ふるさとの日向の山の荒渓の流清うして鮎多く棲みき
おもほへば父も鮎をばよく釣りきわれも釣りにきその下つ瀬に
鮎つりの父が憩ふは長き瀬のなかばの岸の榎の蔭なりき
われいまだ十歳ならざりき山渓のたぎつ瀬に立ち鮎は釣りにき
幼き日釣りにし鮎のうつり香をいまてのひらに思ひ出でつも
釣り暮し帰れば母に叱られき叱れる母に渡しき鮎を
鮎焼きて母はおはしきゆめみての後もうしろでありありと見ゆ
(若山牧水)
ふるさとの日向の山の荒渓の流清うして鮎多く棲みき
おもほへば父も鮎をばよく釣りきわれも釣りにきその下つ瀬に
鮎つりの父が憩ふは長き瀬のなかばの岸の榎の蔭なりき
われいまだ十歳ならざりき山渓のたぎつ瀬に立ち鮎は釣りにき
幼き日釣りにし鮎のうつり香をいまてのひらに思ひ出でつも
釣り暮し帰れば母に叱られき叱れる母に渡しき鮎を
鮎焼きて母はおはしきゆめみての後もうしろでありありと見ゆ
(若山牧水)