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ヴェロキラプトル




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このサイトはドロマエオサウルス類が手薄だったので、勉強しようと思っていたところに、前述の総説が出てくれて大変助かった。これは200ページもあるので全部読むのは大変骨が折れるが、現時点でのドロマエオサウルス類の系統研究の状況がまとめてあり、ドロマエオサウルス類の好きな人には必見の資料である。

ところで皆さんは、ヴェロキラプトルの特徴をご存知だろうか。私は知らなかったので、調べた。もちろん、後肢の第2指のカギ爪、恥骨が後方を向く、尾椎が固定されて動かない等はドロマエオサウルス類の特徴であってヴェロキラプトルの特徴ではない。
 Turner et al. (2012) では、ヴェロキラプトルの頭骨についてはBarsbold and Osmo´ lska (1999)、胴体についてはNorell and Makovicky (1997, 1999)の形質をほぼ採用している。

ヴェロキラプトルは、以下の形質の組み合わせと固有形質を示す中型のドロマエオサウルス類であるという。
 上側頭窩(と上側頭窓)が亜円形で、側方に湾曲したsupratemporal arcadeで縁取られている。前頭骨が長く、眼窩の位置で幅に対して長さがほとんど4倍くらいあり、また頭頂骨のほぼ4倍の長さがある。前眼窩窓の前縁が広く丸い。maxillary fenestra が後方に開いた凹みの中にない。前上顎骨の上顎骨突起が長く、外鼻孔の後縁を越えて伸びている。歯骨の丈が非常に低く、その丈は長さの1/8から1/7である。歯骨の腹側縁が凸形にカーブしている。第1、第2前上顎歯が第3、第4より大きい。脳函の側壁に深いprootic recessがある。さらに叉骨、恥骨、座骨にそれぞれ固有形質があるようである。
 頭骨の写真の説明には、さらに別の形質も記されている。maxillary fenestraが前眼窩窩の前縁から離れている(これは明らかにツァーガンとの区別のためだろう)、上側頭窩に余分の凹みがある、である。



ドロマエオサウルス類は30種類も報告されているとはいっても、完全に近い頭骨が保存されているのはヴェロキラプトルやツァーガンを含めて数えるほどしかない。対応する骨が見つかっていない種類とは比較できないわけで、特徴といっても、どの種類と比較していっているのかが問題だろう。
 Barsbold and Osmo´ lska (1999)によると、上側頭窩(と上側頭窓)が円形に近いというのはデイノニクスとの違いを述べているのであり、デイノニクスでは上側頭窩は細長く、まっすぐなsupratemporal arcadeで縁取られているという。前頭骨が長く、長さが幅の4倍というのは、デイノニクス、サウロルニトレステス、ドロマエオサウルスと比較している。サウロルニトレステスでは長さが幅のせいぜい3倍であり、ドロマエオサウルスでは2倍である。デイノニクスでは長さが幅の3倍で、頭頂骨の2倍であるという。
 前上顎骨の上顎骨突起は、デイノニクスでは外鼻孔の後端を越えていないという。これについては、(Turner et al. (2012)にも特に書かれていないが)ツァーガンやリンヘラプトルではヴェロキラプトルと同様にみえる。

復元イラストや模型の作成にも関わることであるが、Turner et al. (2012)は一つ、Barsbold and Osmo´ lska (1999)とは異なる点について言及している。多くの研究者が、ヴェロキラプトルの鼻骨は中程が凹んでいる、つまり鼻先が「上を向いている」感じの顔と考えているが、これはアーティファクトであるという。鼻骨の前端部分は中央部よりも幅が広いので、ヴェロキラプトルの模式標本のように側面から押しつぶされた場合には、鼻先が上を向いて見えるのである、といっている。実際Turner et al. (2012)の復元頭骨図では、ヴェロキラプトルもツァーガンも、吻が直線的に描かれている。しかし、彼らのヴェロキラプトル頭骨はどうも細長すぎるように見える(ツァーガンよりも明らかに細長く描かれている)。鼻骨をまっすぐにするあまり、眼窩の上つまり額のあたりで急角度になっているようにみえるが、本当にこうなのだろうか。
 Turner et al. (2012) はホロタイプだけでなく、格闘化石の頭骨も側面からつぶれていると考えている。しかしホロタイプは明らかにつぶれることで吻が上を向いているが、格闘化石の頭骨は多少つぶれているとしても、かなり保存が良いようにみえるのであるが。Barsbold and Osmo´ lska (1999)の復元頭骨図や、それを参考にしたとみられるVAP社やフェバリットの頭骨モデルも、鼻先はそれほど極端に上向きというわけではない。額から前方に向かってゆるやかに下りていき、水平な鼻先に移行するのでゆるく屈曲しているが、この方が自然な感じもする。


参考文献
Barsbold, R. & Osmdlska, H. 1999. The skull of Velociraptor (Theropoda) from the Late Cretaceous of Mongolia. Acta Palaeontologica Polonica 44, 2, 189-219.

Alan H. Turner, Peter J. Makovicky, and Mark A. Norell (2012) A Review of Dromaeosaurid Systematics and Paravian Phylogeny. Bulletin of the American Museum of Natural History, Number 371:1-206.


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