初春の山
後山にのぼる。
春空靄として四山かすみたなびき、争はれぬ春となりぬ。
海はゆらゆらとして空と一つに融け、練れるがごとき水の面に、富士の白雪ちらちら流れぬ。漁舟かもめよりも小なり。
村々はまだ冬枯れのままなれど、かすみ低う地にはひ、春四方に満てり。鳶一羽悠々として山下に舞ふ。
がけ、畑の畔、いたるところ蕗の薹青く萌え、榛の木などはすでに垂垂の花をつけ、春蘭も早きは咲きぬ。
枯れ草、枯れ葉の間より、春は簇々として萌えつつあり。
(徳富蘆花)
初春の山
後山にのぼる。
春空靄として四山かすみたなびき、争はれぬ春となりぬ。
海はゆらゆらとして空と一つに融け、練れるがごとき水の面に、富士の白雪ちらちら流れぬ。漁舟かもめよりも小なり。
村々はまだ冬枯れのままなれど、かすみ低う地にはひ、春四方に満てり。鳶一羽悠々として山下に舞ふ。
がけ、畑の畔、いたるところ蕗の薹青く萌え、榛の木などはすでに垂垂の花をつけ、春蘭も早きは咲きぬ。
枯れ草、枯れ葉の間より、春は簇々として萌えつつあり。
(徳富蘆花)