goo

ダウルロン



ダウルロン・ワンギDaurlong wangiは、前期白亜紀(Longjiang Formation)に中国内モンゴル自治区に生息した小型のドロマエオサウルス類(全長150 cm程度)で、2022年に記載された。ダウルロンのホロタイプ標本はほとんど完全な全身骨格で、内臓の組織が保存されていたことから腸管の構造について論じられている。

他のドロマエオサウルス類と区別されるダウルロンの特徴は、1)前上顎骨の鼻孔下突起が細長く、外鼻孔よりもずっと後方まで延びている(これはヴェロキラプトルなどにもみられる)、2)前眼窩窩の前端に大きく台形のpromaxillary recessがある、3)maxillary fossaが大きく浅く、後方にあるのでpila promaxillarisがpila interfenestralisよりも幅広い。などである。
 2)3)は用語が難解のようだが特に難しいことではない。エウドロマエオサウリアの上顎骨の図を参照していただきたい。promaxillary fenestra の奥にある空所がpromaxillary recessであるが、本文ではpromaxillary fenestraが台形と書いてあり、区別していないようにみえる。一方、maxillary fenestra を囲む浅い窪みがmaxillary fossaであるが、ダウルロンではmaxillary fenestraがあるとは書かれていない。貫通した孔はないのかもしれない。

ダウルロンのホロタイプ標本は、ティアンユーラプトルの85%、ゼニュアンロンの93%の大きさである。頭骨は大腿骨の94%の長さであり、これは多くのドロマエオサウルス類と同様である(ハルシュカラプトル、ミクロラプトル、サウロルニトレステスで92–95%)。ゼニュアンロンでは86%、ティアンユーラプトルでは頭骨が大腿骨よりも長い。吻が長いヴェロキラプトルでは117 から128%である。
 前上顎骨の前縁は腹側縁と直角をなしている。これはヴェロキラプトル、ゼニュアンロン、サウロルニトレステスと同様で、鋭角をなすミクロラプトルやシノルニトサウルスとは異なる。前上顎骨の鼻孔下突起は外鼻孔の後端よりもずっと後方に延びており、これはヴェロキラプトルやリンへラプトルと同様で、ミクロラプトルやゼニュアンロンと異なる。

ゼニュアンロンと同様に、前眼窩窩は大きく上顎骨の2/3以上をカバーしている。promaxillary fenestraは比較的大きく、前眼窩窩の前腹方端に接している。シノルニトサウルスとゼニュアンロンではpromaxillary fenestraはもっと後方にある。promaxillary fenestraは台形で、まっすぐな前縁、後縁、腹側縁と後背方に傾いた背側縁に囲まれている。pila promaxillarisがpila interfenestralisよりも幅広いことは、ティアンユーラプトルともゼニュアンロンとも異なっている。ミクロラプトル類ではpila promaxillarisの周辺などに小さい孔や稜があるが、ダウルロンにはない。またゼニュアンロンでは前眼窩窩の後腹側部分に孔や稜があるが、ダウルロンにはない。
眼窩は卵形でその長軸は前腹方-後背方を向いている。強膜輪が比較的よく保存されている。歯骨は長さ/ 高さの比率が約8で、細長いミクロラプトルやヴェロキラプトルと、太いサウロルニトレステスの中間である。

前上顎骨の歯は1個だけ保存されており、鋸歯がなく先端が尖っていて、先端近くが後方に曲がっている。上顎骨には10個の歯が保存されており、あと1個が失われている。その歯冠はティアンユーラプトルよりも太く長い。中央の上顎骨歯が最も長い。一部の歯冠では後縁に鋸歯が保存されている。すべての上顎骨歯はナイフ形で、先端近くがわずかに後方に反っている。ゼニュアンロンでは後縁がもっとカーブしている。歯骨歯は6個が観察され、それらは上顎骨歯よりもずっと小さい。

前肢の長さは後肢の60%より小さい。ドロマエオサウルス類の中で比較的短い前肢は、アウストロラプトル、ハルシュカラプトル亜科、ティアンユーラプトル、ゼニュアンロンと共通している。三角筋稜は顕著に発達していない。尺骨はわずかに後方に反っており、ティアンユーラプトルよりも太い。

ダウルロンでは大腿骨の長さは脛骨の91%である。ティアンユーラプトルとゼニュアンロンでは、大腿骨は脛骨の77%以下なので、それらの方がひざ下が長いことになる。中足骨IIIとIVはほとんど同じ長さで、大腿骨の61%である。

羽毛の痕跡は、後頭部から背中にかけてと尾椎に沿って観察された。四肢の近くや体の腹側には保存されていないので、ゼニュアンロンのように翼に風切羽があったかどうかははっきりしない。背中のあたりの羽毛はシノルニトサウルスのように根元から枝分かれした形をしていたらしい。尾椎の尾椎鞘caudothecaの近くには斜め後方を向いた尾羽が観察された。

系統解析の結果、ダウルロンは、ティアンユーラプトルとゼニュアンロンと最も近縁となり、これら3種はミクロラプトル亜科とエウドロマエオサウリアの中間段階のクレードにまとめられた。これらは上顎骨の前眼窩窩が非常に拡大していること、上腕骨の三角筋稜が縮小していること、腸骨の前寛骨臼突起が長いこと、を共有している。これらの「ティアンユーラプトル様のドロマエオサウルス類」は、体のサイズがミクロラプトル亜科とエウドロマエオサウリアの中間である。またミクロラプトル亜科と共有する形質、エウドロマエオサウリアと共有する形質、さらにより基盤的なドロマエオサウルス類(ハルシュカラプトル亜科、ウネンラギア亜科)と共有する形質を、モザイク的に示している。

ダウルロンの腹腔内には、青黒い組織の遺残が保存されており、腹側はガストラリア、後方は恥骨に囲まれている。これは腸管の痕跡と考えられる。この組織の前端は第9胴椎の位置にあり、そこから第10と第11胴椎の間で最大の高さに達し、ガストラリアと接している。後方の恥骨の前縁との間には何もない隙間がある。このような配置は、スキピオニクスと同様である。ちなみにシノサウロプテリクスの1つの標本の腹腔内にある円形の構造物は、卵ではないかと言われたことがあるが、それはスキピオニクスの十二指腸とよく似ており、ダウルロンにもあることから、腸管と考えられる。基盤的なコエルロサウルス類またはアロサウロイドであるスキピオニクスと、鳥類に近いダウルロンとで腸管の分布が同様であることから、肉食の獣脚類の消化管の配置は保守的であったと考えられる。アヴィアラエになってから、鳥類特有の配置を獲得したらしいという。

ドロマエオサウルス類の中では前肢が短いグループとなったが、頭と比べると前肢が短いようにはみえない。上腕、前腕は短いが手は結構長いようにみえる。前半身が小さく後半身が大きいので、後肢が長いわりに前肢は短いという感じである。顔はヴェロキラプトルなどとは全然違って短く、シノルニトサウルスのような感じだろうか。


参考文献
Xuri Wang, Andrea Cau, Bin Guo, Feimin Ma, Gele Qing & Yichuan Liu. Intestinal preservation in a birdlike dinosaur supports conservatism in digestive canal evolution among theropods. Scientific Reports (2022) 12:19965.
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

2022 池袋ミネラルショー

今年はなんと身内の不幸があり、土曜日が葬儀に重なって不可能となった。ミネラルショー自体全く参加できないかもしれなかったが、なんとか日曜日に行けた。良いものが買われた後なのは仕方がない。



特別展はペルム紀で、メガネウラなどの昆虫、色々な魚類、両生類、爬虫類が主役だった。アクチノドンという両生類の記載された文献。



カプトリヌス。頭以外の全身骨格かな。



詳しくないがフランスのディメトロドンは頭が小さめなのか。頭骨はないようだが頚椎が小さいから確かにこのくらいになるのだろう。番号がついているのが発見された骨か。



Zoicには、スピノサウルスやカルカロドントサウルスの頚椎とともに、「ルゴプスの仙椎」があった。カルカロの環椎は迷ったが買わなかった。またモロッコやニジェールに続いてアルジェリアに新たな化石産地が見つかったらしい。その「クリプトプスの歯」があった。



クラウディオサウルスの全身化石。こんなに完全な形で発見されたのかと訊いたところ、これはいわゆる産状風にアレンジしたもので、オリジナルはノジュールの中にあったが、わかりやすくプレートに配置したもの。よってポーズは変わっている。しかし頚椎と尾椎の前方以外は保存されているので、ほとんど完全な全身骨格ではあるという。



エルドニアが一番パワーがあり、ブースから動けなくなった。未記載の翼竜、こういうものを見られるのがミネラルショーの醍醐味ですね。



3Dプリンターのレプリカは、ダスプレトなんとかいう別の会社?の製品らしい。トリケラトプスの幼体は売約済み(パレオのN川さん)。ホモテリウムやメガンテレオンなどサーベルタイガーも4種類くらいある。



ティラノ幼体の頭骨から頚椎、胸部まで12万。これの元の標本はどういうものなんだろう。よく見ると積層の線があり、烏口骨あたりは年輪のように見えるが、全体が良いから買うでしょう。もし初日に見ていたら買ったかもしれない。



タルボサウルス亜成体頭骨20万。眼窩の形が四角形なのがちょっと違和感あるか。このくらいの大きさなら後眼窩骨の眼窩下突起がもう少しあってもいいような気もするが、このくらいなのか。そのほか恐鳥類や鰭竜類、ルゴプスの頭骨、さらにティラノサウルス幼体の頭骨5万円(売約済みN川さん)、ディロフォサウルス頭骨もあった。



米国George Heslep、ベルギーのRoland Juvyns 、ドイツのKrautworst Natursteinも復活していた。イタリアのTrillobite design のお兄さんとも会えた。イタリアの海生爬虫類セルピアノサウルス模型。中国のケイチョウサウルスと近縁らしい。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

アマルガサウルスとティランノティタン (1)



アマルガサウルスと共演していいのはティランノティタンで、ギガノトやマプではない。つまりアマルガサウルスと共存することで、ティランノティタンと特定される。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )