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日中国交正常化。
私が小学生の時の出来事で、それがどれだけ重要な政治的イベントであったのかは,当時、まったく理解することはできなかった。

大阪の万国博覧会会場後で「大中国展」という博覧会が実施されたことが一番の思い出。
記憶に残るのは蛇の入った焼酎が数多く得られていたことだった。

当時の中国の顔は毛沢東と周恩来。
テレビに流れる中国のニュースではこの二人が頻繁にテレビに現れていたように記憶している。

とりわけ周恩来首相の容貌は穏やかで優しそうで、毛沢東主席とは対照的なその雰囲気が強く印象に残っている。
もちろんその表情の裏には毎日の苦悩が含まれていることなど知る由もなかった。

高文謙著「周恩来秘録」(文春文庫)は中華人民共和国建国後、とりわけ大躍進後から文化大革命にかけての周恩来と,権力の悪魔ともよぶべき毛沢東の人間関係にスポットライトが当てられているノンフィクションだ。
以前読んだことのある、毛沢東に関する主治医の手記をまとめた「毛沢東の私生活」(文春文庫)とはついになる一冊だ。

竹のカーテンに覆われた国、というようなことを教わっていた当時、中国国内で何が起こっていたのか。
それを知る日本人は少なかったのだと思う。
本書や毛沢東に関係する本を読むと、中国の共産主義はナチスドイツにも勝とも劣らない,恐怖の国家であった事がよくわかる。
とりわけ毛沢東の周恩来に対する態度や行動は、国民に向けられて行使された、様々な残酷な方針や決定と共通するものがある。
中国は礼節の国、と呼ぶ人もいるのだが、本書を読む限りそれは「共産中国」とは別の国の話であることが理解できる。

考えて見れば中国に関する情報は今もそうだが、正しいものがちゃんと伝わっているのかどうかわからない。
本書も著者が米国に亡命している中国人だからこそ書けたわけだし、だからこそ誇張がないとも言えないわけだ。

いずれにしろ、竹のカーテンに囲まれた凶気溢れる中国の実態を知り、やがて訪れる鄧小平時代との繋がりを知ることができる緊張感にあふれた歴史ノンフィクションだった。

なお、周恩来はその穏やかな表情とは裏腹に、日本の悪口,陰口を言うのを常としていたという。それもおそらく、東京の大学を目指し日本へ留学したものの語学の力不足で明治大学などで少しばかり勉強することができなかった、劣等感によるものではないかという印象を持った。
これって、今の中国人留学生の何人かが持つ、自ら招いた日本への悪印象と共通するものがあると感じ、驚いたのだった。

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