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カルノタウルス1

 カルノタウルスといえば、獣脚類の中でも最も奇妙なものとして知られる。頭骨は前後の長さが短く丈が高い。鼻筋などにごつごつした隆起があり目の上に一対の「角」がある。この顔は奇妙な、グロテスクなどと形容されるが、恐竜ファンでない一般の若い人たちに見せたところほとんどが「不細工」という表現を使った。この頭骨はオオカミウオのような肉食魚に似た印象もあり、また牛よりは日本古来の「鬼」に似ている。体型はほっそりしていて、背中が奇妙に平らになっている。前肢は極端に短く退化しているが指は4本残っている。後肢は細長く、脛骨、中足骨が比較的長い。このスレンダーで軽快なハンターを思わせる復元骨格のイメージはすっかり定着している。私も「二足歩行のチーター」、あるいはサーバルというようなイメージで、長い後脚を活かして俊足で小型の獲物を追いつめ、短い顎でも確実に捕食するハンターと考えてきた。ところが、2005年の恐竜博のマジュンガトルスの全身復元を担当したサンプソンは、カルノタウルスの体型にも疑問を呈している。アベリサウルス科の恐竜は前肢が極端に短いだけではなく、アロサウルスなどの一般的獣脚類に比べて後肢も比較的短いというのである。また、カウディプテリクスの後脚の長さについて再検討した論文(Dyke and Norell, 2005)によると、ボナパルテはカルノタウルスの脛骨は基部しか保存されておらず、中足骨は全く見つかっていないと記載しているという。すると、あの復元骨格の長めの中足骨は、推測に基づいたものということか。

 昔はアベリサウルス科で四肢を含む全身骨格が発掘されているのは、ほぼカルノタウルスだけであったが、最近になってマジュンガトルスやラジャサウルスなどの四肢の骨が発見されてきたということらしい。アベリサウルス類の復元図はカルノタウルスの全身骨格に基づいて推測されてきた。もしカルノタウルスの体型が訂正を要するならば、他のアベリサウルス類の復元にも大きく影響してくる。
 確かにカルノタウルスの前肢は、全体の長さも短いが、特に前腕の骨、つまり撓骨・尺骨が極端に短く、上腕骨に対する撓骨・尺骨の比率が著しく小さくなっている。発生過程で前肢のパターン形成に関わる遺伝子の変異が、後肢のパターン形成にも共通して関わるものであれば、後肢の大腿骨に対する脛骨・腓骨の比率が非常に小さくなる可能性はある。つまりアベリサウルス類では他の獣脚類に比べて、大腿骨の長さのわりには、膝から下の脛骨・腓骨が短いのかもしれない。しかし前肢の短縮において生じたパターン形成の異常(変異)は、前肢に特異的なもので後肢には影響しなかったのかもしれない。近縁の種類の形態から推定するのが常套手段ではあるが、アベリサウルス類すべてが同じ傾向を示したかどうかもわからない。結局はカルノタウルス自身の、より保存のよい後肢の化石が発見されるのを待たなければならないだろう。
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