%ものシェアまでになりました。中国はレアアースのダンピング攻勢により、世界シェアを着々と拡大しました。中国による1990年代以降の安値攻勢で、世界のレアアース鉱山は生産休止に追い込まれていきました。ジスプロシウムが高騰している時に、鉱山を再開発するには膨大な経費を必要となります。でも、ジスプロシウムの価格が低迷しているときに対策を立てれば、きわめて安い経費で開発が可能なのです。この対策を軽視し、中国に頼ったことが問題になるわけです。現在では、このメタルがリサイクルで毎年一定の割合で必ず排出されます。以前と違い、量を問題にしなければ枯渇しないメタルになっています。各国に備蓄しているレアアースを融通しながら、鉱山を再開することも可能になっています。
 中国経済が、コロナウイルスのパンデミックから急回復しています。中国電気自動車(EV)の今年7~9月期の生産台数は、前年同期比で32%増えています。EV生産の増加は、レアアースの需要を押上げています。2020年上半期の中国のレアアース輸入量は、前年同期比74%増と急拡大しています。アメリカやミャンマーから、レアアースの輸入が急増しているのです。中国国内では、レアアースの供給不足が続いています。中国メーカーは、様々な産業に用いるレアアースを海外に依存せざるを得ない状態にあるのです。この6年間、国内消費量が生産量を30%以上超過している現実があります。もはや中国は、レアアースを自給できる時代ではなくなったともいえるのです。
 中国企業は、レアアースをマウンテン・パス(カリフォルニア州)やミャンマーの生産業者に頼っています。中国の昨年のレアアース輸入量に占めるマウンテン・パスのシェアは38%で、ミャンマーのシェアは30%でした。国内の供給不足を補うため、中国企業が、アメリカ唯一のレアアース鉱山に触手を伸ばしています。マウンテン・パスは米投資家が経営していますが、中国企業も10%出資しています。マウンテン・パスで、採掘されたレアアースは、全量中国に輸出し加工処理される流れになっています。中国の輸入には、問題もあります。ミャンマーでは、中国主導のプロジェクトへの抗議デモが多発しています。アフリカでも起きているのですが、中国の鉱山開発は人権問題が絡むことが往々にして生じます。デモが先鋭化した場合、輸入が停止するかもしれないという問題です。アメリカとは、貿易摩擦が高じて戦略的物質と認定されれば、アメリカからの輸出が停止されるかもしれないという問題です。中国がレアアースで使ってきた戦術が、逆に使われてしまう可能性が出てきているのです。
 中国共産党は、2021~25年の「(第14次) 5カ年計画」の骨格を固めました。中国政府は、高価格の維持を図るためレアアースに生産枠を設けています。もちろん、環境を維持する目的も含まれています。中国政府は今年のレアアース生産枠を前年から6%引き上げ、過去最大の14万卜ンとしています。このレアアース生産の制限を、中国企業の経営幹部や専門家らは、中国の優位性が低下するのではないかと懸念しているのです。レアアース生産を制限の結果、戦略分野での中国の優/位性までが損なわれているというわけです。モンゴル自治区の包頭市には、レアアースの採掘場があります。この採掘現場の近くには、レアアースを大量消費する企業が集積しているのです。でも、地元磁石メーカーの工場稼働率は、レアアース不足により50%を下回るという状況が続いています。
 最後に、レアアースの採掘から製品までの流れのなかには、いくつもボトルネックがあります。現状ではそれらボトルネックのすべてを、一つの国で取り除くことはできません。採掘企業も、それを利用するハイテク産業も、安定供給という共通した目標をもっています。世界が脱炭素社会を目指すならば、レアアースの安定供給の対策を確立しておくことが望まれます。曲がりなりにも、欧米も中国も、もちろん日本も脱炭素社会の到来を実現しようとしています。脱炭素社会の実現には、再生可能エネルギーの増産が不可欠です。再生可能エネルギーの増産を支える物質が、レアアースです。レアアースの安定供給を、国際社会を中心に構築してほしいものです。


後出しじゃんけんの優位性  アイデア広場 その746

2020-11-27 18:16:45 | 日記


 新型コロナ禍でも、コンテナを使った海上輸送量は、アジアを中心に急増しています。それに伴い、運賃も上昇しているのです。2020年1月ごろは、中国発米国向けの運賃が40フィートコンテナ1個あたり1500ドル程度でした。この運賃が3913ドルと急上昇しているのです。10月のアジア発米国向け海上コンテナ輸送量は、前年同月比23.3%増え、過去最高となっています。例年、米国の年末商戦に間に合う8~10月に輸送量が 増加し、それ以降は一服する状況が常態化していたのです。でも、今年の米国では、11月に入ってもアジアからの輸送量は減っていません。米国向けの輸送が増えたことで、米国にコンテナ船が集中しています。そのために、アジア諸国でのコンテナ輸送に支障をきたしている面も出てきているのです。通常のスポット運賃に追加料金を払ってでも、荷物を送りたいという荷主が多くなっています。経済活動が、上向きになっている大きな指標です。
 ニューヨーク金先物は11月23日、1トロイオンス1870ドルの水準から1830ドル前後まで急落しました。この金先物は24日の時間外取引で、一時1トロイオンス1820ドル前後までさらに下落したのです。ワクチン期待や米景況感改善受けて、金の先物は4カ月ぶり安値を更新しています。驚くべきことに、アメリカの株価は、史上初の3万ドルの大台を突破したのです。新型コロナウイルスのワクチン開発報道を受け、経済活動正常化への期待が高まっています。リスクが和らぎ、安全資産の金には売りが強まったともいえます。
11月の米購買担当者景気指数が前月比で大幅に改善しました。ムードだけでなく、米購買担当者景気指数も、5年半ぶり高水準となっています。アメリカ景気の底堅さを示す経済 指標の公表も、為替のドル高を通じて金を押し下げたといえます。アメリカと中国の経済回復は、徐々に進行しつつあるようです。でも、政治や通信技術、そして軍事面では争う局面が続くことになります。
 話は、エチオピアに飛びます。アディスアベバの日本料理店では、中国版GPSを使った食事宅配サービスが普及しています。和食には、ここ70年間戦争のない平和な日本のブランドイメージが付きまとっています。この店は、過去3年で日本料理の取扱量を7倍に増やしているのです。エチオピアの首都、アディスアベバには、住民480万人の多くが個人住所を持たないまま生活をしています。それでも、宅配はスマホの地図アプリを使い、正確に食事を届けことができます。この驚くべき流通システムを支えているのは、中国の通信技術です。この国で普及するスマホも大半が、安価な中国製になります。アディスアベバの上空には、中国版GPSの北斗が最大30基と、アメリカのGPSの2倍の衛星が常時信号を送っているのです。
 半世紀前にインターネットを生み出して以来、アメリカはいつもサイバー空間の主役でした。でも、アメリカ1強の世界観が変わり、多様な世界観が出てきています。特に、中国の突出した膨張です。衛星データを調べると、中国の「北斗」の影響力が世界規模で増していることがわかります。195カ国の首都上空を見ると、85%の165カ国で北斗の観測数がアメリカGPSを上回るのです。中国は1994年に北斗の開発に着手し、20年6月に完成させました。北斗の開発の狙いは、経済対策だけではありません。GPSは、もともとミサイル誘導や軍隊の位置把握のために開発されたものです。アメリカのGPSをしのぐ衛星技術を手にすれば、それだけ軍事力を高められることになります。米国を脅かす北斗が世界を覆う状況になりつつあるわけです。
 中国が世界の工場として、アパレルの生産担うようになりました。この業界では、低価格でデザイン性のあるファストファッションが、大きな位置を占めるようになっています。経済的に勢いのある中国は、マナーなどの面で意識が低いと言われてきました。少し前まで、日本もそんな評価を欧米からいわれたことがあります。意識か高いから、経済的に成功するとは限らないということも事実です。中国は、低価格でデザイン性の高い服が実現できるようになりました。日本の敗因は、中国の勝因との比較で明らかになります。先発の生産工程は、機能を継ぎ接ぎしていき非効率になりがちになります。後発の場合、最適化された生産工程が最初から構築できるわけです。日本は、後出しじゃんけんにしてやられたというわけです。その中国も、東南アジアやアフリカの国々に工場を移転せざるを得なくなっています。
 貧しい国が、縫製工場を誘致したことで、国を豊かにした事例がバングラデシュになります。バングラデシュは、世界第2位の衣料品の輸出国に成長しています。首位の中国に次ぐ輸出国になることで、1億6千万人の国民所得を増やしているのです。このバングラデシュより、魅力ある国がミャンマーです。今話題のワークマンは、機能性の高い服を安く提供しています。中国よりコストの安いミャンマーでの生産は、数十~数百といった小ロット数で生産することができます。ワークマンの店舗数は、約840店舗です。需要がある店に、在庫の心配をすることなく供給できる体制ができているのです。もちろん、防水や防寒などの高機能素材が、より低価格で供給されるようになったことも大きな理由になります。後発の生産は最初から最適化され、高速化されるメリットがあるということになります。
 ユニクロは、エチオピアで生産を開始します。エチオピアでは、スウェーデンのアパレルメーカーH&Mや中国企業の縫製工場が増えているのです。この国はアフリカの中でも、労働賃金が低い水準にあります。ユニクロは、高品質の衣料を量産できる労働力を養成していく体制を整えようとしています。エチオピアを、ヨーロッパやアメリカへの輸出拠点にしたいようです。「近さ」「便利さ」「安さ」は、強さの根幹になるようです。エチオピアは、欧米に近く、アメリカ向けの衣料品には税金がかからないという優位性を持っています。世界の衣料品は、まだまだアメリカの旺盛な消費意欲に支えられているのです。中国も強国になりつつありますが、まだまだ国民の豊かさという面では、アメリカに追いつかなければならない課題があります。後出しの最適生産システムを作る途上国の優勢が、これからも続くかもしれません。



幸福が微笑む循環型の町づくり  アイデア広場 その 745

2020-11-26 17:31:45 | 日記


はじめに
 我が国は脱炭素社会の実現に向けて、2030年度には再生可能エネルギーの割合を22~24%程度に引き上げる計画になりました。世界の趨勢は、化石燃料の縮小と再生可能エネルギーの増産に舵を切っています。不安定な太陽光発電や風力発電、そして安定的な電力である地熱発電、バイオマスエネルギー、小水力発電の利用促進が課題になっています。再生可能エネルギーを活用することで、二酸化炭素の排出を減らすことが世界の潮流になっているわけです。再生可能エネルギーを利用するビジネスには、追い風がふいているのです。特に、自然を活用した地域再生可能エネルギーの開発が地方の明暗を分けることになります。

1、近場の再生可能エネルギー

 小水力発電は、1mの落差でも0.5kwの電力を作ることができます。1 kwの電力を作る建設費が、200万円といわれています。上手く運用すれば、2mの落差の1kwの小水力発電で、年間20万円の売電ができるわけです。日本の川は、ヨーロッパ諸国からみると滝のようだと形容されるほど落差のある急流が数多くありまます。土砂の流出を防ぐために、国中に砂防ダムが作られています。たとえば、渓流に5つの砂防ダムがあれば、その1つ1つで発電ができるわけです。村に砂防ダムが5つあれば、そのすべてで小水力発電が可能になります。ダムの高さが10mクラスの小さな砂防ダムでも、発電は可能で、200kwの電力は得られます。200kwだとすると5つで1000 kwになり、2億円の売電が可能になるのです。日本列島のすべての地域で、小水力発電の可能性があることになります。その可能性ある場所は、2万か所ともいわれています。各地方の自治体が、この自然の恵みを利用することは理にかなっています。
 より積極的に進めようとすれば、町村でダムを作ることになります。500kwの発電規模の工事費は、川の様子やダムの形や状況などによりますが、約7億円と推測されます。7億円は、金融機関からの融資で調達することもできます。もちろん、町の財源を利用することもできるでしょう。7億円は融資条件にもりますが、15年から18年で償却できるようになります。500kwの発電規模ですと、年間の売電収入が大体7300万円くらいになります。7300万円のうち、6000万円を銀行の返済に回すと、1300万円が残ります。1300万円から、発電施設の維持費として人件費等で年に600万円ほど引くことになります。残りは700万円になります。この700万円が、返済している期間の利益になるわけです。返済がなくなる15~18年後には、新たに6000万円の利益が生まれます。これが、市町村の自主財源になります。
 国策に協力して、国から交付金をもらう方法もあります。北海道の寿都町は、大胆な選択をしました。核のごみの最終処分場誘致に向け、第1段階となる文献調査への応募をしたのです。この町では、風力発電が稼ぎ頭で、年間の売電収入は平均7.5億円と町税収入(2億円強)を上回ります。文献調査はその入り口で、2年間に最大20億円の交付金を得られます。さらに、ボーリング調査など実地の「概要調査」に入れば、さらに4年間で最大70億円が町に入ることになります。寿都町が受け取った90億円をダムに投資したらとうなるでしょうか。寿都町に小規模水力発電のダムを造る適地があれば、500kwの発電所が、約13か所造れることになります。13のダムから9億4900万円の売電収入がはいることになります。最終処分場について寿都町は、「100年安心の産業」ともいえる将来像を描き始めているようです。
 地域でつくり出すのは、小水力発電だけではありません。風力発電や地熱発電、バイオマス発電など、地元の資源を有効利用する発想は次々出てきます。地元の需要をまかなう「エネルギーの地産地消」は、これからも進んでいくことでしょう。地産地消をベースにすれば、地方で再生可能エネルギーをいくらでも開発できる素地があります。小規模の水力発電ならば、2万か所もあります。火山の多い日本では、地熱発電も有望です。風力発電も有望な地域はあります。さらに空気の850倍もの比重を持つ世界最大の海流による潮流発電も有望です。地方自治体は、地域にどのような再生エネルギーの資源があるのかを再点検し、活用を考える時期にきています。発電量が変動する太陽光などの発電と安定供給の小水力などの発電との最適な組み合わせが、地域活性化に繋がります。

2、マネーの地域循環

 岡山県奈義町は、約6000人の全町民にICカードを発行しています。奈義町での買い物には、健康診断、ボランティア活動、議会傍聴にポイントが付与されるのです。この町での買い物にはポイント付与され、ウオーキングをした場合もポイントが付与される仕組みになっています。奈義町では、多様な町民活動に対しポイントが付与され、地元の加盟店で利用できる仕組みを構築しました。町内経済はもとより、地域コミュニティーの維持活性化にも貢献するICカードになっているのです。専用カード読み取り機に、カードをかざすとポイントが付与されるわけです。余談ですが、国土交通省のスマートシティ構想によると、市民の1歩の歩行が0.06円の医療費抑制につながるというのです。100歩で6円、1000歩で60円になります。1日、6000人が1000歩ウオーキングすると、36万円の医療費を抑制されることになります。100日続けて歩けば、3600万円の医療費が軽減されることになります。町民の皆さんは歩いて健康になり、健康になれば医療費が抑制され、町の医療予算は節約されるという好循環が生まれます。その好循環を生み出す仕掛けが、ICカードに内蔵されているわけです。
 広島県庄原市の東城町地区では、商工会が2019年に電子マネー機能付きICカードを導入しました。これに続いて、庄原市全体としても、東城町地区の決済ノウハウを活用することにしました。2021年1月以降に、ICカードを全市民へ配布することになりました。東城町では、決済業者が地元商工会なので地域マネーの循環を担えるといいます。地元商工会の配慮で、加盟店が払う手数料も地元に還元される仕組みもできています。得られた手数料収入の活用は、通学時の児童や高齢者の見守りサービスにも広がっているのです。商工会では、県境を越えた広域的な連携も試みています。個々の自治体レベルでは、地元循環の成果が上がっている地域も出てきています。
 日本の地方にも、豊かになる工夫が求められます。その工夫の中に、各地域の経済を地域内できちんと回していくことがあります。地域内の消費は、地域内生産物への需要につながります。地域のマネーが、東城町の地域内で循環する仕組みを作るわけです。たとえば、地域内で1万円を使ったとします。すると、1巡目は、1万円のうち、80%の8000円が残ります。2巡目は、8000円のうちの80%、6400円が残ります。80%を掛け合わせながらどんどん足していくと、最終的な合計金額は約5万円になるという計算もあります。地元でお金をまわすことは、想像以上に地域を豊かにすることが分かります。でも、残念ながら石油等の燃料費は、地域外に流れていきます。この流出は、地域の中で流通するお金が、少なることを意味します。もし、地域内で再生可能エネルギーを作ることができれば、地域外への持ち出しは減ります。さらに、インバウンドで入ってきたお金が、そのまま地域で循環することになれば、地域は以前より循環するお金が増えて、裕福になるわけです。燃料も地産地消で、食べ物も地産地消になる割合が増えれば増えるほど、地域内で循環するマネーが増えてハッピーというわけです。そのうえ、住民が健康であれば、理想的な地域になります。
 地方の人々は、循環型の仕組みを持ちたいと願っています。でも、なかなか実現できません。人材が、乏しく難しい面もあるのです。この課題に貢献できる人材は、地域の事情に詳しくネットワークを持つ人になります。次に、地域課題を客観的データで分析できる人材です。さらには広域経済圏域という空間的につながりを持ち、時に応じて人や産業の多様性を組み合わせることのできる人材ということになります。地域にある資源は、情報技術を使って付加価値を高めることも可能です。地方に稼ぐ力をつけ、雇用力を高め、地産地消を活発に行うことにより、地方を豊かな地域にしていきたいものです。そのためには、人材が必要です。この人材の流れが、地方に有利になりつつあるのです。首都圏の優秀な人材が、1000人単位で地方に移動する状況が生まれつつあるのです。チャンスが訪れているともいえます。

3、元気はつらつ

 健康テックとIoTが連動していれば、常に、社員の健康状態を把握できる体制ができる環境が整ってきました。社員のまばたきや視線移動から、集中力やリラックス、疲労状況を分析することも可能のようです。笑いやユーモアのある職場は、生産性が高いと言われています。健康で笑いがあれば、より良い職場ということになります。関西大学のある教授は、笑いの測定器を開発し、これを「横隔膜式笑い測定器」と名づけました。笑いを測るのは世界で初めての試みで、外国にも広く報道されたものです。笑うと横隔膜が振動し、その電位の変化を測定し、コンピユータ上にグラフ化して表示するものです。この笑い測定器が小型化され歩数計のようになれば、毎日の笑いの量を把握できる可能性あります。住民の顔の表情や脈拍、血圧、体温の生体情報を収集する技術は可能になっています。そこに、スマホに組み込んだこのお笑い測定器を取り付ければ、面白い健康テックの測定器になることでしょう。笑っている状態がリアルタイムで視覚的に確認でき、さらにその時の作業状況や生産性が把握できるわけです。笑いが足りない時には、笑いを起こす雰囲気を醸し出せば良いことになります。
 社員の健康は、会社の財産と考える経営者も出てきています。2019年からアマゾンは、働く人と家族向けの遠隔医療「アマゾンケア」を手がけてきました。アマゾンの社員とその家族は、スマホで医師に相談することができるのです。そして、薬の処方を受けることもできます。アマゾンケアは、専属医師のような診療を社員に提供しています。アメリカの5都市に住む社員、115000人とその家族が対象になっています。アマゾンケアの手法が順調にいけば、他の地域にも広げる計画のようです。この企業には、患者データを分析するAIや薬を運ぶ物流インフラなどが十分に備わっています。医療と保険、そして社員のwell-beingまで一括したシステムを構築してしまう勢いです。
 個人の健康だけでなく、健康増進型保険の対象は、地方自治体にまで及ぶようになってきました。川越市と明治安田生命保険は9月末、市民の健康増進に関する包括連携協定を結んでいます。この協定には、病気や健康に関する一般的な情報提供のほか、感染症対策も盛り込んでいるのです。川越市長は、「市民サービスの向上や地域活性化につながる」と期待を寄せています。自治体が保険会社に1億円払っても、住民の医療費が2億円減少すれば、市も住民も保険会社も三方良しという関係になります。疾病に関する生命保険各社の情報やノウハウを活用し、健康や福祉政策の底上げを目指しているわけです。第一生命は、国立がん研究センターなどと情報ネットワークを構築しています。IT を活用し、健康支援サービスを提供できるように体制を整えているのです。生命保険の中には、イオングループなどの大手小売りと提携し、契約者への特典付与などのサービスを拡充している企業もあります。きめ細かく契約者の健康状態を把握できる仕組みがあれば、いろいろな保険商品が開発できるわけです。

4、優しい共生社会

 障害者も働いて、生活のための収入を稼ぐ仕事をしなければならない時代になりつつあります。ある試算によると、障害者が地方で自立した生活を送るためには最低月11万円は必要になります。そこで、鹿児島のあるリーダーは試行錯誤を重ねながら、この稼ぐ仕組みを作り出しました。障害者年金の7万円と障害者が働いて4万円を、獲得出来る仕組みを作ったわけです。障害者の自立を支援する職員には、20万の給料が国から入ってきます。この職員が、自分の給料20万円を5人の障害者に4万円ずつ分けると11万円になることを知りました。そして、職員本人と5人の障害者が一緒になって20万円を稼げばよいと考えたのです。びっくりするような発想です。このリーダー兼の職員と障害者の6人がワンチームとなって、農業というビジネスで、月20万円以上の収益を稼ぎ出す仕組みを作り出したのです。このビジネスは、障害者を自立させる仕組みでもあったのです。
 現在、ここの農場で行われている障害者が取り組む作業は、種まきや草取り、収穫運搬などさまざまです。それぞれが、自分のできることを行い、できないことがあればできる人がそれを補ったり、教えたりするようになっています。基本は、障害者の目線ですべての作業工程を見直すことでした。作業工程を見直すことで、経験、身体能力、年齢に関わらず、誰にでもできる作業にしていったのです。職員と障害者が一緒に農業をやることで、成果を上げることができるようになりました。一緒に農業をやることで、障害者だけではできない領域の作業や事業もできるようになったわけです。障害者も自らの努力によって自立できるし、そうするべきだという考え方が働く中で形成されていったようです。いわゆる企業的な農業となり、20万円を稼ぐことができるようになったわけです。現在では、20万円をはるかに超える収益を上げる農業組織に成長しています。健常者と障害者が共生できる社会は、優しい地域になります。
 近年、障害者の視点を取り入れた商品や製品開発を行うことが,より良い製品づくにつながるという認識が広がってきました。障害者を雇用しているある企業は、2012年には全社員の3%にすぎなかった障害者雇用を、2019年には10人に1人まで増やしています。2023年には、12%に引き上げる目標を掲げているのです。昨年は、国の行政機関や地方自治体で、障害者雇用人数が基準より大幅に少なかったことが問題になりました。でも、民間の一部の企業では、障害者雇用のメリットを利用しようとしているのです。たとえば、言語障害を持つ方の特徴は、日本語を読むことができない外国人と重なりあうところがあります。この場合、製品開発は外国人観光客対象の企業のビジネスチャンスになります。絵や映像という形で、伝える工夫が生まれます。また、障害者の心身の特徴は、身体や認知機能の低下している高齢者と重なるところがあります。この重なりから、製品開発を進めていくことは,高齢化が進む日本の市場のヒントになるというのです。障害者の作業分析を行うことにより、新しい知見も生まれてきているのです。増大する高齢者をターゲットにしたビジネスは、今後も盛んになります。少し違った視点、でも類似する行動様式から、ニッチなビジネスと発見してほしいものです。

さいごに

 従業員や顧客の幸せを、重視する経営者が増えています。アメリカでも、幸福をモデルにした価値転換が進んでいます。働き方改革や健康経営の重要性が叫ばれる中、幸福経営に注目が集まっています。幸福度と従業員の創造性や生産性、そして欠勤率や離職率の研究も進んでいます。幸せな従業員は、会社や仕事への愛着や没頭の傾向が高いという結果も出ています。彼らは不幸せな従業員よりも、創造性が3倍高く生産性が30%も高いのです。経済成長は緩やかでも、心の豊かさを保ち続ければ、創造性や生産性の高い会社経営ができるようです。
 地方に良い風が吹き始めています。日本の高度人材にも、移動が見られるようになってきました。年間に1000人単位で、プロの人材が東京から地方に還流しているのです。東京の大手企業で働いていた優秀な人材が、潜在成長力のある地方の企業や地域に進出しています。地方で活躍したいと思っている人材は、まだまだたくさん控えている状態です。これからは、個々人がその時その時の自分にあったキャリアを選択することが許される時代です。自分にあったキャリアを選択していく中で、充実感を得ることが可能になるわけです。これらの条件にあった優秀な人材に来ていただいて、循環型の地方の発展を支援していただきたいものです。地域が豊かになり、幸福と感じる人が多くなれば、さらに生産性が上がり、住みやすい地域になります。そんな地域にしていきたいものです。


新型コロナウイルスワクチンとの向き合い方 アイデア広場 その744

2020-11-25 18:00:41 | 日記



 知人が先日、インフルエンザの予防接種を受けました。新型コロナウイルスとのダブル感染を、心配をしていたのです。彼は、注射をされた腕が腫れて痛かったとこぼしていました。気の弱い知人が、医師に腕が腫れているとそれとなく訴えたのです。ユーモアのある医師に、「異物を体内に入れたので体が正常な反応を示したのですよ」と軽くいなされと苦笑いをしていました。腕の一時的な痛みと、インフルエンザの熱、体の痛み、喉の痛み、呼吸の苦しさ、どちらを選びますかという応答だったようです。コロナワクチンでも、同じような状況がでてきます。コロナワクチンの副作用によるリスクは、ゼロではありません。新型コロナウイルスによる苦しい症状と、起こるかもしれない副作用のどちらを選ぶかという判断が迫られるわけです。ここでは、「効果があって副作用がないワクチンが欲しい」と答えたいわけです。今回は、この難問を解く知的探索の道を歩いてみました
 アメリカ食品医薬品局は(FDA)は、12月11日に新型コロナウイルスのワクチン接種が始まるとの見方を示しました。米製薬大手ファイザーは11月20日、FDAにワクチンの緊急使用許可を申請したのです。FDAは、12月10日に同ワクチンを承認するかどうかを議論する有識者会合を開く見通しです。ここで承認が得られれば、数時間以内に供給体制を整えるという速さです。有識者会の承認から24時間以内には、各州へのワタチンの輸送が始まるのです。ファイザーは、年内に2500万人分に相当するワクチンを生産するとしています。新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されれば、ファイザーは日本や欧州など各国の当局にも使用許可を申請することになります。20日間で2000万人ということは、80日で1億人ということになります。
 新型コロナウイルスのワクチン開発が、世界の人々から渇望されています。感染拡大の第2波、第3波が拡大していけば、開発への期待はさらに高まります。各国政府も、ワクチンの早期実用化に非常に前向きです。アメリカ政府の場合は、「ワープスピード作戦」として年内実用化を積極支援の表明していました。トランプ大統領が、10月中の投与を求めるなどはスピード開発を促していたのです。新型コロナウイルスワクチンは、政治カードになります。このワクチンは、他国への供給を巡っての外交戦略にも使えます。ロシアや中国では、有効性や安全性を確認する最終治験前に、緊急措置で使用を始めているとの報道もありました。各国当局はコロナワクチンで副作用が出た場合、政府責任での免責を確約するほどの優遇処置も行っています。このパンデミックの中で、経済の浮揚が遅れていくばかりです。免責に対する補償を政治が行っても、経済を立て直したいという目論見があるようです。
 このワクチン投与後の経過観察において、どんな効果があり、そしてどんな副作用が出るかを観察する必要があります。副作用の頻度、そして予防効果がどの程度かを、1年~2年の長期間にわたって観察することが求められことが一般的です。今回のパンデミックでは、治験期間も2~3カ月に限られていました。ワクチンは健常者に使うため、安全性が特に重要視されます。ワクチン開発において、効果と副作用のデータの証明こそ製薬会社の生命線になるのです。ワクチンの安全性を軽視した付けは、製薬会社にもたらす損害が計り知れないものになります。ワクチンそれ自体の信用不安はもちろん、現在販売している他の医薬品にたいしても、信用不安が広がります。会社の売り上げは、激減することが予想されるのです。今回のパンデミックでは、データ解析に十分な時間をかけることが難しい情況にあります。そんな環境の中で、ワクチン開発にはリスクと利益の両極端の未来が待っているとも言えます。
 この未来のヒントが、血液製剤によるエイズ過の事件にあります。1983年エイズ患者が、フランスのパスツール研究所で最初に確認されました。でも、1980年前半ごろまで、エイズに関する正確な知識を人々は持っていませんでした。当時、HIV (エイズウイルス)やエイズに関する知識もまだまだ不確実という状況にあったのです。1985年ごろから、徐々にHNやエイズに関する知識が広まってきました。この当時は、現在の新型コロナウイルス感染と同じように原因が分からず、人々を不安と混乱に陥れたものです。ホテルが、HIV 感染者の宿泊を断ったことを取り上げる報道も大々的に行われたものです。現在のクラスター発見と同じように、だれから感染したのかが大きな関心事になったのです。性的感染が、疑われるようになります。
 そんな中で、性的感染の疑いのない血友病患者へのHIVに感染が増加しました。主に1982年から85年にかけて、非加熱血液製剤を治療に使った血友病患者にHIVの感染が見られるようになりました。この血液製剤を治療に使った血友病患者の4割、約2000人がHIVに感染したのです。厚生省が承認した非加熱血液製剤に、HIVが混入していたことが判明します。この時期は、血液製剤とエイズの因果関係を考える専門家も少ない状況でした。血友病患者の治療に当たる医師は、患者の苦しみを軽減しようと必死でした。医師の目の前で、血友病患者は特有の症状で苦しんでいたのです。新型コロナウイルスの重症患者が、医師の目の前で手の施しようがなく亡くなっていく光景です。1980年代前半まで医師を含めて人々は、エイズに関する正確な知識を欠いていました。血友病患者に対して欠乏する凝固因子を補充しなければ、命に係わる状況が存在しました。医学においては、常に不確実な要素がでてきます。この不確実な要素がなくならない以上、人々は、それとつきあっていかなくてはならないわけです。
 アメリカでは、新型コロナの感染拡大が止まりません。この国の累計感染者数は1200万人を超えて、直近ではわずか6日間で100万人を超えているのです。11月21日には、7日移動平均でみた新規感染者数が16万9000人と過去最多を更新しています。このような状況において、新型コロナウイルスのワクチンが、12月11日から接種が行われます。優先的な接種対象は、医療従事者、そして高齢者など感染リスクや重症化の可能性が高い人になります。ワクチンは、州の人口に応じた数量が配布される見通しということです。最終治験の結果で、95%の予防効果が確認できたというワクチンです。集団免疫を獲得するには、人口の7割が免疫を待った状態になる必要があります。集団免疫を獲得するには、米国では2021年5月を目標にしています。アメリカの人口が3億2000万人ですから、2億2000万人にワクチンを供給しなければならないことになります。安全なワクチンであることを祈っています。




花の香りがコロナ過を癒す  アイデア広場 その 743

2020-11-24 17:34:53 | 日記


 東京の花卉市場では、6月以降、鉢物の売り上げが前年同月比3割超えた生花店では、10月は前年同月比6割増だった。観葉植物など鉢物の市場取引が、巣ごもり消費で伸びているのです。花卉園芸市場では、オフィス向けの需要は鈍いのです。でも、家庭向けが市場をけん引しています。コロナ前までは、手間のかからない多肉植物の人気が高かったのです。コロナ過の渦中にあっては、手間のかかる植物が売れています。家で過ごす時間が増え、鑑賞したり、育てたりしたい人が増えているわけです。コロナショック時においても、癒しの効果がある切り花への需要が増えているのです。コロナの第3波が始まっています。花卉市場は、さらなる消費の拡大に向かうかもしれません。
 多くの植物の花は、芳しい香りを放ちます。被子植物は昆虫や鳥などを惹きつけるために、独特の形や色、そして香りをもつ花を咲かせます。植物の香りは、主にテルペン類、みどりの香り、フェノール系芳香物質に分類されるようです。テルペン類のメントールは、ミントの香り成分です。ミントやシソの香り成分には、癒しや薬効の成分が含まれています。ミントやシソの香り成分を飲むと、腸などの臓器の炎症に効くことは経験的にわかっています。シソの葉の抽出物は、鎮静剤や、消化不良に有効な漢方としても使用されています。フェノールには、細菌の増殖を抑え、紫外線などのストレスから体を守る作用もあります。花の香には、人を癒し、体に良い効果をもたらす物質も含まれていることになります。人も、昆虫や鳥のように植物に惹きつけられているのでしょうか。新型コロナの環境の中では、頼りになるツールのようです。  
 トマトといっしょにニンニクを植えることで香り成分であるアリシンが病害虫を防ぎます。万能薬であるルチンを、トマトの果実で増やす研究が行なわれています。ルチンには抗菌活性や抗癌作用といった薬理作用もあるのです。植物の匂いは、害虫の天敵を惹きつけ、周囲の植物にも危険を知らせる警報の役割を担うことはよく知られているところです。今後研究次第では、いまだ特効薬のない難病にも効くアロマ成分が見つかるかもしれません。香り成分をフレグランスとして置くだけで、癌などの病気を克服できればすばらしいことです。映像に合わせて、風や匂いを感じる体験型アトラクションは、今や当たり前になっています。このような体験型の仕掛けを、一般家庭用薬品に商品化する話も夢ではないようです。蛇足ですが、どなたか、観葉植物を家に置いている方と置いていない方の新型コロナの発症率を調べてもらいたいものです。観葉植物が感染抑制に役立つという結果が出れば、面白いこといなります。一つの花卉市場のビジネスチャンスを作り出します。
 欧米では、伝統的に心理療法が盛んです。日常生活の中で、心の安らぎが得られないケースが多いのでしょう。欧米人は、喧騒の中にありながらも、静寂を保てる生活を求めているようです。そんな欧米人に、日本の茶道が注目されています。茶の湯は、精神の安らぎを求める支柱として禅宗の思想を模倣し、独自の発展を遂げました。彼らは、茶の湯から得られる安らぎに、大きな価値を見いだしているようです。茶道は、心の安らぎが得ることを満たしているのかもしれません。日本人が知らないうちに外国人が、日本文化の特異性に関心を持つようになっています。茶室飾られた一片の草花に、注意を払う欧米人がいれば、日本文化に精通した人と認められるようです。
 切り花の世界市場は、キクやバラ、カーネーションなどがよく知られています。福島県の南部にある塙町は、東京の大田市場に年間20万本以上のダリアを出荷しています。この町はダリアのほかに、季節に応じて山から切り出したドウダンツツジや桜を出荷しているのです。塙町の農協は、2020年の東京オリンピックに向けての販路拡大に意欲を持っていました。この祭典前の2017年9月に、花卉栽培の国際認証システムのMPSの仮認証を受けています。MPSは、人にも環境にも配慮した花卉認証システムになります。この認証取得には、農薬、肥料、重油、電気、水、そして廃棄物などの管理が求められます。生産者は、竹の粉末や貝化石肥料を入れた土壌で栽培をするなどの工夫をしているのです。もちろん、消費者の要請があれば、花の香にある薬効を高める栽培も工夫していくでしょう。その工夫が、感染抑止のビジネスチャンスになっていくかもしれません。栽培技術の進歩と共に、アロマ成分の薬効も開発されていくことになるでしょう。
 コロナ過は、生死に直面した人たちに自分の持つ最高の能力を発揮できる場を用意したともいえます。人類は、穀物生産を向上させることにより、飢えからの解放を実現しました。現代文明は「快感」のために、生存上必ずしも必要ではない「無駄」を行っています。生理的な快感を追いかけるだけでは、有用な人間とはいえなくなってきています。人間は文化と文明を手に入れてしまいました。極限状態の中で、文化と文明の英知を有効に使えば、今まで到達できなかった高見のステージに到達することができます。新型コロナウイルスワクチンの開発にしても、最高のアイデアと最高のスピードで実現できる場が用意されている環境だということです。極限状態がもたらすコロナショックの克服は、人類を心身とも豊かにすることでしょう。
 ヒトは進化の過程で、「快感」と飢えからくる「不快感」に対応できる仕組みを獲得しました。技術の発達により、快感のみを受け入れる環境が整いすぎました。私たちは、不快感に耐える必要がなくなったのです。疲れたら休み、腹が減ったらお腹を満たすという快感だけを味わっていれば良い環境になりました。でも、地球には不都合な状態が生じてきています。この不都合な事態には、経済の「右上がり」の原理を見直すことで対処する人たちが現れました。人類の不都合は、大量の炭素の排出が原因とされています。そこに、新型コロナのパンデミックが加わり、全世界が緊張状態に陥っています。現在の不都合な極限状態は、人類がめったに経験しない未知の環境です。大正時代に関東大震災が発生して、その直後の復興のときです。人々は食べることや着るもの以上に、映画や芝居をなどの娯楽を熱烈に求めたのです。今回の極限状況を通り抜けるには、癒しという花弁が一つの杖の役割を果たすかもしれません。




中国で成功するビジネスモデル  アイデア広場 その 742

2020-11-23 18:41:12 | 日記


 世界一の強国を目指す中国に、アメリカのいらだちが増しています。日本も、アメリカ中の土地を買い占めてしまうのではないかという時期がありました。この時期の日米経済摩擦に比べ、現在の米中摩擦は一段と根が深いようです。軍事的緊張とイデオロギーに、対立が及んでいるのです。アメリカがトランプ大統領からバイデン氏に交代しても、この緊張関係に劇的な転換は起きないとされています。尖閣諸島への中国艦船の出現数は、増え続けています。日本の安全保障面でも、中国の存在は脅威を増しています。脅威ではありますが、日本にとって中国は貿易の最大の相手国です。一方、アメリカとの経済関係はもちろんのこと、安全保障や政治理念においても最重要同盟国です。
 世界は、コロナ過で経済が停滞しています。そんな中で、中国はいち早く回復の兆しを見せています。その一つの指標が、段ボール原紙消費の増加です。段ボールは、宅配などでは必要不可欠な物資になります。特に、中国で年間最大のネット通販セール「独身の日」では、アリババ集団の取扱高が7兆7000億円を記録しています。この通販には、膨大な段ボールが使われます。中国の今年1~8月の段ボール原紙輸入量は、約417万6千トンと前年同期の2.4倍になりました。中国は、古紙の輸入を全面禁止しています。環境汚染が、深刻になっているからです。古紙から段ボール原紙を作るには、環境汚染が伴います。古紙の不足で、段ボール原紙の生産に支障が出ているわけです。その対策として、段ボール原紙の輸入を増やしているのです。中国の製紙会社は古紙不足に陥り、段ボール原紙の減産を余儀なくされているわけです。段ボール加工会社は、不足分を輸入で補おうとしています。日本の段ボール原紙各社には、この輸出が追い風となっているともいえます。中国の段ボールの需要が堅調なことは、経済が堅調であることある意味で示唆しています。
 中国のトウモロコシ産地の東北部は、干ばつや台風で作柄が悪化しているようです。また、中国の綿花の8割を生産する新堰ウイグル自治区産には、天候不順の作柄悪化観測が出ました。大連の業者は、「新彊ウイグル自治区から仕入れる綿花は年初比8%ほど高くなった」と話しています。綿花の直近底値は、春先から約4割上昇しているのです。服飾品や日用品向けの綿花の消費も、伸びているようです。綿花の世界最大消費国の中国では、コロナ禍で低迷していた紡績工場の稼働率が回復しています。強制労働の疑いから、アメリカが新彊綿を使った製品の輸入を一部停止しました。この停止が、綿花の供給過剰の状態を招くと予想されていたわけです。でも、現実には中国国内では、綿花の不足状況が続いているのです。ニューヨーク先物市場における綿花の価格が、高いレベルで推移しています。
 10年前の2010年11月23日の新聞も、今年のように中国の干ばつや豪雨の報道がなされていました。10年前の記事の要約を述べてみます。
 2010年11月上旬の野菜18種類の平均卸売価格が、前年同期に比べ62.4%上昇した。中国では、春に干ばつ、夏には豪雨が発生したのです。農産物の今年の収穫は、全般的に不作になっています。中国の農産物価格高騰の背景には、世界的な天候不順もあります。綿花の価格も高騰しています。衣料品価格への転嫁を恐れる主婦が、下着を大量購入する例もあるのです。地方政府も、市民の不満の高まりへの警戒感を強めています。地方政府は、独自の対策を相次ぎ打ち出しているのです。広州市は、約13万3000人の低所得者を対象に1人あたり月30元を支給し始めました。
 この10年前の報道内容と現在の中国の経済状態を比べると、自然災害に抵抗力と増している地方の実情が浮かび上がってきます。今年の集中豪雨は、かなりの被害を中国にもたらしました。でも、「独身の日」のアリババ集団の取扱高が、7兆7000億円を記録しています。昨年の取扱高が、4兆2000億円ということを考慮すると、被害の後遺症が見えないように思えてしまいます。アリババ集団は経済的には、大きく飛躍しました。でも、政治の世界からは圧力を受けている事実もあります。政経不可分でなく、ある面で政治と経済が一部で許容と寛容が存在するのかもしれません。もっとも人治の国ですので、いつどうなるかはわからない国でもあります。
 日本の貿易相手は、中国が第1位です。中国における日本企業の拠点数は3万2千余りと、米国の4倍近い多さなのです。日米欧で新型コロナ感染が再拡大する中、先駆けて経済が回復する中国では、「独身の日」を見るまでもなく消費が急増しています。中国からの日本の商品や製品の引き合いも強まるため、一定規模の輸出は維持されています。経済と文化、そして政治外交を使い分ける中国に日本は警戒心を緩められない状況もあります。日本企業も、中国との外交リスクや突然のルール変更には不安を持っています。中国国内に3万2千の拠点を持つ日本の企業は、中国進出に濃淡をつけた戦略を立てる必要があります。製造業は、技術の保護や政治外交リスクに十分備えた個別対応になるようです。情報通信や最先端技術に関連した企業は、中国国内に拠点の新設などは控えた方が無難といわれるようになりました。一方、政治と距離を置ける文化、芸能、スポーツなどは積極的に進出し、ビジネスチャンスを獲得しても良いという判断が多いようです。
 中国の大都市などの人口の密集地帯には、多種多様なニーズに生じています。大都市には、多くのニーズを持った人々と企業が集まってきています。人々は、いろいろな視点を取りいれたスキルで、個々人が楽しむ状況が生まれています。この密集地帯では、時代のトレンドを上手くつかむ才覚が求められます。特に、スキマ産業では、モノだけでなく、店の作り方、そして販売の方法など多彩な才覚が求められます。中国では、高度なデジタル技術が長足の進歩を見せています。中国のこれらのデジタル技術と旺盛なニーズを組み合わせれば、多くの隙間産業が成立する素地があります。スキマ産業の成功は、最終的に企画するリーダーと社員の感度、及び実行力にかかっています。
 たとえば、ファッションの分野を見てみましょう。中国の若者は、東京コレクションとかパリコレクションの流行といった基準で服を選ぶ傾向がありました。でも、いろいろなニーズが持つようになると、ファッション誌からそのまま抜け出てきたコーディネートだけでは、満足できなくなります。自分に似合う服を知るには、まず自分自身を熟知することが大事になるようです。ほどよく筋肉のついた引き締った体型、ピンと伸びた背筋があれば、素敵に見えます。着こなしの土台となるのも、やはり身体です。年齢や体型、好み、トレンドなど、素敵に見える服を選べる自己のスキルを磨く時代になっているようです。この着こなしのスキルや身体の作り方など分野には、隙間産業が入り込むチャンスは十分にあります。「美」は、努力なしに作り上げられないことを、世界の人々は理解しています。生活レベルの向上している中国も、例外ではないでしょう。知性と努力がなければ、美を兼ね備えた素敵な着こなしはできないということになります。ここに、一つのビジネスチャンスが生まれると面白いことになります。



時代を先取りした生活様式  アイデア広場 その 741

2020-11-22 18:15:22 | 日記


 昨年の千葉を襲った台風を見るまでもなく、インフラの崩壊は大きな社会問題を引き起こします。都市部における郊外拡散は、災害に弱い地域を作り出してきました。都市だけでなく、産業施設の劣化も目立つようになりました。日本の高度成長を助けてきた石化プラントの多くは、施設の劣化が急速に進んでいるのです。いまや、プラントの連続運転の時間を延ばし、生産性の向上につなげることが、工場長の手腕とまで言われるようになりました。連続運転時間をいかに長くできるかが、収益に直結するというわけです。新しい施設を作るより、既存のインフラをいかに使い続けるかという現実論が主流になっています。道路の橋梁に限っても、70万か所以上の点検を行わなければならないのです。行政は70万か所のインフラを維持したり、更新したりする費用を予算化ことに苦労しているわけです。
 高度成長期には、予算が毎年増加した経緯から、水道事業も交通インフラの拡張も鷹揚に行われました。石化プラントの多くは、高度経済成長期に多数建設されたものです。この当時、国内には石化プラントの主要なものだけでも100カ所以上建設されていました。そして、高度成長期には自動車産業が主役に躍り出ました。交通インフラの整備に、多くの予算を使う仕組みが作り出されてきます。自動車を普及させるには、道路や道路橋の整備、そして郊外への発展が不可欠だったのです。都市の拡張は、自動車社会を促進していきます。この都市の拡散は、ある面で無秩序に行われました。無秩序な都市の郊外拡散は、行政コストを高くしたのです。でも、日本の成長は、行政コストを凌駕するレベルで推移していくわけです。そして、成長が止まった時に、困った事態が起きてきます。
 どんどん買ってどんどん捨てるという私たちのライフスタイルは、なかなか改まるごとはありませんでした。モノに人生を振り回されていることは、本末転倒です。でも、この本末転倒が普通になり、当たり前のように生活の仕組みになっています。個人の生活も行政も、この本末転倒の状態に陥っているようです。モノを持つことで、手入れしたり、整理収納したり、故障を直したりする管理の手間も増えることになります。いつの間にシンプルな空間を捨て、モノを集めるのが大好きで、片づけの苦手な国民になってしまったようです。日本人は、ある意味でモノなしで暮らす生活技術を失っているともいえます。そんな中で、できるだけモノを持たずに、省ける手間は省き、身軽になって気持ちよく暮らしたいという人々が出てきています。「持ちすぎない暮らし」をしている人は、自分が必要なモノは何かわかっているようです。ちょうどいいサイズの暮らしなら、モノやお金に振り回されることもないと達観する人たちの出現です。
 私たちの身体は、毎日、外からエネルギーを摂らないと維持できません。でも、食べすぎて肥満という文明病が、蔓延するようになってきています。新型コロナウイルスは、肥満の方が好きなようです。肥満の方が重症化するなど、報告も多くなりつつあります。野生動物には、肥満がありません。肉食動物は空腹でないときに、捕食対象である草食動物が横切っても、見向きもしません。自然界の動物は、自分にほんとうに必要なモノだけを食べ、過剰な摂取をしないようにできているようです。大脳が極端に発達した人間は、料理テレビ番組で刺激を受けると、食べたいなと反応してしまいます。糖分の不足してきた人類は、糖分を摂取するという欲望を抑えることができないところがあるようです。私たちが食べるのは、生きるためです。そして、人生を楽しむためにも食べます。このことが、肥満をもたらす一つの要因になるのかもしれません。蛇足ですが、この不都合な真実を防ぐには、「書くこと」が良いようです。欲望を確認し、その優先順位をしっかり把握して、食べるという楽しみを享受するということです。
 時間やゆとりを生み出してくれると信じたモノを大量に持つことで、負担が増えることも多いのです。モノを持つことは、お金を使い、空間を使い、時間を使うことを意味します。モノを大量に持つことで、時間もゆとりも失ってくるわけです。とすれば、日常生活の中に「捨てる」仕組みを組み込んでおくという発想が生まれます。新しいものを持つイコール古いものを捨てることを、生活の中に習慣化しておくわけです。買ったら捨てるという実践です。持ちすぎない暮らしは、心のゆとりを育てます。本の積読を止めた代わりに、草、花、白鳥、騰、鳩、リスなど、公園内の自然や人を観察する楽しみを増やした方もいます。できる範囲で楽しんでいけばいいのですから、無理をしないことです。
  余談ですが、2011年3月、三陸海岸に津波が押し寄せました。湾を襲った津波は最高約20メートルに達し、約130戸のうち9割以上が流出したのです。この地区では毎年、高台に上がる訓練を実施していました。集落には1人暮らしのお年寄りも多かったのです。地区の会長はどこの家に誰がいるか、頭に入っていました。会長は、独居高齢者を家から連れ出し、背中を押して高台を目指します。水が引いてから、被害に遭わなかった家に備蓄されていた食料を全員で分け合ったのです。もともと市内から離れたこの地域は、米や缶詰などの保存食を備蓄する習慣ができていました。数日たってから1本だけ通った道を使って、買い出しや親類などへの連絡を行ったのです。ガソリンを節約するため、集落中の燃料をまとめて1台の車だけを使用したそうです。自分たちで命を守り、シンプルに暮らすことは、危機の環境では必要なことになります。
 江戸の町は、18世紀には、世界最大の大都市でした。都市計画で神田の上地を切り崩して、日比谷を埋める工事が激増していたのです。江戸の町民は、工事のために非常に忙しい生活を送っていました。激しい仕事に従事する以上、健康を大切にしなければなりません。江戸時代に日本では、3食を食べる習慣ができました。忙しい中で食事をするために、簡単に食べられる立ち蕎麦や握り寿司が生まれました。疲れた体を癒すための銭湯やマッサージの職業が普及します。経済活動や社会の変化が新しい仕事や健康産業を生み出したわけです。経済発展で生まれる文化があれば、経済が停滞した時に生まれる文化もあるのです。
 日本の道路や道路橋、そしてプラントなどの保守管理は、今後半永久的に続きます。老朽化が進むプラントの保守管理に、IoTなどの先端技術を活用する動きが広がっています。センサーで集めた情報を、AIを使って分析し、腐食などの状況を調べます。プラントに設置したセンサーから、データを収集し、点検記録をデジタル化しています。劣化する部品の取り換えの最適時期などを把握しています。時代の流れが、新しい文化を生みだしたともいえます。今の流れは、モノを浪費しないで、大切に使う時代になっているようです。



知識の出し入れ訓練が課題解決につながる アイデア広場 その740

2020-11-21 17:49:09 | 日記


 世の中には、いろいろな欲求というものがあります。その欲求が満たされれば、それはそれで満足という状態になります。でも、欲求不満が残るなら、それも悪くはないのです。欲求不満は、不満足や消化不良、そして疑問をもたらします。人間は、それらの不満や疑問を解明し解決することエネルギーを使う動物になのです。不満や疑問が、考える力や考えたいという気持ちを与えてくれるわけです。脳はこれまでになかったこと、やったことのないことに直面すると、活性化するという特性を持っています。たいていの欲求というものは、好奇心を満たすことで満たされるものです。その欲求を満たし、時間がたてば飽きてしまい、楽しさを感じなくなり、次の疑問や不満に立ち向かうのが人間というわけです。
 脳の一部である扇桃体は、好きとか嫌いとか、心地よいとか不快とかあらゆる感情を仕分けしていきます。扇桃体から放出される報酬系の伝達物質が、ドーパミンです。自分がだんだん賢くなってくると、それは快感になってきます。楽しむうちに覚えることが面白くなり、そして脳はイキイキするようになります。ドーパミンは、記憶力を高め、心地よいという気持ちや、達成感、やる気を生み出すわけです。見る、聞く、触る、嗅ぐ、味わうなど体験で得た情報は、偏桃体に伝わるのです。人に教えるのが好きな人間は、だいたい成績は上がるといいます。教えることの好きな人は、相手を理解し、相手が喜ぶ情報を意識してアウトプットすることを繰り返しています。教える相手が、向上した時に喜びを感じるようになるわけです。教えるほうは、相手の好みをインプットします。インプットしたことを、教える人にわかりやすいようにアウトレットします。インプットとアウトプットをスムーズに繰り返す過程で、自己の脳を満足させ、かつ相手を満足させるスキルを高めていくわけです。これは、教える人たちの役得といえるものかもしれません。
 本をたくさん持っていると、かえって読まない現象があります。人間は、脳にインプットされた知識を材料にしてものを考えます。実社会では、最終的に頭に入っている知識を使っていろいろ考えなければいけない場面が増えます。知識をうまく組み合わせた方が、実際の社会の中では役に立つ可能性が高いのです。絶えず頭の中の知識を更新し、増やして使う習慣を身につけている人が求められています。読んだ知識を行動の中に組み入れ、「ここはこれと組み合わせないといけない」と考えて、行動するケースを増やすべきだということになります。実際の行動の中に組み入れる作業をやらないと、知識は本物の力にならないということでもあります。
 アメリカの中産階級の勃興は、T型フオード車の出現によるともいわれています。へンリー・フオードは、T型フオードという車を売るために、社員の給料を倍にしました。フオードが給料を上げると、他の会社も給料を上げざるをえなくなってしまったのです。給料の倍増で、工場労働者は豊かになりました。アメリカが一定の賃金水準を満たすようになると、自動車も冷蔵庫もテレビも売れる国になりました。冷蔵庫が増えれば、肉の消費が増えていきます。肉の消費が増えれば、家畜の飼料が必要になります。家畜の飼料である大豆やトウモロコシの生産が増えます。給料の多い国にしておいた方が、自国で大量生産できるシステムが確立され、値段も安くなるという状況を産み出したわけです。蛇足ですが、日本では、池田首相の時代に所得倍増計画を発表し、実践しました。このとき、企業の社長は比較的安い給料で我慢して、社員の給料を高くしていました。これがある意味で、日本の中産階層を育てることに繋がりました。日本は、給料にしても教育にしても、世界から見れば、格差の低い国に入っています。
 もともとの知識がない限り、良いアイデアをだすことはできません。まずは上手に知識を、インプットする方法を身につけることになります。上手に知識をインプットした後、保存や貯蔵をよくするために復習をします。保存や貯蔵をよくするために知識の出し入れをしながら、特にアウトプットのトレーニングをすることが大切になります。これまでの学説では、詰込みは悪いとされてきました。でも、悪かったのは詰め込みではなく、詰め込み後の知識の使い方を教えなかったことだったのです。詰め込み後の知識の使い方のトレーニングが足りないことが悪かったということです。いわゆるインプットした知識を状況や課題に応じてアウトプットする訓練が、足りなかったというわけです。
 詰め込まれた記憶が悪いものでないと分かれば、効果的な記憶の獲得を考えるようになります。記憶の能率を上げるために効果的といわれるものには、「締め切り効果」があります。締め切りが設定されていることで、動機づけも行われ、記憶学習の効率は高まります。もう一つの方法に、範囲を絞るというものがあります。中学や高校の中間考査や期末考査が、良い事例になります。試験に出ない範囲と出る範囲とでは、覚える集中の度合いが違ってくることは、誰でも体験していることでしょう。さらに加えれば、理系の科目には、暗記が必要ないというのも間違いです。数学は公式だけでなく、解法まで覚えた方が良いのです。数学は公式と解法の組み合わせ方まで、覚えておいた方が実践的理解になります。知識を断片的に記憶するのではなく、関連付けて覚える学習方法になります。蛇足ですが、勉強をしているとき、低血糖状態では記憶する能力は低下します。ダイエットをしていると、記憶力が落ちるものなのです。受験期は、食事にも注意が必要だということでしょうか。
 何もしないであきらめるのは、たんなる怠慢とみなされます。たとえ少しであっても、何かを変えられるのなら、できることをすれば良いわけです。できることは全力でやり、できないことはできないと割り切る姿勢も必要です。1人の人間が、現代社会に流通している情報のすべてを把握することばもはや不可能です。弱者の戦略は、自分の強みを生かすことができるフィールドを戦いの場にすることになります。ニッチ戦略を用いるとは、ニッチでないフィールドを捨てるということになります。たとえば、T型フオード車が普及すれば、馬車や馬は衰退していきます。車の車輪は、摩耗するものです。とすれば、車の車輪の専門家にある馬具屋さんがいても良いわけです。トライ&エラーを繰り返していくことで、「捨てるべきかどうか」の判断基準が養われます。この時大切なことは、試行錯誤を軽くして、被害の少ないレベルで行うことです。自分の知識、直感、そしてアンテナでキヤッチした情報をまず信頼することになります。あとは、自分信じてやるだけということになります。挑戦に必要なことは、理想よりも徹底的なリアリズムのようです。