<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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大学の時の担当教授の影響で、私は写真といえば「ドキュメンタリーが一番だ」という概念が常につきまとっている。
中でも報道写真が私の好みで、それは今も変わらない。
LIFE誌の写真年鑑は、その発行が終了されるまで毎年買い求めたし、報道写真家の写真展が開催されるときは、必ずその展覧会には足を運んだ。
ロバート・キャパ、マーガレット・ホワイト、沢田教一、などなどなど。
どれもこれも歴史を記録する一枚一枚だったのだが、中でもLIFEに掲載される写真はインパクトが強く、時たま見かける動画のフィルムよりも力強いものがあると感じることが少なくない。

そんなドキュメンタリー写真の中でも、自分自身が年齢を重ねるごとに「見る、ということの魅力が増すもの」がポートレートだ。
正直に告白すると、もともとは最も詰まらないものがポートレイトだと思っていた。
ところが自分自身が30代になり40代を迎えると、ポートレートに対する魅力がまったく違ったものになってきていたのだった。

人物の表情。
皺。
傷。
眼の色。
肌つや。
髪。
服装。
粧飾品。
化粧。
などなど。

その要素ひとつひとつが人の年輪を表現しているように感じられるのが非常に面白いのだ。

とりわけ自分が年齢を重ねるたびに、写真の中の表情から想像する被写体になった人の「生き様」というものを、深く、より深く感じることができるようになっていく。
この鑑賞する者としての自分の心と、写真の中の人物の歩んできた道を考えることにより、ポートレートは単なる人物写真ではなく、ひとつのフレームに収められた「人生そのもの」に変化することになる。

恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館では今年はポートレイトに焦点を当てた展示会がシリーズで開催され、毎回ユニークで興味あふれる作品が展示されてきた。
ちなみに去年は「旅」がテーマなのであった。

侍の肖像
ヌード
そして現代の肖像

と、毎回テーマに沿って展示される作品は魅力に溢れている。
とりわけ今回の「20世紀の肖像」ではマン・レイの作品が何点か展示されていて、大阪中之島の国立国際美術館で開催されている「マン・レイ展」と併せて鑑賞すると、その面白さは何倍にも増すのではないだろうか。

また、いわゆる芸術作品としての写真ばかりではなく、篠山紀信や荒木経惟などの流行写真作家の作品も数多く展示されていて、ポップな内容でもあった。

「二十世紀肖像」は12月5日まで。
来年はどんな展覧会を開いてくれるのか、楽しみな美術館だ。

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