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シノサウルス・トリアシクス(青)



これはディロフォサウルスと近縁かどうかわからないので、ディロフォサウルスの体形を参考にするのは危険だろう。あくまで中国のシノサウルスの骨格を参考にすべきだが、それは作られた年代も古く、ディロフォサウルス・シネンシスの時代なので一部ディロフォサウルスを参考にしているかもしれない。また過去に展示された復元骨格の姿勢には怪しいものがあり、なかなか厳しい。

厳密ではないが原始的なテタヌラ類として大体のイメージである。より正確には資料があればそのうち描こうと思っている。
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シノサウルス・シネンシス



過去の記事にもあるように、Hu (1993)には“ディロフォサウルス”・シネンシスとディロフォサウルス・ウェテリリの違いについては記述されていたが、シノサウルス・トリアシクスと“ディロフォサウルス”・シネンシスの違いはこれまで記述されていなかった。トリアシクスの詳細な研究がなされていなかったためである。Zhang et al. (2023) によってわかるようになった。

あらためてHu (1993)を開いてみると、このシノサウルス・シネンシスの頭骨はディロフォサウルスとはかなり異なり、全体としてアロサウルスのような頑丈な印象がある。しかしシノサウルス・トリアシクスとは、まあまあ似ているのかな、という感じである。

Zhang et al. (2023) によると、シノサウルス・シネンシスは以下の2つの点でシノサウルス・トリアシクスと異なる。1)シノサウルス・トリアシクスでは前上顎骨歯が4本であるが、シノサウルス・シネンシスでは前上顎骨歯は5本である。2)シノサウルス・トリアシクスでは鼻骨のとさかの側面に2つの貫通した孔(fenestra)があるが、シノサウルス・シネンシスでは窪みはあるが孔はない。

またシノサウルス・トリアシクスの特徴である形質はないことが大体わかる。シノサウルス・シネンシスでは鼻骨のとさかの側面と上顎骨の側面に稜があるが、その2つは位置がずれて食い違っており、トリアシクスのような一つながりの垂直な稜にはなっていない。
 一方、頬骨の前方突起は明確には示されていないが、心眼でみると前眼窩窓の腹側縁において、頬骨の前方突起はおそらく短いようだ。


参考文献
Ze-Chuan Zhang, Tao Wang & Hai-Lu You (2023): A New Specimen of Sinosaurus triassicus (Dinosauria: Theropoda) from the Early Jurassic of Lufeng, Yunnan, China. Historical Biology, DOI: 10.1080/08912963.2023.2190760

Hu, Shaojin (1993). A Short Report on the Occurrence of Dilophosaurus from Jinning County, Yunnan Province. Vertebrata PalAsiatica 31: 65-69.
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シノサウルスの頭骨



シノサウルスの歴史については過去の記事にまとめてある。あのときはXing(2012)の修士論文に基づいて書いたものである。先日、新しく発見されたシノサウルスの頭骨が記載された。研究自体はすばらしいが、例によって急いで書いた論文らしく、誤植がある。メインの頭骨写真のレジェンド(図の説明)が左右ともrightになっている。Hu (1993)がなぜか1997になっていて、雑誌名のVertebrataがCertebrataになっており、巻号がない。頭骨図のレジェンドのNLPFが図中ではNLFFになっている。

Young (1948)が命名したシノサウルス・トリアシクス Sinosaurus triassicusのホロタイプ標本IVPP V34は、3個の顎の断片と3本の歯であった。その後いくつかのディロフォサウルスに似た獣脚類化石がシノサウルスと考えられたが、(ほとんど完全な頭骨もあるにもかかわらず、)頭骨の詳細な研究はされていなかった。

Hu (1993) の記載した“ディロフォサウルス”・シネンシス ”Dilophosaurus” sinensis (KMV 8701)は、Wang et al. (2017)の提案によりシノサウルス・シネンシスSinosaurus sinensisとされた。これはシノサウルス・トリアシクスとは前上顎骨歯の数などが異なる。

Wang et al. (2017) は、雲南省の楚雄イ族自治州双柏県からの部分的な頭骨化石に基づいて、シュアンバイサウルス・アンロンバオエンシスShuangbaisaurus anlongbaoensisを記載した。これは吻の上部は失われているが、眼窩の真上にとさか(supraorbital crest)があることから、鼻骨・涙骨のとさかが後方に拡大して前頭骨にまで及んだものと考えられている。

最新の説ではシノサウルス・トリアシクス、シノサウルス・シネンシス、シュアンバイサウルス・アンロンバオエンシスの3種が有効とされている。

今回記載された新しい標本はLFKL 004で、ほとんど完全な頭骨(下顎含む)と11個の頸椎からなる。2014年に禄豊市金山镇のホロタイプ発掘地の近くから発見され、2020年に頭骨だけが禄豊市の恐竜化石研究保全センターに移された。頸椎はまだ現地にあってクリーニングされていないという。LFKL 004は、顎の外側面の歯槽縁近くに鋭い稜があるというホロタイプと同じ特徴をもつことから、シノサウルス・トリアシクスと同定された。

新しい参照標本から得られたシノサウルス・トリアシクスの特徴は、1)上顎骨の腹側部分から鼻骨のとさかまでのびる垂直の稜がある、2)前眼窩窓の腹側縁の大部分が頬骨の前方突起からなる、3)鼻骨、涙骨、前前頭骨の間に孔nasal-lacrimal-prefrontal fenestraがある、である。 

1)LFKL 004が他の獣脚類と異なる最も顕著な特徴として、鼻骨のとさかの側面から上顎骨の腹側の稜(2番目の歯槽の位置)まで走る垂直な稜がある。これをvertical nasomaxillary crest という。LDM-L10には同じ構造がある。シュアンバイサウルスではこの部分は保存されていない。シノサウルス・シネンシスでは、鼻骨のとさかの側面に稜があるが、腹側には延びていない。

2)もう一つの重要な特徴は、前眼窩窓の腹側縁の大部分(60%以上)を頰骨の前方突起が占めていることである。LDM-L10は同じ形質を示す。シノサウルス・シネンシスやシュアンバイサウルスでは、頰骨の前方突起は短く、前眼窩窓の後端近くにとどまっている。

3)鼻骨、涙骨、前前頭骨の間に孔がある。これは他の獣脚類にはみられないユニークな形質である。
 今回の研究でこれらのシノサウルス・トリアシクスの特徴が確立されたことにより、今後中国南部の近縁の獣脚類を分類・系統解析するのに役立つだろうとしている。

ディロフォサウルスとの描きわけを意識した場合に気になるのは、吻があまりくびれていないことである。ディロフォサウルスやコエロフィシスでは、前上顎骨と上顎骨の間に明確なくびれ(subnarial gap)がある。これは前上顎骨と上顎骨の歯槽縁(腹側縁)が接していないと定義されている。しかし、シノサウルス・トリアシクスでは前上顎骨と上顎骨の歯槽縁は接しており、最後の前上顎骨歯と最初の上顎骨歯の間に、特に隙間はない。このことからシノサウルスでは真のギャップはなく、ディロフォサウルスやコエロフィシスとは異なるとしている。なるほど右側を見ると、ほとんどくびれはない。左側を見るとやや「へ」の字形にも見えるが、最後の前上顎骨歯と最初の上顎骨歯は隣接していて、隙間が空いているわけではない。さらに唇をつけると、くびれているようには見えないかもしれない。このあたりは注意する必要がある。

この頭骨は普通に見ると左側の方が保存がよくて、右側はゆがんでいるように見える。右の眼窩から後頭部にかけてつぶれているように見える。しかし著者らは、左側がゆがんでいて右側の方が保存が良いと書いている。ところがカッコ内に引用しているのは左側の図(Fig.4)で、しかもrightと書いてあるので非常に混乱する。本文ではどうも右側を主に記述しているようなので、個々の骨の形状は右側の方が良いと考えているのだろうか。右側は少しつぶれていて、左側は少し引き伸ばされているということか。

とさかのピークの位置がディロフォサウルスと異なると論じているところで、どうも右側のことを言っているようにみえるが、とさかの状態は左右で異なるので、もし右側がゆがんでいる場合は成り立たないことになる。これは問題ではないだろうか。
 とさかはディロフォサウルスよりは厚く、わずかに左右に広がっているがその程度は小さい(平行に近い)といっている。シノサウルス・トリアシクスの標本の中でも変異があり、ZLJT01 では複雑な含気構造が発達しているが他の標本にはないという。



参考文献
Ze-Chuan Zhang, Tao Wang & Hai-Lu You (2023): A New Specimen of Sinosaurus triassicus (Dinosauria: Theropoda) from the Early Jurassic of Lufeng, Yunnan, China. Historical Biology, DOI: 10.1080/08912963.2023.2190760

Wang G, You H, Pan S, Wang T. (2017). A new crested theropod dinosaur from the Early Jurassic of Yunnan Province, China. Vertebrata PalAsiatica. 55 (2):177–186.
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ディロフォサウルス1



やはり触発されることは大事で、復元教室に行った直後は何も見なくても描けるような気になる。

小型のコエロフィシス類に比べると頭が大きく首が太く、原始的なテタヌラ類と収斂した感じを意識して、しかし首が長め、胴も長めのほっそり感も保つように。なかなか難しいものである。
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シノサウルス(予習)




大きい画像

中国のディロフォサウルス、ディロフォサウルス・シネンシスは、最近シノサウルスになった。このあたりの経緯はどうなっているのだろうか。
 1998年の「中国古動物」という本には、ディロフォサウルス・シネンシスの保存の良い頭骨の写真が2種類、掲載されている。化石は何体あってどの程度研究されているのだろうか。日本で時々見かけるのはどれなのか。

ディロフォサウルス類は、三畳紀後期からジュラ紀前期のアフリカ、南極、中国、北アメリカから知られる、頭部になんらかのとさかを持つ中型の獣脚類である。1993年にHu Shaojinは、雲南省禄豊盆地から発見されたディロフォサウルス類の化石を記載した。この化石はHu (1993) によってディロフォサウルスと同定されたが、米国のディロフォサウルス・ウェテリリとは異なる点があったので、ディロフォサウルス・シネンシスと命名された。この化石は現在まで十分なクリーニングと記載がなされていないが、Hu (1993) の研究により中国のディロフォサウルス類の研究が開始された。これまでに、少なくとも5体のディロフォサウルス類の化石が前期ジュラ紀の禄豊盆地から発見されている。近年、Currie らはこれらの標本を観察し、より古くから知られるシノサウルス・トリアシクスと同じものと結論した。

1948年、中国恐竜研究の父といわれる楊鍾健C.C. Youngは、Dahuangtian Village の禄豊層Lufeng Formationから、シノサウルス・トリアシクスSinosaurus triassicus を記載した。これは中国から見つかった最初の獣脚類の一つである。なにしろ「中国の竜(トカゲ)」であるから、由緒正しい名前である。シノサウルスのホロタイプIVPP V34 は上顎骨の一部(歯のついた3つの断片)と3本の歯である。このほか2個の胴椎(IVPP V30, V31)がシノサウルスのものとされている。一緒に見つかった腰帯は、後にユンナノサウルスのものとされた。

1987年、昆明市博物館によってQinglongshan Mountainの禄豊層から、2体の恐竜化石が発見された。その一つがほとんど完全な獣脚類の骨格で、Hu (1993)によりディロフォサウルス・シネンシスのホロタイプ(KMV 8701)として記載された。もう一つの化石は原竜脚類ユンナノサウルスである。
 KMV8701は頭骨を含めてほとんど完全な全身骨格である。これは全長約5.5 mの中型の獣脚類で、大きく丈が高く頑丈な頭骨には、背側から見て斜めに広がっている2枚の扇形のとさかがある。鼻骨は斜めで長く、上顎骨の上方突起は前方と後背方に分岐している。歯式は前上顎骨5、上顎骨13、歯骨13で、歯は側扁しており前縁および後縁に小さい鋸歯をもつ。脊椎骨は典型的な肉食恐竜型で、頸椎9、胴椎15、仙椎4、尾椎はおそらく45のうち36が保存されている。烏口骨孔は背方に貫通しており、肩甲骨は細く長い。腸骨は低く後方葉が長く、恥骨は座骨よりも長く、仙椎は不完全に癒合している。四肢の長骨は中空である。上腕骨は大腿骨の1/2より短く、脛骨は大腿骨より短い。大腿骨の第四転子は長軸の1/3の位置にある。中足骨は平行に並んでおり、趾骨は頑丈で指式は2・3・4・5・1であるという。
 Hu (1993) は、KMV8701とアメリカのディロフォサウルス・ウェテリリとの違いについて以下のように記述している。KMV8701では背側からみて2枚のとさかがV字状に広がっているが、ディロフォサウルス・ウェテリリでは平行である。KMV8701では前上顎骨が高く幅広く、上顎骨との関節面が垂直に近く、5本の歯をもつ。ウェテリリでは前上顎骨が斜めで細く、上顎骨との関節面が弱く、4本の歯をもつ。KMV8701には第2前眼窩窓(maxillary fenestra)があるが、ディロフォサウルス・ウェテリリにはない。
 KMV8701はとさかが高い方のタイプで、頭骨自体も丈が高く、頑丈な感じである。ディロフォサウルスというよりも、カルノサウルス類のような顔にみえる。

1994年、禄豊恐竜博物館によってHeilongtan Villageの禄豊層から、ほとんど完全な獣脚類の骨格(LDM-L10)が発見された。LDM-L10の頭骨は保存がよく、2枚のとさかがあった。博物館はこれをディロフォサウルス・シネンシスとした。Dong (2003) はこの標本を観察し、形態、層準、産地などからシノサウルスと同じと考えたが、具体的な記載はしていない。Currie et al. はこの考えを支持し、これら2つの標本(KMV 8701、LDM-L10)をシノサウルス・トリアシクスと考えた。
 LDM-L10の頭骨はとさかが低めで、頭骨自体もほっそりしている。歯も小さめで、前上顎骨の歯はほとんど保存されていないようである。福井県立や恐竜展などで見られるレプリカは、おそらくこれと思われる。また日本だけでなく、アメリカで展示されたこともあるようだ。

2006年、日本人研究者の関谷透博士がKonglong Hillの禄豊層から、4番目のディロフォサウルス類化石(ZLJ0003)を発見した。ZLJ0003 には頭骨の前方部分(上顎、下顎)と完全に近い胴体の骨格が含まれている。この頭骨の骨はプレパレーションが不十分であるが、復元頭骨の一部として展示されている。また胴体は、LDM-L10の頭骨レプリカと共に組み立てられ、やはり北京の中国理工博物館に展示されている。

2007年、禄豊恐竜博物館によってHewanzi Villageの禄豊層から、ディロフォサウルス・シネンシスの不完全な頭骨といくつかの胴体の骨(ZLJT01)が発見された。ZLJT01は、これまでに見つかった4つの標本と比べてよくクリーニングされており、CTスキャンもされている。Xing は2012年の修士論文で、主にZLJT01について記載している。
 Xing は2013年に、シノサウルスの歯槽のリモデリングについて論文を出しているが、ZLJT01や過去の保存の良い標本についての詳細な記載は、Currie et al.という形で出版されることになっている。
 ZLJT01は、不完全な前上顎骨、部分的な上顎骨、鼻骨のとさか、前頭骨、後頭部、歯骨、胴体のいくつかの骨からなっている。ZLJT01はほとんど頭骨の骨だけであり、またシノサウルスの他の標本の胴体部分はプレパレーションが不十分な上、組み立てられて展示中のため研究できない。そのため、Xingは頭骨のデータだけを用いて系統解析を行った。このとき頭骨の骨が十分得られていない種類(ドラコヴェナトル、エラフロサウルス、リリエンステルヌスなど)は除外されている。

過去のSmith et al. (2007) の系統解析では、ディロフォサウルス科という名称こそ用いていないが、ディロフォサウルス類(ディロフォサウルス、クリオロフォサウルス、ドラコヴェナトル、シノサウルス)がまとまったクレードをなしていた。そしてディロフォサウルス類は、コエロフィシス上科とアヴェロストラ(ネオケラトサウリア+テタヌラ類)の中間段階にあった。
 一方、Xing (2012) の系統解析の結果では、ディロフォサウルス類が別々の系統に分かれることになった。シノサウルス(の複数の標本)は、アヴェロストラの中で、クリオロフォサウルス、ピアトニツキサウルス、テタヌラ類と共にpolytomy多分岐をなしている。つまり、シノサウルスとクリオロフォサウルスは、テタヌラ類にかなり近づいた形である。一方でディロフォサウルス・ウェテリリは、コエロフィシスやズパイサウルスなどと共にコエロフィシス上科に含まれた。もしこれが正しいとすると、2枚のとさかは別々の系統で独立に進化したことになる(そのくらいはいかにも起こりそうであるが)。

結局、KMVやLDMの胴体の骨格についてはどうなったのだろう。Xing (2012)は、マウントされているZLJ0003の胴体の骨格について、なんとか研究させてもらえるように交渉したが、許可されなかったといっている。せっかく保存の良い全身骨格があるのに、社会的な理由で中国人研究者さえもアクセスできないというのは、いかにも残念なことである。

参考文献
Hu, Shaojin (1993). A Short Report on the Occurrence of Dilophosaurus from Jinning County, Yunnan Province. Vertebrata PalAsiatica 31: 65-69.

Dong, Z.M. (2003). Contribution of New Dinosaur Materials from China to Dinosaurology. Memoir of the Fukui Prefectural Dinosaur Museum (Beijing: Fukui Prefectural Dinosaur Museum) 2: 123-131.

Xing, L., Bell, P. R., Rothschild, B. M., Ran, H., Zhang, J., Dong, Z., Zhang, W., Currie, P. J. (2013). Tooth loss and alveolar remodeling in Sinosaurus triassicus (Dinosauria: Theropoda) from the Lower Jurassic strata of the Lufeng Basin, China. Chinese Science Bulletin. 58 (16): 1931-1935.

Xing, L.D. (2012). Sinosaurus from Southwestern China. Department of Biological Sciences, University of Alberta (Edmonton): 1–286.

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クリオロフォサウルス1



クリオロフォサウルスは、ジュラ紀前期に現在の南極大陸に生息した獣脚類で、南極横断山脈カークパトリック山の標高4200 mの地点でハンソン層から発見された。部分的な頭骨、腰帯、後肢などを含む部分骨格が見つかっている。

クリオロフォサウルスは、1994年の最初の記載以来、最も初期のテタヌラ類という位置付けであったが、2007年になって、テタヌラ類ではなくディロフォサウルスの仲間に属するという解析結果が報告された(Smith et al, 2007)。それによるとクリオロフォサウルスは、米国のディロフォサウルス・ウェテリリ、中国のディロフォサウルス・シネンシス、南アフリカのドラコヴェナトルと共にまとまったグループ(単系群)をなすという。これらの獣脚類では、原始的なコエロフィシス類の形質と進化したテタヌラ類にみられる形質が入り混じっており、全長6m前後と中型で、頭部になんらかのとさかを持っている。ジュラ紀前期にはこれらの恐竜が古竜脚類とともに世界各地に分布していたらしい。

 これにより、従来のコエロフィソイドからディロフォサウルスの仲間が独立した形になっている。まずコエロフィシス類が分岐し、次いでディロフォサウルスの仲間が分岐し、その後ネオケラトサウリアとテタヌラ類が分かれた形である。(この分岐図ではズパイサウルスは、ディロフォサウルスの仲間の根元付近から分かれている。)

 というわけで、丸ビルで先行展示されている骨格を見てきたが。この復元骨格は、原始的なテタヌラ類という想定で作られているようである。手が完全に3本指で、かなり進化したカルノサウルス類のようにもみえる。全体にアロサウルスっぽくないだろうか。ポーズは良い。




 独特のとさかの他に、下側頭窓が完全にくびれて頬骨と鱗状骨が結合している(下側頭窓が上下に分断されている)ことも固有の特徴であるらしい。

参考文献
Smith, N. D., P. J. Makovicky, D. Pol, W. R. Hammer, and P. J. Currie (2007), The dinosaurs of the Early Jurassic Hanson Formation of the Central Transantarctic Mountains: Phylogenetic review and synthesis, in Antarctica: A Keystone in a Changing World-Online Proceedings of the 10th ISAES, edited by A. K. Cooper and C. R. Raymond et al., USGS Open-File Report 2007-1047, Short Research Paper 003, 5 p.; doi:10.3133/of2007-1047.srp003.
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