<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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高校生の頃、映画大好きだっただ私でも、これだけは見ないというのがフランス映画だった。

当時は話題作が無かったこともあって、フランス映画が身近な存在ではなかった。
フランスの俳優といえば、アラン・ドロンかカトリーヌ・ドヌーヴしか思い浮かばず、そのドロンでさえ、見かけるのは日曜洋画劇場の時間に流れるダーバンのTVCMかアメリカ映画の「エアポート80」ぐらい。
従って、
「フランス映画ってどんなんあるん?」
というような状態で、テレビでもめったに見ないし、映画館でなど見た映画は皆無だ。
しかも稀にテレビで見るのは「青い果実○○」なんていうタイトルのついたちょっとエッチ系。
当時の「11PM」や「大人の絵本」、「ウィークエンダー」の再現フィルムといったテレビ番組と同列の扱いで、やはり純粋に映画を楽しむというものでもなかった。

唯一、ソフィー・マルソーがアイドルとして登場し「ラ・ブーム」という映画に出演して人気が出てきていた。
しかし、こっちは青春ドラマといえば、泥臭い「われら青春」や「飛び出せ!青春」「ゆうひが丘の総理大臣」「俺たちの旅」なんて日本のテレビドラマか、米国TVコメディの「ハッピーデイズ」かルーカスの「アメリカン・グラフィティ」だったので、フランスの青春モノはおよびではなかったのだ。

暫しフランス映画に接すること無く、日々が過ぎ去った。
この間、英会話学校に足繁く通うようになったのだが、この学校にいたカナダ人の先生の一人が、
「フランス人はヘンだ。変態だ。」
などというものだから、ますますフランスに対する変な印象は増幅された。
また当時は、
「手漕ぎボートで太平洋を横断するようなケッタイな人がいるのがフランスだ」
などと、ビックリニュースも流れたりしたので、英語圏は正常でフランス語圏は変なとこ、という印象が育ってしまった。
しかも、フランス語訛りの日本語が少々鼻につく女性フランス人タレントが大嫌いだったこともあり、ますますフランスは遠い存在になってしまったのであった。

フランス映画に目覚めたのは、というか面白い作品があることに気がついたのは、やはり「アメリ」を見たからなのであった。
アメリはフランス映画の面白さを教えてくれるに十二分の映画であった。
もちろん他の映画がアメリのように魅力あるのかどうかは分からなかったが、もしかすると「面白いのかも」と思わせるものがあったのだ。
ちょうどこのころ、大阪ではフランス映画祭なるイベントが開催されたりして、フランス映画に接する機会が急上昇したことでもあった。

以来、時々フランス映画を見るようになった。

先週の日曜日。
OO7を見に行こうと思っていたのだが、家の用事を済ませていくうちに時間が経過してしまい、二時間半もある映画を見るのが面倒くさくなってしまった。
そこで、家のソファに横になり、CATVを付けると放送されていたのが「プロバンス物語~マルセルの夏」(1990年作)であった。
「この映画、きっと面白いよ」
と教えてくれたのはカミさんであった。
カミさん学生時代をフランスで過ごしていた経歴があり、あちらの事情に詳しい。

聞くところによれば、この映画は、この映画の監督の子供時代を描いており、夏のひととき、家族と過ごしたプロバンスでの思い出を詩のように綴っているのだという。
なるほど、映像は美しく、ストーリーは私たちが子供の頃に体験した、日常的な事件で構成されていて、なんだかホノボノとさせるものがある。
お父さんは厳しさの中に優しさがあり、お母さんは暖かく包み込んでくるような優しさがある。

このあたりはヨーロッパの映画なんだなと思える部分かもしれない。
アメリカ映画ではトム・ソーヤに代表されるような、少し超人的な子供が主人公になるのだが、フランス映画では日本と同じように、ごく普通のこどもが主人公になり得る文化的土壌があるのだろう。

この映画は「プロバンス物語~マルセルの城」と二本でシリーズになっているということで、そのもう一本は別の視点から捕らえた同じ物語なのだという。

フランス映画、何を話しているのか「ウィ」以外さっぱりわからないのが欠点だが、なかなか爽やかで清々しい映画なのであった。

なお、再放送は年明け1月20日、FOXムービープレミアムチャンネルで。

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