<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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時々テレビのニュース番組や新聞で広島の平和公園にある「過ちは二度と繰り返しませんから」という碑にペンキがかけられた、とか、碑が破損させられたという事件が報道されることがある。
その都度、
「ひどいことをするヤツがいるもんだ」
風に世間一般は感想を述べるのだが、実際のところ、
「犯人の気持ちが分からないでもないけどな」
という人もかなりの数になるのではないか、と私は思っている。

実は、私もそう感じている一人。

というのも「過ちは二度と繰りかしませんから」というセリフは日本人が言うものではなく、原爆を落としたアメリカ政府が誓わなければならない言葉だからだ。

第二次世界大戦以前は戦争というのは外交戦術の一つであった。これは愚かながらも人類の歴史の事実なのだ。
しかし戦争にもルールがあって、戦うのは兵士同士。
しかも健康な兵士同士の戦いで、白旗上げたりケガをしたり捕虜になったらお互いに保護する義務があったし、今もある。
ましてや民間人には手を出さないというちゃんとしたルールがあった。

ところがアメリカ政府は原子爆弾を広島と長崎に迷うこと無く投下。
白人が下した黄色人種に対する一種の人体実験だったと言っても過言ではないが、このたった一発の爆弾で広島市民の3分の1にあたる17万人がその年の12月まで即死、あるいは苦しみぬいて亡くなり、その後も数十万の市民が熱線と放射線で受けた障害に苦しんだ。
17万人の中には兵士もいたが大多数は赤ちゃんからお年寄りまでの一般市民だった。

だから戦争だったとは言いながら、
「原爆投下の過ちを繰り返さない、と誓うのはアメリカだ」
でペンキを投げつける気持ちも分からなくはないのだ。

そのアメリカは反省するどころかその後ベトナム、中東、アフガニスタンで似たようなことを繰り返している。
おまけに、
「どうだ、凄いだろ!」
とばかりに広島に原爆を投下した飛行機B29エノラ・ゲイを我が歴史の誇りのように首都ワシントンの博物館に展示している。
アメリカには武士道も騎士道も無いのでエノラ・ゲイが「恥ずかしい存在」であることが分からないのかも知れない。
ちょっと気の毒な話ではある。

とかく先の大戦の話になると謝ってばかりいる日本人だが、反対に謝って欲しいことが少なくとも3つある。
まず、この原爆投下を含む都市への無差別爆撃。
次に、ルール違反でしかもインチキも多い東京裁判。
そしてソ連による捕虜抑留だ。

ソ連がやったシベリア抑留については、昭和30年代40年代生まれの私のような世代には山口百恵と三浦友和が主演したテレビドラマ「赤い運命」で佐藤浩市の親父さん、三國連太郎が演じていた主人公のお父さんが思い出される。
日本が降伏の準備をしていると知りながら、終戦1週間前に条約を一方的に破棄して日本へ宣戦布告したソ連は終戦後も執拗に日本の軍人や民間人を捕虜にした。
男の多くをシベリアの集団農場へ送り込み、乏しい食料と極寒と絶望の世界での重労働を課したのであった。

「あの時のことを知っているのか」

というようなことを恨みつらみに憎ったらしくセリフを言う三國連太郎の演技は子供の目にも素晴らしく、
「百恵ちゃんを苛めるな」
とテレビに向かって心で叫んでいたことを今もうっすらと記憶している。

その地獄のシベリア強制収容所を脱出し、モンゴル、チベット、ヒマラヤと越え、ついにインドに達した人々がいた。
元ポーランド軍兵の記した実話がスラヴォミール・ラウィッツ著海津正彦訳「脱出記」(ヴィレッジブックス)だ。

このノンフィクションはスターリン指導下のソ連による弾圧行為を克明に描いているばかりではなく、その七割を占める徒歩による逃亡劇はまさしくサバイバルゲーム。
冒険という言葉だけでは表しきれない真実の過酷さが描かれている。

集団農場を脱出するのは七人。
途中一人が合流し八人となるが、インドにたどり着くのは果たして何人なのか。
ハラハラドキドキの連続で先が知りたくて知りたくて読み始めると止めることのできない面白さがある。

それにしてもソ連、社会主義ロシアという国は一体なんだったんだろう。
「社会主義は20世紀に行われた壮大な実験だ」
司馬遼太郎は語っていたそうだが、実験にしてはあまりに犠牲が多すぎた。
ロシア。
中国。
北朝鮮。
未だに脱出できない人々がたくさんいるのも、これまた事実だ。

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