平ねぎ数理工学研究所ブログ

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いまさら再生産方程式(続)

2022-02-15 07:11:17 | 新型コロナウイルス

再生産方程式のモデルは線形システムであり、この方程式に基いて計算すると必ず過大評価になること、を前記事に書きました。

議論を解りやすくするために、ここで復習しておきましょう。
再生産方程式はつぎのとおりです。

A(τ)はインパルス応答関数です。
前記事では再生産方程式をつぎのように書き換えました。


A(τ)は、感染時を起点にしてそれ以降に誰かに感染させる能力(感染力)を表します。
g(τ)は確率密度関数です。ここではガンマ分布を用います(k=9.0,θ=0.5)。


再生産方程式では、基本再生産数(R0)は一定と仮定しています。そのため解は発散したのでした。
ここでは、基本再生産数(R0)が一定でなく時間とともに低減するモデルを考えます。

ここで、C(τ)は低減係数です。t1/2は半減期(感染力が2分の1になる期間)です。原子核崩壊をイメージしています。
この式を離散化します。



この式を使ってデルタ株蔓延時の全国新規感染者数を計算してみましょう。
数値は厚生労働省オープンデータからダウンロードしました。


ここで、R0=2.9、t1/2=42としています。
基本再生産数一定モデルでは単調増加解しか得られなかったのですが、基本再生産数低減モデルにするとピークができます。

つぎに、オミクロン株について計算します。


ここで、R0=4.3、t1/2=21としています。
デルタ株と比較すると、基本再生産数が大きくなり、半減期は短く(2分の1)なっています。

この式は初期値に強く依存します。また、R0とt1/2を少し変えただけで結果は大きく変わります。
したがって、このやり方はあまり実用的ではありません。

このやり方のポイントは、半減期を導入したことです。
ウイルスは人から人への感染を繰り返す過程で徐々に感染力を失っていくと仮定しています。
あらゆる生物に寿命があるようにウイルスにも寿命があるのではないでしょうか。
人から人への感染がある一定の回数に達するとウイルスは寿命を終えるのではないでしょうかね。
そうだとすると、人流制限や飲食店の時短制限は長引かせるだけなので、全く意味がないことになります。