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イリタトル



Sales and Schultz (2017) による改訂された特徴では、イリタトルはバリオニクス、スコミムス、クリスタトゥサウルスとは、歯に鋸歯がないことと上顎骨の歯槽の数が約半分しかないことで区別される。また“スピノサウルス” MSNM V4047や“スピノサウルス・マロッカヌス”MNHN SAM 124とは、外鼻孔がより大きく、より前方にあること、外鼻孔の前縁に前上顎骨が面していることで区別される。さらにイリタトルの固有形質としては、左右の鼻骨が結合してできた正中のとさかがあり、その後端が前頭骨の上で取っ手状knob-likeの突起をなすことである。

スピノサウルス類は、ディスプレイに利用できる構造を2つ持っている。頭部の鼻骨にある小さい“とさか”と、背中の長く伸びた“帆”である。これらについて、Hone and Holtz (2017) は次のように考察している。
 頭部の小さいとさかは多くの獣脚類にみられるもので、鼻骨や涙骨など、眼窩の近くにある。捕食者である獣脚類が比較的小さなとさかを持っていることは、社会的・性的シグナルとしての役割と、獲物に警戒させない(察知されない)ための要請との取引の結果(trade-off 、妥協)と考えられる。あまり目立つ構造や色をしていると、獲物に察知されやすいわけである。そこでスピノサウルス類に背中の帆が発達した理由として、これらは水面上から水中に吻を突っ込んで魚などを捕食することをあげている。背中の帆は水面上にあって水中の魚には見えないというわけである。
 なるほど、地上性の大型肉食恐竜が大きな帆をもっていたら、遠方からでも獲物に察知されてしまうかもしれない。しかしアクロカントサウルスやヤンチュアノサウルスなども長めの神経棘をもつので、基盤的なテタヌラ類に共通した別の理由があるのかもしれない。また、系統に関係なく、巨大化する際の骨の成長に関わる何らかの傾向のような気もする。

参考文献
Hone DWE, Holtz TR. (2017) A century of spinosaurs-A review and revision of the Spinosauridae with comments on their ecology. Acta Geol Sin-Engl. 91: 1120-1132.
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