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落書きトロオドン類



落書きトロオドン類。

ラテニヴェナトリクスは大体わかったが、ゆっくり読みたいので少し時間がかかります。
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セリコルニス(ニュース枠)


ナショジオで紹介されたような研究は、読まなくてもいいような気がする。ニュースでは何の仲間なのか明記されていなかったが、ジュラ紀後期のアンキオルニスなどと同じ地層の基盤的なパラヴェス類のようです。Godefroitは確かアンキオルニスなどはトロオドン類ではないという立場だったか。ここでもミネラルフェアのEldoniaのフランソワさんが貢献しています。

Lefèvre et al. (2017)は、中国遼寧省のTiaojishan Formation(ジュラ紀後期)産の新種の羽毛恐竜、セリコルニス・スンゲイSerikornis sungeiを記載している。セリコルニスは、骨格の形態から飛翔への適応はみられず、地上性の生活をしていたと考えられた。系統解析の結果、セリコルニスは、他の中国のジュラ紀後期のパラヴェス類とともに、エウマニラプトラの外側の基盤的なパラヴェス類に位置づけられた。セリコルニスの尾の基部は繊維状構造で、先端部は細長い尾羽で覆われていた。小羽枝のない対称形の風切羽が前肢に沿って付着しており、長い後肢の羽毛は足の指まで達していた。これらのことから、後肢の風切羽は地上性のマニラプトル類で進化し、その後樹上生活や飛翔に転用されたことが示唆された。

参考文献
Ulysse Lefèvre, Andrea Cau, Aude Cincotta, Dongyu Hu, Anusuya Chinsamy, François Escuillié, Pascal Godefroit (2017) A new Jurassic theropod from China documents a transitional step in the macrostructure of feathers. The Science of Nature 2017, 104:74
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シノルニトイデス



サウロルニトイデス、シノルニトイデスと聞くと、JALの「うどんですかい」「そばですかい」を思い出す。しかし「ちゃんぽんですかい」も出ていたとは知らなかった。オルニトミムス類は「なんとかミムス」、アルヴァレスサウルス類は「なんとかニクス」のように、トロオドン類の名前も「なんとかオイデス」で統一されていれば覚えやすかった。残念ながらトロオドン類はバラバラで、最近はヴェナトルが増殖している。ヴェナトルでは何の仲間かわからない。

シノルニトイデスは、白亜紀前期(Ejinhoroqi Formation)に中国内モンゴルのオルドス盆地に生息した小型のトロオドン類で、1993年に記載された。全長1mほどの小型ながら、発見当時は最も完全なトロオドン類の全身骨格として注目されたはずである。いま見てもすごい化石には違いない。シノルニトイデスの発見により、方形骨が脳函に接している、胸骨が骨化していないなど、それまで知られていなかったトロオドン類の特徴が明らかになった。また全身の骨格が復元されたことで、後肢が非常に長く、その割に前肢は短いというトロオドン類のプロポーションが示された。これを参考にトロオドン類の復元画を描いた人も多いだろう。


 メイの第二標本の論文に書いてあるが、実はシノルニトイデスは、メイより早く発見された「元祖・眠り竜」である。メイと同じ休息姿勢をとっている。地面に腹をつけて座り、尾を体に巻き付けるように曲げ、折りたたんだ前肢の上に頭がくるように首を曲げている。手の指の角度までメイと同様であるという。残念ながら体の背側にあった頭骨の右半分、頸椎の一部、ほとんどの胴椎などは侵食されて失われている。
 多くの恐竜が死亡時には背中を反らせた姿勢を残しているが、これは窒息、毒物、高熱などに対する生体反応で、「断末魔のあがき」の姿勢であるという意見があるという。メイやシノルニトイデスがそうならず、安らかに眠っていることについて、あがきの生体反応を起こす間もなく堆積物に埋もれた、有毒な火山ガスなどによって生体反応が阻害された、などの可能性が考えられている。遼寧省では火山灰、内モンゴルでは砂嵐などによって一瞬で埋められたのだろうか。


 今回はトロオドン類の顔つきを比較するのが趣旨であったが、見えないものは仕方がない。シノルニトイデスの頭骨は、腹側からみて前肢と尾椎の陰に隠れていて、うまく観察できない。シノルニトイデスの記載論文はRussel and Dong (1993)、 Currie and Dong (2001)の2つあるが、どちらも頭骨について結構細かいことを記述しているわりには、頭骨の拡大写真というものがない。解像度のあまりよくない全身の白黒写真があるのみである。少なくとも上顎や下顎周辺は保存されているはずで、上顎骨の孔や歯の数などの形態を論じているのに写真も図もなく、なんとももどかしい。Currie and Dong (2001)の中に歯と歯骨の前端の図はある。また侵食によって分離していた前頭骨の図はある。眼窩から後方は部分的に保存されているが、はっきりした形態はわからないらしい。眼窩内に強膜輪がある、鱗状骨に孔がある、方形骨が脳函に接しているなどの記述は図示されていない。

1993年当時にはトロオドン類は、トロオドン、サウロルニトイデス(2種)、ボロゴヴィア、未命名のトロオドン類(Barsbold et al. 1987)のわずか4属しか知られていなかった。2001年でもそれほど増えておらず、その後になってシノヴェナトル、メイ、シヌソナスス、ウルバコドンなど重要な種類が続々と発見されている。そのため1993年の記載論文では、シノルニトイデスの特徴として、トロオドンやサウロルニトイデスなどとの細かい違いがあげられている。

他のトロオドン類と区別されるシノルニトイデスの特徴は、
1)サウロルニトイデスよりも頭骨が小さく、近位の尾椎や足の趾骨との相対値で比較すると、サウロルニトイデスの0.7 倍である。シノルニトイデスの頭骨はサウロルニトイデスの半分しかないが、足の骨は平均してサウロルニトイデスの80%以上に達する。つまりより大型のトロオドン類であるトロオドンやサウロルニトイデスでは、もっと頭骨が大きいということである。
2)上顎骨と鼻骨の縫合線が、上顎骨の腹側縁に対して20°傾いている。(これは他のトロオドン類ではどうなのか説明はない。)
3)側頭部が眼窩よりも狭い。これはサウロルニトイデスと同様で、トロオドンとは異なる。
4)前頭骨の眼窩の縁が、正中側の縁に対して20°傾いている。これはトロオドンやサウロルニトイデスでは40°である。つまりシノルニトイデスの方がより側方を向いている。
5)脛骨の長さは大腿骨の1.4倍である。
6)第III中足骨の遠位の関節面の後腹側に舌状tongue-likeの突出部があまり発達していない。これは白亜紀後期のトロオドン類にはみられる。
7)ボロゴヴィアにある足の特殊化はみられない。

(現在では、全身骨格が保存されたものを含め、はるかに多くのトロオドン類が蓄積しているので、保存のよい四肢や後半身にシノルニトイデスの特徴があるのかもしれない。最近の論文や総説の中に記述があるかもしれないが、すべて調べてはいない。)

シノルニトイデスは白亜紀前期のトロオドン類なので、一部の形質については白亜紀後期のトロオドン類よりも原始的であるが、すでに多くのトロオドン類の特徴をもっている。前上顎骨はあるが、internarial barについては情報がない。外鼻孔の腹側縁には上顎骨が参加している。涙骨の前方突起は保存されていないが、下行突起の上のflange (shelf) はあると考えられている。歯骨の側面の溝の中に神経血管孔が並んでいる。上顎の歯列は前方で密集しており、後方で間隔があいている。10番目以後の尾椎では、神経棘がなくなっている。

歯は比較的小さく数が多く、歯冠と歯根の間が顕著にくびれている。前上顎骨歯が4、上顎骨歯が18ある。歯骨歯は観察できるものが12あるという。前上顎骨歯は、前縁と後縁の両方に鋸歯がある。上顎骨歯と歯骨歯は、後縁のみに鋸歯がある。これはサウロルニトイデスと同様で、トロオドンとは異なる。トロオドンやサウロルニトイデスの歯との重要な違いは、シノルニトイデスの歯では鋸歯が比較的小さいことである。歯冠の大きさを横軸に、鋸歯のサイズ(denticular basal diameter)を縦軸にとって対数グラフを描くと、他のテタヌラ類の歯の回帰直線よりも上に、トロオドン類の回帰直線がくる。その中でシノルニトイデスの歯は最も下にプロットされる。ただし、一般の獣脚類よりは大きいという。つまりシノルニトイデスの鋸歯は、一般の獣脚類よりは大きいが、進化したトロオドン類よりは小さい。(この時は発見されていないがシノヴェナトルの鋸歯は小さいはずである。)

続くかも


参考文献
Russell DA, Dong ZM (1993) A nearly complete skeleton of a new troodontid dinosaur from the Early Cretaceous of the Ordos Basin, Inner Mongolia, People’s Republic of China. Can J Earth Sci 30: 2163-2173.

Currie PJ, Dong Z (2001) New information on Cretaceous troodontids (Dinosauria, Theropoda) from the People’s Republic of China. Can J Earth Sci 38: 1753-1766.
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