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アフロヴェナトル修正版





アフロヴェナトルも好きな恐竜の一つであるが、今年の科博の震災復興コラボミュージアムで、アフロヴェナトルが福島へ進出したようである。(日程の都合で行けなかった。)前にアロサウルスはやったということと、おそらく会場スペースの関係で手頃な大きさということか、肉食恐竜と植物食恐竜各1種ずつの枠に見事、選ばれた。大変喜ばしい。どうでもいいが今回「アフロベナトール」ではなくて「アフロヴェナトル」表記だった。福島の方々にもティラノやアロサウルスなどだけではなく、アフロヴェナトルの良さを(そもそも存在を)知っていただければ幸いである。メガロサウルス類で復元骨格が見られるのは、トルボサウルスとこのアフロヴェナトルくらいである。
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恐竜トーク居酒屋2 in東京


22日夜は、東京・新宿百人町のNaked Loftで、恐竜くんのトークショー「恐竜トーク居酒屋2 in東京」に行ってきました。恐竜大好き芸人の尾関さん、恐竜大好き漫画家の所十三先生、恐竜大好き小説家の井上綾子さんとの共演で、お酒を楽しみながらの恐竜談義でした。会場は想像以上の盛況で、予約して良かったというところです。
 恐竜くんのお話自体は、最近発売された「知識ゼロからの恐竜入門」の内容を紹介しながらの恐竜情報と、公開中の「ジュラシックワールド」の良い点やツッコミ所などのお話で楽しめました。スピノサウルス事件や竜脚類の呼吸、エドモントサウルスのとさか、未発表のトリケラトプス情報など、中には初めて聞く情報もあり参考になりました。「ジュラシックワールド」も、ツッコミ所は多々あるけれども、エンターテインメントとしてはこれで完全に正解であるという、まさに共感できる内容でよかったと思います。卵の割り方とか、モササウルスの大きさとか、翼竜が人間を持ち上げて飛ぶとか、いろいろ気がつくわけですが、映画の完成度を高める意味ではいわば確信犯的なものですね。
 尾関さんとの掛け合いも、分かりにくいが共感できる例えなどの、合いの手のいれ方が、やはり技術なのだなあと感じました。所先生のお部屋と恐竜コレクション紹介では、オスニエリアの上下の顎、一応アロサウルスとされているが正体不明の歯や、ティラノサウルスの異常な前上顎骨歯(なぜか鋸歯のある稜線が余分にある)などのレアものが拝見できました。井上さんは元々恐竜に親近感を感じて育ったということで、映画の中で「オレのラプトル」と呼ぶのが気に入らないとか、恐竜をキズつけてほしくない等のユニークな視点からのお話でした。
 サイン会が終わった頃には予想をはるかに超えた時間になってしましましたが、また次の機会を楽しみにしたいと思います。
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2015生命大躍進



恐竜展ではないが、進化・古生物ファンにとって見逃せないイベントである。実際に、貴重な実物標本の数とクオリティの高さは圧巻だった。
 まずはバージェス動物群の実物化石のラインナップに圧倒される。これだけで充分に展覧会ができるくらいのものである。あまり詳しくない私でも、オパビニアやアノマロカリスを目の前にするとさすがに感動した。ピカイアは角度によるかもしれないが、照明の反射が強かった。ハイコウイクティスの頭部は小さいが、メタスプリッギナのプラナリアのような頭部には強く印象づけられた。CG映像のメタスプリッギナの顔には「気持ち悪い」という声が聞かれたが、その気持ち悪さの一因は「顎がないこと」かとも思われた。これの胴体の筋節の見え方は、ピカイアやハイコウイクティスとは違っている。黒い帯状の部分は筋節の間の組織なのか、筋節なのかいまひとつわからなかった。

ダンクルオステウスの全長が6-10mと幅があるのは、体の後半部分が軟骨性で保存されていないためらしい。しかしコッコステウスでは脊椎が保存されている。板皮類の中で、軟骨性と硬骨性の系統があるということか。大型化とともに軟骨化したのか、その辺がよくわからない。
 ユーステノプテロンの頭部の内部構造を観察するために、研磨機で削りながら断面を記録し、ワックスで3次元再構築した話は興味深かった。
 メソサウルスの全身化石も奇跡的な保存状態だったが、最古の爬虫類の卵化石としてメソサウルスの卵は興味深かった。すでに漿尿膜でガス交換できたということだろう。

単弓類はイノストランケヴィアなどおなじみの種類もあるが、テロケファルス類など初めて見るものもあった。コティロリンクスは、剣竜なみに頭が小さいですね。ACTOWの頭骨レプリカも出演していた。ディメトロドンはよくできていると思ったが、結局は知名度のある種類をメインに取り上げるのだなという気がした。ガチャの商品化でも、「顎の獲得」、「陸上生活」などの獲得したものの大きさでいうと、ディメトロドンよりはジュラマイアではないか?しかし全身の姿がよく知られていること、知名度、特徴的な形態と見栄えでディメトロドンなのだろう。ジュラマイアは割とシンプルな展示で、それはそれでよかった。

「胎盤の獲得」のところでは、考えさせられることがあった。胎盤の形成に関わるPEG10のような遺伝子がレトロトランスポゾン由来であることは、最近の進化発生学で大きな話題となった知見である。しかしCG映像では、ジュラマイアらしい哺乳類がレトロウイルスに感染してダウンし、生き延びた個体の中で‥と何か説明があるのかと思いきや、一行も説明がなくて拍子抜けした。これでは、PEG10遺伝子の獲得と胎盤の形成がどう結びつくのか、全くイメージがわかない。展示としてはこれが限界というのもわかるが、ひとことくらい何かあってもよかった。
 なぜこの胎盤のところだけが気になったのか、考えてみた。「顎の獲得」でも第1鰓弓から顎が生じたというだけで、メカニズムの説明は一切ない。しかし「顎のない魚」と「顎のある魚」の標本が目の前にあるので、どういう変化かは何となく頭にイメージされるのではないか。骨格系の変化は化石に残っている。胎盤や子宮は化石に残らないので、ビジュアルのイメージが何もないのである。博物館の展示物としての骨格、外骨格、生体復元のような標本に、今回は遺伝子、ゲノムという概念が加わった。しかし骨格以外の組織、器官の説明が抜けているきらいがある。胎盤の形成については、メカニズムの説明は全くなくても、爬虫類(または単孔類)の胚膜はこうなっている。真獣類の胚膜はこうなっていてこの部分が胎盤になった。という絵があればよかったのではないか。

ジュラマイアがジュラ紀の中国ということで、モノロフォサウルス、ヤンチュアノサウルス、アンキオルニスが映像化されている。それと対応して今回、ヤンチュアノサウルスの頭骨が見られたのは嬉しかった。

休憩所とトイレのコーナーを曲がると通常は緊張がゆるむところだが、「哺乳類の時代」の選りすぐりの哺乳類化石がまたすごい。これも実物か、という具合である。「イーダ」は位置づけがよくわからなかったが、奇跡的な化石にはちがいない。ネアンデルタールと交雑した痕跡がゲノムに残っているというのが最後のトピックスであった。くたくたになったが有意義な一日を過ごせた。

全体を通して、この特別展は単に各時代の生物群を紹介し、進化の過程を学ぶだけではなく、それぞれの大進化の痕跡が我々のゲノムに刻まれている、ということがミソになっている。ボディプランの獲得、ゲノムの四倍化、時には他の生物種の遺伝子を取り込むというようなイベントを経て、現在の我々の姿があるということを理解してもらおうという企画である。これは博物館の企画としても、野心的で壮大な試みと思われる。ボディプランという見慣れない用語に、「ボブディラン?」と言っていた中年女性がいた。このような比較ゲノムや進化発生学の成果を取り入れようとする試みが、今後他の博物館の企画に影響を与えるのか、注目されるところである。


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トルボサウルスの最近の進展(2)アメリカ産とポルトガル産



Copyright 2014 Hendrickx and Mateus

ポルトガルのロウリニャ層で発見された上顎骨と断片的な尾椎は、2006年にはアメリカのトルボサウルスと同種として報告されていた。その後、Hendrickx and Mateus (2014)がこの標本をアメリカのトルボサウルス・タンネリと詳細に比較した結果、いくつかの重要な違いが見出されたので、トルボサウルス属の新種トルボサウルス・グルネイとして記載された。
 トルボサウルス・グルネイのホロタイプは、不完全な左の上顎骨と近位の尾椎の後方部分である。その他、別に見つかった脛骨と大腿骨の断片、分離した歯なども暫定的にトルボサウルス・グルネイと考えられている。


トルボサウルス・グルネイはほとんど上顎骨しかないので、著者らは世界中の大型獣脚類の上顎骨を比較研究している。多くの進化した獣脚類では、上顎骨の前眼窩窩にmaxillary fenestraという孔があいている。(わからない方は過去の記事の「アロサウルスの成長」「アリオラムスの頭骨を観察しよう」、「ヴェロキラプトル」、「丸ビルでアクロカント」などに図がある)トルボサウルスではこれが貫通した孔ではなく、浅い凹みになっている(「トルボサウルス1」参照)。
 上顎骨の歯が収まっている歯槽の内壁は、歯間板 interdental plateという構造でできている。多数の歯間板が前後に並んでいるが、一部の獣脚類では歯間板が互いに癒合してひとつながりの板になっている。トルボサウルスでも歯間板が癒合して歯間壁interdental wallという構造になっている。

Hendrickx and Mateus (2014)はトルボサウルス属、トルボサウルス・タンネリ、トルボサウルス・グルネイの特徴を記述しているので簡単に記録する。
 トルボサウルス(属)の特徴は、上顎骨の前眼窩窩に(貫通したmaxillary fenestraではなく)浅いmaxillary fossaをもつこと、前眼窩窩の前端腹側でmaxillary fossaの下に隆起した稜があること、歯間壁が上顎骨の内側面の1/2を占めること、などである。

トルボサウルス・タンネリの特徴は、歯間板の腹側縁が広いV字形で、歯間壁が上顎骨の外側壁より短い(上下にずれている)、内側棚の前方部で前内側突起anteromedial processの後方に隆起がある、である。

トルボサウルス・グルネイの特徴は、上顎骨の歯槽の数が11より少ない、歯間板の腹側縁がほぼ直線状、歯間壁が上顎骨の外側壁とほとんど一致している(揃っている)、内側棚の前方部で前内側突起anteromedial processの後方に隆起がない、である。(論文ではメガロサウロイドの中で固有の形質と、タンネリとの違いに分けて書いてあるが、重複するのでここではまとめて書く)

トルボサウルス・タンネリとトルボサウルス・グルネイの違いのうち、最もわかりやすいのは歯の数である。Britt (1991) によると、トルボサウルス・タンネリの上顎骨には11個の歯槽が観察され、全部で推定12-13個と考えられた。Hendrickx and Mateus (2014)の観察では確実なのは10個で、推定11-12個と考えている。それに対してトルボサウルス・グルネイでは8個しかみられず、最大でも10個と考えられた。歯の数は同種内でも個体によって変異がみられるので、これを種の特徴とするのには慎重でなければならないが、メガロサウロイドの中で上顎骨の歯の数が11より少ないのはトルボサウルス・グルネイだけである。

トルボサウルス・タンネリでは、歯間板の腹側縁が広いV字形をしている。一方トルボサウルス・グルネイでは歯間板の腹側縁が直線状で、歯間壁全体にわたって隣と連続している。V字形の歯間板は、多くの獣脚類にふつうにみられる。例えばノアサウルス類マシアカサウルス、アベリサウルス類ルゴプス、多くのメガロサウルス類、アロサウロイド(アロサウルス、ネオヴェナトル、シンラプトル、マプサウルス)、ティラノサウルス類(アリオラムス、タルボサウルス、ティラノサウルス)などである。一方、直線状(長方形)の歯間板は、ケラトサウルス類(ケラトサウルス、ノアサウルス、アウカサウルス、マジュンガサウルス)、メガロサウルス類メガロサウルス、アロサウロイドのシャオチーロン、ティラノサウロイドのエオティランヌスにみられる。

もう一つの違いは上顎骨の外側縁に対する、歯間板(の癒合した歯間壁)の腹側への伸展の度合いである。トルボサウルス・グルネイでは、歯間壁は上顎骨の外側縁とほとんど同じくらいまで伸びている。一方トルボサウルス・タンネリでは、歯間壁は短く、上顎骨の外側縁よりもかなり上(背側)で終わっている。このような歯間板の相対的な伸展の程度は、ケラトサウルス、マジュンガサウルス、メガロサウルス、アロサウルスなどの同種内の異なる標本の間では違いはみられなかった。それに対してカルカロドントサウルス・サハリクスとカルカロドントサウルス・イグイデンシスの間では違いがあり、前者の歯間板の方がより腹側まで伸びている。このことから歯間板の相対的な伸展は種間で異なるものであり、2種のトルボサウルスを識別する特徴と考えられるという。




大きい画像

参考文献
Hendrickx C, Mateus O (2014) Torvosaurus gurneyi n. sp., the Largest Terrestrial Predator from Europe, and a Proposed Terminology of the Maxilla Anatomy in Nonavian Theropods. PLoS ONE 9(3): e88905. doi:10.1371/journal.pone.0088905

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バリオニクス修正版



これは線が荒かったので、修正版をフルサイズで掲載します。
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リニューアル作業について

リニューアル作業について

このブログも開設からもう9年になるので、少しずつ手直ししようと思っている。既にアフロヴェナトルの生息年代を訂正したように、この間に内容が古くなっている記事がある。ストケソサウルス・ランガミはジュラティラントになり、サウロルニトイデス・ジュニアはザナバザルとなったが、これらについては気が向いたら取り上げる。恐竜本など何でもそうであるが、その文章がいつ書かれたものであるか、常に意識して読んでいただきたい。

過去の記事を自分で読み返すと、初期の記事には細かい誤りや不適切な点もあった。(わりと最近の記事でも用語の誤りが見つかって、冷や汗をかいている。)学術的な内容を記述しているのに参考文献がなかったり(参考文献を明記したのは2007年4月から)、当時のイラストが今では気に入らなかったりする。

そこで、完全に古くなった、または大したことを書いていない記事は削除(公開停止)。字句の誤りは訂正する。参考文献がなかったものにはそれらを追加していく。いまいちなイラストは描き直すか、修正する。また、骨の細かい形態を論じているのに、図がないために分かりにくい記事は一部、図を追加しようと考えている。ただし修正作業も結構手間がかかるので、気長にいく予定です。

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ダイノワールド2015ヨコハマ恐竜博 (3)



過去の記事「トルボサウルス1」の冒頭に、いいことが書いてある。
「多くの恐竜ファンにとって、展示されている復元骨格のうち、どの部分が実際に発見されていて、どの部分が推定なのかということは、基本的に重要な関心事であると思うが、明確に示されていることは少ない。‥‥」
 まさに、2015年の現在にもあてはまる。65%も見つかっているのなら、骨格図に赤で発見された部分を示せば、「おおっ、これはすごい」となるはずだ。まあ、間に合わなかったのでしょう。左の座骨が欠けているのをみると白っぽい部分が実物かとも思ったが、どうもよくわからない。
 今回のトルボサウルス復元骨格は従来とは少し変わっているが、頭が大きくがっしりした体形で前肢は短い、という大体のイメージは変わっていない。印象が変わったのは顔だろうか。顔が少し長くなり、涙骨の角度が変わっている。もともとトルボサウルスの頭骨の骨はバラバラで見つかっており、涙骨は大きさの異なる別個体のものであった。今回、涙骨の角度が変わったとすれば、涙骨が前頭骨や鼻骨などと関節状態で見つかったということかもしれない。従来トルボサウルスの涙骨には角状突起はほとんどないとされていたが、今回のは涙骨のカドの部分が角状突起のように突出してみえる。一般にメガロサウルス類では角状突起が発達していないとされているが、アフロヴェナトルにはあるので、実はトルボサウルスでもあるのかもしれない。とにかく正確な情報が公表されないと、なんともいえない。右側の下顎の後方部分が意味ありげな形をしている?ことから、これまで知られていなかった下顎の後方部分が発見され、それで顔が長くなったのか?
 前肢も、従来のがっしりさと比べるとやや細いようにもみえるが、上腕に対して前腕が短いことには変わりない。これも議論があって、最初の記載者Galton and Jensen (1979)は、左右の上腕骨、右の撓骨、左右の尺骨を同一個体のものと考え、これら一揃いをホロタイプとした。その後Britt (1991) は、これらを同一個体とする根拠はうすいとして、左の上腕骨だけをホロタイプとした。今回の新しい発見で、前肢についてはどうなったのか、気になるところである。



アロサウルスの成長について、せっかく骨を並べて展示しているのに具体的なことは説明がないですね。
 Foster and Chure (2006) によると、ワイオミング州北東部のモリソン層で大腿骨長274 mmの幼体の部分骨格が発見され、その解析から、幼体では後肢が長いことがわかった。大腿骨に対して、脛骨と中足骨がそれぞれ成体よりも長い。また、腸骨に対して大腿骨が成体よりも長いという。大まかにいえば、幼体では速く走れることで、小型の獲物を捕食するのに適しているということである。



この大型のケラトサウルスもなかなかである。ケラトサウルスもこれくらい大きいと、がっしりして堂々たる体格ですね。律儀にも、脊椎の神経棘の上に1つ1つ皮骨板が載っているのがいい。尾椎は縦に扁平な形をしているのがわかる。これも、昔からある標本を元に現代風にリニューアルしただけなのか、新しい標本の情報を加えてあるのか、解説がほしいところである。
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ダイノワールド2015ヨコハマ恐竜博 (2)



2006年にも見たケラトサウルス対タニコラグレウス。この恐竜博にはアロサウルスが4体、ケラトサウルスが3体も登場する。
 3体のケラトサウルスのうち、このジャンプしている亜成体だけ、手の指骨の数が違う。ケラトサウルスの手は完全には知られていない。この亜成体では第2指と第3指が同じくらいの長さになっていて、指骨式が2・2・3・1であった。他の2体(アロサウルスにやられている子と最後の大型のやつ)は指骨式が2・3・4・1であった。特に最後の大型のやつは明らかに第3指が最も長くなっていた(ヘレラサウルスのように)。これは何らかの情報を反映しているのだろうか。それとも大した意味はないのだろうか。



ヘスペロサウルスの雄姿。装楯類もステゴサウルス、ガルゴイレオサウルス、ポラカントゥス(模型)とまあまあ来ている。




タニコラグレウスのような基盤的コエルロサウルス類は、意外と見る機会がないですね。私はコエルルスも見たい。復元骨格はあるんでしたっけ。



こんな所にマジュンガちゃんが。マジュンガサウルスも複数のバージョンがあるんですね。この復元キャストは初めて見るが、数ヶ月前に描いたイラストとたまたまポーズが似ている。後肢は短いが、原始的だからではなく何らかの目的に適応した結果ということはないのだろうか。狭いところに逃げ込むネズミ類を追跡するイタチ科のように、小型の獲物を狙うために体高が高くない方がよかったとか。
 このマジュンガサウルスは、前腕を曲げた上に手の指にカギ爪がついている。これは2011年以前に作られたのか、「カルノタウルスの手を参考にした」ということか。まあ完全に否定はできないが、2012年のマジュンガサウルスの手の研究からすると、あまりありそうではないと思われる。あと下顎の幅は少し開きすぎのような気がする。顔の表面のごつごつした彫刻sculptureが良いです。



この顔は‥ジェーンか。ジェーンとして展示された骨格とは別に、ナノティランヌスがあるのかな。「ナノティランヌス全身骨格」は初めてであるが。「モンタナの格闘恐竜」とジェーンの顔は似ているような気がする。これはティラノサウルス科ならではの正統派の美しさですね。
 「ティンカー」は顔が高い位置にあり、あまりいい写真は撮れなかった。ティーンエイジャーの年齢とあるが、頭骨の特徴からするとほぼ成体の顔のようである。



このアロサウルス対ケラトサウルスは、肉食恐竜好きなら泣いて喜ぶような展示物ですね。これはすごい。この眼窩がちょっと縦長のアロサウルスも初めて見るが、顔の幅が狭いのがいい。私はしばし見入ったが、多くのお客さんはあまり時間をかけずに流れていった。
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ダイノワールド2015ヨコハマ恐竜博 (1)


予想以上に獣脚類が多くて、満足できました。写真の枚数も多くなり、猛暑に加えて緊張でのどが乾きました。途中でかき氷でも食べないとダメかも。
 なるほど、これは米国のWestern Paleontological Laboratories, Inc. (WPL)の全面協力による企画ですね。それでほとんどが北米ものという。目玉がどうとかではなく、良い標本を持ってきています。ところどころに英語の解説パネルが併置してあるのは、WPLが持っている恐竜博物館から借りてきたものでしょう。ケラトサウルス、タニコラグレウス、アロサウルス・ジムマドセニ、カンプトサウルス、ドリオサウルス、ハーパクトグナトゥスなど大部分のものはWPLのカタログにあります。
 全身骨格を下からライトアップするなど、標本を美しく展示する技術は本格的で、向こうの博物館と同様に再現したのでしょう。ただ一部、解説がわかりにくい所があり、カマラサウルスの尾椎の病理的痕跡などは、二分脊椎とか強直症とかがどういう状態をいうのか、もう少し説明があってもよいと思いました。
 ケラトサウルス対タニコラグレウスの「つかみ」の後、三葉虫、ウミユリ、レバノンの魚類化石、モササウルスなどミネラルショーの雰囲気が続きます。特にアンモライトを加工したジュエリーは、完全にミネラルショーのノリだなあと思っていると、ヘスペロサウルス、ステゴサウルスあたりから盛り上がっていき、タニコラグレウス、マジュンガサウルス、ナノティランヌスと引き込まれていきます。「ティンカー」よりも、むしろアロサウルス対ケラトサウルスの方が目を引くような。そして最後の広いスペースではトルボサウルス、アロサウルス、ケラトサウルスの三役そろい踏みの周りに、カンプトサウルス、ドリオサウルス、ディプロドクス、ブラキオ模型などを配するという布陣。一方でキッズ向けのアトラクションや記念撮影、遊び場も充実というわけですね。
 最後のショップは図録もポストカードもなく、買うものがあまりなかった。海洋堂のカプセルQ白亜紀くらいでした。マスターフォッシルの店舗はあるのでスピノ歯やサルタサウルスの卵殻くらいは買えます。いや失礼、お金のある方は高い化石も買えます。あと、まつもとかずや氏の折り紙はありました。

トルボサウルスは公式サイトの写真の通りですね。このヨコハマ恐竜博の展示の後、研究機関に入るとあるので、組み上げたものをバラしてこれから研究するようです。そうすると情報が出てくるまでしばらくかかるのでしょう。
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トルボサウルスの最近の進展(1)博物館に眠っていた化石


トルボサウルスの四肢に関する情報としては、Hanson and Makovicky (2014) が出版されている。しかし、この論文はトルボサウルスの完全な前肢が関節状態で見つかった、というような話ではない。むしろ断片的なものである。
 これは、100年以上も前に発掘された化石の再発見である。この化石標本は1899年にElmer Riggsの調査隊によって、ワイオミング州のFreezeout Hillsで発見されたが、その後手つかずのまま、フィールド自然史博物館の収蔵庫に保管されていた。在庫目録の作成の際に、重要な化石かもしれないということで、2005年にクリーニングされた。
 この標本FMNH PR 3060は、3つの腹肋骨(ガストラリア)の断片、右の第III中手骨、右の指骨III-2、左の中足骨II, III, IV, 左の趾骨I-1からなる。化石の発見された地層は、モリソン層のBrushy Basin Member(ジュラ紀後期チトン期初期、150-148 Ma)に属し、これまで知られているトルボサウルスの生息時期と一致する。

この標本は、中足骨の大きさとプロポーションに基づいて、モリソン層の獣脚類の中でもトルボサウルス・タンネリと同定できる。トルボサウルスでは中足骨の長さが近位端の幅の2~3倍であるが、アロサウルスとケラトサウルスでは3~4倍である。またcollateral ligament pitが広く浅いことは、トルボサウルス、エウストレプトスポンディルス、ピアトニツキサウルスのようなメガロサウルス類にみられる形質であり、アロサウルスやケラトサウルスとは異なる。

これらのうち、後肢の趾骨I-1と前肢の指骨III-2はトルボサウルスでは初めて見つかった骨である。前肢の指骨III-2が知られている他のメガロサウルス類は、スキウルミムスしかいない。この指骨は、骨幹が短縮して三角形に近い形をした、最も短い指骨である点でスキウルミムスの同じ骨と非常によく似ている。

この標本には前肢の手の骨と後肢の足の骨が含まれているが、メガロサウルス類の手・足の標本は非常に乏しいために、手と足の比率などを他のメガロサウルス類と比較するのは困難である。手と足の両方の骨が十分保存されているメガロサウルス類は、幼体であるスキウルミムスだけである。Rauhut et al. (2012) によると、スキウルミムスのプロポーションはジュラヴェナトルのようなコエルロサウルス類の幼体と驚くほど似ているという。その特徴の一つとして、比較的手が長いことがあげられる。スキウルミムスでは手の第2指の長さ(中手骨を含み末節骨は含まない)が第3中足骨の長さと同じくらいである。しかしこの比率はメガロサウルス類の成体には当てはまらないだろうという。Britt (1991) は、トルボサウルスの中手骨や他の前肢の骨は、獣脚類としては比較的短く太いといっている。
 今回の標本は、これまでに記載されたトルボサウルスの標本と同じくらいの大きさである。Jensen (1985)によって記載された標本の第3中足骨の長さは320-365 mmであるが、FMNH PR 3060では356 mmで、この範囲に入っている。今回の標本を含めて、これまでモリソン層で見つかったトルボサウルスの標本はみな同じくらいの大きさの成体であるという。
 比較できる足の骨が知られているメガロサウルス類としてはエウストレプトスポンディルス、メガロサウルス、アフロヴェナトル、ポエキロプレウロン、スキウルミムスなどがあるが、トルボサウルスの足の骨はこれらのどれよりもがっしりしている。比較できる手の骨が知られているメガロサウロイドはスコミムス、レシャンサウルス、スキウルミムスに限られる。スコミムスの第3中手骨はまだ記載されていない。レシャンサウルスとスキウルミムスの第3中手骨は、トルボサウルスよりも華奢なものである。


参考文献
Michael Hanson & Peter J. Makovicky (2014). A new specimen of Torvosaurus tanneri originally collected by Elmer Riggs. Historical Biology: An International Journal of Paleobiology, 26:6, 775-784, DOI: 10.1080/08912963.2013.853056
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