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メラクセス



メラクセス・ギガスは、後期白亜紀セノマニアン後期(Huincul Formation)にアルゼンチンのネウケン州に生息した大型のカルカロドントサウルス類で、2022年に記載された。

メラクセスのホロタイプ標本は、ほとんど完全な頭骨(下顎はない)、肩帯、腰帯、前肢、後肢、頸椎と胴椎の断片、完全な仙骨、前方と中央の尾椎からなり、南半球では最も完全なカルカロドントサウルス類となった。

他のカルカロドントサウルス類と区別されるメラクセスの特徴は、成体の上顎骨の前眼窩窩に2つの孔がある;頬骨の後眼窩骨突起の後縁に”段”がある;後眼窩骨の鱗状骨突起に低く丸い側方の突起がある;涙骨の背側縁に沿って丸い突起がある;方形頬骨の側面に深く丸い窪みがある;仙椎の神経棘がほとんど完全に癒合している;前方の尾椎にハイポスフェン‐ハイパントラム関節がある;足の第2指の末節骨が拡大している、などである。

派生的なカルカロドントサウルス類では前眼窩窩の孔は1つなので、2つあることが特徴になる(ティランノティタンの記事参照)。成体といっているのは、マプサウルスの幼体では2つあるため。

メラクセスの頭骨の形やプロポーションはアクロカントサウルスと似ているとある。ギガノトサウルスやマプサウルスとも似ているはずだが、それらは完全な頭骨が存在しないので比較できないということだろう。上顎骨の外側面は不規則な縦の溝や稜で装飾されている。また鼻骨は、前方の外鼻孔周辺の部分を除いて、よく発達した粗面で覆われている。これらは他のカルカロドントサウルス亜科と同様である。涙骨は側面と背側縁の突起が稜や溝で装飾されている。後眼窩骨からはがっしりした眉状の突起が突き出しており、他のカルカロドントサウルス類と同様にその側面には水平に走る血管溝がある。
 ギガノトサウルスやカルカロドントサウルスと同様に、頭頂骨のskull tableは広い。上後頭骨は背側ではっきりした突起をなすが、ギガノトサウルスやカルカロドントサウルスほど顕著ではない。傍後頭骨突起は非常に長く、アクロカントサウルスよりも腹方を向いている。ギガノトサウルスやカルカロドントサウルスと同様にinterorbital septumは骨化している。

5個の仙椎は、椎体だけではなく神経棘の部分も完全に癒合している。アクロカントサウルスやギガノトサウルスのような他のカルカロドントサウルス類では、いくつかの神経棘が部分的に癒合することはあるが、メラクセスほど完全な癒合はみられない。
 最初の4個の尾椎の後関節突起には、よく発達したハイポスフェン−ハイパントラム関節がある。前方の尾椎の神経弓や神経棘には顕著な含気性構造がある。

上腕骨は太く、両端が広がっていて、幅と長さの比率はアクロカントサウルスと似ている。尺骨は短く太く、肘頭突起は長さの27%を占める。中手骨はIIとIIIが見つかっている。第II中手骨の遠位の関節面はアクロカントサウルスと同様に非対称で、指を曲げるとカギ爪の先端が内側に回転するようになっている。
 手の指骨は9個保存されている。末節骨I-2 は非常に頑丈で反っており、強く発達した屈筋結節はアロサウルスよりも大きい。他の指の末節骨は、形は同様だがより小さい。末節骨の間のサイズの比率はアロサウルスと同様である。

腸骨はアロサウルスと同様に側面から見て台形で、より短く丈が高い。恥骨孔(閉鎖孔)は他のアロサウロイドと異なり、完全に閉じている(ヤンチュアノサウルスと同じか)。坐骨軸はアクロカントサウルスと同様にまっすぐで、マプサウルスの曲がった軸とは異なる。

距骨の上行突起の高さは獣脚類の系統解析によく用いられてきたが、実はカルカロドントサウルス類(科)ではこれまで知られていなかった。メラクセスの発見により、距骨の上行突起は脛骨の長さの1/6より小さいことがわかった。またメラクセスは、カルカロドントサウルス類では踵骨がより幅広いことを実証した。

メラクセスの足の比率はアクロカントサウルスやコンカヴェナトルと非常に似ている。末節骨はII-3が最も大きく、III-4はII-3よりも30%小さく、IV-5はII-3よりも45%小さい。末節骨II-3の腹側縁は、他の指の末節骨と異なり、ある程度鋭い縁となっている。

系統解析の結果、メラクセスは南米の巨大なカルカロドントサウルス類のクレードであるギガノトサウルス族(ギガノトサウルス、マプサウルス、ティランノティタン)の最も基盤的な位置にきた(ティランノティタンの外側)。メラクセスの生息年代はセノマニアンの中でもギガノトサウルス(Candeleros formation)とマプサウルス(Huincul formation)の間にあり、これらカルカロドントサウルス類の多様性が、チューロニアン以後絶滅する直前の時代に、ピークに達していたことを示している。

メラクセスの頭骨はカルカロドントサウルス亜科の中で最も完全なものであり、推定される長さは127 cm で、アクロカントサウルスの123 cmと近い。ギガノトサウルスの頭骨は欠けている骨があるため頭骨長の正確な推定は困難だったが、メラクセスの頭骨を用いて推定すると162 cmとなり、これは獣脚類の中でも最も大きいものの1つである。

メラクセスの前肢の長さは大腿骨の半分程度(47%)で、後のティラノサウルス類やアベリサウルス類に匹敵する。つまりアベリサウルス類、ティラノサウルス類、カルカロドントサウルス類という大型獣脚類の3つの系統で、同じような前肢の縮小傾向を示すことがわかった。横軸に大腿骨長(全長の指標)、縦軸に前肢の長さをプロットしたグラフを描くと、3つの系統でそれぞれ異なる変異や分布パターンを示すのに、大型化する際には同じような比率まで縮小している。この同じような数値に行き着く理由について、少し難しいが0.4くらいのところにlower bound (下限)あるいは進化的制約があるのではないかという。これらの大型獣脚類の場合、前肢は小さくなるが肩帯は大きいままであることに関係があるのではないかといっている。肩帯の周りの筋肉群を配置する関係で、これ以上は前肢を小さくできないラインがあるのかもしれないという。前肢を完全に失ったモアのような鳥類では、肩帯も退化しているという。
 また3つの系統の中ではやはりアベリサウルス類が最も極端で、カルカロドントサウルス類が最もマイルドなようである。カルカロドントサウルス類とティラノサウルス類では小さくなってもカギ爪や筋肉の付着部は発達しているのに対して、アベリサウルス類やノアサウルス類では退化的である。小さくても機能的な3本指を保っている点で、メラクセスは親しみが持てる。

今回は短報なので個々の骨の詳細な記述はないが、フル記載が楽しみである。


参考文献
Canale et al. (2022) New giant carnivorous dinosaur reveals convergent evolutionary trends in theropod arm reduction. Current Biology 32, 1–8.
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2022 みなとみらい恐竜ワールド


マークイズとランドマークタワーの2カ所に分かれていたので、やや回りずらかったですが、良いイベントでした。マークイズの一階は恐竜に乗れるライドの所が、結構混雑していました。


トリケラトプスは動きません、とある。


ヴェロキラプトルはデイノニクスのサイズですが、ここで実際のヴェロキラプトルのサイズについて説明しても仕方ないということでしょうね。このロボットは基本的に映画に合わせたもので、風切羽もないし。


一方、ランドマークプラザ一階のフェスティバルスクエアにはステゴサウルスが。


なんとかガーデンスクエアにはティラノが吠えています。やはり動きとかは一番良くできているかな。

さてランドマークタワー69階のスカイガーデンに行くと、恐竜くんのクイズ恐竜探偵が待っています。ヒントを見ながら解答します。


幼体集団化石の親はどの恐竜かな?頭の形を観察するということですね。


歯の化石が5個あって、アロサウルスはどれかな?

これはどの恐竜の頭骨かな?でヒントは背中の骨板で。


4問目が一番工夫されていた。これは、クイズ本などにある論理パズルですね。どの恐竜も本当のことを言っています。ティラノの爪はどれかな。実際にこれを使って、お子さんに教育しているお母さんがいました。「テリジノサウルスはなんて言ってるの?アロサウルスのは真っ黒だって言ってるでしょ。」「アロサウルスはなんて言ってるの?」みたいな。

全問正解してよかった。缶バッジはトリケラトプスだった。
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ジュラシックワールド新たなる支配者 続き


ちょっと辛口すぎただろうか。しかし与えられたものに満足するだけではなく、ツッコミどころはないか、自分ならこう作る、といろいろ妄想をめぐらせることは、クリエイターとしては必要なことではないだろうか。
いくつも動画が上がっていて、皆さん非常に多岐にわたるコメントをしているが、いちいち共感しかない。本編以外のところで、こんなに楽しめる映画とは思わなかった。

皆さん指摘のテーマについては私もそう思ったが、早々にあきらめていた。無理だったんでしょうね。炎の王国のラストで恐竜が世界に放たれて、文字通りのジュラシックワールドになってしまった。そこで恐竜と人類の共存という、困難な問題が生じた。それがテーマになるはずなのに、何も解決していない。今回解決したのはイナゴ問題と誘拐事件であって、恐竜との共存という問題には向き合っておらず、何ら解決していない。
 これはしかし、取り組んでも難しすぎて、娯楽映画としてスッキリまとめることができなかったのだろうと私は理解した。なんとか解決してほしいが、できなかったのだろう。最後の方でモササウルスがザトウクジラと共存していたが、環境保護団体が好きなイルカを殺しまくっていたとしても、保護団体がモササウルスを殺せとは主張できないだろう。

恐竜がアトラクションのように感じた一つの理由は、主人公らの無敵性である。肉食恐竜が次々に襲っては来るが、人間が殺されたり、傷つくことはない。ディメトロドンなどは完全にアトラクションだった。パラシュートからぶら下がるクレアが翼竜につつかれることもない。不時着したオーウェンとケイラもケガ一つない。6,7人がギガノトサウルスの目前に勢揃いしても、一人も食われない。マルコム博士の片腕くらい食いちぎられるべきだった。子供に残虐シーンを見せないという配慮だろうが、行き過ぎていた。そういえば恐竜もほとんど殺されていない。

設定の甘さというのもある。焼却処分を前提とした施設なら、天井が破れるはずがない。また燃えたイナゴが山火事を起こすほど長時間飛べるわけもない。せいぜい建物の周りに焼け落ちるくらいである。

自分だったらどうするか。イナゴの話でレジェンド達が活躍するのは、スピンオフ作品にする。本編はメイジーの物語を中心に、レジェンド達は脇役に徹して、恐竜のエピソードをもっと描く。恐竜との共存を目指して、オーウェンとブルーのコミュニケーション技術が世界中の飼育員や調教師に共有される。
 スピンオフ作品はウー博士が改心して何年か経った頃とし、ウー博士はこれまでの責任をとり、研究を禁止されて隠遁生活を送っていた。バイオシンで別の研究者により巨大イナゴが開発され、問題を起こす。事態を重く見た政府は急遽、ウー博士に特別に解析を依頼。ウー博士の研究で、巨大イナゴを死滅させることに成功する。計画が破綻したドジスンは、逆上して研究者を殺害、証拠を隠滅しようとするが、開発中の殺人用イナゴに殺される。このようにすればウー博士は一度罪を償ってから、真の活躍をするという花道となる。
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ジュラシックワールド・新たなる支配者


まあ、恐竜が見たかったのであって、虫じゃないということで。
良い面もたくさんありましたね。多数の恐竜が登場して、アトロキラプトルのチェイスシーンとか、ケツァルコアトルスの襲撃など見せ場もあった。恐竜の映像を見てノンストップアクションを楽しむ分にはよくできた構成だった。

しかし個々の恐竜の活躍が足りないと感じた。つまりストーリーの中心に恐竜がいない。人間のストーリーが前面にあって、恐竜は背景の舞台装置(これはどれかのレビュー動画の方の表現)になっていた。新種恐竜の多くは人間を驚かすためのアトラクションのようであり、T-Rex もブルーもギガノトも、それぞれ活躍が足りない。プロローグで暗示されたT-Rexとギガノトの因縁はなんだったのか。ブルーとオーウェンの絆、ベータとの絆もあっさりしていた。アトロキラプトルに襲われたオーウェンをブルーが助けるような絆が描かれても良かった。ギガノトサウルスは悪役あるいはラスボス扱いするなら、多数の人間を殺しまくるなど、大暴れが必要だった。そうすればギガノトを倒すことに大義名分が立ち、カタルシスがあったはずだが、実際はギガノトは特に悪いことはしていないので、かわいそうなだけだった。

見終わってから4,5本のレビュー動画を見たが、みなさん言語化が巧みでなるほどと思った。あっきーのサブスク映画なんとかによれば、大方の不満は2つのストーリーを描きすぎたことであるという。1つはパーク組つまりグラント、エリー、マルコムのレジェンド達がバイオシンに潜入する、ミッションインポッシブル。2つ目はオーウェン、クレアらワールド組による、恐竜密売組織に誘拐されたメイジーとベータの奪回作戦。2つのストーリーが交互に描かれ、最後に合流して1つの結末に向かう。これ自体はクロスオーバーというよくある手法であるという。しかし、この2つのサスペンスアクションをじっくり描きすぎたため、尺が足りなくなり、恐竜の描き方が軽くなってしまったという。確かに、レジェンド達が活躍するのはうれしいが、それは別の物語にすべきではないかとは思った。

ところが、ぷるーと向井さんによれば、なんとトレボロウ監督はうっかりこのような構成にしたのではなく、最初からイナゴ問題を中心のストーリーにしたかったようである。トレボロウ監督はレジェンド達を登場させるにあたり、これまでにない斬新なストーリーを作りたかった。そこでこれまで活躍していないエリー博士に注目し、古植物学者ならではの視点と、恐竜時代からイナゴはいたという点から、食料問題に行き着いたらしい。つまり監督がやりたい個人的な思いつきと、ジュラシックファンである観客が求めるものとのギャップが初めからあったというのである。そりゃあこうなるわな、ということである。斬新な試みという点ですでに、それはシリーズ最終章でやることじゃないだろ、というコメントがあった。

最後の3頭の戦いは、ストーリー上の必然性がないうえに、残念だった。あれだとティラノは、テリジノの助けがなければギガノトに勝てないことにならないか。あれではティラノもギガノトも嬉しくないだろう。またフォークをケーキに刺すように爪が貫通していたが、ギガノトの体は豆腐かなにかでできているのか。
 ティラノとギガノトはやはり、それぞれの特性を活かして、正々堂々とサシで勝負してほしかった。ティラノが「肉を切らせて骨を断つ」ような戦いをすればよかった。ギガノトに腹部を咬まれてダラダラ流血しながらも、最後にギガノトの頭骨を噛み砕く、くらい壮絶な戦いを描けば、恐竜ファンも「さすがティラノだ」となっただろう。実際にティラノサウルス同士の闘争で顔を咬みあうことはあったはずなので、ティラノがギガノトと対峙した場合、顔を咬みにいくことはありうると思われた。

メイジーの出生の秘密のあたりは一応よくできていた。ゲノムDNAを採取するだけなら誘拐までする必要はなくて、車の中で採血か皮膚片でも採取して解放すればいいだけであるが、きっと全身のいろいろな組織を調べる必要があったのだろう。メイジーの成長、特に「私の両親」と言ったり、もう少しでベータと心を通わせるところまで来たのはよかった。
ちなみに研究者といっても、カオス理論が専門のマルコム博士に、遺伝子組み換え実験施設(飼育室含む)のアクセスキーを渡す必要はない。実験するわけではないから、見学したいときにウー博士が同行して案内すればいいだけの話である。

悪役の描き方も少しずつ足りない。アトロキラプトルを操る女も、007だったらレーザーポインターを奪われて自分に当てられ、アトロキラプトルに殺されるのがお約束だが、そこまでの展開は無理だったのだろう。バイオシンのドジスンも確かに黒幕であり、巨悪なのだろうが、直接残虐な行為をするわけではないので、いまひとつそんなに悪人には見えなかった。つまり殺されてもカタルシスがない。ドジスンの腹心のラムジーは、CIAの潜入捜査官なのだろうが、そのことが後半ではちゃんと説明されていないので、ただの裏切り者にもみえる。ドジスンがこれまでの絆云々と非難するのに対して、「絆はない」と言い放つだけだったが、そこは「あなたの科学にはモラルが欠けていた」とかなんとか、正義のセリフを言ってほしい。

毎回都合よく助けてもらうウー博士のキャラは好きなのだが、今回改心したのはいいとして、イナゴ対策プロジェクトに任命されるだろうか。過去のやらかしからして、連邦政府や州政府当局がウー博士に任せることは考えにくい。いや総集編として、最後にウー博士の更生を入れるのはいいと思いますよ。ただひねくれ者としては、ウー博士の設計したイナゴを放って大丈夫なの?そういうのがいけないんじゃなかったのか。死滅するどころか最強のイナゴが出現して世界の穀倉地帯が壊滅するところまで見えた。

もう一回くらい観てもいいかな。
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