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メガラプトル



メガラプトルは白亜紀後期にアルゼンチンに生息したアロサウロイドであるが、部分骨格しか知られていないため、いまだに明確なイメージが定まらない謎の恐竜の一つである。頭骨が見つかっていない上に、首の長さ、胴の長さ、後肢の長さもわかっていない。画像検索してみると、かつて巨大なドロマエオサウルス類と考えられた頃の復元像や、がっしりしたカルカロドントサウルス類としての復元像、もう少しスマートなアロサウルス的な姿、スピノサウルス類に似た姿などが混在している。実際に系統上の位置も二転三転している。

 メガラプトルの最初の標本はNovas (1998)が記載した断片的な化石で、尺骨、前肢の第1指の指骨と末節骨、第3中足骨の遠位端からなる。当時この大きな鎌状の末節骨がドロマエオサウルス類のように後肢の第2指のものと思われたことと、中足骨が細長いことから、コエルロサウルス類と考えられた。しかしその後、より完全な前肢を含む2番目の標本が発見され、末節骨は前肢の第1指のものであることがわかり、ドロマエオサウルス類との類縁は否定された。Calvo et al. (2004) が記載した2番目の標本には、1個の頸椎、2個の前方の尾椎と血道弓、肩甲烏口骨、撓骨、尺骨、完全な手、恥骨、第4中足骨が含まれる。Calvo et al. (2004) は、メガラプトルの頸椎と尾椎の特徴はカルカロドントサウルス類と似ているが、肩帯の形はスピノサウルス類のバリオニクスと似ており、恥骨はトルボサウルスと似ているとした。そしてメガラプトルはこれまで知られているどの系統とも異なる、新しい基盤的テタヌラ類の系統に属すると考えた。
 Smith et al. (2007) は獣脚類全体の系統解析で、メガラプトルはカルカロドントサウルス類と位置づけた。しかし後にSmith et al. (2008)は、尺骨の肘頭突起など、前肢のいくつかの特徴がスピノサウルス類と共通しているとして、メガラプトルをスピノサウルス上科とした。さらにBenson et al. (2010)は、メガラプトルを含む白亜紀のアロサウロイドを再検討し、広義のカルカロドントサウルス類、カルカロドントサウリアCarcharodontosauriaのネオヴェナトル科Neovenatoridaeに位置づけた。
 Benson et al. (2010) によると、メガラプトルの前肢の第1指のカギ爪(末節骨)は、確かに大きい点ではスピノサウルス類やトルボサウルスなどと似ているが、メガラプトルの末節骨は非常に幅が狭い(うすい)形をしていて、基部の高さと幅の比率が2.75である。これはスコミムス(1.75)やトルボサウルス(1.95)よりも相当大きい。しかしネオヴェナトル科のチランタイサウルス(2.7)、アウストラロヴェナトル(2.4、第3指)、フクイラプトル(2.5、第2指)はメガラプトルと似た幅の狭いカギ爪をもつという。

 Calvo et al. (2004) によるメガラプトルの固有の形質は、頸椎に長い楕円形の側腔pleurocoelがあること、尺骨の扁平な肘頭突起blade-like olecranon process、拡大し強く側扁した末節骨のある長く伸びた手、などである。
 頸椎は1個しか見つかっていないが、椎体は比較的前後に短く丈が高いことから、太く力強い首と推測される。あまり細長くはないようである。パラポフィシスparapophysisが椎体の中程にあること、前関節突起とエピポフィシスをつなぐ稜prezygapophyseal-epipophyseal laminaがあることは、カルカロドントサウルス類と似ているという。Benson et al. (2010) は、頸椎にcamellate内部構造があることも挙げている。
メガラプトルの手は長く、特に第1指と第2指に大きなカギ爪をもつのが特徴である。第1指と第2指に比べると、第3指はかなり細くてカギ爪も小さい。またテタヌラ類には珍しく、痕跡的な第4中手骨がある。第1指の末節骨は両側面に溝が走っているが、内側と外側で溝の高さが異なる。これは他のほとんどの獣脚類(バリオニクス、アロサウルス、フクイラプトル、デイノニクス)の手の末節骨にはみられない特徴で、ドロマエオサウルス類やトロオドン類の足の第2趾の末節骨にはみられるという。

参考文献
Benson, R. B. J., Carrano, M. T. & Brusatte, S. L. (2010) A new clade of archaic large-bodied predatory dinosaurs (Theropoda: Allosauroidea) that survived to the latest Mesozoic. Naturwissenschaften 97, 71-78.

Calvo, J. O., Porfiri, J. D., Veralli, C., Novas, F. E., & Poblete, F. (2004) Phylogenetic status of Megaraptor namunhuaiquii Novas based on a new specimen from Neuquén, Patagonia, Argentina. Ameghiniana 41: 565-575.
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