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アクロカントサウルス1



 アクロカントサウルスは、白亜紀前期アプト期に北アメリカに生息した大型のカルノサウルス類である。アロサウルス上科に属することは認められているが、アロサウルス科とするか、カルカロドントサウルス科とするかで研究者の意見が一致していない。
 米国オクラホマ州の白亜紀前期の地層から発見された2つの部分骨格に基づいて、1950年に記載された(Stovall and Langston, 1950)。それ以来、アロサウルス科とされてきたが、1996年にセレノはカルカロドントサウルス科とし、また1990年にテキサスで発見された保存のよい骨格の解析から、ハリスもカルカロドントサウルス科とした(Harris, 1998)。その後、再びオクラホマ州のアントラーズ層から、ほとんど完全な頭骨を含む、さらに保存のよい全身骨格が発掘され、最終的にはブラックヒルズの手で復元された。この標本のオリジナルはノースカロライナ州立自然科学博物館にある(NCSM 14345)。この標本を研究したカリーとカーペンターは、カルカロドントサウルス類と共通するとされた多くの形質は大きさ依存的size dependent, size relatedなもので系統関係を反映するものではないとし、その他の特徴からやはりアロサウルスに近縁(アロサウルス科)とした(Currie and Carpenter, 2000)。ところがさらにその後、X線CTを用いてホロタイプの脳函のエンドキャストが作製され、脳の特徴はアロサウルスやシンラプトルよりもカルカロドントサウルスとギガノトサウルスに似ており、やはりカルカロドントサウルス科という説が支持された(Franzosa and Rowe, 2005)。The Dinosauria 2nd editionでもカルカロドントサウルス科に含められている。
 最大の特徴である脊椎骨の神経棘は、仙前椎、仙椎、前方の尾椎で椎体の長さの2.5倍以上あるという。頸椎の神経棘の前方に三角の突起があり、ひとつ前の神経棘のへこんだ部分にはまるようになっている。
 前眼窩窓は非常に大きく、上顎骨にはMaxillary fenestra とPromaxillary fenestraの両方がある。カルカロドントサウルス類とアベリサウルス類では上顎骨の外側面の大部分に粗面があるが、アクロカントサウルスではアロサウルスなどと同様に粗面は前縁と歯列のすぐ上に限られ、大部分はなめらかである。眼窩は縦に長い。涙骨の背側方部はカルカロドントサウルスやギガノトサウルスと同じような低い稜をなす。涙骨の腹側部(眼窩の前縁)に下眼窩突起がある。後眼窩骨の腹側部(眼窩の後縁)にも下眼窩突起がある(NCSM 14345では、はっきりしていない)。比較的大きな三角形の前前頭骨が後眼窩骨と接して眼窩の上のひさし部分に寄与している。カルカロドントサウルス類、アベリサウルス類、大型のティラノサウルス類と同様に、後眼窩骨の上部は肥厚して顕著な水平の突起をつくっている。アクロカントサウルスの歯はナイフ状であるが、カルカロドントサウルス類の歯ほど薄くはなく、またカルカロドントサウルス類に特徴的なエナメルのしわはない。一方、下顎の前端はギガノトサウルスと同様に角張っている。
 カルカロドントサウルス科の特徴として涙骨と後眼窩骨の結合部が広いことが挙げられるが、カリーとカーペンターはこの特徴はsize relatedな形質だろうといっている。カルカロドントサウルス類と同様にアクロカントサウルスにも眼窩の上にひさし状の骨(supraorbital shelf)がある。アクロカントサウルスでは、supraorbital shelfは涙骨、前前頭骨、後眼窩骨からなるのに対して、カルカロドントサウルス科のギガノトサウルスではsupraorbital shelfは涙骨、palpebral、後眼窩骨からなるとしている。つまり骨の構成が異なるといいたいらしい。後眼窩骨の下眼窩突起もある程度size relatedといっている。
 前肢はアロサウルスと比べるとかなり小さい。大腿骨に対する前肢の長さの比率は、アクロカントサウルスでは81%であるが、アロサウルスのある標本では126%に達するようである。
 2002年の恐竜博の全身復元骨格を見る限り、アロサウルスに近縁としても体型はかなり異なるという印象を受ける。大型化にともなって、頭が大きく前肢は小さく、後肢も比較的短い、全体としてがっしりした重々しい体型となっている。軽快なアロサウルスのように速く走れたとは思えない。もちろん、復元骨格は推定を含むものであり、また亜成体や幼体の時期にはアロサウルスのようなスマートな体型だったかもしれないが。この体型でも竜脚類に追い付くには充分ということなのか、あるいは屍肉食だったのだろうか。
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