獣脚類を中心とした恐竜イラストサイト
肉食の系譜
Haolonggood カルノタウルス
PNSOのカルノタウルスは良いのだが、昔の足の長さが残っているような気がして、買っていない。
最近、台頭してきているHaolonggood のカルノタウルス。写真では頭が大きく見えているが、これは全身のバランス、足の長さが程よいような気がしたので買った。
顔はまあまあで、目はマンガ的とも見えるが小さいので気にならない。鼻骨はあまり角質をつけていない。歯は出ている。
体表の大きいウロコfeature scaleは最新の研究に準じて、背中に一列ではなく、ほぼランダムに分布している。大きさも過去の他社のフィギュアより小さくなっている。また皮膚のシワなどはかなりよく、PNSOに近づいている。体色と模様の塗装も良い。
さらにこのレベルで3000円ちょいなので、コスパ的に優れている。デスクの上に置けるサイズなので買って損はない。
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サウロスクスの機能形態学
Copyright 2023 Fawcett et al.
サウロスクスといえば、後期三畳紀アルゼンチンのイスキグアラスト層の動物相において、最強の肉食動物であり、ヘレラサウルスも逃げ出すほどの頂点捕食者のはずである。初期の小型の恐竜にとっては到底かなわない相手であり、後の時代の大型獣脚類に匹敵するパワーをもち、獣脚類のように丈の高い頭骨にはナイフのような鋭い歯がずらりと並び、咬む力も・・・と書きたいところである。
ところが最新の研究によると、サウロスクスの頭骨は全体としてはそれなりに頑丈であるが、一部弱い部分があり、咬む力は意外に弱くアロサウルスの半分程度であるという。これはかなりがっかりである。何かの間違いであってほしい。
Fawcett et al. (2023) はラウイスクス類で初めて、保存の良いサウロスクスの頭骨をretrodeformationという手法で完全に復元した。そして顎の筋肉の起始・付着面を同定し、顎を閉じる筋肉の断面積と力を算出した。有限要素解析で物を咬んだときの応力分布を視覚化し、すでにモデル化されているアロサウルスとサウロスクスの頭骨を比較した。さらに強い力を加えてそれぞれの頭骨を変形させるシミュレーションも行っている。
サウロスクスとアロサウルスの頭骨を比較すると、物体を咬んだ時の応力分布は頭骨の後半部では同じようなパターンを示した。しかし頭骨の前半部、特に口蓋の前方部分はアロサウルスの方がサウロスクスよりも強いという。サウロスクスの鋤骨は薄く、口蓋部分からの力を強く受けやすい。サウロスクスの頭骨では鋤骨、翼状骨、方形骨などが力学的に弱い部分であるという。
サウロスクスの咬む力は、歯列の前方で1015 N、後方で1885 Nと推定された。アロサウルスでは歯列の後方で3500 Nと推定されているので(Rayfield et al., 2001)、これはアロサウルスの半分程度ということになる。アロサウルス自体が全長7.5 mの動物としては弱いといわれていたので、サウロスクスの咬む力はかなり弱いという。もちろんティラノサウルスよりははるかに小さい。(この論文では片側の筋肉の力を表記している。)
現生ワニの中でサウロスクスと最も近いのは、インドガビアルの前方924 N、後方1895 Nである。インドガビアルも現生ワニ類の中では弱い種類であり、大体全長が2 mより大きいワニでは、これよりも強いという。現生ワニ類は咬む力が最も強い動物群であるが、系統が近いからといって同じように強いとは限らないという。
魚食のインドガビアルと同じではいかにも弱いように思える。一つの希望は、ラウイスクス類の中でサウロスクスは咬む力が弱い種類かもしれないということである。部分的なサウロスクスの下顎の前端は、背腹に広がっていないという。バトラコトムスやポストスクスの下顎の前端はもっと広がっている。つまり他のラウイスクス類はサウロスクスよりも咬む力が強いという可能性に期待したい。ラウイスクス類ではないかもしれないがポーランドのスモックは、骨片を含む糞化石から骨ごと砕いて食べたと考えられている。それとの関連はどうなのだろうか。
頭骨を変形させるシミュレーションについて、興味深いことをいっている。サウロスクスの頭骨は、側面から見て大体長方形に近い形である(上顎骨の下縁は下に凸)。この形だと前方で物を咬んだときに、吻を上に曲げるような変形を受けやすい。アロサウルスの頭骨は半円形というか、上縁が丸く下縁がまっすぐ(わずかに凹んでいる)形をしている。このような形の方が、前方で物を咬んだときに吻が変形しにくい。アロサウルスでは後方で咬んだときの頭骨後半部の変形が大きいという。アロサウルスでは咬む力の割に頭蓋が頑丈にできていると昔からいわれているので、それほど新しいことではないが、あらためてアロサウルスの頭骨はなかなかよくできていると思える。そうするとジムマドセニと比べてフラギリスの方が、より変形に強いという意味で頑丈なのだろう。カルカロドントサウルス類も吻の前端は斜めで後頭部が下がっているが、大型化することで全体に頑丈になるのでフラギリスほど頬骨のところが下がらなくてもよいということかもしれない。
参考文献
Fawcett, M. J., Lautenschlager, S., Bestwick, J., & Butler, R. J. (2023). Functional morphology of the Triassic apex predator Saurosuchus galilei (Pseudosuchia: Loricata) and convergence with a post-Triassic theropod dinosaur. The Anatomical Record, 1–17.
https://doi.org/10.1002/ar.25299
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フジアンヴェナトルは脚が長い
(画像は転載できないので、Natureを見てね)
フジアンヴェナトルは、後期ジュラ紀チトニアン(Nanyuan Formation)に中国福建省南平市政和県に生息したアヴィアラエ鳥類で、2023年に記載された。頭と首を除いた胴体がほぼ完全に保存されている。これは、頭骨がなく食性の決め手がないのになぜヴェナトルにしたのかな。アヴィアラエなら、オルニスとかアヴィスでいいような気がする。
他のすべての原鳥類Paravesと区別されるフジアンヴェナトルの特徴は多数の形質の組み合わせからなる。手の第I指の末節骨が他の指の末節骨よりもずっと大きい(これはアンキオルニスやアルカエオプテリクスにもみられないが、白亜紀の鳥類にはみられる)、手の指骨II-1が II-2より長い、脛骨が長く大腿骨の2倍の長さである、中足骨IIが他の中足骨よりも幅広い、などからなる。
系統解析の結果、フジアンヴェナトルはアンキオルニス、シャオティンギア、アウロルニス、エオシノプテリクスとともにアンキオルニス科に含まれた。アヴィアラエの中で最初にアンキオルニス科が分岐し、次にアルカエオプテリクスが分岐し、残りが孔子鳥類、エナンティオルニス類、真鳥類へとつながる形となった。
フジアンヴェナトルは手の指骨の比率についてはアルカエオプテリクスと似ている。アルカエオプテリクスと同様に末節骨以外の最も長い指骨はI-1である。一方シャオティンギアとアンキオルニスではII-2 である。しかし腰帯はアンキオルニスやトロオドン類の特徴を示す。短い座骨や遠位にある閉鎖孔突起はアンキオルニスと似ている。一方、幅広い恥骨エプロンpubic apronはトロオドン類と似ている。フジアンヴェナトルの後肢はいくつかの系統の形態が混在している。アルカエオプテリクスとアンキオルニスにみられるアルクトメタターサルでない足、アルカエオプテリクスと同様に中足骨IIがIIIとIVよりも幅広いこと、ドロマエオサウルス類と一部のトロオドン類にみられる蝶番関節のある中足骨IIIなどである。つまりフジアンヴェナトルにはいくつかの系統の特徴がモザイク的に混じっている。
特徴の一つは後肢の比率、つまり下肢が長いことである。著者らは前肢と後肢の骨について、代表的な多変量解析である主成分分析を行い、PC1, PC2, PC3 の三次元プロット(形態空間)の図を示している。前肢と後肢全体、または前肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルは他のジュラ紀のアヴィアラエと近い位置にきた。ところが後肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルはジュラ紀のアヴィアラエを含めて他のすべての獣脚類からかけ離れた位置にきた。フジアンヴェナトルは、飛翔に向けて前肢が発達するようなアヴィアラエの主流からは逸脱したものということになる。
脛骨や中足骨が長いことは、一般に高速での走行に適していることを表す。cursorial limb proportion (CLP)スコアという指標を計算して、他の獣脚類のグループと比較すると、フジアンヴェナトルは一般に疾走に適しているとされるトロオドン類やティラノサウルス類と比べても、ずっと高いスコアを示した。この数値をみるとフジアンヴェナトルは地上での高速走行に適していることになる。しかし様々な生態の現生鳥類を含めて解析してみると、フジアンヴェナトルはコウノトリやツルのような渉禽類と近い位置にきた。フジアンヴェナトルが産出した地層からは硬骨魚類、カメ、コリストデラなど水生または半水生の生物が見つかっている。フジアンヴェナトルの長い脚は沼沢地などの浅瀬に立って魚類などを捕食するためである可能性がある。残念ながら、これらを解明するために役立つ足の指骨は保存がわるく、実証するのは困難であるという。獣脚類の各グループと比較したときに、走行に適しているグループとも離れていることからは、走行とは別の機能という気もする。
参考文献
Xu, L., Wang, M., Chen, R. et al. A new avialan theropod from an emerging Jurassic terrestrial fauna. Nature 621, 336–343 (2023). https://doi.org/10.1038/s41586-023-06513-7
フジアンヴェナトルは、後期ジュラ紀チトニアン(Nanyuan Formation)に中国福建省南平市政和県に生息したアヴィアラエ鳥類で、2023年に記載された。頭と首を除いた胴体がほぼ完全に保存されている。これは、頭骨がなく食性の決め手がないのになぜヴェナトルにしたのかな。アヴィアラエなら、オルニスとかアヴィスでいいような気がする。
他のすべての原鳥類Paravesと区別されるフジアンヴェナトルの特徴は多数の形質の組み合わせからなる。手の第I指の末節骨が他の指の末節骨よりもずっと大きい(これはアンキオルニスやアルカエオプテリクスにもみられないが、白亜紀の鳥類にはみられる)、手の指骨II-1が II-2より長い、脛骨が長く大腿骨の2倍の長さである、中足骨IIが他の中足骨よりも幅広い、などからなる。
系統解析の結果、フジアンヴェナトルはアンキオルニス、シャオティンギア、アウロルニス、エオシノプテリクスとともにアンキオルニス科に含まれた。アヴィアラエの中で最初にアンキオルニス科が分岐し、次にアルカエオプテリクスが分岐し、残りが孔子鳥類、エナンティオルニス類、真鳥類へとつながる形となった。
フジアンヴェナトルは手の指骨の比率についてはアルカエオプテリクスと似ている。アルカエオプテリクスと同様に末節骨以外の最も長い指骨はI-1である。一方シャオティンギアとアンキオルニスではII-2 である。しかし腰帯はアンキオルニスやトロオドン類の特徴を示す。短い座骨や遠位にある閉鎖孔突起はアンキオルニスと似ている。一方、幅広い恥骨エプロンpubic apronはトロオドン類と似ている。フジアンヴェナトルの後肢はいくつかの系統の形態が混在している。アルカエオプテリクスとアンキオルニスにみられるアルクトメタターサルでない足、アルカエオプテリクスと同様に中足骨IIがIIIとIVよりも幅広いこと、ドロマエオサウルス類と一部のトロオドン類にみられる蝶番関節のある中足骨IIIなどである。つまりフジアンヴェナトルにはいくつかの系統の特徴がモザイク的に混じっている。
特徴の一つは後肢の比率、つまり下肢が長いことである。著者らは前肢と後肢の骨について、代表的な多変量解析である主成分分析を行い、PC1, PC2, PC3 の三次元プロット(形態空間)の図を示している。前肢と後肢全体、または前肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルは他のジュラ紀のアヴィアラエと近い位置にきた。ところが後肢の骨だけについて分析すると、フジアンヴェナトルはジュラ紀のアヴィアラエを含めて他のすべての獣脚類からかけ離れた位置にきた。フジアンヴェナトルは、飛翔に向けて前肢が発達するようなアヴィアラエの主流からは逸脱したものということになる。
脛骨や中足骨が長いことは、一般に高速での走行に適していることを表す。cursorial limb proportion (CLP)スコアという指標を計算して、他の獣脚類のグループと比較すると、フジアンヴェナトルは一般に疾走に適しているとされるトロオドン類やティラノサウルス類と比べても、ずっと高いスコアを示した。この数値をみるとフジアンヴェナトルは地上での高速走行に適していることになる。しかし様々な生態の現生鳥類を含めて解析してみると、フジアンヴェナトルはコウノトリやツルのような渉禽類と近い位置にきた。フジアンヴェナトルが産出した地層からは硬骨魚類、カメ、コリストデラなど水生または半水生の生物が見つかっている。フジアンヴェナトルの長い脚は沼沢地などの浅瀬に立って魚類などを捕食するためである可能性がある。残念ながら、これらを解明するために役立つ足の指骨は保存がわるく、実証するのは困難であるという。獣脚類の各グループと比較したときに、走行に適しているグループとも離れていることからは、走行とは別の機能という気もする。
参考文献
Xu, L., Wang, M., Chen, R. et al. A new avialan theropod from an emerging Jurassic terrestrial fauna. Nature 621, 336–343 (2023). https://doi.org/10.1038/s41586-023-06513-7
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カルカロドントサウルスが獲物を持ち上げる力
Copyright 2015 Henderson & Nicholls “Double Death” という作品
過去に話題になったかもしれないが、私は最近知った。変わった研究があるものである。著者の一人はアーティストで、2頭のカルカロドントサウルスが竜脚類の亜成体を持ち上げている絵を作成した。それを見て実際にこんなことが可能なのか、という疑問から研究が開始された。筆頭著者はHendersonで、いろいろな動物の3次元デジタルモデルを作る人である。スピノサウルスの浮力や安定性についてもシミュレーションしている(「スピノサウルスは沈まない」の記事)。実際にカルカロドントサウルスはどのくらいの重さの獲物を持ち上げて、よろめかずに立っていられるのか、ということを真面目に研究した。
そのためにまず、コンピューター上でカルカロドントサウルスの3次元デジタルモデルを作成した。胴体についてはアロサウルスやアクロカントサウルスを参考にしている。例によって尾部は重く、前半身は含気性の骨や気嚢系があって軽いので、それぞれに適切な密度を与えている。その結果、カルカロドントサウルスのモデルは全長12.5 m、体重6.23 tとなった。一方の竜脚類の方は、カルカロドントサウルスと共存したレッバキサウルスが不完全なので、アルゼンチンのレッバキサウルス類リマイサウルスの3次元デジタルモデルを作成した。絵の中でカルカロドントサウルスが12.5 mとすると、竜脚類は10.9 m、1.91 t と推定された。
著者らは3つの観点から考察している。1)重心の移動、2)頭を持ち上げる力、3)顎でくわえる力、である。1)重心の移動については、カルカロドントサウルスのモデルの横断切片の重量を計算し、加算することで、重心の位置を決める。後肢を少し前後に開いた自然な立ちポーズで、重心は骨盤のすぐ前方にきた。獲物を口にくわえた場合、重心は前方に移動する。あまりにも重いものをくわえると、重心が前方に行き過ぎ、前のめりになって立っていられないわけである。その限界は重心が前に出した足の上にあるかどうかとした。
この計算式を解くと、1頭のカルカロドントサウルスが持ち上げて立っていられる荷重の上限は、2,510 kgとなった。2頭がかりだと5,020 kgとなり、最初の絵の竜脚類が1,910 kgなので、十分可能に思われた。つまり重心の移動という観点だけからは、最初の状況が可能にみえる。しかし実際には、首や顎の筋力の限界の方が小さいので、それらに制約されることがわかった。
2)頭を持ち上げる力については、獲物をくわえた頭全体を、首の背側にある軸上筋で支えるわけである。最も重要なのは後頭部に付くm.transversospinalis とm.complexusという2つの筋肉で、これらは大体頭頂骨の後部に付着する。片側のm.transversospinalis とm.complexusの断面積はアロサウルスで36.3 cm2 と 33 cm2と計算されている。カルカロドントサウルスの頭骨長はアロサウルスの2.26 倍であり、断面積は長さの増加の2乗に比例するので、2.26の2乗で5.125倍と推定された。また恐竜の筋力の推定値には幅があるが、ここでは40 N/cm2とされた。頭骨と頸椎が関節する後頭顆の位置を支点として、これらの首の筋肉は頭を持ち上げる(上に回転させる)ように働く。一方、頭自体の重量と口にくわえた獲物の重量は、頭を下げる(下に回転させる)ように働く。そこで
頭を持ち上げる力(モーメント)=頭自体の重量で下がる力+獲物の重量(最大荷重)で下がる力
という方程式を立てた。これを解くと、持ち上げられる獲物の重量の最大値は424 kgとなった。2頭がかりだと848 kgとなる。848 kg のリマイサウルスは8.29 mとなるので、最初の絵の3/4の大きさならなんとか可能という結果になった。
3)顎でくわえる力については、下顎と獲物の重量を、顎を閉じる筋肉(下顎内転筋)の力で支えることになる。アロサウルスの咬む力は歯列の前方で4,179 N、後方で6,809 Nと推定されているので、歯列の中央では5,494 Nとなる。下顎内転筋の断面積は長さの増加の2乗に比例する。頭骨長がアロサウルスの0.72 m からカルカロドントサウルスの1.63 mにスケールアップすると、下顎内転筋の断面積は2.26の2乗倍に増える。そして咬む力が断面積に比例するとすると、カルカロドントサウルスの咬む力は5,494 N x 2.26の2乗 = 2.82 x 10の4乗 N となる。これが最大の荷重(獲物の重量)と拮抗するという方程式を立てた。これを解くと獲物の重量の最大値は512 kgとなった。
Copyright 2015 Henderson & Nicholls
以上の結果から著者らは、より実際にありそうな絵を描きなおしている。最初の絵と同じくらいリアルだったらなお良かったが、このくらいの幼体なら持ち上げられそうな感じになった。ただしこの400-500 kgというのも上限なので、通常はずっと小さいものを持ち上げただろうと述べている。400 kgとするとウシは無理だがブタくらいなら持ち上げられるのかもしれないが、重量挙げのように一瞬の間だろう。
ずっと小さい獲物をくわえただろうという理由の一つとして、小さい物体は首、頭、顎の動きによってより簡単に扱うことができるということがある。多くの肉食爬虫類はinertial feeding という摂食方法をとる。これは小型の獲物を口にくわえて、すばやく首を振り、獲物を回転させて飲み込みやすい向きにするというものである。ティラノサウルスではinertial feedingの能力について研究されており、50 kgの肉塊をinertial feedingでくわえなおすことが可能らしい。カルカロドントサウルスでも同じような大きさの塊をinertial feedingで扱った可能性が高い。
感想として、元々の設定に無理があるのではないか。最初の絵は直感的に見て、これはちょっと重すぎて無理ではないかと思えた。そのことを、3次元モデルを作成して実証した研究ということになる。この2頭のカルカロドントサウルスが竜脚類を持ち上げている様子は、「公開処刑」を見せつけているように見えて、人間の発想に思える。(だから作品としてインパクトがあるのだろうが。)そもそも2頭の獣脚類が、それなりに重い竜脚類の体全体を地面から持ち上げる理由がない。ごく小さい幼体なら飲み込もうとして持ち上げる、または2頭で引っ張り合いをした結果持ち上がることはあるだろう。しかしそれなりに大きい獲物の場合は、獣脚類が持ち上げるのは飲み込める大きさに引きちぎった肉塊のはずである。獲物の体を地上に置いたまま解体し、ちぎっては食べ、ちぎっては食べる方が自然である。
参考文献
Donald M. Henderson, Robert Nicholls (2015) Balance and Strength—Estimating the Maximum Prey-Lifting Potential of the Large Predatory Dinosaur Carcharodontosaurus saharicus. THE ANATOMICAL RECORD 298: 1367–1375. https://doi.org/10.1002/ar.23164
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PNSO ギガノトサウルスnew version
ジュラシック・ワールドの本家のPrime1 のギガノトサウルスは、あまりにも待ちくたびれて欲しい気持ちがなくなってきた。そうこうしているうちにNanmuが映画版のギガノトサウルスを出してきたようだ。そして、その間にPNSOは、学術的なメラクセス、ギガノトサウルス新版、マプサウルスをリリースしてきた。
ここでギガノトサウルスの模型の進化を振り返りつつ、最新版を紹介したい。シュライヒも持っているし幼体も持っているが、ここでは省略する。
持っている人があまり多くないと思われる、ブリーランドのギガノトサウルス。これは渋谷の東急ハンズの模型売り場で、セール品として置いてあった。ブリーランドはごろっとした荒削りなところが特徴であるが、マンガ風の目が許せないので、大人の恐竜ファンは普通買わないだろう。これはアロサウルスの仲間であることはわかるが、なんだかわからなかった。アロサウルスかヤンチュアノサウルスか、その辺かと。いつか何かの資料として役立つかもと思って、買ったのである。
サファリ社のカーネギーシリーズのギガノトサウルス。これは確か、2010年の最古の恐竜展のときに、アマルガサウルスの近くの売り場で買った。後肢と尻尾で3点立ちするが、机の上で放置すると一晩は安定するが、長期間は持たない。これはギガノトサウルスにしては体がスレンダーすぎる。顔は丈が高くて幅が狭い点はよくて、カルカロドントサウルス類としてはありそうで、サファリ社としてはまあまあの部類と当時思った。いかにもブラシで塗りました的な模様や、不規則な皮膚の凹凸もサファリ社と思えば。
Eofaunaのギガノトサウルス。これもネット上で酷評されていたので、買った人は多くないだろう。口の中が赤すぎる、手の爪、歯の先端が丸いなど、精密路線とおもちゃ路線の間で中途半端な製品に思えた。体の塗装は悪くないので惜しい。
そして以前紹介した、PNSOの旧版のギガノトサウルス。顔はカルカロやマプなどいくつかの種類を元に調整したらしく、従来のギガノトサウルスの復元頭骨とは異なるように見える。全体としては気に入っているが、問題点としてまっすぐ立たないことがある。足を台座にさして固定するのであるが、一応ちゃんと立った状態で体が傾いている。これは片足を持ち上げているので腰が傾くのはいいとして、頭もかなり傾いている。写真は斜め上から撮影して恐竜が真横のアングルということは、水平に対してかなり傾いているのである。これが心残りであった。
そしてジュラシック・ワールドとメラクセスの発見を受けて、満を持してPNSOが出してきたのが新版である。最初これはメラクセス復元かなと思ったが、それだけではなく色々な情報をふまえているようだ。DinosDragonsという方の動画で解説されている。この方によると今回の改訂で、頭骨については2、3の変化が見られるという。一つは上顎骨から頰骨、方形頰骨までの上顎のラインが、まっすぐに近いこと。昔のカーネギーの顔は頰骨のところでガクッと段差があった。Eofaunaもそうなっている。どうも一部の復元骨格がそうなっていたらしい。今回、メラクセスなど他のカルカロドントサウルス類に合わせて、まっすぐに近いラインとなっている。DinosDragonsさんは従来、なぜ頰骨に段差があったのかわからないと言っているが、アロサウルス・フラギリスの影響ではないだろうか。
あとは目の前方のpreorbital region が短いと言っているが、よくわからない。涙骨あたりのまっすぐな部分のことか。また吻の前端がよりblunt 、垂直に近いと言っている。これは、ホロタイプには前上顎骨はないが、別に見つかった前上顎骨があるのでその情報らしい。
体については皮膚の質感が、細かく繊細になった。写真でもわかると思うがウロコが非常に細かくなり、首や太ももの前後のシワも極まっている。旧版のゴツゴツした感じも捨てがたいが、新版では繊細さのレベルがすごい。
こうして他のフィギュアと並べてみると、PNSOがいかに本気かがわかる。世界中の博物館に納入できるレベルを目指している。結論からいうと、PNSOの最新版だけ買えば良いだろう。
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