平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

いまさら再生産方程式

2022-02-03 12:18:41 | 新型コロナウイルス

西浦博:実効再生産数とその周辺


再生産方程式は畳み込みを行っています。A(τ)はインパルス応答です。
このモデルは線形システムであり、感染拡大初期にしか使えません。
また、適用には次のような条件が必要です。
①感受性を有する人間が無限にいる
②感受性を有する人間の分布は一様である
③感受性を有する人間は移動しない
④他の集団からの感染者の流入はない
このような条件を満たす集団は例えば原爆の中の濃縮ウランです。
原爆の場合、感染者は中性子です。
ウラン235の原子核に中性子をぶつけると原子核が分裂し複数の中性子を放出します。
放出された中性子が次の原子核に衝突し複数の中性子を出す、を繰り返すと爆発します。
感染拡大期もこのようだと、このモデルは言ってるわけです。
でも、濃縮ウランのように高度に品質管理された理想的な感受性を有する人間の集まりがあるでしょうか。
そんな集団はこの世に存在しません。また、原爆のように連鎖反応で感染爆発することもありません。
どんな感染症も、感受性を有する集団の構成員すべてが感染しなくてもいつの間にか収まります。

現象を反映していないのでこの方程式は実用上全く意味がありません。
それどころか、むしろ有害です。この方程式の計算結果に基いて政策決定されれば国は壊れます。

当ブログでは1年前に再生産方程式について考えたことがあるのですが、
纏まりがつかず尻切れトンボになってしましました。
尻切れになったのは、私の理解力不足もせいもあるけれど、西浦氏にも責任があります。
西浦氏の資料はあまりにもわかりにくいのです。
まるで、虫食いだらけの古文書を読んでいるようでした。
西浦博:実効再生産数とその周辺を読んで解る人いますか?
理論そのものが難解というというよりも、プレゼンがあまりにも下手なんです。
むしろわざと解り難くしているのではないかとさえ思えます。
そんなわけで、以下では西浦氏の資料を無視し、平ねぎ流で考えてみます。

再生産方程式をつぎのように書き換えます。


A(τ)は、感染時を起点にしてそれ以降に誰かに感染させる能力を表します。
g(τ)は確率密度関数です。ここではガンマ分布を用います(k=9.0,θ=0.5)。


再生産方程式は連続式ですが、実際には日々の感染状況を調べるのでつぎのように離散化します。


広島市のデータを使って試してみましょう。

オミクロン株の基本再生産数をR0=6.0に設定しています。

青実線は報告数です。
赤実線は再生産方程式によるシミュレーション結果です。
グラフをみれば明らかです。合わないんです。

合うのは、感染拡大を始めてから10日くらいの間だけです。
オミクロン株の基本再生産数がどうのこうのということは全く意味がないことがわかるでしょ。
再生産方程式を使って計算すると必ず過大評価になります。

2年前の4月、西浦氏の提案を根拠に、政府は8割の行動制限を国民に課しました。



基本再生産数をR0=2.5と仮定すると、R0<1.0にするためには6割の行動制限が必要であり、
それでは心もとないので安全代をとって8割にした、ということなのですが、
あほらし過ぎて話になりません。
8割の行動制限とは具体的に何をすることか?の根本的疑問はひとまず措くとして、
再生産方程式が線形システムであるために必ず過大評価になるのです。
42万人が死ぬなどありえないのですよ。

基本再生産数が使えないので、実効再生産数という概念が導入され広く使われています。
猫も杓子も実効再生産数実効再生産数と念仏を唱えるように言ったり書いたりしていますが、
これは、基本再生産数を時間に依存して変化させるようにしただけのもので、
意味がない点では基本再生産数と変わりません。

現在使われている実効再生産数はつぎのように計算します。
今を起点として2週間遡って、その間基本再生産が変わらないとして求めたものが実効再生産数です。


具体的には、つぎのように計算します。

実効再生産数=(直近7日間の新規陽性者数/その前の7日間の新規陽性者数)**(平均世代時間/報告間隔)

ここで、平均世代間隔は⊿t=7日、報告間隔μ=5日としています。

広島市のデータを使って実効再生産数を計算するとつぎのようになります。



基本再生産数は一定ですが、実効再生産数は増えたり減ったりするんです。増えたり減ったりするのは定義上当たり前です。
こんなものを見て一喜一憂しても意味ないでしょ。


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