goo

単孔類の祖先も乳を吸っていた


Scienceの News にGretchen Vogel氏が寄稿しています。ハリモグラの赤ちゃんの写真が意外とかわいいので、読む気になりました。

哺乳類の赤ちゃんは母乳を飲む。乳を吸うことは哺乳類の特徴とされている。しかしカモノハシやハリモグラのような単孔類は、乳を吸わない。単孔類にはまとまった乳頭がなく、新生児は母親の皮膚に分布する乳腺からしみ出るミルクをなめとっている。単孔類が哺乳類の祖先から分岐したのは1.9億年前と考えられているので、乳を吸う能力はその後になって進化したと考えられてきた。

ところが、ハーバード大学のCromptonらのグループの最新研究により、単孔類の祖先も乳を吸う能力を持っており、単孔類はそれを二次的に失った可能性が出てきた。

乳を吸う能力の獲得には、口蓋や舌などに関係する骨や筋肉など、かなり複雑な解剖学的変化が必要である。その一つ、tensor veli palatiniという筋肉は、軟口蓋を緊張させることで舌との間に密閉空間を作り、ミルクを吸引するのに役立っている。
 Cromptonらは有袋類オポッサム、単孔類カモノハシ、爬虫類オオトカゲの口腔部分を詳細に比較した。さらに三畳紀のキノドン類トリナクソドン(2.5億年前)とブラジリテリウム(2.2億年前)の口腔部分とも比較した。その結果、トカゲとトリナクソドンにはtensor veli palatiniはなかったが、ブラジリテリウムの口蓋の骨の形態や筋付着部から、ブラジリテリウムには原始的なtensor veli palatiniがあったと考えられた。つまりブラジリテリウムは、口腔内にミルクを吸引することができたかもしれない。

哺乳類の共通祖先が現れたのは2億年前と推定され、その後単孔類が分岐したとされるので、単孔類は二次的にtensor veli palatiniを失ったと推測される。つまり乳を吸う能力はまさに哺乳類の祖先がもっていた一連の形質の一つであったということになる。

またカモノハシの口腔部分を研究した結果、単孔類は特殊な摂食方式のために乳を吸う能力を失った可能性も考えられた。カモノハシは、顎を動かすことで口蓋と舌のパッドで甲殻類の硬い殻を挽きつぶす。

これは、単孔類の分岐年代がさらに古かったり、ブラジリテリウムだけが特殊な種類だったりするとまた変わってくるのでしょう。また口蓋だけでなく、化石には残らない乳腺や乳頭の進化とも関連しているはずなので、そこが難しいような気がする。

参考文献
Gretchen Vogel (2018) Echidnas don't suck—but their ancestors did.
Science 20 Jul 2018: Vol. 361, Issue 6399, pp. 213 DOI: 10.1126/science.361.6399.213

最初に掲載された時のタイトルは
Got milk? Even the first mammals knew how to suckle
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )