平ねぎ数理工学研究所ブログ

意志は固く頭は柔らかく

想定外?君らはそれでも耐震工学のプロか!

2016-05-17 19:24:14 | 耐震構造
耐震工学の専門家(?)がこんなことを言っています。
長いですが全文引用します。

観測史上初めて震度7級の揺れが連続した熊本地震で、建築基準法が定める耐震基準の見直し議論が
浮上している。基準はそもそも1回の強い揺れに耐えることを想定し、今回の地震は「予想外の事態」(国土交通省)。
専門家の現地調査では、比較的新しい家屋の倒壊も確認された。国交省は今後、倒壊の要因を詳しく分析し、
耐震基準見直しを含めて対応策を検討する。
「最初の揺れでは軽微な被害にとどまっていた建物も、本震で倒壊した。損傷箇所が次の大きな揺れに耐えられ
なかった」

熊本地震から1カ月となった14日、都内で行われた日本建築学会の会合で、田中圭・大分大准教授(木質構造学)
はこう指摘した。
熊本県内で特に被害の大きかった益城町では、最初の震度7を観測した4月14日夜、古い木造家屋が倒壊したが、
持ちこたえた家も多かった。2度目の震度7を記録した16日未明の揺れで被害は一気に広がった。
学会の調査では、耐震基準が強化された2000年以降に建てられたとみられる家屋の全壊が、同町だけで少なく
とも10棟あったことが判明。国交省の研究機関、国土技術政策総合研究所の現地調査でも、現行基準を満たして
いるはずの家屋の倒壊を確認している。
00年導入の現行の耐震基準は「震度6強から震度7の地震でも倒壊しない」ことを前提として、木造家屋の柱と
土台を金具で補強することを明示している。
国交省住宅局によると、建築基準法は人命を保護する観点で定めた法律で、耐震基準も「最低限のルール」。
1回目の強い揺れで倒壊さえしなければ、安全な場所へ避難する時間は十分にあるとの見解に立つ。
ただそれは、「震度6強から7程度の強い揺れは続発しない」とする、従来の「常識」に沿った考えで、今回の
地震ではその前提が崩れた。政府の地震調査委員会の平田直委員長(東京大地震研究所教授)は「熊本地震は
わが国の地震リスクを再認識させた」と指摘。建物の耐震化の必要性をあらためて訴えている。
住宅局の担当者は「多くの家屋が倒壊した現実を受け止めないといけない」と声を落とす。
被害を拡大させた「想定外」の連続地震にどう備えるべきなのか。
国交省は今後、国土技術政策総合研究所などの調査・分析結果を待って、対応策の議論を本格化させる。
熊本地震で2回続いた震度7の揺れが、家屋を倒壊させたメカニズムなどを検証。現行の耐震基準の妥当性を見極め、
複数回の揺れで建物に蓄積する負荷の軽減策を検討する方針だ。
一方、被災地では同じ年代に建築された建物でも損壊の程度に差がみられ、国交省は、耐震基準が実際に守られ
ていたかどうかも調査する。
専門家からは、火山灰地層や、盛り土で造成された軟弱な地盤との関連性についても検討すべきだとの見解も
示されている。=2016/05/14 西日本新聞=


拙ブログで指摘したように、14日に起きた地震と15日に起きた地震は、揺れの強さはほぼ同レベルでしたが、
15日の地震のほうがマグニチュードが大きかったために長周期成分を多く含んでいました。15日の地震の被害が
大きかったのはそのためです。もちろん、14日の地震で部分的に損傷し15日の地震で損傷が拡大して倒壊に至っ
た建物もあったでしょう(新しい建物)。しかし、15日に倒壊した建物の多くは14日の地震が起きていなくても倒れた
はずです。KiK-net益城観測点の地震波を分析すればすぐにわかることです。
国土交通省の役人は素人だからやむを得ないとしても、大学の専門家がなぜ分からないのでしょうか。
なぜ、ピンとこないのでしょうか。頭が悪いというか、鈍いというか、それでも君たちは耐震工学のプロか
いかん、いかん。熱くなってしまいました。冷静になりましょう。そうしましょう。

強い揺れが連続して発生したのは想定外だった、と言っていますね。
そのような事例は過去にないと思っているのでしょう。
本当に過去になかったのでしょうか。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震を調べてみましょう。
添付図に示す地震波はK-NET仙台の観測波です。
強い揺れが60秒間隔で連続して起きています。



0~60秒の震度と60~120秒の震度を比較してみましょう。
つぎのとおりです。

【 0~ 60秒】計測震度= 6.36 震度6強
【60~120秒】計測震度= 6.07 震度6強

概ね同じです。どちらも震度6強です。
地震の間隔は東北地方太平洋沖地震が60秒熊本地震は1日です。
間隔が異なるだけで、強い揺れが連続して起きる現象はとっくに起きています。
今回が初めてではありません。

「被害を拡大させた想定外の連続地震」だと
何を寝ぼけたことを言っているのだ。
何をいまさら右往左往しているのだ。
連続地震が問題なら、なぜ東北地方太平洋沖地震のときに
問題にしなかった。お前らの目は腐っているのか。
あっ、いけない。また熱くなりました。
冷静になりましょう。そうしましょう。

つぎに、加速度応答スペクトルを見てみます。
減衰定数はh=0.05です。
始めに0~60秒、つぎに60~120秒を示します。

【0~60秒の加速度応答スペクトル】


【60~120秒の加速度応答スペクトル】