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アウカサウルス2015




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わざわざ東京まで来てくれたので、絵くらい描いてあげないと。というよりも実は、機会があれば描き直したいと思っていた。2002年の論文には簡略な骨格図だけが載っているが、それはわりと首が短かったのである。その後2009年のゴンドワナ展で復元骨格が公開されたが、やや印象が違っていた。「こんなに首が長いのか」という声も聞かれた。この復元キャストを完全に信頼していいのか、一抹の不安もあるが、ほぼ全身の骨格が発見されているはずなので、長さの比率などは測定して作るだろう。今回新宿で展示された復元骨格は、このように首を水平に伸ばしたポーズなので、なおさら強調されている。S字状に曲げるともう少し短く見えるだろう。

2009年のゴンドワナ展ではもっと膝を曲げてしゃがんだ姿勢だったので、今回は全体としてスレンダーに見える。全身に対して足長ではないが、後肢自体は細長く筋付着部も発達している。「カルノタウルスの尾椎」で紹介したように、アウカサウルスではカルノタウルスと同様に尾椎の横突起(尾肋骨)が斜め上方を向き、その下側に強力な尾大腿筋が付着している。短距離の疾走に適応した進化型のアベリサウルス類とされている。

頭骨はやや「作った感」があるが、破損していたのを修復したためらしい。これも詳細はモノグラフが出ないとわからない。アウカサウルスの前頭骨には、カルノタウルスのような角ではないが、わずかなこぶ状の膨らみがある。ディスカバリーのDVD「サルタサウルスの成長」をご覧になった方はご存知かと思うが、この中にはアウカサウルスが登場し、額のこぶが一瞬映る。最後には成長したサルタサウルスに頭を押しつぶされて絶命するエピソードも描かれている。

前肢のポーズがまた問題で、昔カルノタウルスは「手のひらが常に後方を向くようになっている」といわれていた。アウカサウルスの復元骨格もそれを踏襲しているように見える。一方、前述のBurch and Carrano (2012) はマジュンガサウルスの前肢について研究した結果、neutral positionつまり「自然な位置」を提案している。それは、全身を側面からみたときに肩帯から上腕骨が後下方に向き、手の甲が大体見えている感じであるが、手のひらはやや前方を向くという。撓骨・尺骨の逆問題もあるので、ここではマジュンガサウルスの知見にならって前方向きとした。アベリサウルス類の上腕骨頭は半球状で、普通の獣脚類よりもむしろ自由度が大きかったかもしれないという。ある程度内転・外転もできたのだろうか。短い前肢に派手な羽毛などがあって、ぶんぶん振り回すことがディスプレイになったのだろうか。

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安く買えました。




イタリアのGeoworld社の恐竜古生物フィギュアで、ジュラシックハンターというのがあります。恐竜の種類は結構多いのですが、申し訳ないがクオリティと価格のバランスが悪いものが多い。特に有名どころのメジャー恐竜がよくないのは、デザインされた年代が早いせいか。マイナーな種類でベターなものもあります。海洋堂の食玩やフェバリットなどになじみのある日本の恐竜ファンは、もう少しクオリティを求めると思うのですが。

ところが、先日アマゾンを見たら合わせ買いプログラムというやつで、在庫一掃なのか、妙に価格を下げているのがありました。そこで、なんとアウストラロヴェナトルは390円で、コンカヴェナトルは464円で入手できました。1700円は出せないが390円なら買いです。

それにしてもコレクタ社は「アウストラロブネーダー」などと書き、Geoworld社は「アウストラロベネクター」と書いている。なんとかして下さい。アウストラロヴェナトルはオーストラリアのネオヴェナトル類で、いまのところフクイラプトルに最も近縁な恐竜です。前肢のカギ爪も似ています。
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チレサウルス

また非常にユニークな、面白い恐竜が現れた。獣脚類全体の進化史を考える上で、重要な種類にちがいない。

チレサウルスは、ジュラ紀後期チトン期(Toqui Formation)に南米のチリ南部に生息した基盤的テタヌラ類で、2015年にNovas et al.により記載された。植物食に適応した歯や腰帯、後肢などには、原竜脚類、テリジノサウルス類、はては原始的鳥盤類とも似た特徴がモザイク的に入り混じっているが、系統解析の結果から獣脚類とされた。ちなみに、一部ネットメディアの見出しのような「ティラノサウルスの近縁種」ではない。2本指であることはティラノサウルスとの類縁とは直接関係がない。前肢の指の数が減る傾向は獣脚類らしいといえばそうかもしれないが、もちろん主な根拠ではない。

チレサウルスのホロタイプ(SNGM-1935)は完全に近い、関節した全身骨格で全長約1.6 mと推定されるが、これはまだ成熟していない亜成体で、最も大きい標本の50%の大きさである。パラタイプは成長段階の異なる4個体の部分骨格で、全長1.2 から 3.2 mであるという。
 チレサウルスに固有の特徴は、歯が葉状 leaf-shaped で萌出中の歯の歯冠の頂端にのみ鋸歯がある、烏口骨が四角形に近く厚い縁をもつ、手の第2指の末節骨の手前の指骨が短い、第3指が退化している、恥骨が完全に後方を向いている、恥骨の軸が棒状 rod-like で遠位端がふくらんでいない、などである。

頭骨は、分離した前上顎骨、上顎骨、前頭骨、後眼窩骨、歯骨などが見つかっており、頭は比較的小さかったと考えられる。前上顎骨は短く丈が高く、前端に粗面があり角質のくちばしがあったらしい。歯骨は前端の方が丈が高いので、テリジノサウルス類のように腹側縁が下方にカーブしている。歯骨の歯は丈が高く、葉状で、前方に傾いておりprocumbent、歯冠の頂端にのみ小さな鋸歯がある。
 頸椎は長く、細長い首をなす。頸椎と前方の胴椎には、一対の仕切りのある側腔 pleurocoelがある。
 四肢の骨は原竜脚類のようにがっしりしている。上腕骨は短く幅が広い。中手骨は第1から第3まであるが、よく発達しているのは第1指と第2指のみである。第1指の末節骨は他のテタヌラ類ほどカーブしていない。第2指の末節骨の手前の指骨が強く短縮している。厳密には2本指ではなく、第3指には中手骨だけではなく、1個の小さい指骨がある。(これは論文の写真には示されておらず、supplementary informationにもない。)
 腸骨には竜脚形類、テリジノサウルス類、コエルロサウルス類、いくつかの鳥盤類と共通の特徴がある。恥骨は鳥盤類、テリジノサウルス類、ドロマエオサウルス類と同様に、完全に後方を向いている。恥骨の先端がふくらんでいないことは、多くの獣脚類とは対照的である。

足根部(足首)は基盤的竜盤類に似ている。距骨の上方突起は低く太く、板状で高く伸びているテタヌラ類とは異なる。ヘレラサウルスや基盤的竜脚形類のような初期の竜盤類と同様に、チレサウルスの踵骨は遠位側からみて三角形に近い。獣脚類の踵骨は長方形である。
 チレサウルスの第1中足骨は第2中足骨の50%以上あり、これは他の多くの獣脚類と異なる。足の第1指は大きく、竜脚形類、鳥盤類、テリジノサウルス類のような4本指の状態に近い。

著者らは4通りのデータセットを用いて分岐分析を行ったが、いずれもチレサウルスは獣脚類という結果になった。特に、テリジノサウルス類ではなくて、最も基盤的なテタヌラ類の位置にきた。
 チレサウルスが獣脚類であることは、頸椎と前方の胴椎に側腔 pleurocoelがあること、胸部の脊椎骨にヒパポフィシスhypapophysisがあること、大腿骨の第4転子が半円形であることなどから支持されるという。チレサウルスがテタヌラ類であることは、肩甲骨が細長くひも状にのびていること、手根骨が半月形であること、手の第3指が縮小していることから支持される。
 チレサウルスは、後肢とくに足首と足に、基盤的竜脚形類と似た驚くほど原始的な特徴をもっている。これは、走行にあまり適していない形態への二次的な逆戻りと考えられる。また、竜脚形類やテリジノサウルス類と共通した歯骨や歯の特徴は、植物食に関連した収斂と考えられる。恥骨が後方を向くことは、大量の植物を消化するための消化管の容積増大と関係する。

チレサウルスの発見によって、基盤的獣脚類における肉食から植物食への変化は、従来想像されたよりもよく起こる現象であったという考えが支持された。コエルロサウルス類以外では、植物食はこれまでリムサウルスしか知られていなかったが、チレサウルスが新たに植物食獣脚類のリストに加わることになった。

ニュースを見てファルカリウスみたいなものかと思っていたら、はるかに原始的だった。植物食であっても捕食者に狙われた場合、速く逃げられる方が有利な気もするが。オルニトミムス類のような方向性もあっただろう。走行に適さない形態への逆戻りということは、チレサウルスはあくまでテリジノサウルス系の方向性を目指したということか。テリジノサウルス類の場合は姿勢が変化しているので、後肢で体重を安定して支える必要があったが、チレサウルスも上体を起こして高い木の葉を食べたのだろうか。

参考文献

Fernando E. Novas, Leonardo Salgado, Manuel Suarez, Federico L. Agnolin, Martin D. Ezcurra, Nicolas R. Chimento, Rita de la Cruz, Marcelo P. Isasi, Alexander O. Vargas & David Rubilar-Rogers (2015) An enigmatic plant-eating theropod from the Late Jurassic period of Chile. doi:10.1038/nature14307
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