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トルボサウルスを見る前に

横浜の「ダイノワールド2015ヨコハマ恐竜博」は、図録がないそうですね。

ティラノサウルス亜成体「ティンカー」と世界初公開のトルボサウルス実物骨格が2大目玉のようである。「ティンカー」も楽しみであるが、有名でない肉食恐竜にも愛情を注ぐ当サイトとしては、圧倒的にトルボ推しである。

トルボサウルスは、公式サイトによると2012年にコロラド州で発掘された65%もの全身骨格化石ということで、大変貴重な標本に違いない。これについては恐らく研究中で、未発表のように思える。以前、Zoicのカタログにあった復元頭骨はこれの一部だったのかもしれない。

トルボサウルスも好きな恐竜の一つなので、イメージが変わってほしくない。公式サイトの復元図では従来とイメージが変わったような気がして、心配であった。しかし全身骨格の写真をみると、多少顔が長いようだが全体としてはあまり変わっていないようで、安心した。

 それよりも、ふと気づいたが「実物全身骨格」というのが気になる。これはモンゴルや中国でよくあるように、実物化石と復元部分を組み合わせて鉄骨上にマウントしてあるということだろう。米国だと通常、実物化石は研究用に保管しておき、レプリカを用いて復元キャストを組み立てることが多いと思うが。実物を組み上げてしまったら、研究できないのではないだろうか。2012年に発掘だとクリーニングと研究にかなり時間がかかると思うが、もう研究は終わったのだろうか?この恐竜博はグリフォン/マスターフォッシルが関与していると聞いており、ミネラルショー的色彩が強いらしい。「研究の予定はない」商品ということはないだろうか。

横浜にトルボサウルスを見に行く前に、2014年までの文献を予習したので若干の記事を追加する。
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2015メガ恐竜展



もう10年以上は「恐竜博評論」をしているが、ちょっと変わった恐竜展でした。「巨大化」と「大型化」は違うのではないか、とか。大型化にはそれなりのメリットがあり、その時の環境と生物のボディプランが許す限り、それぞれの系統で大型化するものは現れるということでは。また、生物としては適応度を上げるように進化しているのであって、大型化はひとつの戦略に過ぎないと思いますが。
 トゥリアサウルスを見逃すな!は確かに斬新だった。むしろ後半身の骨の方が完全に見つかっているのに驚いた。




今回、展示物の配置や照明の仕方にいくつか不満な点が見受けられた。限られた予算の中、少しでも新種の恐竜が公開されたことは、ありがたいことである。しかし、であればこそ、せっかくのライスロナックス(リスロナクス)をもっと有効に活用してほしかった。ティラノサウルス(スタン)の陰で、せっかくの全身骨格なのに全身が観察できない配置であった。写真を撮ろうとした人なら皆思うはずだが、左右どちらから見ても、立て看板がことごとく邪魔をする。「君たちティラノサウルスが見たいんだろう?ほーらパーフェクトスタンだよ。ここで写真が撮れるからね。少数のマニアのために一応新種も持ってきたよ」という感じがする。確かにメインテーマは巨大化であり、このゾーンは白亜紀という時代を表現するだけなので、主役はあくまでティラノなのだろう。しかしライスロナックスは公式サイトの「見どころ」に載っている目玉のひとつではなかったか。恐竜マニアだけではなく、恐竜好きの子供たちだって楽しみにしていたはず。もう少し大切に扱って下さい。多分、竜脚類のように大きい展示物から配置していったのだろう。一般的な親子連れは、みんなスタンの前で記念撮影していたが、そのスタンにしても頭骨の照明が明るすぎて、下顎が真っ暗く写ってしまう。後半身も暗い。他にも照明の当て方がいまいちな標本が散見された。

ガチャは当たらないし‥‥

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メガラプトル幼体





頭骨の一部は見つかったもののまだまだ不完全であるし、胸郭が大きいなどといわれても全身のバランスがわからないので、復元は依然として難しいと思われる。一見巨大なヴェロキラ風で、よくみると前肢が頑丈でパワフル、後肢と尾はドロマエオでない、といった感じか。最初はカギ爪が後肢のものと思われて巨大なドロマエオサウルス類とされ、その後前肢のカギ爪とわかってメガロサウルス類、カルカロ風、アロ風などに描かれたわけであるが、巡り巡ってユタラプトルなど大型のドロマエオサウルス類に似たイメージに戻ったように思われる。また、近縁のメガラプトル類が皆同じような細長い顔と決まったわけでもないだろう。

Benson et al. のネオヴェナトル科の樹立のときは、ネオヴェナトルとアエロステオンの骨格に類似点が多いことを強調していた(ネオヴェナトルの記事参照)。しかしPorfiri et al. (2014) の説ではネオヴェナトルだけがアロサウルス上科に取り残され、メガラプトル類はごっそりティラノサウルス上科にいっているわけである。この辺りはどうなのだろうか。また、Porfiri et al. (2014)はチランタイサウルスとシアッツはメガラプトル類ではないと考えている。一方オーストラリアの研究者はネオヴェナトル科を支持しているようである。

しかし南米産はやはり侮れませんね。他にもウネンラギア類などの曲者もいるし。
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メガラプトルの頭骨




大きい画像

メガラプトル類は、前肢の第1指と第2指に大きく発達した、幅が狭く鋭いカギ爪をもつことを特徴とする獣脚類である。派生的なメガラプトル類(メガラプトル科Megaraptoridae, Novas et al. 2013)は白亜紀のセノマニアンからサントニアンのゴンドワナ地域から知られている。メガラプトル類の系統的位置については近年、議論が続いており、研究者によって基盤的なコエルロサウルス類、基盤的なテタヌラ類(メガロサウロイド)、カルカロドントサウルス類に近縁なアロサウロイドなどに分類されてきた。最近、Novas et al. (2013)はコエルロサウルス類、なかでもティラノサウルス上科に含まれるとした。
 このように解釈が分かれる理由はメガラプトル類の骨格が不完全なためで、特に頭骨の骨はほとんど発見されていなかったため、頭骨の形態についてはきわめて情報が乏しかった。Porfiri et al. (2014) は、部分的な頭骨と胴体の骨格を含む、メガラプトルの幼体の標本について記載している。この標本によって初めて、メガラプトルの頭骨の形態についてかなりの情報が得られたわけである。

この標本MUCPv 595はアルゼンチンのネウケン州Baal quarryで、白亜紀後期チューロニアン-コニアシアンのポルテスエロ層Portezuelo formation から発見された。この標本は、左右の前上顎骨、上顎骨、鼻骨、左の前頭骨、部分的な脳函、関節した9個の頸椎、胴椎1-8, 10-12, 仙椎3-5, 4個の近位の尾椎、腹肋骨、肩甲骨、烏口骨、上腕骨、部分的な恥骨からなる。
 この標本は肩甲骨、恥骨、頸椎などの形態が、これまで見つかっているメガラプトルの化石と一致した。ただし大きさは小さく、メガラプトルの成体では推定全長9-10 m とされるのに対してMUCPv 595は推定全長3 m と考えられた。また、神経弓と椎体など、いくつかの骨が癒合していないことからも幼体と考えられる。さらに肩甲骨と恥骨について組織切片を作成し、成長線の数が少ないことも確認している。

この標本は幼体なので、頭骨のプロポーションや隆起の発達程度が成体と異なるかもしれない。しかしそれらを考慮しても、アロサウロイドのような基盤的なテタヌラ類とは多くの違いがあり、一方で基盤的なティラノサウロイドと多くの類似点があるといっている。

前上顎骨の外表面にはいくつかの大きな孔foramenがあいているが、これは多くのティラノサウロイドにみられる。前鼻孔突起prenarial processは棒状で非常に長く伸びており、前上顎骨体の長さの300%に達する。そのため、外鼻孔がきわめて前後に長い。これはキレスクス、プロケラトサウルス、ディロング、オルニトレステス、グァンロンと同様である。
 前上顎骨の前縁は前背方に傾き、後縁は後背方に傾いているので、前上顎骨は側面からみて下が短い台形の輪郭trapezoidal contourをなす。つまり前上顎骨の腹側がより強く短縮している。この台形の輪郭は、プロケラトサウルス、グァンロン、ディロング、いくつかの派生的なティラノサウルス類(ティラノサウルス、タルボサウルス)と似ている。ネオヴェナトルやアクロカントサウルスのようなアロサウロイドにはこの台形の輪郭はみられない。
 メガラプトルの前上顎骨体は、上顎骨の長さに対して相対的に小さい。この点はアロサウロイドとは顕著に異なっている。プロケラトサウルス、ディロング、キレスクス、派生的なティラノサウルス類(ティラノサウルス、タルボサウルス)のようなティラノサウロイドは皆、非常に短い前上顎骨をもっている(グァンロンはやや長いらしい)。(注:論文ではメガラプトルの前上顎骨体は上顎骨の長さの0.7%となっているが、どうも数値が疑問である。7%の誤りか。)

上顎骨は側面からみて三角形に近く、前方突起rostral ramusは強く前後にのびて、背側縁はほとんど直線状になっている。この形状は基盤的なテタヌラ類とも、基盤的なコエルロサウルス類とも、基盤的なティラノサウロイドとも異なっている。この点では、メガラプトルはオルニトミムス類、トロオドン類、派生的なティラノサウルス類と似ている。
 前眼窩窩はよく発達している。前眼窩窩には2つの孔があり、前後方向にはほぼ同じ位置で、上下に並んでいる。背側の孔はmaxillary fenestra で、腹側の孔はpromaxillary foramenかもしれないという。しかしこのような孔の配置は、他の獣脚類にはみられない独特のものである。
 口蓋骨突起palatal processは細長く、アリオラムスやキレスクスと似ているが、アロサウルス、シンラプトル、マプサウルスなどにみられる太い状態とは異なっている。シンラプトルより派生的なアロサウロイドでは歯間板interdental plateが癒合しているが、メガラプトルでは歯間板が癒合していない。

左右の鼻骨は癒合していない。メガラプトルの鼻骨は細長くのびており、その横幅は全長にわたって大体一様である。これは、アクロカントサウルス、カルカロドントサウルス、オルニトミムス類、トロオドン類、ドロマエオサウルス類と似ている。メガラプトルの鼻骨は、ティラノサウルス類の鼻骨とは特に似ていない。基盤的なアロサウロイドでは鼻骨の前端(外鼻孔の周り)にはっきりしたnarial fossa があるが、メガラプトルにはnarial fossaはない。また、アロサウロイドや他の基盤的テタヌラ類に特徴的な、鼻骨の側方縁の粗面rugosityはみられない。アロサウロイドなどの基盤的テタヌラ類と異なり、メガラプトルでは前眼窩窩が鼻骨に達していない。
 前頭骨は四角形で、上側頭窩supratemporal fossa が広く拡張している。そのため前頭骨の後半で、幅の狭い矢状稜sagittal crest が形成されている。このことから、保存されていない頭頂骨にも幅の狭い矢状稜があったことが示唆される。このような特徴は、ティラノサウロイドの状態に似ている。アロサウロイドでは、上側頭窩の拡張は中くらいで、矢状稜はより幅広い。またメガラプトルの前頭骨は前半が低く後半が高くなっていて、中ほどに段差がある。

脳函についても詳細に観察しており、いくつかの形質はアロサウロイドよりもコエルロサウルス類と似ているといっている。大後頭孔は比較的大きく、後頭顆の頸部の基部に深く達している。一方、基盤的な獣脚類では大後頭孔は比較的小さく、後頭顆の頸部の基部にわずかに達しているか(アクロカントサウルス、シンラプトル)、または達していない(メガロサウルス類)。傍後頭骨突起は多くの獣脚類と同様に後側方かつ水平に突き出しており、アロサウロイドに特徴的にみられるような下方に曲がった形ではない。
 メガラプトルの上顎には、少なくとも前上顎骨に4本、上顎骨に15本(おそらくは17)の歯があったと考えられる。前上顎骨歯は切歯形incisiviformで小さく(歯冠長10 mm)、大きな上顎骨歯(17 mm)と対照的である。前上顎骨歯は、ティラノサウルス類にみられるようなD字形の断面をしている。上顎骨歯は強く後方にカーブしていて、前縁には鋸歯がなく、両側から凹んだ8字形の断面をなす。

Porfiri et al. (2014) は、Novas et al. (2013)のデータに新しいメガラプトルの標本から得られた情報を加えて、再び系統解析を行った。その結果やはり、メガラプトル類Megaraptoraはコエルロサウルス類の中でティラノサウルス上科に含まれることが支持された。ここではメガラプトル類がティラノサウロイドと共有する派生形質は、1)前上顎骨歯が切歯形incisiviformで、2)断面がD字形、3)前上顎骨の外側面にいくつかの大きな円形の孔がある、4)外鼻孔の長さが幅の3倍以上ある、5)歯骨の最初の歯槽が後方の歯槽よりもかなり小さい、6)頭頂骨に正中の矢状稜sagittal crestがある、つまり左右の上側頭窩の間の部分の幅が非常に狭い、などである。
 この分岐図ではMegaraptoraのうちフクイラプトルが最も基盤的なもので、それ以外の派生的なメガラプトル類、メガラプトル科Megaraptoridaeにはアウストラロヴェナトル、アエロステオン、オルコラプトル、メガラプトル、そして意外なことにエオティランヌスが含まれた。

著者らはこれまで得られたメガラプトル科の標本から、派生的なメガラプトル類の骨格を復元することができるという。これらの動物は、細長い吻と小さめの歯のある長い頭骨をもっていた。首もまた華奢で、よく発達したS字形の頸椎をしていた。肋骨と腹肋骨の形から、胸郭は非常に幅広く丈も高かった。胸帯は頑丈で、長く太い前肢を支え、手の第1指と第2指には大きく鋭いカギ爪があった。後肢は華奢でスレンダーだった。このような体形は他の獣脚類にはみられないユニークなものであるという。

Novasらはさらに、最近のチレサウルスの論文の中でも広汎な系統解析を行っている。その結果今度は、メガラプトルはティラノサウルス上科の中ではなく、最も基盤的なコエルロサウルス類と位置づけられた。どうも未だにpendingという状況のようである。
 確かに、ネオヴェナトルとはかなり異なる顔つきのようである。頭骨復元図は吻が細長く、トロオドンやドロマエオ系、あるいはアリオラムス的な顔にみえる。ティラノサウロイドかどうかわからないが、コエルロサウルス類の一種のような雰囲気はある気がする。そうすると近縁のアエロステオンも、従来は羽毛の生えたアロサウルスそのものの姿に描かれてきたが、今後は復元像が変わってくるのかもしれない。さらにはフクイラプトルのイメージにも影響してくるだろう。


参考文献
Porfiri, J.D., Novas, F.E., Calvo, J.O., Agnolín, F.L., Ezcurra, M.D. & Cerda, I.A. (2014) Juvenile specimen of Megaraptor (Dinosauria, Theropoda) sheds light about tyrannosauroid radiation. Cretaceous Research 51, 35-55.


Novas, F.E., Agnolín, F.L., Ezcurra, M.D., Porfiri, J. & Canale, J.I. (2013) Evolution of the carnivorous dinosaurs during the Cretaceous: the evidence from Patagonia. Cretaceous Research 45, 174–215.


Fernando E. Novas, Leonardo Salgado, Manuel Suarez, Federico L. Agnolin, Martin D. Ezcurra, Nicolas R. Chimento, Rita de la Cruz, Marcelo P. Isasi, Alexander O. Vargas & David Rubilar-Rogers (2015) An enigmatic plant-eating theropod from the Late Jurassic period of Chile. doi:10.1038/nature14307
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