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ネオヴェナトルC



これは、お正月にずっとネオヴェナトルBを描いていたら、頭の中にネオヴェナトルが住みついて「縞模様がマンネリだ。もっとかっこいい模様にしろ。」というので。
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ネオヴェナトルB




絵としての難しさ

恐竜の姿形や特徴についての知識とは別に、絵を描く上での技術が要る。
古生物の場合、見たものを正確に描写するのではなく、見たことのないものを想像で描くわけだから、より困難があるはずである。

一頭の恐竜の体にもパースの問題がある。距離と視点を決めて矛盾がないようにする必要がある。
明暗の階調も難しい。光源の位置や散乱の度合いを決める必要がある。見たことのない立体物に陰影をなんとなく描いても、正しいという保証がない。

さらに哲学的で厄介なのは、決まるポーズと決まらないポーズがあることである。動物園で動物が歩き回る様子を、連続写真なり動画のコマ送りで見ると、決まるポーズと決まらないポーズがある。恐竜の復元骨格を色々な角度から撮っても、良いアングルというものが決まってくる。なぜ、決まる角度・ポーズというものがあるのだろうか。図鑑や映画などどこかで見たような、典型的なポーズが「決まるポーズ」と認識されるのだろうか?なぜその構図、アングルが「良い」のだろうか。
そんなことを考えてながら描いている。
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ネオヴェナトルの神経血管網:敏感な吻はスピノサウルスに限らない



Copyright 2017 Barker et al.

スピノサウルスの半水生適応の研究では、吻部の感覚器の話があった。スピノサウルスの吻(前上顎骨)の表面には多数の孔(神経血管孔)があいており、CTスキャンで内部を観察すると、複雑に枝分かれした神経血管網と思われる管状構造がよく発達している。これは現生のワニと同様に機械受容器と連絡していると考えられ、水中で獲物による振動を感知するなど、半水生適応と関連づけられていた。つまりスピノサウルスのよく発達した神経血管網は、水中で獲物を探すための特殊化と考えられた。バリオニクスについてもそのようにいわれていた。

しかし、本当にスピノサウルス類で発達した形質なのかどうかは、他の獣脚類と比較しないとわからない。実は、スピノサウルス類以外の吻部の神経血管網については、詳細に研究されていなかった。Barker et al. (2017) は、ネオヴェナトルの前上顎骨と上顎骨の表面に、多数の神経血管孔があることに注目して、高精度のCTスキャンで内部構造を研究した。

その結果、ネオヴェナトルの前上顎骨と上顎骨の内部には、スピノサウルスに匹敵するほどよく発達した神経血管網のネットワークが観察された。特に前上顎骨と上顎骨の前半部分で最も発達していて、複雑に枝分かれ、吻合した管状構造がみられた。分岐した枝は最終的に骨表面の神経血管孔に開口していた。
 著者らはワニの神経との比較などから、これらの神経血管網を(一部は血管も含まれているが、)主に三叉神経の枝と同定した。前上顎骨には、三叉神経の眼神経CN V1(鼻骨枝の前上顎枝)が分布している。上顎骨には、三叉神経の上顎神経CN V2が分布していて、上顎と歯からの感覚を伝達している。

このようなデータは、吻部の神経の発達に関して、スピノサウルスが獣脚類の中で特別ではないことを示している。典型的な陸上の捕食者であるネオヴェナトルが、スピノサウルスに匹敵する神経血管網と吻部の鋭敏な感覚をもっていることから、これが半水生適応とは考えにくい。ネオヴェナトルが時々、水中の魚などを捕食したことは考えられるが、体の解剖学的特徴などから半水生は支持されない。ネオヴェナトルは他のカルカロドントサウルス類やアロサウロイドと同様に、中型の植物食恐竜を捕食したと考えられている。

スピノサウルスの神経血管網は確かに水中で獲物を検知するのに役立ったかもしれないが、それが水生適応のためだけに発達したというのは言い過ぎであることになる。むしろ、大型の肉食恐竜は一般に、吻部に従来考えられていたよりもよく発達した神経血管網をもっており、獲物の扱いprey handling など他の目的に利用していた可能性が高い。Barker et al. (2017)は3つの目的をあげている。

1つは、肉食恐竜の吻部の鋭敏な感覚は、獲物の解体・処理に用いられたというものである。例えば、骨を避けて肉だけをそぎ取ることが必要になる。ネオヴェナトルの上顎骨歯の表面の微小な摩耗痕が解析されている。そのパターンは、チーターのような骨を噛むことを避ける肉食動物と同じ特徴をもつことから、ネオヴェナトルは骨を避けて肉だけを食べたと推測される。その際に吻部や歯の鋭敏な感覚は、注意深く骨と肉を識別するのに役立ったと考えられる。

2つめは種内のコミュニケーションで、ティラノサウルスなどの大型肉食恐竜は、闘争の際に顔や顎を噛みあうことが知られている。儀式的な闘争などで吻部・顔面の感覚は重要だった可能性がある。

3つめは、巣作り行動の際に穴を掘ったり、適切な温度の場所を探したり、メンテナンスする上でも吻部の鋭敏な感覚は役立っただろうとしている。

確かに吻部の感覚器は、ワニのように水中の感覚に用いるとは限らない。現生鳥類ではキーウィ科、シギ科、トキ科のようにくちばしで餌を探す鳥の吻部に、グランドリー小体やヘルプスト小体という感覚受容器があって、餌を探す際に獲物を認識している。一方オウム類では果実を割るなどの操作に重要であるという。


参考文献
Chris Tijani Barker, Darren Naish, Elis Newham, Orestis L. Katsamenis & Gareth Dyke (2017) Complex neuroanatomy in the rostrum of the Isle of Wight theropod Neovenator salerii. Scientific Reports 7: 3749 DOI:10.1038/s41598-017-03671-3
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アウストラロヴェナトル




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ネオヴェナトル科のメガラプトル類アウストラロヴェナトルは、2006年から2010年にかけてオーストラリア恐竜の時代博物館とクイーンズランド博物館の発掘調査により発見され、2009年に記載された。アウストラロヴェナトルの化石は、ティタノサウルス類ディアマンティナサウルスの骨とともに散在して発見された。2009年の論文では、分離した歯、左の歯骨、数本の肋骨、腹肋骨、前肢と後肢の部分骨格が見つかっていた。
 その後、前肢や後肢の追加の骨が発見されて、2012年に続報の論文が出ている。新しく見つかった前肢の骨は、左右の上腕骨、右の撓骨、右の撓側骨(手根骨)、右の第1遠位手根骨、右の第I中手骨、左の指骨II-1, II-2, III-3、ほとんど完全な右の指骨II-3(末節骨)である。右の指骨I-2 とIII-4は既に見つかっていたが、今回の追加で第I、第II、第III指の末節骨がそろったことになる。また前肢全体としてもほとんどの骨が見つかっているので、コンピュータ上で復元した像(手)が示されている。


図1 アウストラロヴェナトルの右手の復元(発見されている骨を示す)。Copyright 2012 White et al.

論文の主体をなすresultsの部分は、前肢の骨の形態学的記載が延々と続く。これは研究には絶対不可欠で本質的なことと思うが、アマチュア恐竜ファンにとって面白い部分ではない。興味があるのは、比較して考察している部分である。追加の発見により、アウストラロヴェナトルは四肢の骨についてはネオヴェナトル科の中でも最も完全なものとなったので、他のネオヴェナトル類と比較している。
 上腕骨が比較できるのはフクイラプトルとチランタイサウルスしかない。アウストラロヴェナトルの上腕骨は、フクイラプトルと似ている。両者とも骨幹が同じように曲がっており、三角胸筋稜deltopectoral crestは丸く、近位端も遠位端も細くなっている。アウストラロヴェナトルとフクイラプトルでは、上腕骨遠位端のradial condyle とulna condyleの形状が異なるようである。チランタイサウルスの上腕骨はもっとがっしりしており、よりまっすぐである。チランタイサウルスの三角胸筋稜は骨幹から90°近い角度で立ち上がっている。
 指骨II-1の形態は、アウストラロヴェナトルとフクイラプトルで異なっている。遠位の関節顆distal condyles と近位端proximal endの高さが、フクイラプトルではほとんど同じであるが、アウストラロヴェナトルでは遠位の関節顆の方が小さいという。

メガラプトル類は、第I指の末節骨が大きな鋭いカギ爪として発達している。メガラプトル、アウストラロヴェナトル、フクイラプトルに共通して、内側と外側で溝の位置が非対称という特徴がある。内側溝medial grooveは先端に向かって中央を通っているが、外側溝lateral grooveは先端に向かって背側を通っている。一方、第II指の末節骨では内側と外側で同様であり、対称的な形をしている。
 また、アウストラロヴェナトルでは第I指の末節骨は第II指の末節骨よりもひとまわり大きいくらいで、第I指と第II指でそれほど大きさの差はない。これはフクイラプトルでも同様であるという。一方、メガラプトルでは第I指の末節骨は非常に大きく、第II指の末節骨はそれよりもかなり小さい。つまり第I指と第II指で大きさの差が著しい。
 末節骨の基部の高さと幅の比率が、ネオヴェナトル科の共有派生形質として用いられている。それによると、比率が2.3より大きければネオヴェナトル科に含まれることが支持されるという。アウストラロヴェナトルの場合、第I指、第II指、第III指の比率は、それぞれ2.29, 2.22, 2.41であるという。結構微妙な値であるが、論文では、だからどうだというコメントはしていない。このような新しいデータをもとに、基準なども改訂されていくということかもしれない。




図2 アウストラロヴェナトルの前肢の末節骨。White et al. (2012) の論文の3つの図からスケールを合わせて作成した。カギ爪の先端の推定は筆者による。




図3 メガラプトルの前肢の指骨。Calvo et al. (2004) に基づいて作成。カギ爪の先端の推定はCalvo et al. (2004)。

残念ながら頭骨はほとんど見つかっていないが、オーストラリアの博物館には復元骨格(全身ではないようだが)があるらしい。これは吻の形や鼻孔が細長い点など、メガラプトルの幼体の復元を参考にしているようにみえる。

参考文献
White MA, Cook AG, Hocknull SA, Sloan T, Sinapius GHK, et al. (2012) New Forearm Elements Discovered of Holotype Specimen Australovenator wintonensis from Winton, Queensland, Australia. PLoS ONE 7(6): e39364. doi:10.1371/journal.pone.0039364

Calvo JO, Porfiri JD, Veralli C, Novas F, Poblete F (2004) Phylogenetic status of Megaraptor namunhuaiquii Novas based on a new specimen from Neuquen, Patagonia, Argentina. Ameghiniana 41: 565–575.

Hocknull SA, White MA, Tischler TR, Cook AG, Calleja ND, et al. (2009) New Mid-Cretaceous (Latest Albian) Dinosaurs from Winton, Queensland, Australia. PLoS ONE 4(7): e6190. doi:10.1371/journal.pone.0006190
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メガラプトル幼体





頭骨の一部は見つかったもののまだまだ不完全であるし、胸郭が大きいなどといわれても全身のバランスがわからないので、復元は依然として難しいと思われる。一見巨大なヴェロキラ風で、よくみると前肢が頑丈でパワフル、後肢と尾はドロマエオでない、といった感じか。最初はカギ爪が後肢のものと思われて巨大なドロマエオサウルス類とされ、その後前肢のカギ爪とわかってメガロサウルス類、カルカロ風、アロ風などに描かれたわけであるが、巡り巡ってユタラプトルなど大型のドロマエオサウルス類に似たイメージに戻ったように思われる。また、近縁のメガラプトル類が皆同じような細長い顔と決まったわけでもないだろう。

Benson et al. のネオヴェナトル科の樹立のときは、ネオヴェナトルとアエロステオンの骨格に類似点が多いことを強調していた(ネオヴェナトルの記事参照)。しかしPorfiri et al. (2014) の説ではネオヴェナトルだけがアロサウルス上科に取り残され、メガラプトル類はごっそりティラノサウルス上科にいっているわけである。この辺りはどうなのだろうか。また、Porfiri et al. (2014)はチランタイサウルスとシアッツはメガラプトル類ではないと考えている。一方オーストラリアの研究者はネオヴェナトル科を支持しているようである。

しかし南米産はやはり侮れませんね。他にもウネンラギア類などの曲者もいるし。
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メガラプトルの頭骨




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メガラプトル類は、前肢の第1指と第2指に大きく発達した、幅が狭く鋭いカギ爪をもつことを特徴とする獣脚類である。派生的なメガラプトル類(メガラプトル科Megaraptoridae, Novas et al. 2013)は白亜紀のセノマニアンからサントニアンのゴンドワナ地域から知られている。メガラプトル類の系統的位置については近年、議論が続いており、研究者によって基盤的なコエルロサウルス類、基盤的なテタヌラ類(メガロサウロイド)、カルカロドントサウルス類に近縁なアロサウロイドなどに分類されてきた。最近、Novas et al. (2013)はコエルロサウルス類、なかでもティラノサウルス上科に含まれるとした。
 このように解釈が分かれる理由はメガラプトル類の骨格が不完全なためで、特に頭骨の骨はほとんど発見されていなかったため、頭骨の形態についてはきわめて情報が乏しかった。Porfiri et al. (2014) は、部分的な頭骨と胴体の骨格を含む、メガラプトルの幼体の標本について記載している。この標本によって初めて、メガラプトルの頭骨の形態についてかなりの情報が得られたわけである。

この標本MUCPv 595はアルゼンチンのネウケン州Baal quarryで、白亜紀後期チューロニアン-コニアシアンのポルテスエロ層Portezuelo formation から発見された。この標本は、左右の前上顎骨、上顎骨、鼻骨、左の前頭骨、部分的な脳函、関節した9個の頸椎、胴椎1-8, 10-12, 仙椎3-5, 4個の近位の尾椎、腹肋骨、肩甲骨、烏口骨、上腕骨、部分的な恥骨からなる。
 この標本は肩甲骨、恥骨、頸椎などの形態が、これまで見つかっているメガラプトルの化石と一致した。ただし大きさは小さく、メガラプトルの成体では推定全長9-10 m とされるのに対してMUCPv 595は推定全長3 m と考えられた。また、神経弓と椎体など、いくつかの骨が癒合していないことからも幼体と考えられる。さらに肩甲骨と恥骨について組織切片を作成し、成長線の数が少ないことも確認している。

この標本は幼体なので、頭骨のプロポーションや隆起の発達程度が成体と異なるかもしれない。しかしそれらを考慮しても、アロサウロイドのような基盤的なテタヌラ類とは多くの違いがあり、一方で基盤的なティラノサウロイドと多くの類似点があるといっている。

前上顎骨の外表面にはいくつかの大きな孔foramenがあいているが、これは多くのティラノサウロイドにみられる。前鼻孔突起prenarial processは棒状で非常に長く伸びており、前上顎骨体の長さの300%に達する。そのため、外鼻孔がきわめて前後に長い。これはキレスクス、プロケラトサウルス、ディロング、オルニトレステス、グァンロンと同様である。
 前上顎骨の前縁は前背方に傾き、後縁は後背方に傾いているので、前上顎骨は側面からみて下が短い台形の輪郭trapezoidal contourをなす。つまり前上顎骨の腹側がより強く短縮している。この台形の輪郭は、プロケラトサウルス、グァンロン、ディロング、いくつかの派生的なティラノサウルス類(ティラノサウルス、タルボサウルス)と似ている。ネオヴェナトルやアクロカントサウルスのようなアロサウロイドにはこの台形の輪郭はみられない。
 メガラプトルの前上顎骨体は、上顎骨の長さに対して相対的に小さい。この点はアロサウロイドとは顕著に異なっている。プロケラトサウルス、ディロング、キレスクス、派生的なティラノサウルス類(ティラノサウルス、タルボサウルス)のようなティラノサウロイドは皆、非常に短い前上顎骨をもっている(グァンロンはやや長いらしい)。(注:論文ではメガラプトルの前上顎骨体は上顎骨の長さの0.7%となっているが、どうも数値が疑問である。7%の誤りか。)

上顎骨は側面からみて三角形に近く、前方突起rostral ramusは強く前後にのびて、背側縁はほとんど直線状になっている。この形状は基盤的なテタヌラ類とも、基盤的なコエルロサウルス類とも、基盤的なティラノサウロイドとも異なっている。この点では、メガラプトルはオルニトミムス類、トロオドン類、派生的なティラノサウルス類と似ている。
 前眼窩窩はよく発達している。前眼窩窩には2つの孔があり、前後方向にはほぼ同じ位置で、上下に並んでいる。背側の孔はmaxillary fenestra で、腹側の孔はpromaxillary foramenかもしれないという。しかしこのような孔の配置は、他の獣脚類にはみられない独特のものである。
 口蓋骨突起palatal processは細長く、アリオラムスやキレスクスと似ているが、アロサウルス、シンラプトル、マプサウルスなどにみられる太い状態とは異なっている。シンラプトルより派生的なアロサウロイドでは歯間板interdental plateが癒合しているが、メガラプトルでは歯間板が癒合していない。

左右の鼻骨は癒合していない。メガラプトルの鼻骨は細長くのびており、その横幅は全長にわたって大体一様である。これは、アクロカントサウルス、カルカロドントサウルス、オルニトミムス類、トロオドン類、ドロマエオサウルス類と似ている。メガラプトルの鼻骨は、ティラノサウルス類の鼻骨とは特に似ていない。基盤的なアロサウロイドでは鼻骨の前端(外鼻孔の周り)にはっきりしたnarial fossa があるが、メガラプトルにはnarial fossaはない。また、アロサウロイドや他の基盤的テタヌラ類に特徴的な、鼻骨の側方縁の粗面rugosityはみられない。アロサウロイドなどの基盤的テタヌラ類と異なり、メガラプトルでは前眼窩窩が鼻骨に達していない。
 前頭骨は四角形で、上側頭窩supratemporal fossa が広く拡張している。そのため前頭骨の後半で、幅の狭い矢状稜sagittal crest が形成されている。このことから、保存されていない頭頂骨にも幅の狭い矢状稜があったことが示唆される。このような特徴は、ティラノサウロイドの状態に似ている。アロサウロイドでは、上側頭窩の拡張は中くらいで、矢状稜はより幅広い。またメガラプトルの前頭骨は前半が低く後半が高くなっていて、中ほどに段差がある。

脳函についても詳細に観察しており、いくつかの形質はアロサウロイドよりもコエルロサウルス類と似ているといっている。大後頭孔は比較的大きく、後頭顆の頸部の基部に深く達している。一方、基盤的な獣脚類では大後頭孔は比較的小さく、後頭顆の頸部の基部にわずかに達しているか(アクロカントサウルス、シンラプトル)、または達していない(メガロサウルス類)。傍後頭骨突起は多くの獣脚類と同様に後側方かつ水平に突き出しており、アロサウロイドに特徴的にみられるような下方に曲がった形ではない。
 メガラプトルの上顎には、少なくとも前上顎骨に4本、上顎骨に15本(おそらくは17)の歯があったと考えられる。前上顎骨歯は切歯形incisiviformで小さく(歯冠長10 mm)、大きな上顎骨歯(17 mm)と対照的である。前上顎骨歯は、ティラノサウルス類にみられるようなD字形の断面をしている。上顎骨歯は強く後方にカーブしていて、前縁には鋸歯がなく、両側から凹んだ8字形の断面をなす。

Porfiri et al. (2014) は、Novas et al. (2013)のデータに新しいメガラプトルの標本から得られた情報を加えて、再び系統解析を行った。その結果やはり、メガラプトル類Megaraptoraはコエルロサウルス類の中でティラノサウルス上科に含まれることが支持された。ここではメガラプトル類がティラノサウロイドと共有する派生形質は、1)前上顎骨歯が切歯形incisiviformで、2)断面がD字形、3)前上顎骨の外側面にいくつかの大きな円形の孔がある、4)外鼻孔の長さが幅の3倍以上ある、5)歯骨の最初の歯槽が後方の歯槽よりもかなり小さい、6)頭頂骨に正中の矢状稜sagittal crestがある、つまり左右の上側頭窩の間の部分の幅が非常に狭い、などである。
 この分岐図ではMegaraptoraのうちフクイラプトルが最も基盤的なもので、それ以外の派生的なメガラプトル類、メガラプトル科Megaraptoridaeにはアウストラロヴェナトル、アエロステオン、オルコラプトル、メガラプトル、そして意外なことにエオティランヌスが含まれた。

著者らはこれまで得られたメガラプトル科の標本から、派生的なメガラプトル類の骨格を復元することができるという。これらの動物は、細長い吻と小さめの歯のある長い頭骨をもっていた。首もまた華奢で、よく発達したS字形の頸椎をしていた。肋骨と腹肋骨の形から、胸郭は非常に幅広く丈も高かった。胸帯は頑丈で、長く太い前肢を支え、手の第1指と第2指には大きく鋭いカギ爪があった。後肢は華奢でスレンダーだった。このような体形は他の獣脚類にはみられないユニークなものであるという。

Novasらはさらに、最近のチレサウルスの論文の中でも広汎な系統解析を行っている。その結果今度は、メガラプトルはティラノサウルス上科の中ではなく、最も基盤的なコエルロサウルス類と位置づけられた。どうも未だにpendingという状況のようである。
 確かに、ネオヴェナトルとはかなり異なる顔つきのようである。頭骨復元図は吻が細長く、トロオドンやドロマエオ系、あるいはアリオラムス的な顔にみえる。ティラノサウロイドかどうかわからないが、コエルロサウルス類の一種のような雰囲気はある気がする。そうすると近縁のアエロステオンも、従来は羽毛の生えたアロサウルスそのものの姿に描かれてきたが、今後は復元像が変わってくるのかもしれない。さらにはフクイラプトルのイメージにも影響してくるだろう。


参考文献
Porfiri, J.D., Novas, F.E., Calvo, J.O., Agnolín, F.L., Ezcurra, M.D. & Cerda, I.A. (2014) Juvenile specimen of Megaraptor (Dinosauria, Theropoda) sheds light about tyrannosauroid radiation. Cretaceous Research 51, 35-55.


Novas, F.E., Agnolín, F.L., Ezcurra, M.D., Porfiri, J. & Canale, J.I. (2013) Evolution of the carnivorous dinosaurs during the Cretaceous: the evidence from Patagonia. Cretaceous Research 45, 174–215.


Fernando E. Novas, Leonardo Salgado, Manuel Suarez, Federico L. Agnolin, Martin D. Ezcurra, Nicolas R. Chimento, Rita de la Cruz, Marcelo P. Isasi, Alexander O. Vargas & David Rubilar-Rogers (2015) An enigmatic plant-eating theropod from the Late Jurassic period of Chile. doi:10.1038/nature14307
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オーストラリアのネオヴェナトル類


英国のBensonとオーストラリアのRich, Vickers-Richらの共同研究で、オーストラリア南部の獣脚類化石についてレビューした論文が出ている。オーストラリア南部ヴィクトリア州のOtwayおよび Strzelecki層群(白亜紀前期アプト期からオーブ期)からは、少なくとも37の分離した骨と、多数の歯が発見されている。その中にはアロサウロイド、ティラノサウロイド、スピノサウルス類の亜成体、ケラトサウルス類、オルニトミモサウルス類、基盤的コエルロサウルス類、3種類のマニラプトル類が含まれ、全部で9種類もの獣脚類がいたと考えられるという。

論文の主旨としては、およそ以下のようである。オーストラリアはゴンドワナ地域なので、これまで白亜紀の恐竜相は南アメリカや南極などと関連があると考えられてきたが、最近の研究ではむしろローラシアの恐竜相と似ていることがわかってきた。今回の獣脚類の構成をみると、アロサウロイドと基盤的コエルロサウルス類(ティラノサウロイドやオルニトミモサウルス類を含む)が多いこと、アベリサウルス類のようなケラトサウルス類が少ないことなど、同時代のアフリカや南アメリカ(高緯度で乾燥した環境)とは大きく異なっており、むしろ温帯のローラシア地域と共通点が多い。多くの恐竜のグループ(高次分類群)は、パンゲアの分裂以前のジュラ紀には汎世界的に分布しており、従来「ゴンドワナ的」とされた恐竜相の特徴の一部は、大陸の分裂によりもたらされたものではなく、気候の違いによる地域性を反映しているのかもしれない、と考察している。

ここでは論文で記載された中から、ネオヴェナトル類の化石だけをピックアップして、このような断片的な骨がどうしてネオヴェナトル類と同定されたのか、参考のためにメモしておきたい。


Copyright: 2012 Benson et al.

NMV P221187は、胴椎の椎体で、長さが高さよりも少し大きい(長さ60mm, 高さ48mm)。椎体の関節面は高さが幅の約1.25倍で、弱く凹んでいる。神経弓との結合面の形状から、神経弓と椎体は癒合しておらず、幼体と思われる。椎体の外側面は腹側で合して、低く角張った縦方向の腹側稜ventral ridgeをなしている。含気孔は椎体側面の前背方にあり、前後に長い楕円形をしている。また含気孔の腹側縁は背側縁よりも突出しているので、孔は側方というよりも背側方を向いて開いている。
 椎体を切断して断面をみると、腹側や背側に多数の小室camellaeがある。このようなcamellate内部構造は、ケラトサウルス類、カルカロドントサウリア、ティラノサウルス科、オヴィラプトロサウルス類、テリジノサウルス類にみられる。しかしケラトサウルス類では椎体の側面に2個の含気孔があるが、この椎体では1個である。前後に長い、背側方に開いた含気孔が椎体側面の前方にあるという点で、この椎体はカルカロドントサウリアとティラノサウルス科のものに最もよく似ている。
 また、低く角張った縦の腹側稜は、ネオヴェナトル類であるネオヴェナトルの第6、7胴椎とアエロステオンの第6~8胴椎にもみられる。このことと含気孔の形態、camellate内部構造から、NMV P221187 はNeovenatoridae indet.とされた。


Copyright: 2012 Benson et al.

NMV P208096は椎体で、比較的前後に長い形状から、中央部の尾椎と同定された。神経弓と椎体は癒合しておらず幼体と考えられる。横方向につぶれているので正確にはわからないが、関節面は高さが幅より少し大きいと思われる。椎体の腹側面は一様に丸く、稜や溝などはない。大きく前後に長い楕円形の含気孔が、椎体側面の中央より前方に位置している。
 獣脚類の中央の尾椎にはもともと含気孔はなく、メガラプトル類、オヴィラプトロサウルス類、テリジノサウルス類で独立に獲得されている。しかしオヴィラプトロサウルス類の尾椎は短く、この尾椎とはプロポーションが異なる。   テリジノサウルス類では含気孔が小さく、最も近位の尾椎以外では神経弓にある。これらの違いと、メガラプトル類アエロステオンの中央の尾椎と似ていることから、NMV P208096 はNeovenatoridae indet.とされた。


Copyright: 2012 Benson et al.

NMV P186076は左の尺骨で、Rich & Vickers-Rich (2003)により報告され、Smith et al. (2008) によってcf. Megaraptorとして記載された。最近のほとんどの研究は、NMV P186076はメガラプトルに近縁のアロサウロイドとしている。NMV P186076は、アウストラロヴェナトルやメガラプトルのような他のメガラプトル類の尺骨と多くの類似点を示している。基盤的なネオヴェナトル類の尺骨は知られていないので、いまのところNMV P186076はメガラプトル類と特定することはできず、ここではNeovenatoridae indet.とされる、という。


Copyright: 2012 Benson et al.

NMV 186153は、大きな前肢の末節骨で、遠位端と近位背側が欠けている。保存された部分の大きさはバリオニクスやアロサウルスの第1指の末節骨に匹敵するもので、全長8~9mの大型獣脚類であることが示唆される。NMV 186153の近位端は、保存された最も遠位の部分(折れる前の末節骨の中央あたりに相当)と比べてわずかしか幅広くない。これは比較的幅の狭い(うすい)爪をもつチランタイサウルスのようなネオヴェナトル類の状態に似ている。また、近位部の幅が広く遠位に向かってかなり細まっている、アロサウルスのようなより基盤的なアロサウロイドやスピノサウルス類を含むメガロサウロイドのものとは異なっている。しかし、NMV 186153はメガラプトル類の末節骨ほど幅が狭くはないようであり、ここではネオヴェナトル類とされる(メガラプトル類ではないかもしれない)。

オーストラリアのネオヴェナトル類としては既にアウストラロヴェナトルの部分骨格が知られているが、当然他の種類もいただろう。これらの断片的な骨も別種であってほしいものである。

参考文献
Benson RBJ, Rich TH, Vickers-Rich P, Hall M (2012) Theropod Fauna from Southern Australia Indicates High Polar Diversity and Climate-Driven Dinosaur Provinciality. PLoS ONE 7(5): e37122. doi:10.1371/journal.pone.0037122

Copyright: 2012 Benson et al.
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シアッツ・ミーケロルム


CNN日本版はシアッチといい、AFP日本版はシアットと書いている。綴りはシアッツじゃないの?と思ったあなたは正しい。シアッツとは、ユタ州の先住民ユート族の神話に登場する人食い怪物の名であるが、しばしばSee-atchとも綴るとあるから、現地の発音は「シアッチ」に近いのかもしれない。しかし、日本人がこのローマ字綴りを見た時に、普通はシアッチとは読めないと思うので、ここではシアッツとする。

シアッツは、白亜紀後期の初めセノマン期(Cedar Mountain Formation)に、米国ユタ州に生息した大型のアロサウロイドで、北アメリカ初のネオヴェナトル類として2013年に記載された。完模式標本は部分骨格で、いくつかの脊椎骨、腰帯、後肢の骨からなる。ネオヴェナトル類は頭骨が見つからないというお約束でもあるかのように、シアッツも頭骨や前肢などは発見されていない。そのため残念ながら正確な復元は無理である。プレスリリースされた想像図のように、なんとなくアロサウルス風の姿をイメージするしかない。

シアッツに固有の形質は、近位の尾椎に前後に広がったcentrodiapophyseal laminaeをもつが、よく発達したinfradiapophyseal fossaeを欠いていること、前方の胴椎が前後に長いこと、胴椎の神経棘が短く幅広いこと、遠位の尾椎の腹側面が横方向に扁平で前後方向に凹んでおり、断面が亜三角形であること、腸骨の恥骨柄pubic peduncleの寛骨臼縁が横方向に凹んでいること、など非常に難しい。

おそらく5番目の胴椎は、ほとんど完全に保存されている。そこには、ネオヴェナトルやアエロステオンと同様に、低いが明瞭な腹側稜ventral ridgeがあり、関節面は幅よりも高さが大きく、後関節突起にはフランジ状の側方延長部がある。神経弓の基部は丈が高いが、アクロカントサウルスや他のカルカロドントサウルス科の胴椎と異なり、神経棘は短く幅が広い。(想像図を描く上で参考になるのはせいぜいこのくらいか。神経棘が低め、である。)

系統解析の結果、主に胴椎や仙椎の椎体の側腔pleurocoelや、camellate(蜂の巣状)内部構造などの含気性の発達程度や形状から、シアッツは広義のカルカロドントサウルス類(カルカロドントサウリア)とされた。
 また1)胴椎の後関節突起のつまみ状tab-likeの延長部や、2)前関節突起の外側に貫通した含気腔、3)尾椎の神経弓の顕著なcentrodiapophyseal laminae、4)腸骨の前寛骨臼突起にcuppedicus shelfがあることなどから、シアッツはネオヴェナトル科Neovenatoridaeに位置づけられた。さらに、「尾椎の神経弓における深いinfradiapophyseal fossaに支えられた顕著なcentrodiapophyseal laminae」により、ネオヴェナトル科の中でもメガラプトル類Megaraptoraに属することが支持されるとある。(シアッツの固有形質には、よく発達したinfradiapophyseal fossaeはないとあるが、メガラプトル類の中ではアエロステオンやメガラプトルに比べてシアッツでは浅いという意味か。二次的に逆転という意味か。)

北アメリカの恐竜相では、白亜紀前期ごろに頂上捕食者top predatorである大型肉食恐竜の構成が大規模に変化したことはよく知られている。ジュラ紀後期にはメガロサウルス類、アロサウルス類、ケラトサウルス類など様々な系統の中型から大型の獣脚類が共存していたが、白亜紀末(カンパニア期以後)になるともっぱら大型のティラノサウルス類で占められるようになる。しかしその間の大型捕食者の化石記録は乏しく、7000万年近いギャップがあるために、この大変化の時期や様相は不明のままであった。例えば白亜紀前期の大型肉食恐竜としては、アクロカントサウルスが知られているくらいであった。
 大型のネオヴェナトル類シアッツの発見により、白亜紀中頃の生態系はジュラ紀後期とも白亜紀末とも異なる、ユニークなものであることが示唆された。つまり、白亜紀中頃の頂上捕食者(大型肉食恐竜相)は派生的なカルカロドントサウリアン(カルカロドントサウリアのメンバー)で占められていたと考えられる。よって北アメリカの頂上捕食者は、少なくとも3段階の変遷を経ていたと思われる。
 アジアではシャオチーロンの研究により、白亜紀後期に入ってもカルカロドントサウリアンが優勢で、そのためにティラノサウルス類の台頭は遅かったという考えが既に提唱されている。シアッツの発見により、北アメリカでも同様にカルカロドントサウリアンが頂上捕食者の地位を占め続けており、おそらくそのためにティラノサウルス類は大型化できなかったことが推測される。さらに、シアッツの発見された地層からは小型のティラノサウロイドと推定される化石が見つかっており、大型のアロサウロイドと小型のティラノサウロイドが同じ地域に共存していた証拠となることが期待される。

ちなみにネットニュースなどの小見出しで「ティラノと共存?」のようなものが見られたが、よく知らない人には誤解を招くのでよろしくない。「ティラノサウルス」と「ティラノサウルス類」は全く意味が異なるのに、書き手自身が深く理解していないのか、読者の目を引くためなのか。最初から適切な書き方をすべきである。

参考文献
Zanno, L. E. and Makovicky, P. J. (2013) Neovenatorid theropods are apex predators in the Late Cretaceous of North America. Nat. Commun. 4:2827 doi: 10.1038/ncomms3827.
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ネオヴェナトル1




 少し大きい画像

ネオヴェナトルは、白亜紀前期バレム期にイギリスのワイト島に生息したアロサウロイドである。1996年にHutt et al.によって最初に記載されたが、部分的にしか記載されていなかったので、その後Brusatte et al. により研究され、2008年に詳細な記載論文(モノグラフ)が出版された。ネオヴェナトルの化石は、完模式標本と2つの参照標本を合わせると全身の約70%が知られているが、前肢と頭骨の後方2/3は知られていない。最初の記載ではヨーロッパ初のアロサウルス科とされたが、その後の研究でカルカロドントサウルス科の最も基盤的なものと考えられた。さらにその後、カルカロドントサウルス類の中でも特徴的なグループとして、ネオヴェナトル科という分類群が提唱されている。

ワイト島の博物館には全身復元骨格が展示されているが、頭部の眼窩周辺など欠けている部分はアロサウルスに基づいて復元されている。そのため、吻の形は少し異なるが、全体としてはほとんどアロサウルスに見える。どこがカルカロドントサウルス類と似ているのだろうか。
 化石の一部を記載したNaish et al. (2001)は、すべての胴椎に含気孔があること、座骨のischial bootが膨らんでいることがカルカロドントサウルス科と似ていることに気づいた。さらにBrusatte et al. (2008) により、脊椎骨にcamellate内部構造があること、いくつかの頸椎で前方に複数の含気孔があること、座骨の腸骨との関節面が深く凹んだソケット状であること、恥骨のpubic bootの前後の長さが恥骨の長さの60%以上、大腿骨頭が基部内側に傾いていることなどから、アロサウルスよりもカルカロドントサウルス科に近縁と考えられた。
 このことからBrusatte et al. (2008) は、カルカロドントサウルス科の進化においては頭骨の特徴よりも、脊椎骨と付属骨格(特に腰帯)の変化が先行したことを示唆するとしている。

Brusatte et al. (2008)によると、ネオヴェナトルは、以下のような固有の形質をもつアロサウロイドとされている。左右の前上顎骨間の結合面に、互いにはまり込む(peg and socket)余分の関節構造がある、上顎骨のmaxillary fenestraが大きく上顎骨の歯列の長さの約1/6に達する、軸椎の間椎心の前方の関節面が横に広がっている、軸椎の神経棘の側面に1つの小さな孔がある、後方の頸椎で頸肋骨が脊椎骨と癒合している、第8と第9頸椎のparapophyseal facetsでcamellate内部構造が露出している、前方の胴椎の腹側面に鋭い稜が発達している、前方の胴椎に低いマウンド状の隆起であるhypapophysisがある、後方の胴椎の前関節突起と後関節突起から側面に伸びる曲がったフランジがある、肩甲烏口骨の関節窩は前後の長さよりも内側外側の幅の方が大きい、腸骨の内側面のpreacetabular notchに隣接した棚状部shelfがある、大腿骨頭が前内側に向き、また基部側に傾いている、大腿骨の小転子の外側面に太い稜がある、第2中足骨の外側面に第3中足骨と関節するための凹みがある、などである。

その後Benson et al. (2010)により、上記のネオヴェナトルに固有と考えられた形質のうちいくつかの特徴は、白亜紀後期のアルゼンチンのアエロステオンなどにもみられることがわかった。ネオヴェナトルとアエロステオンでは、1) 前方の胴椎の腹側正中に鋭い稜が発達しており、その稜の前端に低いマウンド状のhypapophysisがある、2) 後方の胴椎の後関節突起から側面に伸びるフランジがある、3) 腸骨のpreacetabular notchに隣接した棚状部shelfがある、4) 腸骨に含気性が発達している、などの特徴が共通している。これらの多くはネオヴェナトル科の特徴として挙げられている。


頭骨は、前方の吻の部分(前上顎骨、上顎骨、鼻骨、口蓋骨、歯骨の前方部)しか見つかっていないが、それらの保存はよいという。外鼻孔は大きい。Hutt et al. (1996) は外鼻孔が大きいこともネオヴェナトルの固有の特徴と考えたが、前上顎骨や上顎骨の長さと比較すると、外鼻孔の大きさは他のアロサウロイドと大差ないという。
 ネオヴェナトルの前上顎骨では、アロサウルス、ドゥブレウイロサウルス、シンラプトルと同様に、前上顎骨体premaxillary bodyの前後の長さが背腹の高さよりも大きい。一方アクロカントサウルスとギガノトサウルスでは高さの方が大きい。前上顎骨の前縁は、アクロカントサウルスやギガノトサウルスと同様に後背方に傾いている。これはアロサウルス、モノロフォサウルス、シンラプトルでは垂直に近い。左右の前上顎骨の結合部symphysisには、特徴的なpeg and socket構造がみられる。左の前上顎骨の結合面では背側に前縁に沿った稜があり、腹側に溝がある。右の前上顎骨では背側に溝、腹側に稜があり、互いにはまり込むようになっている。このような余分の関節構造は他のどの獣脚類にもみられないという。ネオヴェナトルの前上顎骨には5本の歯があるが、これはアロサウルスとネオヴェナトルだけで知られている。
上顎骨には他の多くの基盤的テタヌラ類と同様に、上顎骨体maxillary bodyから前方に突出した、はっきりした前方突起anterior ramusがある。ネオヴェナトルでは、アフロヴェナトル、ドゥブレウイロサウルス、モノロフォサウルス、トルボサウルス、スピノサウルス類と同様に、前方突起の前後の長さが背腹の高さよりも大きい。それに対してアクロカントサウルスやカルカロドントサウルスでは、長さよりも丈が高い。アロサウルスでは標本により変異がある(長いものもあれば丈が高いものもある)。
 前上顎骨との関節面は、側面から見てアロサウルスと同様に垂直に近い。これはアクロカントサウルス、カルカロドントサウルス、ギガノトサウルス、エオカルカリア、マプサウルス、シンラプトルでは後背方に傾いている。
 上顎骨の側面には、ギガノトサウルス、マプサウルス、カルカロドントサウルスやアベリサウルス類と同様にごつごつした粗面がある(rugose)。また上顎骨の側面、特に外鼻孔の下の前方突起と歯列のすぐ上の部分には、多数の孔がある。上顎骨体から後背方に約45°の角度で上方突起ascending ramusが伸びている。上方突起は中程でやや屈曲しているが、アフロヴェナトルやドゥブレウイロサウルスのように顕著な屈曲ではない。

前上顎骨、上顎骨、歯骨のいずれにも萌出した歯は保存されていないが、模式標本と一緒に大小の獣脚類の歯が発見されている。これらは成体の萌出した歯、成長中の歯、前方の小さい歯と考えられる。これらの歯は一般的な獣脚類の歯と同じようにナイフ状で、後方に反っており、鋸歯があるが、進化したカルカロドントサウルス類の歯とは似ていない。またこれらの歯にはエナメルのしわが見られるが、カルカロドントサウルス類に特徴的なエナメルのしわとは異なっている。

camellate内部構造:内部の空間が蜂の巣状に区切られた構造。含気性の発達を表す。
フランジ:突縁。帽子のつばのように薄く伸びた縁の部分。

参考文献
Brusatte, S. L., Benson, R. B. J., Hutt, S. (2008) The osteology of Neovenator salerii (Dinosauria: Theropoda) from the Wealden Group (Barremian) of the Isle of Wight. Monograph of Palaeontographical Society No. 631, vol.162, 1–75.

Benson, R. B. J., Carrano, M. T. & Brusatte, S. L. (2010) A new clade of archaic large-bodied predatory dinosaurs (Theropoda: Allosauroidea) that survived to the latest Mesozoic. Naturwissenschaften 97, 71-78.


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メガラプトル



メガラプトルは白亜紀後期にアルゼンチンに生息したアロサウロイドであるが、部分骨格しか知られていないため、いまだに明確なイメージが定まらない謎の恐竜の一つである。頭骨が見つかっていない上に、首の長さ、胴の長さ、後肢の長さもわかっていない。画像検索してみると、かつて巨大なドロマエオサウルス類と考えられた頃の復元像や、がっしりしたカルカロドントサウルス類としての復元像、もう少しスマートなアロサウルス的な姿、スピノサウルス類に似た姿などが混在している。実際に系統上の位置も二転三転している。

 メガラプトルの最初の標本はNovas (1998)が記載した断片的な化石で、尺骨、前肢の第1指の指骨と末節骨、第3中足骨の遠位端からなる。当時この大きな鎌状の末節骨がドロマエオサウルス類のように後肢の第2指のものと思われたことと、中足骨が細長いことから、コエルロサウルス類と考えられた。しかしその後、より完全な前肢を含む2番目の標本が発見され、末節骨は前肢の第1指のものであることがわかり、ドロマエオサウルス類との類縁は否定された。Calvo et al. (2004) が記載した2番目の標本には、1個の頸椎、2個の前方の尾椎と血道弓、肩甲烏口骨、撓骨、尺骨、完全な手、恥骨、第4中足骨が含まれる。Calvo et al. (2004) は、メガラプトルの頸椎と尾椎の特徴はカルカロドントサウルス類と似ているが、肩帯の形はスピノサウルス類のバリオニクスと似ており、恥骨はトルボサウルスと似ているとした。そしてメガラプトルはこれまで知られているどの系統とも異なる、新しい基盤的テタヌラ類の系統に属すると考えた。
 Smith et al. (2007) は獣脚類全体の系統解析で、メガラプトルはカルカロドントサウルス類と位置づけた。しかし後にSmith et al. (2008)は、尺骨の肘頭突起など、前肢のいくつかの特徴がスピノサウルス類と共通しているとして、メガラプトルをスピノサウルス上科とした。さらにBenson et al. (2010)は、メガラプトルを含む白亜紀のアロサウロイドを再検討し、広義のカルカロドントサウルス類、カルカロドントサウリアCarcharodontosauriaのネオヴェナトル科Neovenatoridaeに位置づけた。
 Benson et al. (2010) によると、メガラプトルの前肢の第1指のカギ爪(末節骨)は、確かに大きい点ではスピノサウルス類やトルボサウルスなどと似ているが、メガラプトルの末節骨は非常に幅が狭い(うすい)形をしていて、基部の高さと幅の比率が2.75である。これはスコミムス(1.75)やトルボサウルス(1.95)よりも相当大きい。しかしネオヴェナトル科のチランタイサウルス(2.7)、アウストラロヴェナトル(2.4、第3指)、フクイラプトル(2.5、第2指)はメガラプトルと似た幅の狭いカギ爪をもつという。

 Calvo et al. (2004) によるメガラプトルの固有の形質は、頸椎に長い楕円形の側腔pleurocoelがあること、尺骨の扁平な肘頭突起blade-like olecranon process、拡大し強く側扁した末節骨のある長く伸びた手、などである。
 頸椎は1個しか見つかっていないが、椎体は比較的前後に短く丈が高いことから、太く力強い首と推測される。あまり細長くはないようである。パラポフィシスparapophysisが椎体の中程にあること、前関節突起とエピポフィシスをつなぐ稜prezygapophyseal-epipophyseal laminaがあることは、カルカロドントサウルス類と似ているという。Benson et al. (2010) は、頸椎にcamellate内部構造があることも挙げている。
メガラプトルの手は長く、特に第1指と第2指に大きなカギ爪をもつのが特徴である。第1指と第2指に比べると、第3指はかなり細くてカギ爪も小さい。またテタヌラ類には珍しく、痕跡的な第4中手骨がある。第1指の末節骨は両側面に溝が走っているが、内側と外側で溝の高さが異なる。これは他のほとんどの獣脚類(バリオニクス、アロサウルス、フクイラプトル、デイノニクス)の手の末節骨にはみられない特徴で、ドロマエオサウルス類やトロオドン類の足の第2趾の末節骨にはみられるという。

参考文献
Benson, R. B. J., Carrano, M. T. & Brusatte, S. L. (2010) A new clade of archaic large-bodied predatory dinosaurs (Theropoda: Allosauroidea) that survived to the latest Mesozoic. Naturwissenschaften 97, 71-78.

Calvo, J. O., Porfiri, J. D., Veralli, C., Novas, F. E., & Poblete, F. (2004) Phylogenetic status of Megaraptor namunhuaiquii Novas based on a new specimen from Neuquén, Patagonia, Argentina. Ameghiniana 41: 565-575.
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